「比企谷くん!」
「なんだ、急に電話してきて」
とある日曜日、突然渡辺から朝電話がかかってきた。
「今日って暇?」
「今日か?……暇じゃないな」
「暇なんだね。今日スケートしに行こうよ!」
「…話聞いてた?暇じゃないんだよ」
「そういう時は暇じゃないって小町ちゃん言ってたよ?」
「……なんでスケートなんだ?」
「いやぁ、実は千歌ちゃんと行く予定だったんだけど急用で行けなくなっちゃったみたいで。だから比企谷くんと行こうかなって!」
「俺下手くそだぞ?」
「大丈夫!私が教えてあげるから!ね?行こ?」
「……わかったよ」
「やったぁ!」
「お待たせー!」
「おう」
「ごめんね、ちょっと遅れちゃった」
「気にすんな。ほら行こうぜ」
「うんっ!」ギュッ
「…なぜ手を握る」
「♪〜」
「無視ですか…」
もう慣れた。うん。最初は恥ずかしかったけど今はもう慣れたよ。
渡辺が積極的すぎて。
「よし!じゃあさっそく滑ろう!」
「まず俺は立つのもきついんだが」
「大丈夫大丈夫!ほら!私の手掴んで!ゆっくりやろう?」
「おう…」ギュッ
「…比企谷くんから握ってくれたの初めてだね」
「…そういうこと言わないでくれる?なんか恥ずかしいから」
「あはは!顔真っ赤!よし!じゃあ行くよ?」
「おう」
俺は渡辺の手に引かれてゆっくり滑る。なかなかバランスをとるのが難しいな。スケートなんて小さい頃にやったくらいだし。
「渡辺は得意なのか?スケート」
「うーん。普通かな?別に飛んで回転とか出来るわけじゃないし」
「いやもうそれができたら選手だぞ」
「あはは、確かに。比企谷くんもだいぶ慣れてきたんじゃない?1人で滑ってみる?」
「やってみるか」
俺はなんとかバランスをとりながら滑る。
「うまいうまい!その調子だよ!」
「おうっ……おわっ!?」
「えっ?きゃぁ!」
途中までは上手くいってたがバランスを崩してしまい、渡辺を巻き込んで倒れてしまう。
「いって…す、すまん、大丈夫…か」
俺は言葉を失ってしまった。何故なら、倒れ拍子に俺の手は渡辺の胸を鷲掴みにしてしまっていたから。
「っ!ほ、ほんとにすまん!わざとじゃ…」
これはまずい。ビンタ絶対食らう。いや、ビンタで済めばいいけど。
吹き飛ばされたりとかしないかな。
渡辺のやつ顔真っ赤にして俯いてるんだけど。
「…と、とりあえず手どけてよぉ」
「あ、あぁ!……ほんとに悪かった」
「わ、わざとじゃないし…だ、大丈夫。…比企谷くんなら嫌じゃない、し」
「お、おう…そうか」
…なんだよ!?俺なら嫌じゃないって?なんだこれは。
逆にキレて吹っ飛ばされた方が当然感あってその方が良いんだけど逆に。
こういう反応されると困る。
「…ひ、一つだけいうこと聞いてくれたら許してあげる」
「え、いや、さっき大丈夫って…」
「…」
「…はい。なんでもう言うこと聞かせていただきます」
「じゃ、じゃあ……これから名前で呼んで?」
「…いまさらだし別に苗字で良くない?」
「だ、だめっ!名前で呼んでほしいもん…」
「………曜」
「っ!うんっ!…じゃあ……八幡くん?」
「…もう1回言ってくれ」
「…は、八幡くん」
「もう1回」
「も、もう言わないっ!ほら早く滑ろ!」
「くっ…まぁいいか、さっき録音したし」
「えっ!?今聞き捨てならないことが聞こえた!?録音したの!?消してよ〜!」
「嫌だ」
「八幡くんのバカ!」
「バカっていう方が馬鹿なんだぞ」
「バカバカバカ!」
「お前たまに高海みたいになる時あるよな…」
「そ、そう?えへへ!」
「なぜ喜ぶ」
「よぉし!じゃあ今から競走しよ!勝った方が負けた方にデザート奢ってもらえる!よーいどんっ!」
「お前それ勝てる自信があるから言ってるだろっ!」
「それー!!」
結果、俺は曜にデザートを奢らされました。