二人に掛けられた魔法のお話   作:日々はじめ

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ガルパンの中に、氷川姉妹が、いる。百合をみたいぞぉ!
アッ この百合、「尊い」ッッボボボボボボボボボッボ!
たずけで!染まっ、ちゃボボボボボボ!
たすけて!かすみちゃん!た す けドボボボボボ!ボゥホ!
たすけてぇ!僕はまだッ死にたくないッ!


第二話 姉の秘密、妹の秘密

 チクタク、とその場の音を奏でていたのは時計の針の音だけだった。二人とも動きがなくあるのはただの頬の赤みだけ。

 

 「お、お姉ちゃん――?」

 

 日菜は口に出しながらも内心はかなり戸惑っていた。何故いきなりそのような発言をしたのか。

 

 紗夜もまたそうだった。口に出してしまったことを今更後悔はしないが何故好きという言葉を口に出したのか不思議だった。

 

 「何かしら?」

 

 「今、『好き』って」

 

 「ええ、そうね」

 

 紗夜によって肯定されたその言葉は日菜を喜びへと導いた――はずはなく疑惑へと

なった。

 

 何故いきなりそのようなことを紗夜が言ってきたのか。紗夜が日菜に対して抱いている思いは日菜が一番知っているつもりだ。だからこそ、好きという言葉に不穏なものだと感じ取ってしまった。

 

だが、そこは天才である日菜が数少ない情報から最も有力な情報を叩き出す。

 

もしかしてあの薬のせい?ううん、入ったように見えなかった…。いや、見えなかっただけで実際は数粒入ってた?しかも、お姉ちゃんの料理だけに入ってこうなったと…。

 

 「私も冗談を言うわよ」

 

 紗夜が突然、そう言った。冗談と、好きという言葉に嘘という仮面を被せたと。そう断言したのだ。紗夜の顔は平然としている。

 

 一気に薬の事は頭から吹き飛んだ。綿毛が風に吹かれて知らない異郷の地へと旅立つ感傷と同じ思いに浸された。

 

 日菜はその言葉で少し舞い上がっていた自分の羽を引き千切られた気分へと陥った。

 

 嘘という言葉を反芻させる。

 

 「そう…なんだ…」

 

 日菜の悲しい声音に反応したのは無情にも鳴り響く時計の音だけだった。

 

 ■■■

 

 氷川紗夜は自問と自答を繰り返していた。

 

 わ、私は何を言ってるの!?

 

 ただそれだけをずっと考えていた。しかし、紗夜は気付いていた。口が勝手に動いたと、ただし原因はすぐには分からなかった。首を傾げても一向に答えには辿り着く気配はない。

 

 しかし、やはり何故かあの小瓶が頭をチラつかせてくる。あれが元凶だと、答えだと、紗夜の直感がそう訴えてくる。

 

 ―――瓶の中の粉でこうなったとは言い切れないわね。いいえ、それどころかその可能性は最も低い。そのような薬を日菜が手に入れれるはずがないもの。ということは、疲労かしら?昨日は夜遅くまでギターの練習をしていましたし。

 

 紗夜が結論を出した。――疲労のせいだと、それで口走ってしまったと。

 

 しかし、どういえばいいかしら。日菜の手前、疲労という弱音を吐きたくないし、ということは誤魔化す?確かに、それが一番手っ取り早く確実ですね…。けれど、タイミングが――いえ、あるわ。日菜のことだもの、絶対このことについて追及してくる。

 

 紗夜の考えはすぐに正しいと証明された。

 

 「お、お姉ちゃん――?」

 

 来た。

 

 「何かしら?」

 

 「今、『好き』って」

 

 「ええ、そうね」

 

 紗夜は肯定しがらも内心かなりドキドキしてしまっていた。

 

 うぅ…。私の落ち度とは言え日菜に好きって言ってしまったわ…。前々から冷たい態度で接していた分かなり恥ずかしいですわね。今井さんには絶対に知られたくないですね。

 

 Roseliaのメンバーの一人である今井リサの顔を紗夜は思い浮かべた。あの人はこういう面白そうなことが好きというのが紗夜の感想であったからだ。

 

 だからこそ、このタイミングしか好機はない。

 

 「私も冗談を言うわよ」

 

 紗夜は淡々とそう告げる。その言葉にあからさまに顔色を悪くした日菜をみて自責の念に少しばかりか襲われたがしょうがないと腹を括った。

 

 紗夜はこの状況を切り抜けるため何一つ気付けなかった。誤魔化すためにその時の本音を言ってしまい口が勝手に動いていたことを。

 

 そして、自分から冗談と口にしたときその時は勝手に動いていなかったことを。

 

 ■■■

 

 「ごちそうさま」

 

 紗夜がフォークを皿に置きそう言った。日菜はそれを見ると続いて皿の中の食べ物を口に運ぶ。

 

 「お姉ちゃん、これ私が洗っておくから」

 

 日菜がそう言うと紗夜は少し考えるそぶりからいつもの表情に戻りじゃあ、お願いとだけ言って部屋に戻っていた。

 

 ――やっぱり、お姉ちゃん。何か隠し事をしてる?

 

 普通の人には見分けられない変化、しかし日菜だからこそ気付けた変化。長い間、憧れて追いかけてきた背中だったからこその答え。

 

 「ふぅ~」

 

 日菜はため息をつく。

 

 隠し事は一体何なのかなぁ…。――あれ?

 

 あれ?と日菜は突然何か大きな見落としをしていることに気付いた。

 

 なんだ、なんだ。何か、会話でとても重要な――――。

 

 あ。

 

 日菜はハッとした顔になる。その思い出した先は老婆とのあの小瓶との会話だった。

 

 『この粉を食べ物を混ざて相手に食べさすとその子の本音を聞き出せるのじゃ』

 

 聞き出せる。――。つまりは、そういうことなのだろうか。あの薬は相手からの質問に対して本音を答えるだけで話しかけられなければ嘘も付ける。そういう代物なのか、という点。それが日菜に与えた答え。

 

 紗夜は日菜の質問に対して冗談という偽りを持たせて答えていたと最終的に証明させた。けど、紗夜が冗談といったのは日菜が追及しなかったとき。紗夜が一度答えて、その次の答えた言葉。

 

 つまり、あの薬は一度本音を出した後次に連続で話す場合それは嘘でも構わない。

 

 しかし、それを紗夜が知る由もない。つまり、ほかの何らかの理由をつけて何故か誤魔化し、その場を凌いだのが妥当なのではないだろうか?

 

 じゃあ、あの薬は本物?たしか、小瓶には適量で一ヶ月の継続だったかな?勿論そんな説明書きのシールはすぐにはがしたけど、警察とかにばれたら面倒くさいことになるしね…。お姉ちゃんが誤魔化した理由、多分私に弱音をみせたくなかったとかそういうのかな?じゃあ、昨日は夜遅くまでギターの練習していたから疲労だと結論付けた。多分、そこらへんかなぁ。

 

 そこらへんどころかまったくもってその通りだというのは流石の日菜でも気付かなかった。

 

 「え。じゃあ――」

 

 

 

 『まぁ、私は日菜を好きだから』

 

 

 

 

あの言葉は本当、ということだ。

 

 

 

 

 

 いつもなら難問の答えに気付けただけで大声を上げていたが今回だけは違った。姉が妹を愛してくれていた。

 

 その事実に身を焦がすほどの熱と涙に襲われる。嫌われていなかった、嫌がられていなかった。愛してくれていた、好きでいてくれた。

 

 雲が晴れたその先の太陽の光が窓から差し込み日菜を照らす。後ろからは階段から降りてくる音。

 

 「日菜、そういえば」

 

 リビングに入ってきた紗夜が何かを伝えようとしたがすぐにその口を閉じることとなった。ゆっくりと振り返った日菜の頬を伝っているものを見てしまったから。それが私のせいかもという考えが頭に過ぎってしまったから。

 

 日菜は口を開き、

 

 「――私もだよ、お姉ちゃん」

 

 涙ながらの笑顔でそう言った。

 

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