冒険者共   作:サバ缶みそ味

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◎2 はじめての島

「うおおおおおおおっ!?」

 

 いくら足掻こうが落下スピードは緩むことなく寧ろスピードを増していく。白い雲を突き抜けると遂に下が見えてきた。今俺が落ちていく先には島が見える。視界一面に広がる大海原に囲まれた小さなそうな島…無人島か?…って冷静に考えている場合じゃねええええっ!?

 

「あのファッキン破壊神がぁぁぁぁっ‼スポーンする場所考えろよ‼」

 

 やばいって、まじでやばいって‼段々と地面に近づいて来てますって‼たぶんこれあと数秒で地面にダイレクトアタックするって‼そ、そ、そうだ、慌てるな俺‼力貰って転生したんだからこんな高さから着地なんてお手の物のはず!なんかこうかっこよく着地を…って考えていたら目の前はもう地面。

 

「あだっばああああっ!?」

 

 我ながら情けない叫びをあげて地面へ激突。ギャグ漫画でよくある人型の大穴を開けて着地…というかこの登場の仕方、マジでカッコ悪い…

 

 

「こ、ここが白猫の世界か…」

 

 起き上がって大空を見上げる。あっこから落ちてきたのはほんと焦ったけども、今一度見上げると途轍もなく広く青々としている。視線を空から自分の周りの方へと変えて見回す。人の手が一切つけられていない自然の森。マイナスイオンがうんたらかんたらというのはよく分からんが静かで落ち着ける。

 

「さてと‥‥早速冒険してみますかね!」

 

 服についた土を掃って立ち上がる。昂ぶる冒険心につられてゆっくりと歩き出す。まずはこの島を探索してからこれからの方針を考えよう。

 

「キュキュー」

 

「うん?」

 

 今後の事を考えながらいざ行こうとした矢先に茂みの中からなんか可愛い動物の声が聞こえてきた。この世界には魔物という魑魅魍魎(?)みたいな生物が沢山いるからな。Lv500の魔物とか半端ない強さの魔物もいるし、気をつけなくては。

 

 俺はさっそく刀の試し切りを、と柄に触れてすぐに切り捨てようと構えた。が、茂みの中から出てきたのはピンクのふわふわした丸っこい生き物。

 

「キュキュ?」

「‥‥星たぬき…?」

 

 目の前いるのは間違いなくあの星たぬき。俺が落下した音にビックリしてここに駆けつけて来たのだろう。その星たぬきは俺を見るや否や身構えた。

 

「キュキュッ!」

「‥‥可愛すぎるんですけどぉぉぉっ!?」

「キュキュキューッ!?」

 

 ナニコレ滅茶苦茶可愛すぎるんだけど‼俺はポコポコと叩いてくる星たぬきを抱き上げて頬刷りする。ふわふわするし、モフモフする!やばい、かわいい‼

 

「おーよしよし、安心しろ。お前には手を出さんさ」

 

 星たぬきはいわば最初に出くわすスライムみたいなモンスターなのだが‥‥これは反則級にかわいい。嗚呼、前世のソシャゲで何時ものように作業ゲーみたいな面をしてバッサバッサと駆逐していっていた俺を許しておくれ。

 

「キュ?」

 

 俺に敵意がないと感じたこの星たぬきは首を傾げる。ヤバイ‥‥その仕草もかわいい…‼

 

 

グオオオオオッ‼

 

「む?」

 

 星たぬきを愛でていると森の奥から可愛げのない獣の雄叫びが。その雄叫びを聞いた星たぬきはビクリと驚くとすぐさま俺の後ろへと隠れて震えだす。一体何なのかと不思議に思っていると森の奥からバキバキと突き進む音が段々と近づいてきた。

 

「グルルルル…‼」

 

 雄叫びと音の正体は強靭な四肢と鋭い爪と牙を持つ大型の獣、グレイルジャガー。どうやらこいつも俺が不時着した音を聞きつけてやって来たようだ。にしても間近で見ると迫力があるな。

 

「キュ、キュー…」

 

 星たぬきはグレイルジャガーに恐怖している。ふむ、この世界では星たぬきはグレイルジャガーの捕食対象であり食物連鎖では下の方なのか…まあゲームじゃないし、自然界だとそうなるわな。

 

 食物連鎖の上位であるグレイルジャガーは星たぬきはおろか、俺をも捕食せんと言わんばかりの眼で睨み牙を剥き出しにしていつでも飛び掛れるようにしている。けれども俺にとってはちっとも恐ろしくもない。

 

「ふーむ…退いてくれたら嬉しいのだが」

 

 言ってみたもののグレイルジャガーは退くことなく俺達を食い殺すつもりでいるようだ。しびれを切らしたグレイルジャガーはついに飛び掛ってきた。星たぬきは『キューッ!?』と叫んでいるようだが、なんというか動きがスローに見える。俺はため息をついて腰に提げている日本刀を一本鞘から引き抜いて構えた。さっそくこの俺が鍛えた刀第一号、『紅水』の切れ味を試させてもらうぜ。

 

「悪く思うなよ?」

 

 俺は詫びると力いっぱい『紅水』を横へ薙いだ。ほんのひと振りしただけで物凄い風圧が舞い上がる。牙をむいて雄叫びを上げて飛び掛っていたグレイルジャガーはピタリと空中で静止していたかと思えば上下半分に真っ二つに。人よりも巨大なモンスターを軽々と真っ二つにできたことに、血糊が一つもついていないこの刀を見ながら満足する。

 

「いい切れ味じゃないか。我ながら一生懸命に鍛えた甲斐が…うん?」

 

 

 ゴゴゴゴ…

 

 

 どこか遠くで崩れる音が響いたかと思ったら、グレイルジャガーを真っ二つにした遥かその先にある山のてっぺんが切り崩れて行っているのが見えた。

 

「‥‥あ、やべっ」

 

 飛ぶ斬撃とか覇気とかよりも半端ないパワーに俺自身に驚きと焦りが募る。ずっとあの破壊神と殴り合っていたもんな。力を抑えないと本当にデストロイヤーになり兼ねない。力のコントールを調整しなければ。紅水を鞘へと戻し呆然としている星たぬきを撫でる。

 

「もう大丈夫だ。お前達には危ないような目には遭わせんよ」

「キュー…」

 

 こんな可愛い星たぬきを斬ったり殴ったり叩きのめしたり射抜いたりするなんてとんでもない!

 

「さてと、探索の続きでもしようかね…」

 

___

 

「いやー…シザースって食えるもんなんだなー」

 

 島を探索して時は既に夕暮れ。途中、海辺を探索していたら巨大カニことオーシャンシザースが現れて襲い掛かってきた。俺はシザースを見て『あれ?この蟹って食えるんじゃね?』と思って紅水を引き抜いて兜割りに。あとは火を起こして焼きカニにしていただきました。大味だけど食えないよりかはマシだと食べながら、この島の探索結果を思い返す。

 

「…うん、何の成果もあげられなかったぜ!」

 

 この無人島には生き物がいっぱいいただけで宝箱も遺跡も何一つなかった。コボルトやスカルやフォレストクイーンを倒してもルーンやソウル、ゴールドも全くドロップしなかった。ゲームではないのだから仕方ない。

 

「ただ…何も得られなかったというわけでは…」

 

 俺はゆっくりと後ろを振り返る。

 

 

「「「「「キュキュキューッ‼」」」」」

 

 なんということでしょう。最初はたった一匹しかついて来ていなかった星たぬきがいつの間にか300匹くらいになっているではありませんか。探索道中、星たぬきに出くわしては愛でて、喰われそうなったところを助けたり、そんで愛でたりしてたらいつの間にかこんな星たぬきの群れに。可愛いからいっか。焼きカニならぬ焼きシザースを食べ終わると今後の方針を考える。

 

「さて、お次は冒険家登録するために冒険家ギルドへ向かうか…」

 

 この世界を冒険する為にはギルドで冒険家のライセンスの獲得と登録が必要だ。依頼を受けることができてお金を稼ぐこともできるし、これのライセンスが無くては入国すらできないという国もある。そのためにはイスカンダル…ちゃう、イスタルカ島の冒険家ギルドで登録しなくては。しかしここで問題がある。勿論、ライセンスの手数料とか発行費用とか払えるお金がないことや、ここからどこへ向かえばイスタルカ島へ行けるかという問題があるが、一番最初の問題で詰まってしまう。

 

「ここからどうやって行こうか‥‥」

 

 この無人島から出るための手段がないのだ。いや、十傑走りをすれば楽々に海を渡れるんだけど、それはなんかシュールだし…桃白白みたいに柱か木をぶん投げてそれに乗って飛ぶ、のもシュールだし…船を作る、とはいってもそんなスキルはつけてないし‥‥ああ、やっぱり舞空術は身につけておくべきだったよ…

 

「キュキュ?」

「うん?海へ出たいのかって?ああ。冒険家になって世界を冒険したくてね。でもどうにも海を渡る手段がないんだよなー」

 

 首をかしげる星たぬきを撫でながら日が沈んですかっり暗くなった空を見上げて物思いに耽る。うん、今日は早く寝よう。そんで明日に筏を作ってみるか。で、無理だったら十傑走りをして海を渡ろう。たき火を焚いたまま俺はごろりと横になった。モンスター達に睨みをきかしてある、寝てる最中にモンスターが襲ってくることは無いだろう。来たらぶった斬るだけだけどね。

 

「そんじゃ早いけど、おやすみー」

 

 俺はすぐさま眠りへとついた。嗚呼、星たぬきと一緒に寝れるなんて幸せ‥‥

 

___

 

 朝の陽ざしが眩しく感じ、チュンチュンと小鳥の囀りが耳に入って来て眠気から目を覚ます。早寝早起きするのは久しぶりな気がする。まだまだ覚めていない頭をゆっくりと上げて眠気をはらい、欠伸をしながら背筋を伸ばした。

 

「ふおぁ~‥‥よく寝…っ!?」

 

 俺は視線の先にある物を見て一気に眠気が吹き飛んだ。そこには海辺に浮かぶ大きな帆船、そして疲労値マックスで倒れている星たぬき達が…‼

 

「お、お前等、これは一体…!?」

「キュ、キュキュー…」

 

 すぐ近くで倒れていた星たぬきを起こして尋ねる。星たぬきは体をぷるぷるしながら事の全てを話した。 

 

「え?『僕達を助けてくれた恩返し』だって…!?お前等っ…!」

 

 なんて最高なたぬきなんだ‥‥‼俺は星たぬきを優しく抱きしめた。とりあえず、星たぬき達の疲れが取れるまでしばらく待ってから船の中を見ることにした。船内は1人じゃもったいないくらいの広さだ。やはり星たぬきって大工とか得意なんだな…

 

「水や食料もそれに船を動かすためのルーンも積んである。お前等よく頑張ったな…ありがとう」

 

 ここまでしてくれた星たぬき達に俺は笑顔で感謝する。たった一日という短い出会いだったのだけれどもとても素敵な出会いだった。

 

 もう行かなくては‥‥俺が出る事を察した星たぬき達は寂しそうに鳴く。

 

「今生の別れじゃないんだ。お前達の事は絶対に忘れないさ」

 

 寂しそうにしている星たぬき達を励ますと一匹の星たぬき、一番最初に出会った星たぬきが俺の前に出た。

 

「キュキュッ、キュキュキュー!」

「うん?一緒に冒険したいのか?」

「キュッ!」

 

 その星たぬきはフンスと胸を張った。危険な旅になるやもしれんがどうしたものかと考えるが、難しい事は考えず俺は頷いた。

 

「旅は道連れ世は情けってな。いいぜ、一緒に冒険しよう!」

「キュキューッ」

 

 オトモアイルーならぬオトモ星たぬき。いてもいいと思う。いてくれるだけで心強いしな!俺はその星たぬきと一緒に乗り込んで船を出航させる。

 

「それじゃあ行ってきまーす!」

 

「「「「キュキューッ!」」」」」

 

 星たぬき達は元気よく尻尾を振って見送ってくれた。うん、星たぬきというのはいいものだな…

 

「よし、次はお前に名前をつけなきゃな」

「キュキュ?」

 

 船は大海原に乗りかかったところで一緒についてきた星たぬきの方に視線を向ける。ともに旅をするんだ、ただ星たぬきというわけではなくてちゃんと名前をつけてあげなくては。

 

「そうだな‥‥たぬきち、でいいか」

「キュキュッ!?」

 

 そうかそうか、そんなにうれしいか。俺は星たぬき改めたぬきちを撫でる。

 

「さあ行こうか。目的地はイスタルカ島へ‥‥‼」

 

 舵を取って船を進める。まずは冒険家ギルドへ行って冒険家のライセンスを取得。そこからやっと冒険家としてのスタートだ。

 

 

「‥‥ところで、イスタルカ島ってどこ?」

「キュ‥‥」

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