冒険者共   作:サバ缶みそ味

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▲5 Brave the knights①

「‥‥レイジ、ジーク、いい知らせと悪い知らせがある」

 

 とある酒場にて、クオンはいささかくたびれた表情で二人に伝える。レイジは蕎麦を啜りながらクオンを見つめ、ジークは不思議そうに首を傾げる。

 

「どうしたクオン?何やら改まって深刻そうな顔して」

「ゾババババババ、ゾバババ」

「今の現状を二人に改めて伝えなきゃいけない」

 

 額にしわを寄せているクオンにジークは気さくに笑って肩をかける。持っているジョッキに注がれたビールをグイッと飲む。

 

「そう心配すんなって、路銀もまだあるし気楽に行こうぜ?」

「まあ気持ちは分かるよ?でもさ…」

 

 クオンはくたびれたように肩を竦める。これを説明するのは何回目か、果たして二人は本当に理解してくれているのか多少心配はしていた。

 

「俺達の乗ってた飛行船が娯楽の島ジョカには行かず氷の国に行くことが分かって途中下車したのはいいよ?結局十傑走りをして海をダカダカ走る羽目になったし…だけどさ」

 

 クオンは懐から地図を取り出した。二人に分かるように赤いマルを島に描く。

 

「自分達が入る場所はここ。それで娯楽の島ジョカはこっち‥‥どんどん離れていってるんだけど?」

「わーお…結構離れてんなぁ。それが悪い知らせか?」

「ゾバババーバ、ゾババババ」

 

 それが悪い知らせなら大したことない。ジークは心配しすぎだとクオンを宥める。しかしクオンはジト目で首を横に振る。

 

「それが悪い知らせだったら有難かったよ‥‥この島ただいま戦争中で飛行船は出ないし、飛行船が出たとしてもここではクジャには行かないんだってさ」

 

「な、なにぃ!?」

「ゾババババッ‼」

 

 一応それでも大した事ではないかもしれないがジークは驚愕し、レイジは蕎麦を啜り続けた。

 

「じゃ、じゃああのセクシー歌姫のファルファラさんを崇めることができねぇじゃないか!?」

「ジーク?目的もう忘れてない?俺達そこに行って稼いで冒険家になるとかのはずなんだけど?」

 

「ゾバババゾババ」

「レイジ、お前はいい加減蕎麦を啜ってないで何か喋ったらどうだ?」

「‥‥ジークのバーカ」

「あぁ!?お前、一回表出ろ‼」

 

「はいはい、二人とも喧嘩しないの」

 

 睨み合う二人をクオンはため息をついて宥めさせてから話を進める。悪い知らせはそれだけではない。

 

「それに…今の資金じゃ飛行船に乗れるお金もない。どっかの誰かさんがよく食べてよくお酒を飲むんだからさぁ」

 

「‥‥うーん、何の事かなぁ?」

「ゾバババ…」

 

 ジト目で見つめるクオンに対しジークは口笛を吹きながら視線を逸らし、レイジは蕎麦を再び啜り始める。今の現状はあまりよろしくない。宿屋の代金は払えるが飛行船が出れない以上ここで長居をするとよく食べる二人の食費であっという間に溜めた資金は底を尽きてしまい、冒険家登録もまた遠のいてしまうだろう。心配する二人はようやく事の深刻さを理解してくれたようなのでクオンは一息入れて話を進める。

 

「悪い知らせはこれでお終い。じゃ、次はいい知らせ」

 

「な、なんだ?カジノで大勝ちしたとか?」

「ジークじゃないんだから…さっきこの島は戦争中って言ってたでしょ?」

「ゾババーバ」

「レイジ、そろそろちゃんと喋ろうね…?」

「‥‥ジークのバーカ」

「なんだとこの野郎‼」

 

「だーかーら‼喧嘩しないで話を聞く!」

 

 お互いの顔を抓り合う二人にクオンはチョップを叩き込む。これ以上喧嘩したら今度はクオンが本気に怒ってしまう。ジークとレイジは正座をして話を聞くことにした。

 

「た、確かにそう言ってたな…それと何か関係あんのか?」

「実はこの辺りで傭兵の募集があってさ、俺達も傭兵として参戦することしました!」

 

「‥‥マジで?」

「よっしゃあああ!」

 

 クオンの大胆な決断にジークはポカンとし、レイジは大喜びで跳ね上がる。ようやく話に乗った二人にクオンはノリノリで話を進めた。

 

「まだ名もない俺達だけど…ここで活躍をすれば注目されるし直ぐに冒険家登録もできる!」

「傭兵ってことは強えぇ奴と一戦できるってことだよな!丁度退屈してたところだぜぇ!」

「し、しかしいいのかクオン?傭兵と言えど戦争に参戦するんだぞ?」

 

 ジークは焦りながらクオンに尋ねる。戦争と言えど流血沙汰になるしいくら自分達が強くたって怪我をする可能性もある。

 

「大丈夫。殺さないようにのめしてあっという間に片付ければいい。それに俺達が傭兵になるところの陣営は市民を大事に考えるしっかりした人達だし問題は無いと思うよ」

「それならいいけどな‥‥ま、もしもの時はさっさとトンズラすればいいか」

 

 それならば多少は問題ないだろう。ジークはクオンの考えに乗ることにした。

 

「そうと決まればすぐに俺達の雇い主のところに行くか。もしかしたら傭兵の中に美女がいるかもしれない…‼」

「急ぐぜ‼俺の活躍が、ファイトが、俺より強い奴が呼んでるぜーっ‼」

 

 ジークとレイジは意気揚々に颯爽と酒場から駆けて出て行った。ポツンと残されたクオンは走っていく二人を見てため息をついた。

 

「依頼の報酬の話を忘れたけど…まあいっか」

 

___

 

「ところで、なんでこの島は戦争してんだ?」

 

 傭兵を募集していた傭兵を募集していた拠点の前でレイジはふと気になってクオンに尋ねた。

 

「この島…ま、島内で二人の領主が争っているんだ」

 

 クオンはエイジに分かるように説明をする。今自分達がいる島は『技巧と製造の島』と呼ばれ、船や飛行船の造船を行っている東側、銃器や兵器の生産製造を行っている西側に分かれている。東西それぞれに領主がおり、島の管轄を行ってきていたの。しかしある日の事、地領の境目にある鉱山で『希少金属』のルーンが採掘された。そのルーンは船の製造や兵器の製造にかなり適しており需要があるのだがそのルーンの権利を巡って対立、領主同士の争いが起きてしまった。

 最初は領主内での兵士達を使って争っていたがなかなか決着がつかず、長きに渡って泥沼化。両者疲弊してしまって共倒れし兼ねない。東側の領主は帝国に、西側は連邦に救援を求めたのだが、帝国も連邦もそれに対して何も答えなかった。そこでこれ以上兵士を疲弊させないために両陣営、傭兵を使って争う事にし、傭兵を募集することになったという。

 

「つまりは…強い奴と戦えるってことだな!」

「ったく、人の話を聞いてたか?これだからお前は脳筋だなぁ。兵士の代わりに傭兵を雇って戦わせるってことは勝てば大量の報酬がもらえるってわけだな?」

 

「まあそういう事…因みに俺達は東側の陣営に入ることにしてる」

 

「なーるほど。俺達が大活躍間違いなしってこったな‼」

「ところで雇われる傭兵の中に美女とかいた?」

 

「うん、二人とも真面目に話を聞いてないでしょ?」

 

 真面目に聞いておらずノリノリな二人にクオンはため息をつく。いつもの事だと気を取り直し門前に立っている衛兵に話をして拠点へと入って行った。

 

「‥‥なあクオン、ちょっとおかしくねえか?」

 

 陣営に入って領主のいるテントに向かって歩いてしばらくしてまずジークが違和感に気づく。兵士達のテントはいくつかあり、通りかかる兵士達には違和感がないのだが、自分達の他に傭兵らしき人物が1人も見当たらない。

 

「あ?騙し討ちか?それでも蹴散らしてやんよ!」

 

 戦う気満々でシャドーボクシングをするレイジを抑えてクオンも辺りを見回す。

 

「俺達を狙うような殺気は感じられないし…俺達が来るのが早かっただけじゃないか?ささ、領主さんに挨拶しに行こう」

 

 クオンは気にせずに領主がいるテントへと向かう。クオン達はテントに入ると、赤い服を着てちょび髭の生やしたふくよかで温厚そうな男性がクオンを見ると待ってたと言わんばかりににこやかに手を振る。

 

「やあやあクオン君、来てくれると信じていたよ…!」

「お待たせしました、ママーリオさん。話していた俺の親友達を連れて傭兵として雇われに来ましたよ」

 

「…なんか某配管工みたいなおっさんだな。おっさん、キノコ好きか?」

「しっ!レイジ、余計な事は言うな!」

 

 ジークはエイジの口を塞いで苦笑いをして誤魔化した。そんな二人を見て東側の陣営の領主は満足そうに頷く。

 

「頼もしい仲間達だね。クオン君達が加われば心強いよ」

 

「というかクオン、どうやってこの人と親しくなったんだよ…?」

「え?あー…キノコ狩りをしている最中に魔物に襲われていたところを助けたんだ。そこから傭兵を募集の話を聞いたんだ」

「ほらやっぱりこのおっさんあの配管工じゃねえか。キノコ好きなんだろ」

 

 いつの間に、とジークはやれやれと肩を竦める。クオンは改めて領主に尋ねた。

 

「ところでママーリオさん、ここに来る傭兵は俺達だけみたいなんですけど、何かあったんですか?」

 

「ああその事なんだけど‥‥実は」

 

 

「おいおい、なんだこりゃぁ?傭兵を募集してるって聞いてきてみりゃ…たった3人しかいねえじゃねえか」

 

 領主の話を遮るように黒い鎧を纏った茶髪で目つきの悪い青年がづかづかと入って来た。その青年の後ろから狼の獣人、オカマ、チンピラ、忍者など異色な連中がぞろぞろと入って来た。青年はジロリと狼の獣人を睨み付ける。

 

「おいチャック…他の傭兵団もぞろぞろいるって聞いてたのにどういう事だ?」

「おかしいっすねー‥‥でもいいじゃないっすか、アニキが大活躍できて手柄を独り占めできるっすよ」

 

 気さくに笑うチャックに青年は大きくため息をつき、気を取り直して領主にドヤ顔をした。

 

「運が良かったな、俺達を雇えば大勝ちだぜ?こんなチンピラ3人組よりも十分に働く。その分の報酬も用意しとけよ?」

 

「オイコラ‼だれがチンピラだぁ?てめえの方がチンピラに見えるんだがなぁ?」

 

 むっとしたレイジがガンつけて青年に歩み寄る。青年もレイジにガンつけて睨み付ける。

 

「ああ?お前、俺が誰か知って言ってんのか?」

「知らねえなぁ‼お前なんざよりも昨日喰った晩飯の方がよーく知ってるぜ」

 

「だったら今知っとけチンピラ。俺はリアム・マクラレン。傭兵団『チェインド・ウィング・ナイツ』の団長で伝説の男だ‼」

「知らねえなぁ‼てめえが伝説の男なら、俺は超伝説の男だ。そのなんとか団とかマジで知らねえな!」

「俺達を知らないたぁどこの田舎者だチンピラ‥‥!」

「田舎者はてめえじゃねえのか、このカッコつけマン…!」

 

 リアムとレイジはガン飛ばし合いながら殺気立つ。一色触発な状況にチャックとクオンは慌てて二人を止める。

 

「こらレイジ、折角味方になってくれるんだから威嚇したダメだよ。ど、どうもすみません…」

「いえいえ、お互い様っすよ‥‥アニキもすぐにがっつかないでくださいよ…!」

 

「いやー…バカが増えたなこりゃ」

 

「「誰がバカだ‼」」

 

 ジークの一言にレイジとリアムがすぐに怒りだす。殴り掛かりそうな勢いの二人をクオンとチャックが宥めさせて話を再開する。

 

「今回傭兵として参戦することになったクオンだ。こっちはジーク、そんでこっちはレイジ」

「なんてこった…美女が1人もいねぇ‥‥」

「オイコラ!クオンを馬鹿にしたらマジで殴るからな!ジークは思いっきり馬鹿にしていいけど!」

 

 取っ組み合いを始めたジークとレイジを見たリアムはジト目でクオンを見つめる。

 

「たった3人で大丈夫なのかよ‥‥?」

 

「心配するこたぁねえぜ‼俺達を例えるなら張飛と関羽と雲長みたいなもんだからよ!」

「おい劉備を省いてやるなよ」

「いや何言ってんのかわからねえんだけど」

 

「ま、まあ見た目以上の働きはするから任せてくれ…それでこの陣営で雇われた傭兵は俺達しかいない事について教えてくれませんか?」

 

 クオンは改めて領主に尋ねた。今の現状からして傭兵は自分達3人とリアムが率いる傭兵団だけのようだ。領主は一度咳払いして深刻そうに伝える。

 

「実は…私が傭兵を募集したその直後に西側の領主が倍の額の報酬で傭兵を募集し、ここに来るはずだった傭兵達にも伝わり、皆西の陣営へと行ってしまったのだ」

 

「はぁ!?そんな話俺達に来なかったぞ!?」

 

 それを聞いたリアムは憤慨した。西側からその話をされていないという事は相手にされなかったという事。自分達は無視されたことに腹を立てた。

 

「ちなみにその報酬の内容は…?」

「今私が払える報酬の3倍、敵将を討てばボーナスが追加される」

 

 なんとも太っ腹のことか。それじゃどの傭兵達も首を縦に振ってそちら側につく。多くの数の傭兵達は敵としてついてしまった。戦況は東側の陣営が苦戦を強いられるだろう。だがエイジはそんな事は気にせずフンスと張り切って不敵な笑みを見せた。

 

「はっ、そいつはおもしれえ!要は纏めてぶっ飛ばせばいいんだろ?不利な状況を翻してやるのは楽しいしな!」

 

「なんだ、チンピラのくせに分かってるじゃねえか。こんな状況をぶっ飛ばすのは確かに悪くねえ!」

 

 リアムも同じように好戦的な笑みを見せた。よく見ればリアムの部下達も同じようにこの状況を楽しんでいた。流石はどんな不利な状況でも恐れも知らずに乗り越える傭兵団達だとクオンは感心する。

 

「そうと決まれば配置を決めよう。領主の守りと攻める側、それから斥候かな」

 

「ならお守りは〈ジジイ〉と〈カカシ〉で十分だな。後は此処の兵士達だけで何とかなるだろ」

 

 一般市民のような恰好をした老人とがたいのいい執事のような男性は了解したと頷く。

 

「なあなあクオン!先陣は俺に任せても大丈夫だよな?派手に暴れるぜ!」

「おいこらチンピラ。てめえだけに突撃させるかっての。派手に暴れるのは俺の特権だ」

 

 主役は俺だと言わんばかりにレイジとリアムは睨み合う。また喧嘩しかねないのでクオンとチャックが再び二人を宥めさせる。

 

「レイジ、気持ちは分かるけども今回は皆で協力しなきゃいけないんだ。だったらリアムと一緒にどちらが派手に暴れるか競えばいいだろ?」

「なるほど!クオン、お前天才だな!」

「なんだ、お前随分と冴えてるじゃねえか!」

 

「…クオンさん、なんかすんませんっす」

「ははは、もう慣れっこですよ…」

 

 クオンはくたびれたように遠い目をしてため息をつき、そんな彼の苦労にチャックは苦笑いをする。どちらが派手に暴れるか睨み合うレイジとリアムにジークはやれやれと肩を竦める。

 

「だったらバカのお守りは俺に任せとけ」

 

「「誰がバカだコラ‼」」

 

「はいはい、二人とも直ぐに怒らないの」

「それじゃあアニキの止め役は〈フクロウ〉さん、サポートを〈ムカデ〉さんお願いするッす」

 

「また俺サポートかよ!?絶対にサポートいらないって‼」

「まあまあ、そんなこと言わずによろしくお願いしますよ〈ムカデ〉さん」

 

 

 紳士のような恰好をした〈フクロウ〉は嫌そうな顔をする忍者の〈ムカデ〉ににこやかに笑って肩を叩く。

 

「残りの野郎共は俺とこいつと共に派手に暴れるぞ」

「おっし、俺についてこい‼‥‥で、クオンはどうするんだ?」

 

 残されたクオンは何をするのかとエイジはハテナと首を傾げる。残された役柄は斥候しかないが、この面子で斥候をする必要はないと疑問に思った。

 

「ちょっと気になったことがあってさ‥‥『希少金属のルーン』について西側はどう動いているのか調べたいんだ」

 

 この島で発見された『希少金属のルーン』、どんな効果を持つルーンなのか気になるが気にかけているのはそれだけじゃない。

 

「西側は兵器を製造を主流にしている。内密にそれを回収して兵器を開発しているかもしれないし‥‥連邦が動いている可能性もある」

「確かに、両陣営は帝国と連邦にこの事を知らせた…結局両者とも動かなかったが、連邦は裏で動いている可能性もあるな」

 

 もし西側の陣営に連邦の軍が来てしまったらこちらが更に不利になる。更には西側は兵器を製造する技術もある。『希少金属のルーン』を使った兵器が出てきたら非常にマズイ。下手すれば帝国も動いて大きな戦争になりかねない。

 

「もしそうなったら止めないと」

 

「だが、お前ひとりで大丈夫なのか?」

「心配はねえぜ!クオンは強い。なんたって俺達の財布も掴んでいるからな!」

「そうだ、俺達の食費もしっかり管理してるからな!」

「よ、よせやい。照れるじゃないか…」

 

「そこ自慢するところでも照れるところじゃねえだろ…」

 

 果たしてこの3人組が加わって大丈夫だろうかとリアムは少々心配になってきた。




 名声会のミラさん、初期のころ比べるとすっごく色っぽいっすね。
 なんかこう…大きくなった?どこかって?そりゃあもう、ねぇ…(ゲスな笑み
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