花咲ちゃんがドストライクでした…ええ、ガチャは爆死しましたけども(血涙
はい、やっちゃったぜ。
思わず心の叫びが出てしまい、変な空気が流れている。一先ず深呼吸してからどう反応したらいいのか困惑しているリネアに弁明した。
「あー…うん、思わず?びっくりしちゃってな…」
「か、変わったリアクションをするのね‥‥えと…」
「シュスイだ。先程このスキエンティアに来たばっかり」
「なるほど…で、このギャング達を片付けたのは貴方なのね?」
地面に突っ伏して寝転がっているギャング達を指さす。あながち間違ってはいないが、多少警戒されているのでここは和らげようと試みる。
「ああ、右往左往してたところを襲い掛かって来たもんで…と、取り締まらないよね?」
「警吏だったら事情聴取はするけど、見た感じ冒険者のようだしいいわ。持ち出し禁止の魔導書を悪用しようとしたギャング達を捕まえる事ができたし」
それを聞いてほっと胸をなでおろす。とりあえず入国審査せずに島に入ってきたことはバレずに済んだ。
「おかげで仕事も早く済みそう…ってあれ?」
リネアはギャングが持っていた魔導書を拾い上げ、土埃を払うと眉をひそめた。
「この魔導書…上巻って…?下巻はどこよ!?」
あ〇ねるボイス、ありがとーございます。
こうやって焦る姿も見れるっていうのはやはり斬新だなとシュスイは心の中でほっこりしながら慌てるリネアを見つめていた。
「まさか追っている途中で…ああ、もう!どこにいったの!?」
「あのー…なんだったら探すの手伝おうか?」
そろそろ待ちぼうけされるのもあれなので、この場で慌てふためているリネアに尋ねた。手を貸すと言われリネアはキョトンとする。
「えっ?で、でも…」
「ままま、ここで出会ったのも何かの縁だ。力になってやるさ」
ドヤッとシュスイは胸を張る。そんなシュスイを見つめながらリネアは考え込むが、肩を竦めて苦笑いで頷いた。
「しょうがないわね…じゃあ協力してくれる?」
___
「へー…シュスイは冒険家希望なのね」
「ああ、冒険家の登録をしようと思ったんだけど島にギルドがなくてさ。登録をするために旅をしてたんだ」
シュスイとリネアは市街地の道を歩きながら駄弁り合っていた。たぬきちは二人の間をポテポテと歩きながらついて行く。
「スキエンティアにも冒険家ギルドがあるし、そこで登録もできるわよ?良かったらそこへいっ‥‥って、呑気に話してる場合じゃなぁぁぁいっ‼」
ノリツッコミのようにリネアははっと思いだして再び慌てふためきだした。
「うん、ナイスツッコミ」
「いやそうじゃなくて!?下巻を探してるのよ!?こう呑気に歩いてる場合じゃないでしょ!?」
シュスイはのんびりと歩きながら焦りながら慌て喚くリネアを宥める。
「そう慌てなさんな。ギャング達が逃げた道を辿って行けば道中に落ちてるかもよ?」
一応、流れは覚えている。上巻を持って逃げているギャング達をリネアが取り締まっている間、下巻を持って逃げようとしたギャング達はこの『オーバードライブ紅蓮』の一件の主要人物であるレクトに熨されている。恐らく、逃げた道を辿り二手に分かれた場所を見つければ下巻はそこにあるはずだ。あとは不機嫌になっているリネアが再びプンスカしないように時間内に見つけなければならない。
逃げた道を辿り、ひと気のない路地裏を突き進んでいく。そろそろリネアがこちらを疑いの眼差しで、ジト目で見つめてきている。早く見つかって…!
「だいたいそんなので見つかるの?根拠とかあるのよ?」
「ふ…冒険者の勘ってやつかな?」
「いや貴方まだ冒険者にもなってないでしょ…はぁ、本当に見つかるのかしら‥‥って、あれ?」
路地裏の分かれ道をちらりと見るとその道の先で倒れているギャング達の姿が見えた。
「あれは手配書にあった連中…!でも何でこんな所で倒れてるの?」
リネアは首を傾げ訝しげに倒れているギャング達の下へ。一方のシュスイは見つかって良かったと内心ほっとしていた。
「あった!丁度よく道に落ちてたわ!」
リネアは倒れているギャング達を無視して道端に落ちていた下巻を拾いあげ、嬉しそうにぴょんぴょんとしていた。
(あぁ…心がぴょんぴょんするんじゃ…!)
そんなリネアの仕草を見てシュスイはまるで心が浄化されるかのようにホッコリとしていた。そんな事をしていると、シュスイとたぬきちの腹の音が空腹を訴えるかのように虚しく響いた。その音は下巻が見つかって安堵しているリネアにも聞こえ、キョトンとしながら見つめてきた。
「もしかして‥‥お腹空いてるの?」
「えっと‥‥あー‥‥」
視線を逸らして誤魔化そうとするが、誤魔化す術も思いつかないので観念した。
「そうなんです…ええ、持ち金もないんです…」
シュスイはたぬきちと一緒にしょんぼりとする。空腹を我慢していたがやはり体は正直のようだ。腹の音は止む事無く再び虚しく鳴り響く。そんなシュスイとたぬきちを見てリネアはため息をついて肩を竦めた。
「はぁ…一応手伝ってくれたし、仕方ないわね。ほら、ついてきて」
リネアは苦笑いしつつこちらについてくるよう手招きをした。彼女の優しさに、心の広さにシュスイとたぬきちは喜び飛び上がる。
「おおっ…!リネアさん、ありがとうございます‼心がぴょんぴょんするんじゃーっ!」
「キュキューッ!」
「そういうのはいいから。っていうか心がぴょんぴょんって何?」
__
「ほら、ここに名前書いてサインしたら仮登録完了よ」
「‥‥あのー、リネアさん?ここ、冒険家ギルドですよね?」
シュスイ達は食事処ではなく、冒険家ギルドにいた。リネアが渡してきた書類を書いているのだがシュスイの空腹は限界に近づいていた。たぬきちに至っては白目になっている。
「それから暫くはここの宿で寝泊まりはできるよう手続きもしておいてあげたわ。あ、でもライセンス登録料に宿泊代が足されるから代金は間違えないように気を付けてね」
「あ、あのー…先にご飯じゃなくて?」
サインを終えて恐る恐る尋ねる。もしかしたら手続きが終わり次第、ここの宿内にある食堂でご飯にありつけるのかと思った、いや願った。シュスイは気力と根性と勢いで書き終えて受付に出す。
「こ、これでオッケー‥‥だよね?」
「ええ、それじゃあ行きましょ」
やっと食堂へと行けると思いきや、リネアはたぬきちを抱え、シュスイの腕を掴んでそのまま一緒にギルドへと出て道という道を進んで行く。
「えっ!?ちょ、食堂に行かないの!?」
「当たり前でしょ?それに、この辺りの御飯はあまり美味しくないんだもの」
学術都市スキエンティアは確かにあらゆる分野の知識のおかげで発展をしているのだが、遺跡の発掘や魔法の研究を第一にしており、食事はその後と考えられているため御飯はあまり美味しくないと云われている。メシマズでもありつけたいと悲しみの向こう側のような面でションボリしていると、リネアがクスクスと笑いながら宥めた。
「そうガッカリしなくても大丈夫。私のおススメのお店があるの。コーヒーがとっても美味しい所よ」
コーヒー…?シュスイはそれを聞いてもしやと思った。コーヒーが美味しくて、リネアが気に入る店で心当たりのあるとすればあの店しかない。シュスイはダラダラと冷や汗をかきながら引きつった笑みで遠い目で遠くを見つめた。
__
「着いたわ。あそこよ」
リネアは上機嫌で指をさす。それは市街地にある一見古めかしい一軒家だった。焙煎されたコーヒー豆の香りが道に漂う。
「あのー…あの店?」
「ええ!中がロックな感じで中々いいお店よ」
リネアはそのままシュスイの腕を引っ張って店内へと入っていく。中に入れば確かに古風な木造の雰囲気のみならず彼女の言う通りロックな雰囲気のある店内であった。
「ほへー…思ってた以上に良さそうだな…」
シュスイは店内に見とれて空腹である事を一時忘れる。平面の映像で見る同じような風景と実際にその眼で見る風景の違いと壮観さに見惚れていた。
「あの…いらっしゃいませ」
ふと店内を見とれていたシュスイに声が掛けられた。声のした方を見ると赤いジャケットを着た、目立つほど明るい水色の髪をした大人しそうな青年が申し訳なさそうにこちらを見ていた。
(ぬ…彼はもしや…)
シュスイはマジマジとその青年を見つめる。その青年はこの『オーバードライブ紅蓮』の主要人物であり、ヴァリアントという怪物に変身して戦う力を持つ青年、レクト・ラロである。シュスイにマジマジと見つめられレクトはおどおどと戸惑いだす。
「え、ええっと、ご、ご注文は何になさいますか…?」
(ぬー…思った通り、イケメンの波動を感じる!というかやっぱりイケメンじゃねえかっ…かっこいいなおい!)
「こら、お昼にしに来たんでしょ。ごめんね、マスター…ネヴィルさんはいる?」
リネアはレクトをマジマジと見つめているシュスイにチョップを入れ、カウンター席へと連れていく。厨房側には黒のジャケットを着た水色の髪の左目に眼帯をした壮年の男性がいた。
「やあ、こんにちは。今日も魔獣の調査かい?」
「いいえ、今日はコーヒーとランチを」
「‥‥」
シュスイは口をポカンと開けてネヴィルをじっと見ていた。そんなポカンとしているシュスイにネヴィルは不思議そうに首を傾げながらリネアに尋ねる。
「そちらの方はご友人かな?」
「彼は冒険家希望のシュスイとそのお供のたぬきち。まあ今日初めて知り合ったのですけどね」
「ど、どもっす…」
シュスイはどう反応したらいいか戸惑いながらもお辞儀をした。喫茶店のマスターことネヴィルさん、彼こそが『オーバードライブ紅蓮』の主要人物であり、街で騒がれている魔獣事件の犯人であり、ボスモンスター『イクニティケ』に変身するヴァリアントである。いきなり大ボスとご対面の事態にシュスイは困惑していた。
「マスター、コーヒーを2つとサンドイッチを。彼、お腹ペコペコなの」
「はっ、そうだった!空腹だったのを忘れてたーっ‼」
まるでそうであることを思い出させるかのように腹の音が再び鳴り響く。たぬきちは…もう既に床に突っ伏しており、そんなたぬきちの様子にレクトはあたふたとしていた。
「それは大変だったね。よし、それじゃあうんと美味しいのを用意するとしよう」
そんな二人の様子を見たネヴィルさんはにこやかにしながら厨房へと向かう。これでやっとご飯にありつけるとシュスイは安堵してテーブルに突っ伏す。
「あー…よかったー…」
「ふふふ、マスターの作るランチも美味しいのだけど、コーヒーはもっと美味しいの!」
リネアが楽しそうに話す様を見てこのお店をとても気に入っているという事とリネアの笑顔にシュスイは心がぴょんぴょんするんじゃと内心叫びつつホッコリしながら話を聞いていた。一方のレクトはというと、今も尚床に突っ伏しているたぬきちをツンツンしている。そして起き上がるたぬきちにビックリしながらも子犬の柴犬を愛でるかのようにもふもふと撫でてほっこりしていた。
するとコーヒーの香りといい感じに焼けたトーストの匂いがふんわりと漂う。美味しそうな匂いにシュスイの空腹は更にスピードを増す。
「はい、お待たせしました」
ネヴィルさんはにこやかにコーヒーを2つ、ふんわりとした玉子焼きを挟んだオムレツサンドと3枚のトーストしたパンの間にベーコン、半熟卵、トマト、グリーンリーフを挟んだクラブハウスサンドを持ってきた。シュスイは早速サンドイッチを頬張る。
「‼…ウンまああああああいっ‼」
あまりの美味しさに目を輝かせ心の底から叫んだ。思わず叫んでしまった事にはっとしてすぐに畏縮した。
「…あ、し、失敬」
「ははは、いいんだよ。相当お腹が空いていたんだね」
笑いながら満足そうに頷く寛大なネヴィルさんに感謝しつつコーヒーを飲んだ。
「っ‼美味しい…!」
喫茶店はあまり行かないし、缶コーヒーやインスタントコーヒーしか飲んだことがないため本場のコーヒーの味とかコクとか詳しい事はよく分からない。けれどもこのコーヒーはそれとは比べ物にならないくらいに美味しかった。驚くシュスイにリネアはクスクスと笑って頷く。
「でしょ?マスターの淹れるコーヒーは格別よ」
「買い被りすぎですよ」
ネヴィルさん謙虚だなぁ。あこがれちゃうなぁ。流石はプロの冒険家と言うべきか、年季というものが伺える。
たぬきちもレクトにサンドイッチを食べさせてもらってご満悦のようだ。一応これでこの日の空腹は免れた。
「シュスイ、今日は手伝ってくれたお礼に奢ってあげるわ」
「本当に面目ねえ。このお礼は必ず‥‥」
とはいうものの、肝心の資金は無いし稼ぎ所もない。冒険家仮登録というため本格的な依頼は受けることはできない。一時は何とかなったものの、また振り出しに戻ってしまう。何かいい方法は無いかとコーヒーを飲みつつ考え込んだ。
「ねえマスター、確かまだお手伝いさんの募集はしているのだっけ?」
ふとリネアはネヴィルさんに尋ねた。あれ?そんなストーリーってあったっけ?シュスイはピクリと反応してコーヒーカップを口につけたまま静止した。
「ええ、今も募集はしてますよ?ただ来てくれる人はいないんですけどね」
ネヴィルさんは苦笑いしながら頷く。え?この流れって‥‥ヤバない?シュスイは別の意味で額に冷や汗が流れだす。
「それじゃあネヴィルさん、シュスイをお手伝いさんとして雇ってくれませんか?」
「えええっ!?」
突然のリネアの提案にレクトやネヴィルさんが驚くのではなくシュスイ本人が驚愕した。そんなリアクションをするシュスイにリネアはジト目で見つめる。
「他に方法はないでしょ?それにしっかり働かないと冒険家の登録もできないわよ?」
「いやま確かにそうだけど…突然頼まれてもネヴィルさん困んじゃ?」
「いやいや、丁度欲しいと思っていたところだよ」
「早いですよ!?展開早いですよ!?」
即OKするネヴィルさんに思わずずっこけてしまう。たぬきちに至ってはやる気満々のようでフンスと胸を張る。色々とツッコミたかったがたぬきちが可愛いからいいや。
「レクトは学業で忙しいし、それにお店はお昼時は忙しいからね。人手が欲しかったんだ」
「あー…ほ、本当にいいんですか‥‥?」
「勿論だとも。シュスイ君、是非ともよろしく頼む」
「‥‥そ、それなら、よ、よろしくお願いいたします‥です」
何という事でしょう‥‥主役と大ボスのいる喫茶店でアルバイトする事になっちゃったよ‥‥これ、大丈夫かなぁ…
オーバードライブ紅蓮はヴァリアント押しのストーリーだけどもアメコミチックで好きですね。レクトはかっこいいし、リネアはすっげえ可愛いし
ストーリーはまるで…スパイダーマッ(以下略