「ただいま〜って誰もいないか」
「飯どうする?」
「もう決めてあるから大丈夫!」
「何作るんだ?手伝うぞ」
「だーめ!それはできてからのお楽しみ!比企谷くんはテレビでも見てて!」
「お、おう」
今日はなんか歌番組ばっかりだな。お、そういや今日いつも見てるアニメやるな。予約しておこう。
「比企谷くんできたよ〜」
「ん?おう、サンキュ……何その格好」
俺が振り向くと、そこには美味しそうなオムライスと…メイド服姿の渡辺がいた。
「えへへ…どうかな?」
「どうかなって…まぁ似合ってるけど」
「私制服好きでね。色々集めてるんだ!これも私のコレクションの一つ!」
「へぇ、そんな趣味あったのか。制服って高くないか?」
「んー、確かにね。だからあんまりたくさんは持ってないんだ。内浦にも制服売ってるところないしね」
制服か…ナースとかもあるんだろうか。
「…鼻の下伸びてるよ?」
「………とりあえず食べようぜ」
「ま、待って!」
「なんだよ?」
「……………お、美味しくなーれ……も、萌え萌えキュン!」
「…………」
「………」
おっと、今何が起きた?衝撃的すぎて思考が追いついてないぞ。
「…な、何か言ってよ!」
「……恥ずかしいならやらなくても良かったんじゃね?」
「………だ、だってネットでこういうの男の子は喜ぶって書いてあったから…」
いや、嬉しいよ?恥ずかしがってる姿とかかなりやばかったし。
だが俺だぞ?そんな素直に言えるわけないだろ。
「……しまった」
「どうしたの?」
「…動画撮り忘れたからもう1回やってくれ」
「ぜ、絶対もうやらない!ほら食べよ!」
「くっ……頭の中に刻み込んでおくか」
「…は、はい、あーん」
「…やらなきゃダメ?」
「…嫌なの?」
「恥ずかしいんだよ…」
「…」
無言で見つめてくるのやめてくれませんかね。
「…あ、あーん………美味い」
「ほんと?じゃあどんどん食べて!」
「…ごちそうさまでした」
「あ、あとね!デザートも作ってきたんだ!」
「そうなのか?」
「待ってて!…………はい!」
出てきたのはショートケーキだった。
「おぉ…完成度が高い」
「えへへ、何回か失敗したんだけどね。食べてみてよ!」
「おう………お前料理美味すぎだろ」
「お、美味しいってこと?」
「これならいくらでも食べられるぞ」
「じゃ、じゃあ……比企谷くん」
「ん?」
「……」
呼ばれて振り向くと、渡辺は口にイチゴを加えて目をつぶって俺の方に顔を突き出している。
「……」
え、なにこれ。そこのイチゴを食べろということですか?
ちょっと今日こいつ積極的すぎない?他の男ならイチコロですよこれ。
「…………っ」
「っ……プハッ…お、美味しい?」
「……甘い」
結局俺も耐えられませんでした。頭真っ白でこれがイチゴの味なのか、キスの味なのかは分からなかった。
「………うぅ!さすがに今のは恥ずかしすぎる!」
「それはこっちのセリフだ……今すぐ布団に潜りたい」
「わ、私お風呂沸かしてくる!!」
「逃げたな…」
……残り食うか。
「比企谷くん、お風呂ありがと」
「おう」
さすがにお風呂は別々に入った。一瞬、俺が入ってる時に入ってくるかもというアホな期待をしたがやはりそんなことはなかった。
「……寝るか?」
「へ!?ね、寝る!?」
「………なにかおかしなこと言ったか?」
「ね、ねねねね!?」
「…俺別にあっちの意味で言ったんじゃないぞ。普通に寝るのを提案しただけだが」
「…そ、そそそうだよね!私もそうだと思った!うん!」
速報、やはり渡辺はむっつり。
「……今むっつりとか思ったでしょ」
「思ってない思ってない。まぁ思春期だし仕方ないだろ。うん」
「し、仕方ないじゃん。男の子の家に二人っきりで泊まるの初めてだし…しかも相手は比企谷くんだし…色々想像しちゃうよ」
「……まぁ俺はヘタレだから心配するな」
「それはそれでどうかとも思うけど…」
「…もしかしてだから風呂入る時間長かったのか?」
「で、デリカシーなさすぎだよ!!バカっ!」
「いって!蹴るなよ…」
「ふんっ」
あー、拗ねてしまわれた。
「……まぁそういうのは俺達のペースで行こうぜ」
「……」
「……一緒に寝るか?ベッド一人用だから狭いと思うが」
「…寝る」
「…あの、近すぎません?」
渡辺の機嫌直すために提案したのは俺だけど。
渡辺のやつ俺にピッタリ抱きついてきて理性がやばいんですが。
顔も俺の胸に埋まっていて見えないし。
「…寝れないんですけど…」
「一緒に寝るって言った」
「いや、こんな抱きついて寝ることは…」
「……スゥ…スゥ…」
「…お、おい?」
「…スゥ…」
「寝てる…」
俺この状態で寝ろと?
「……は…ち…まん…」
「……夢の中では俺のこと名前で呼んでるのね…」
夢の中だけにしてほしい。恥ずかしいから。
「…寝るか」