色々とあったけれども漸く白猫を久々に手に取ることができました。
帝国戦旗Ⅱが始まっているようで‥‥アイシャ、欲しいですね。ガチャ爆死しましたけども(血涙)
「だーかーら‼てめえは下がってろつってんだろ!」
「あぁ?そういうてめえはのんびり塹壕でも掘っとけ!」
前線にて、『チェイン・ウィンド・ナイツ』の団長であるリアムと前線を任されたレイジはお互いにガンを飛ばし合っていた。かれこれ長い時間罵り合っているようで、そんな二人にはお構いなしにジーク達はせっせと塹壕を掘っていた。二人の何時までも止まない喧嘩にジークは呆れ気味にため息を漏らした。
「なんというか‥‥悪いな」
「いいっすよ、ジークさん。お互いに助け合っていけばどうにかなるっす」
団員の一人、チャックはいつも怒声を飛ばすリアムがいるこの傭兵団では日常茶飯事だと苦笑いをした。しかしいつになったら喧嘩が終わるのか、そろそろ真面目に作業に入ってほしいとジークはついには取っ組み合いしだしたリアムとレイジを見つめる。
「本当にバカが二人に増えた気がするぜ。しかし‥‥流石戦い慣れているのだな」
戦いに備え塹壕を掘り、簡易的な物ではあるが柵を組み立てたりと少数の団員でありながらもあっという間に作り上げていく速さと手際の良さには感心した。
「というか傭兵団よりも大工をやった方が儲かるんじゃねえのか?」
「あははー、よく言われてるっすねぇー‥‥」
「誰が大工だゴラ‼つうかチャック!てめえもさっさと塹壕を掘れ‼」
大工というワードを聞いてすぐに反応したのかリアムが怒号を飛ばす。チャックは慌てて塹壕掘りの作業に戻るがリアムはまたエイジとの取っ組み合いが始まった。
「クオンがいたらなぁ…」
ジークは大きくため息を漏らす。いつも自分とエイジの喧嘩を止めてくれるクオンの大変さが何となくわかったような気がした。もしここにクオンがいてくれていたら多少はまとまっていただろうか。肝心のクオンは斥候として西陣営の地区へと潜入している。クオンに負担をかけまいとここは自分が頑張らねば、とジークは重い腰を上げた。
ふと、チャックが何かの気配を察したのか犬耳がピクリと動くと顔を上げて匂いを嗅ぎ辺りを見回した。
「団長!敵の軍勢が近づいてきているっすよ‥‥‼」
「ったく、漸くか‼待ちくたびれてたぜ!」
リアムは好戦的な笑みを見せて黒い剣を引き抜く。チャックの察した通り、荒れ地の先に土煙が上がっている。かなり遠いが目を凝らせば鎧を纏い、剣や斧や鉄槌を携えて駆ける者、筋骨隆々で己の逞しい肉体を見せて自分の身丈よりも大きい剣を翳しながら走る者、木の槌を持って走るゴリラ等々数多の武装した集団が押し寄せてきていた。
数はこちらよりも圧倒的に多い。しかしこの数を相手にリアムらチェインド・ウィング・ナイツの傭兵達は恐れるどころか寧ろ状況を楽しんでいた。
「いいか野郎共‼相手は完全に数が多い事で油断している!慢心しきったあのクソ野郎共をぶっ潰すぞ‼」
「おおおおおおっ‼」
リアムの檄に傭兵達は雄叫びを上げる。傭兵一人一人、誰しもがこの戦いに負ける気がしない、そんな強い意志が見えた。士気が昇っているリアムら傭兵達を見ていたジークは頼もしさと彼らの強さに笑みをこぼす。
「さっすが、強い連中だ‥‥俺らも負けていられねえな」
心なしかエイジが好戦的になるのも何とく頷ける。ここで後れを取ったらクオンまでもが笑われる。自分もれイジもここで彼らに負けない程の活躍をしなければ。と、思っていたがジークは咄嗟に気づいた。
「おい、あの脳筋バカ一号は何処行った?」
先ほどまでリアムと喧嘩していたレイジの姿がない。ジークの一言にリアムも気づいた。何時から姿を消していたのか、誰しもがキョロキョロと見回すがチャックがどこか遠い眼差しで指をさす。
「あのー‥‥レイジさんなら『いやっふぅぅぅっ‼』って叫びながら突っ走って行ったッス‥‥」
チャックが指さしたその先は、遥か向こうから押し寄せてくる西陣営の敵勢だった。ああやっぱりやりやがった、とジークは顔を片手で覆う。
「はあああああっ!?あんの野郎ぉぉぉぉっ‼」
リアムは呆気に取られていたがすぐさま怒声を響かせた。
____
「イィィィィィッヤッフゥゥゥゥゥっ‼」
レイジは上機嫌に一気に駆ける。その先には数多の武器を携えた屈強な姿の傭兵達。単騎でこちらに向かって駆けてきているエイジの姿に一瞬目を丸くするが、たった一人で何ができると蔑む笑みを見せて武器を構えた。
武器も無しに走るレイジを一瞬で血祭りにあげんと各々の武器を振り下ろすが、レイジは一歩踏み入れる前に高々と跳び上がった。
高く跳んだエイジはニッと好戦的な笑みを見せて拳を強く握り絞める。その拳には山吹色の気の光が灯っていた。
「パワァァァァァァッゲイザァァァァッ‼」
拳を思い切り地面へと思い切り叩き付け、巨大な光の柱が立ち上りだした。爆発的な勢いで放たれた光の柱に巻き込まれた敵勢は空高く吹っ飛んでいく。レイジが繰り出したパワーゲイザーに目が点になった敵勢は動きが止まり、エイジは指をクイクイ動かして挑発する。
「へへっ、かかって来いよ。派手に楽しもうぜ?」
相手はたった一人、数で押せばすぐに潰せる。敵勢は勢いを上げてエイジへと襲い掛かっていく。レイジは待ってましたと言わんばかりにニッと満面の笑みを見せた。
「さあ楽しもうじゃねぇか!」
正面から大剣を振り下ろして来た巨漢には刃をひらりと躱すと拳に気を込めて飛び掛った。
「バーンナッコォォォッ‼」
気の込めたストレートを腹部に力強く当てて殴り飛ばす。横から槍で突いてきた相手には軽くジャンプして槍の柄に乗って躱す。
「飛燕疾風脚っ‼」
低空の飛び蹴りで顔面に当てて倒し、その勢いで後方へと着地する。その隙を狙ってハンマーを振り下ろして来た相手には回るように攻撃を避けた。
「クラックシューット‼」
その勢いで前方へ跳んで足を振り下ろし浴びせ蹴りで蹴り倒す。今度は数で押し寄せてくるとレイジは不敵な笑みをこぼし、両手の拳に気を込める。
「トリプルパワーゲイザーッ‼」
両手で三度地面に拳を叩き付け、3つの気の柱を放つ。放たれた気の柱に巻き込まれ数多の敵勢は高々と吹っ飛んでいく。押してはいるが数が多い。レイジはこの状況を楽しみ、ニシシと笑って拳を構える。
「やっぱこれだけは言わねえとなぁ‥‥武器を持った奴が相手ならry」
「ラースブレイザァァァッ‼」
エイジが気を溜める前にリアムが割り込み、ソウルを込めた剣を叩き付けて放たれた赤い剣閃に敵の傭兵達が吹っ飛んでいく。レイジはポカンとしたが、すぐさまリアムにプンスカと怒りだした。
「おいいいっ!?お前なに邪魔しやがるんだコノヤロー‼」
「それはこっちの台詞だクソ野郎‼てめえだけ活躍してんじゃねえよ‼俺の手柄を横取りすんな!」
「はあぁ!?お前こっから俺が覇王翔吼拳をぶっ放そうとしてカッコよく決まる所だったんだぞ‼」
「知るかバカ‼てめえは俺のおこぼれでも漁っとけクソ野郎!」
「あぁ!?お前は後から来たんだろうが!出しゃばんな!」
敵をほっといて取っ組み合う二人に敵の傭兵達はいつ襲い掛かればいいか伺いながら囲っていく。囲まれた事に気づいたリアムとエイジは背中合わせになって構えた。
「決めた。お前よりも多くメッチャクチャぶっ倒してやる」
「何をぬかしやがる。俺は伝説の男だぞ?てめえなんぞよりも多くぶっ飛ばしてやるぜ‼」
お互い不敵な笑みをこぼし、一気に敵の傭兵達に飛び掛った。
「俺の足を引っ張んじゃねえぞ自称伝説(笑)野郎‼」
「てめえこそ俺の邪魔をすんじゃねえぞ脳筋金髪チンピラ野郎‼」
レイジはパワーゲイザーや竜巻旋風脚などの大技で相手をぶっ飛ばしていき、リアムはラースブレイザーやイグニッションといったソウルを込めた剣技で相手を次から次へと倒していく。
「無茶苦茶だなあのバカ達‥‥」
エイジとリアムが大暴れしている様を遠目で見ていたジークは肩を竦める。ジークと同様にチャックら傭兵団の皆もポカンとしていた。
「レイジさん‥‥空中で蹴りながら回転して飛んでるってどうやってるんっすか?」
「ツッコんだら負けだ。あいつらが奮闘してりゃ俺達の出番は無さそうだなこれ」
あの二人が前線で敵勢を一方的に蹴散らしているためこちらに敵はこなかった。被害は最小限に抑えれたどころか全くない。
「これじゃあ塹壕掘った意味っすね‥‥」
「ま、まあ無いよりはマシじゃねえのか?」
ジークとチャックは振り返って後ろにある幾つも作った塹壕と柵を見てため息を漏らした。折角汗水流して備えて大目に作ったのが水の泡となってしまった。
レイジとリアムの奮闘或いは大暴れしたおかげか、戦いは半日で終わった。相手の圧倒的な力に押され、数倍の数のいた敵勢は烏合の衆となり一目散に撤退していった。夕陽に照らされ戦場には粉々に砕かれた様々な武器の残骸といつまでも口喧嘩をし続けているエイジとリアムが残った。
「ぜってえてめえよりも多くぶっ倒した!俺の方が何百枚も上手だってことだこの野郎‼」
「ぬかせバカヤロウ‼俺は数を数えてたぞ!俺の方が何千枚も上手だつってんだろ!」
「なにをォ?お前が1人倒した時には俺は2人倒してたぞ黒光り野郎‼」
「あぁ?じゃあ俺は3人だこの脳筋パツキン野郎‼」
「ざんねーん。俺は4人ですー!」
「いつまでしょうもねえ喧嘩してんだ、きりがねえぞ」
「団長も、力を合わせて勝ったんだから。気にしすぎっすよ」
いつまでも止まない罵り合いにジークとチャックが割り込んだことで何とか喧嘩は終える事ことができた。一応こちら勝利だ、リアムは納得はしてなさそうだったが面倒くさそうに頭を掻いて剣を鞘に納めた。
「ったく、今日は引き分けにしてやる。次こそ勝負つけっぞ」
「おう、ぜってえ負けねえがな。というか明日もあんのか?」
「この戦いでは俺達の勝ちだ‥‥後は相手が次はどう出るかだ」
圧倒的な戦いで敵陣、つまりは西陣営の連中はどう出るかが問題だ。恐れをなして降伏か、或いはこちらの力に怯むことなくまた戦いを挑んでくるか。
「普通ならこの戦況ならすぐに相手は降伏して、後はお上の連中が上手くやって丸く収まるんだけどなぁ‥‥」
相手の手の内はまだあるのか、こればかりは分からない上リアム達も下手に手を出すことができない。後手に回ってしまうが様子を見るしか方法がないようだ。一先ずお預けということでエイジはムスッとはぶてた。
「出方が分かればすぐにのり込んで大暴れしてやんのによー…」
「エイジ、俺らは侵略するわけじゃねえんだぞ?これぐらいは我慢しとけ」
「わーったよ‥‥ま、どうこようが俺がぶっ飛ばしてやんぜ‼」
上機嫌にシャドーボクシングをするレイジにまだ戦うかと、ジークは肩を竦める。どれだけ脳筋なことか。
「斥候…クオンの奴が敵の情報を探ってくれれば助かるのだがな」
「大丈夫だ、クオンなら上手く熟してくれるさ」
「随分と信頼してるみてえだな‥‥」
ジークとレイジの喧嘩を諌め、二人のまとめ役を担っているクオンをかなり信頼している様にリアムはクオンがそれ程の、それ以外の実力を持っているようで興味を抱く。
「なんたって俺達の財布と胃袋を握ってんだからな!腹減ったなー、クオン早く帰ってきてくれねえかなー」
「ああ、早く戻って打ち上げしたいぜ‼沢山飲めるし、今度こそレディを呼んでパーリナイだっ」
これはクオンを信じているのか、はやく食べてお酒を飲みたいだけなのか、ますます彼らの事が分からなくなってきた。
____
「潜入は順調だな‥‥」
夜の暗闇の中、クオンは西陣営の土地にある領主のいる砦に潜入していた。西陣営の情報とこの島内で紛争が起きた原因である希少金属のルーンについて調べる為気配を消して砦内の庭園に身を潜めている。流石は兵器の製造生産を主に置いている西側のことか、機関銃や大砲、バリスタの砲台といった兵器があちこちに設置されている。
「しかし随分と変わった場所に砦を建てたもんだよな」
今いるこの砦は希少金属のルーンが発掘された鉱山に近くに建てられていた。ここからジーク達のいる東側の陣営に戻るには苦じゃない距離で、一気に駆けて行けば半日で辿り着ける。いち早く希少金属のルーンを手に入れたい為か、或いは密かに採掘しているのかもしれない。
「そういえばここまで来る道中も妙だった…」
ここまで来る道中もこの砦に潜入してからもクオンは妙に感じていた。砦の周りは石造りの小さな集落のような建物や工場らしき建物が点在していたが人が住んでいるような気配はなかった。更にこの砦の中も見張りや衛兵の数が少ない。おびき寄せる罠か、それとも本当に油断しているのか、はっきりしない。
「慢心し来ているなら都合がいいんだけど、油断はできないかも」
向こうではエイジ達が西陣営の傭兵達と戦っている。もしかしたらもう終えているかもしれない。今度は自分が頑張る番だ。クオンは身を隠していた茂みから出て、見つからないように慎重かつ俊足に砦内へと潜入していく。
西洋風の屋内だが、やはり中も衛兵の数は数える程少ない。相手に気配を悟られないように気配を消す様に駆け、耳を澄ませながら領主のいるであろう部屋を探す。
「ん‥‥ここら辺か?」
クオンは誰かの話声を聞き、暗い廊下を進んでいく。声の下へと辿り着くと、誰も来ないことを確認して石壁の隙間に耳を当てる。
「――――さん、貴方の送ってくださいましたあの『兵器』は大量生産することができましたよ」
誰の名前は聞き取る事はできなかったが、この部屋に間違いなく西陣営の領主がいる。恐らく『伝達のルーン』を使って誰かと会話をしているのだろう。
「貴方の読み通り、希少金属のルーンは最適だったようで―――おかげで『高性能型』『大型』の製造も無事に成功ですよ」
どうやら領主は誰かから送られた兵器の設計図を基に希少金属のルーンを使い兵器を秘密裏に製造していたようだ。満足げに語る様子からしてかなりの数が製造されているかもしれない。しかも『高性能』やら『大型』やらと何やらこちら側にとってあまりよろしくない状況になり兼ねない内容が伺える。
「―――――ええ、雇った傭兵共は囮‥‥相手は油断していることでしょう。明日の実戦に投機で殲滅させてみせましょう。この兵器さえあれば帝国にも連邦にも負けない」
この領主は帝国や連邦を敵に回すつもりか。まさか別の勢力にその兵器とやらを売り込むのかもしれない。
(帝国や連邦じゃない、第三者‥‥もしかして…‼)
クオンは一瞬嫌な予感がよぎったが、今はそれどころじゃない。これを伝えなければエイジやジーク、リアム達が危ない。ここからすぐに離れようと一度離れようとしたがふと立ち止まる。
(いや、ここで俺が止めるべきか‥‥!?ここで元凶を止めることができたら‥‥)
ここで領主の下へ乗り込んで片付ければ、この紛争が終わるはずだ。どう動くべきかクオンは迷いながらも腰のホルスターに入っている六連装大口径リボルバー『ブルーローズ』へと手を伸ばす。
その刹那、背後から殺気を感じた。振り向けば暗闇の中からこちらに向かって幾つもの棘がついた大きなメイスが振り下ろされていた。
「ちょっ、マジ!?」
クオンはギョッとして急ぎ身を躱し、空を切ったメイスは勢いよく石壁を叩き砕いた。砕け崩れる音にその部屋いた領主が驚愕の大声を上げる。クオンはその喚き声よりも暗闇の中に潜む何かに驚きを隠せなかった。
(気配を察せなかった‥‥!?)
普通なら誰か来る気配を察することができすぐに離れることができたのだが、背後から襲い掛かってくるまで全く気付かなかった。暗闇の中潜む何かは一つの赤い光を光らせた。
≪追跡中断―――新タニ侵入者ヲ発見――――コレヨリ殲滅スル≫
機械訛りのボイスを響かせて『それ』は手に持っているメイスとサーベルを振り回しながら襲い掛かって来た。狭い通路の中を激しく切りつけてくる攻撃をクオンは躱し続けるが、相手は石壁や床を破壊しながら執拗に容赦なく攻めてくる。壁穴から照らされる明かりでようやく姿が明らかになってきた。クオンは襲い掛かってきた正体に目を丸くした。
「おいおい、嘘だろ‥‥」
それは自分と同じこの白猫の世界にはいないはずの存在。それがどうして目の前に存在しているのか目を疑う。不意を突くように目の前に飛んできたボウガンの弓をクオンは慌てて躱して外へと転げ出た。
「兎に角、今は皆に知らせないと‥‥‼」
これはすぐにでもここから脱出してジーク達に知らさなければ。これは非常事態だ、下手すると皆が危ない。
すぐ動こうとした途端、頬に弓を掠める。上を見上げれば尻尾についている弓矢でこちらを狙う『兵器』、庭園にぞろぞろと出てきた4つ足の『兵器』達、宙を浮いて現れたスクリューがついた『兵器』。どれも青いボディに赤いモノアイを光らせる。
≪侵入者ヲ抹殺セヨ―――≫
幾つも出てきて声を揃えてこちらを殺す気満々の『兵器』にクオンは青ざめたて引きつった笑みを見せる。数が多すぎ、というか生産されすぎ。
「こっちだ…‼」
『兵器』達がクオンに襲い掛かろうとしたその時、どこからか声が聞こえた。それと同時に『兵器』達に向かって赤い光の矢が飛んできた。炎を纏っているのか光の矢が直撃した個体は燃えている。しかしそれでも付け焼き刃か『兵器』達は怯むことなくクオンへと襲い掛かろうとしていた。クオンは目の前に振り下ろされてきたサーベルを避けてすかさず矢が飛んできた方へと駆けた。
高い塀の上にフードがついた黒い外套を纏った人が姿が見えた。フードで顔が隠れて見る事はできなかったがクオンを追いかけている『兵器』達に向けて赤い光の矢を放ち続けている。クオンは高く跳びフードの人物の下へと辿り着いた。
助けてくれたことに感謝を述べようとしたが、フードの人はすぐに先導して駆け始めた。クオンはおいて行かれないように慌てて追いかけていく。
ひと気のない集落へと走り、無人の建物の中に駆け込んで追手が来ていないことを確認したフードの人は一息ついた。
「‥‥ここで隠れていれば撒けるだろう。大丈夫かい?」
声がからして落ち着いた女性のようだ。クオンは息を整えて頷く。
「な、なんとか‥‥ていうか、助けてくれてありがとう」
「気にしなくていいさ‥‥君に謝れなければならない。私も任務で潜入していたのだが、あの妙な兵器に見つかってしまってね。私が離れようとした所に君までも巻き込んでしまったようだ」
あ、そういえばとクオンは思い出した。たしかあの兵器は『新タニ侵入者ヲ発見』と言っていた。もしかしてフードの人物を追跡していた最中に見つかったようだ。
「まああれがあったなんて俺でもビックリだし、仕方ないさ。そだ、俺はクオン。今は東側の陣営の傭兵で情報収集で潜入してたんだ」
「東側の‥‥たしか帝国に救援を要請していた方か。それなら安心した」
フードの人は納得したように頷き、被っていたフードの外す。黒のショートボブで、青い瞳の凛とした表情の女性だった。その顔を見たクオンは目を丸くした。
「私はアイシャだ‥‥よろしく」
「は、はへぇ!?」
クオンは声を上げて驚く。当の本人はハテナと首を傾げているが、クオンは知っていた。アイシャことアイシャ・アージェントは帝国を影から守る機密機関『狩猟戦旗』の一員だ。諜報活動、情報工作、暗殺何でもござれで帝国の脅威を狩る存在である。その機関の人でNO.Ⅹのアイシャがどうしてこんな所にいるのか、緊張と焦りとナンカでてんやわんやになっていた。
「落ち着いたかい?」
「え、えええまあ‥‥そ、そのアイシャ‥‥さんは任務といってましたけども、その任務って…?」
「アイシャ、でいい。詳しくは言えないが…まあ上からの命令で、何やらこの島で帝国にとってよからぬ兵器を製造しているという情報と希少金属のルーンとやらを調べに来たのだが、どうやらアタリのようだな」
アイシャはやれやれとため息をつく。彼女、そして狩猟戦旗は人を魔物に変える『烙印のルーン』を追っている。もしかしたらこの島にあるかもしれないと調査しに来たのだろう。目的の物ではないが、帝国にとって脅威になる物が見つかった。
「見たところ、あの『兵器』は普段見かける機械系の魔物とは違うようだな」
「あれはここいらの機械系の魔物とは格段違うもの‥‥というかあいつの色違いが出てきたら余計にヤバいんだけど‥‥」
「うん?クオン‥‥君はあの『兵器』を知っているのか?」
あっ、とクオンは口をこぼしてしまった事に気づく。しかしこの世界に存在していないはずの兵器だ。一人でも多く知らせておく必要がある。
「…あれは殺戮を目的に造られた戦闘マシーン。幾つものタイプが製造されていたと言われている兵器だ」
その名を言おうとしたその時、石壁が砕かれ二人に向かってあの『兵器』がメイスを振り下ろして襲い掛かって来た。クオンは躱して思い切り蹴とばし、アイシャが赤い光の矢を放ちモノアイを撃ち貫いて倒す。倒れた『兵器』のその先には幾つもの『兵器』の姿が見えた。ぞろぞろと待ち構えていたことにアイシャは思わず苦笑いをした。
「どうやら追跡機能も備わっているようだ‥‥それでクオン、あの兵器は一体何だい?」
「‥‥あれは『キラーマシン』。キラーマシンには2や3を始め、幾つもの種類がある」
クオンはこの世界に存在するはずの無いキラーマシン、キラーマシン2、キラーマシン3の群れを睨んだ。2Dの画面でしか見たことがないのに、まさか実戦で現れるとは思いもしなかった。
キラーマシンのデザインはとてもシンプルだけれども、とても洗礼されたフォルムでカッコイイと思います。
特にキラーマシン2はロマンを感じました。SFC時代のキラーマジンガ×2は鬼畜でしたけど