劇の配役も決まり、練習開始から1週間。
普通のロミジュリではただのパクリなので現代風にしようと言うことになった。セリフを少しずつ変えたりするくらいなのでそこまで難ではなかった。
順調に進んでいたかと思われていたが…
「ジュリエット、俺と結婚してくれ」
「…え、えっと、あ、あの…!」
「かーっと!曜ちゃん!」
「ご、ごめん!」
途中のロミオの告白シーン。ここで止まってしまっている。
最初は俺が恥ずかしくてなかなか言えなかったが、そこまで時間はかからなかった。問題は渡辺だ。
俺がやっと言えたと思ったら今度は俺がセリフを言う度に渡辺が赤面し、先へ進まないのだ。
「曜ちゃんがこんなにうぶだったとは…」
「だ、だってこ、告白なんてされたことないし…!」
「いや、演技だから」
「まぁはちくんの告白なんてこういう時しか聞けないもんね。ちゃんと動画に収めてあるよ!」
「おいまてお前今なんて言った」
「痛い痛い!チョップは痛いよはちくん!」
「ほらほら二人とも。曜ちゃんもそろそろ…」
「ご、ごめん!今度はちゃんとするから!…すぅ……はぁ…!よしっ!比企谷くん!準備OKだよ!」
「…ジュリエット、俺と結婚してくれ」
「は、はい…!ロミオ…ぉぉやっぱ無理ー!!」
「あ、曜ちゃん!はちくん!追って!」
「はいはい…!」
「はぁ……みんなに迷惑かけてばっかり…私こんなに免疫ないなんて…」
「おい渡辺」
「比企谷くん…ごめんね。私のせいで…」
「別に気にするな。俺だって最初は言えなかったしな。…まぁまさか渡辺がここまでできないのは意外だったけどな」
「だって…私告白なんてもちろん、男子ともほとんど話したことなかったくらいだよ?」
「そうなのか?お前ならクラスの中心とかでワイワイやってそうだけどな」
「普段いつも千歌ちゃんといたから…比企谷くんは告白されたことある?」
「あると思うか?…まぁ自分から告白して爆死したことならあるけどな: 」
「え、告白したことあるの!?その人どんな人!?」
「ち、近い」
「え?…ご、ごごごめん!」
「いや…………俺の告白した相手な、別にそのへんにいるような女子だったぞ。ただ誰にでも話しかけるようなやつで俺にも話しかけてくれてな。それを勝手に勘違いして振られただけだ」
「そっか……羨ましいなぁその人」
「…」
今のは聞かなかったことにしよう。意味を考えるなんて野暮なことはしない。
「どうしたらうまく出来るかな…?」
「…まぁ慣れるしかないな。……学校終わったあと時間あるか?自主練という手もある」
「え?私は大丈夫だけど…比企谷くんも手伝ってくれるの?」
「そりゃそうだろ」
「で、でも悪いよ」
「…こういうのはお互い助け合うもんだろ?こういう時今までなかったから知らんけど」
「……そうだね!それじゃあ比企谷くんが困った時は私が助けるよ!絶対に!約束!」
「…おう、頼むわ」
「えへへ!頑張ろうー!全速前進ヨーソロー!」
続く