「今日のお弁当ね、自分で作ったんだよ!」
「なぁ…」
「最近料理の勉強してるんだ!そろそろ料理の一つや二つ作れた方がいいと思って」
「おい…」
「そしたら思ったより楽しいんだ!だからもう今では家にいたらいつも台所にいるよ〜」
「待て待て待て待て」
「どうしたの?」
「俺が言ったこと覚えてるか?」
「…なんだっけ?」
「たまになら一緒に食べてもいいって言ったぞ?2日に1回食べてる気がするんだけど。なに、たまにってこんな頻繁なの?」
「細かいことは気にしない気にしない!」
「はぐらかしやがった…」
「…本気で迷惑だった?それなら来る回数減らすから…」
「…はぁ。別にいい。もう慣れた」
なんか渡辺の悲しい顔を見ると下手に言えないな。
「そ、そっか。……あ!この卵焼き!自信作なんだ!食べてみてよ!」
「遠慮する。俺には愛妻弁当があるからな。正確には…ん?どうした?箸落ちたぞ」
「………あ、愛妻弁当?だ、ダメだよ!妄想に入りこんじゃ!」
「…何言ってんだか。妹だよ妹」
「い、妹を妻だと思ってるの!?目を覚まして比企谷くん!」
「違うわ。妹に弁当作ってもらってるだけだ。つまり愛妻弁当ではなく愛妹弁当。人の話は最後まで聞け」
「そ、そういうことか〜。比企谷くんは妹さんのことが大好きなんだね!」
「まぁ家族だしな」
「いいよね!私一人っ子だからな〜。妹か弟が欲しかったな。あ、でもお兄ちゃんとかもいいかも!」
「まぁ一人っ子はそういうのに憧れるな。逆に俺は一人っ子とか羨ましく思う時もあるけどな。まぁ妹第一だけど」
「やっぱりそういうものなのかな〜。あ!もうすぐ授業始まっちゃう!ほら!早く戻ろ!」
「おい!…あいつ弁当置いて1人で戻りやがって…」
授業後
「比企谷くん、この作文はなに?」
授業が終わり、さっさと帰ろうとした時、先生に呼び出された。
どうやら前に提出した宿題の作文が原因のようだ。
「作文のテーマを言ってみなさい」
「現在の高校生活…でしたっけ?」
「うん。それでこの文章は何?「中学と変わらずぼっちライフを満喫しています。以上」って。1行くらいしか書いてないじゃない。舐めてるの?」
「い、いや、だって書くことないんですもん」
「大体、比企谷くんはボッチじゃないじゃない」
「…先生、目大丈夫ですか?」
「至って正常よ。お昼とかいつも渡辺さんと食べてるじゃない」
「なんで知ってるんすか…」
「あの場所ね、職員室から丸見えよ。職員室の間じゃ有名よ?比企谷くんと渡辺さんカップル」
「別に付き合ってません」
「そうなの?まぁそれは置いといて…とにかく、この作文は書き直し。あと罰も与えます」
「…なんでプール掃除なんか…大体一人でできるかよ…」
「…あれ?比企谷くん?」
「ん?…渡辺」
「ヨーソロー!どうしたの?今水泳部練習中だけど…」
「そうだったのか。邪魔したな。先生にプール掃除頼まれたんだ。練習終わったら呼んでくれ。じゃ」
「あーー!!!その人が噂の彼氏!?」
「うおっ!?」
突然目の前に女子が現れた。そいつの声で周りは全員こちらを見る。
「ち、違うよ!比企谷くんは友達!」
「またまた〜!噂になってるよ!お昼一緒にお弁当食べさせ合ってるとか!」
「帰りは一緒に帰ってそのまま彼氏さんの家へ…!とか!」
「「「きゃ〜!!!」」」
そんな噂流れてたのかよ。尾ひれ付きまくってるぞ。
「そ、そんなことしてないよ!」
「彼氏さん!曜ちゃんって彼氏さんの前ではどんな感じ!?甘えてきたりする!?」
「キスとかしたの!?」
「ちょ、ちょっとみんな!違うんだってば〜!」
とりあえずスク水の女子に囲まれてメンタルもたないから解放して早く…
「比企谷くん〜!練習終わったよ!」
「ん、おう。わかった」
「…一人で掃除するの?」
「あぁ」
「さすがに大変だし私も手伝うよ!今日のお詫びも兼ねて!」
「いや、練習で疲れてるだろ。俺だけでやるからかえって休め」
「いいのいいの!それに私掃除好きだから!モップ貸して!」
「お、おい……まぁ、サンキュな」
「うんっ!さ!早く終わらそ!」
「…というかその格好でやるの?」
「え?うん。水着なら汚れたりしても大丈夫だし」
競泳用なのもあって目のやり場に困るんですが…渡辺って結構あるよな。何がとは言わないけど。
「…わかった。じゃあ渡辺はここからやってくれ。俺は奥からやってくから」
「こんな広いプールでお互い角からやってたら一人でやってるようなものだよ?一緒にやろうよ!その方が話しながらできるし!」
なるべく見ないようにするために離れようとしたのに。
「はぁ…わかった」
「ふぅ〜!終わったね〜!」
「あぁ…つかれた」
「でも綺麗にすると気持ちもスッキリするよ!」
「まぁそうだな。ここってシャワーあるのか?汗かいたから体流したいんだが」
「あるよ!じゃあ一緒に行こっか」
「…おい、ここ女子専用だろ」
「でも今はもう誰もいないし大丈夫だよ!」
「いや、お前がいるじゃん。渡辺もシャワー浴びるだろ?先にいいぞ。終わったら呼んでくれ」
「覗いちゃダメだよ?」
「俺はそんな変態じゃない」
それにしてもあの鬼畜教師め…渡辺に手伝ってもらったからまだ良かったものの、一人でやってたら次の日筋肉痛だったわ。
「きゃぁぁぁああ!!」
「っ!?どうした!?」
俺はドアを開けて状況を確認…しようとしたが踏みとどまる。これはあれじゃないのか。ラッキースケベでそのまま吹っ飛ばされて気絶パターン。いやだがほんとにピンチかもしれん。どうすれば…
「比企谷くんっ!!!虫〜!!!」
「どわっ!?」
試行錯誤していると、ドアが思い切り開き、渡辺が突っ込んできた。
「いって…お、おいどうした」
「む、虫が!虫!」
「虫?…でっかいバッタだな…ほらもう外に逃がしたから…」
「う、うん……どうしたの?目見開いて」
「……俺は見てないからな」
「え?」
途中まで驚いて気づかなかったが、渡辺はまだ下着姿だった。
「……〜っ!!?」
渡辺もやっと気づいたのか猛ダッシュで更衣室に飛び込む。
「…み、見た?」
「…忘れるから」
「……エッチ」
「俺が覗いたわけじゃないから。無実。冤罪だ」
「言い訳は見苦しいよ!」
「事実だ」
「もうっ…じゃあお願い一つ聞いてくれたら許してあげる」
「だからわざとじゃないって…」
「先生に比企谷くんが女子更衣室に侵入したって言おうかな」
「全力でお願いを叶えさせていただきます」
続く