「はぁ…どうしたもんか」
「はちくん、大丈夫?」
「大丈夫そうに見えるか…?」
あれから、渡辺とはまともに話せていない。
珍しく俺から話しかけても用事があるからとかで、めちゃくちゃ避けられる。
「私とは普通に話してくれるんだけど…昨日のこと話そうとすると話題変えようとしちゃって…」
勘違いというのは怖いものだな。
「ごめんね、私がはちくんに抱きついたりしたから…」
「いや、誰にでも苦手なものはあるから気にするな。それに渡辺が勘違いしてるだけだしな」
もうこれは帰りに賭けるしかないな。
授業も終わり、部活に入っていない俺はいつもならすぐ帰宅直行だが、今日は違う。
校門の前で2時間くらい時間を潰さなければならない。
「たまたま本持ってきてて良かったな…さて…」
「…あ…ひ、比企谷くん…」
そしてついに目的の人物が現れた。
「よう…渡辺」
「だ、誰か待ってるの?あ、もしかして千歌ちゃん?千歌ちゃん部活入ってないし、何か用事でもあったのかな?」
「お前を待ってたんだよ」
「ど、どうして?何か用事?それなら明日でも…」
「今ここで言いたいんだよ。………前の雨の日のやつだが」
「そ、その話は聞きたくない…な」
「はぁ…だから、勘違いだってば」
「ご、ごまかさなくてもいいよ?おめでたい事だもん。私は全然気にしてなんか…」
その時の感情が蘇ったのか、渡辺の目から涙がこぼれる。
「だからあれは勘違いだ!高海は雷が苦手で、その時鳴ったのが大きくておどろいて、その拍子に俺にもたれかかっただけだ」
「………え?」
「…だからべつに高海とはそういう関係とかじゃない。大体俺じゃ釣り合わないしな」
「…………じゃ、じゃあ私の勘違い?」
「だからそう言ってるだろ」
「……………………ううっ」
「お、おい待てなんでまた泣くんだよ。ほんと待って俺が犯罪者みたいになるから」
「だ、だってぇ…」
「はぁ…ちょっと落ち着け」
俺は渡辺の気を落ち着かせるために、そっと頭を撫でる。
「………………スゥ」
「…あれ?おい、渡辺?」
「…スゥ…」
「え、待って、まさか寝た?この状況で寝たの?」
「…はち…まん…」
普段言わない呼び名を口にするあたり、確実に寝てますねこれは。
「まぁ部活あとだったしな……とりあえずどうしよう」
俺は近くの公園まで運び、渡辺をベンチに寝かせる。
そして俺は膝枕。
「これ普通状況逆だよな…」
「んぅ………ひきがや…くん?」
「おぉ、起きたか」
「……っ!?あ、あれ!?私…!?」
「いきなり眠り始めたからビビったわ」
「ご、ごめん……」
「まぁ部活で疲れてたんだろ…とりあえず起き上がってくれ」
「あ…!ご、ごめんね!足借りちゃって!」
「気にするな」
「……」
「……」
「…じゃあ俺帰るな」
「………ちょっと待って!」
「なんだ?」
「確かにあれが勘違いなのは分かったけど…………比企谷くん、千歌ちゃんに抱きつかれた時鼻伸ばしてたよね?」
「…………そんなことは」
「ないとは言わせないよ?」
え、なに急に。あの話は終わったんじゃないの?
というか男なら誰でも喜ぶでしょ。美少女に抱きつかれたら。
「それはちょっとお仕置きが必要かな…!」
「え、まって、落ち着け、な?」
眠って体力回復したのか、渡辺からすごいエネルギーを感じる。
怖い。
「…ヨーソロー…」
その後俺がどうなったかは、言うまでもない。