元祖最優ベイリンIF 作:ケセランパサランマン
まだあんまり詳細の明かされていないアグラヴェイン、ギャラハッドを筆頭に、ケイ・パーシヴァル・ガレス・ガヘリス・ボールスなどなど……
いつか何らかの形で登場してほしいですね
蛮人ベイリン。
彼はアーサー王の円卓成立以前の騎士であり、当時最強であったと謳われる。
正史での彼は、行いが悉く裏目に出、最期は実の弟と殺しあうと言う悲劇を以ってその人生を終えた。
これは数えきれぬ剪定事象の中でも、異質極まる世界。
この世界での彼は蛮人ではなく、円卓一二を争う忠臣––––––後にそう伝えられる。
◆
まず正史と最初に違った相違点は、彼の母親の仇である湖の乙女の一
人を、彼が許したと言う事だ。
◆
湖の乙女の一人が最優の騎士の剣を帯びて、アーサーのもとへ訪ねた。
その剣を見て、他の騎士達は湧き立つ。
その剣は、アーサー王が持つ最強の聖剣、エクスカリバーに勝るとも劣らない立派な剣だったからだ。
「ほぅ、実に見事な剣ですな、乙女殿」
無論、ケイも騎士の端くれであるが故、その剣に興味を抱いた。
彼の剣の腕前は特筆するほど良いとは言えなかったが、アーサーを守る臣下として、力は欲していた。
「……ありがとうございます、サー・ケイ。しかし、この剣など、私には必要の無いモノですし、出来ることならば誰かに譲渡したいのです」
乙女は最初は微笑んでいたが、言葉の尻に近付くほどに顔は曇っていった。
それを見たアーサーは、何かあるのですかと乙女に訊ねた。
「……この剣は貴方がたも御察しの通り特別なモノで、実に強力な剣です。しかしこの剣はこの世で最も誠実で、優れた騎士でなければ柄から抜く事すらも叶わないのです」
その言葉に、周囲の騎士達は更に湧き立った。
誉れ高きアーサー王の臣下として、どの騎士も多かれ少なかれ己に自信を抱いていた。
我こそ、と考えるのも致し方なかった。
周囲の騎士達の熱を見て、呆れたようにケイが口を開き一つ乙女に提案を出した。
「ふむ、では我々アーサー王の騎士達がそれに挑戦し、もしも引き抜くことが出来たのならばその者の剣としてもよろしいでしょうか?」
「えぇ、よろしいですよ……ただし先に忠告しておきますが、アーサー王はこの剣を抜けませんよ?聖剣エクスカリバーが既に王の手には有りますし、そもそもこれは王に仕える騎士の為の剣ですから」
「成る程、承知しました……さぁ、我こそはと思わんアーサー王の騎士達よ!己が最優であると疑わぬのであれば、この剣を手に取るが良い!」
そして、数多の騎士達による挑戦が始まった。
無理矢理引き抜こうとする者。
記念に触れておこうとする者。
王への忠誠を更に固める為に力を欲する者。
その他にも様々な騎士が挑戦したが……一向に剣は抜ける気配がない。
「……懐かしい光景ですね。選定の剣を思い出しました」
悲痛な雰囲気を漂わせる王の間にて、アーサーはポツリとこぼした。
かつて似たような事があったものだ、と。
そしてめぼしい騎士達が全滅したところで––––––。
「王よ、俺も良ろしいですか?」
––––––最優が、その姿を現した。
「貴方は確か……」
「ベイリン、或いはバリンと。まぁ、一応は王の騎士ですが、田舎者の野蛮人ですよ。言葉遣いも荒くて申し訳ない」
「ではベイリンと。ベイリン卿、己を卑下する事はありません。貴方は私の騎士の一人なのですから」
「ハハ……それで、俺も挑戦して良いですか?」
「ええ、どうぞ」
「では、失礼して––––––」
そう言って、ベイリンが剣の柄に手を伸ばす。
その手が柄をしっかりと握りしめ、ゆっくりと引き抜く。
そして––––––。
「っと、俺みたいな田舎もんが触れたら神罰でも下るかと恐る恐る引いてみましたが、案外すんなりと引けましたな」
沈黙が場を支配する。
騎士達は固まり、あのケイですら目の前の騎士が引き抜くとは思っていなかったのだろう。
普段ならば出すであろう嫌味や軽口が全く出てこない。
アーサー王だけは、一人得心のいったような顔をしていたが。
「「「「……オオオオオッ!引き抜いたぞ!ベイリン卿が、最優の騎士の剣を引き抜いたぞッ!!」」」」
「ふむ……」
お祭り騒ぎの周囲の反応は特に気にしていないのか、剣から目を離さずにベイリンは最優の騎士の剣を数度振るってみせる。
そして、ニィと口角を上げ、笑った。
「実にいい剣だ。気に入った」
そうして鞘におさめてみせた。
このままベイリンを担ぎ上げようと言った勢いの騎士達だったが、それを制止するかのように、ピシャリと乙女が口を開いた。
「ベイリン様、貴方は確かに今代最優の騎士なのでしょう。ならばこそ、その剣は手放すべきです。この剣が認めた、貴方ほどの騎士ならば、別の名剣をいずれ手にする筈です」
「……?おい、俺が聞いた話じゃあ、この剣は引き抜いた者が得ると言う話の筈だが?いざ引き抜ける存在が現れたら心が変わったか?乙女よ」
ベイリンの言い分はもっともだ。
だが、この剣には呪いがかけられていると乙女は言う。
曰く、この剣は所有者の最も愛する者を手にかける事となる、と。
「後出しで申し訳ありません……まさか、この剣を引き抜ける騎士が存在しているとは思いませんでしたので……」
「ふん……ならばこそ、この剣は俺以外が持つ訳にはいくまい?俺は最も優れた騎士なのだろう?その騎士が、呪い風情を恐れては我が王の名に泥を塗る事となる」
ベイリンは今の今まで下っ端の騎士であった。
確かに剣の腕はアーサーの配下の中でもトップレベルではあったが、それを他の騎士が目にする機会など今までなかったのだ。
王の騎士達の中で最も優れた者と認定された彼は、少々気分が高揚していた。
無論、王に対する忠誠もその分増したと言っていい程に今の彼は強い。
王への忠誠の証として、何よりもわかりやすい武勇を彼は欲した。
「……決意は、固いようですね」
「あぁ。忠告には感謝する、湖の乙女よ」
それだけ言って、湖の乙女は後にベイリンに降りかかるであろう災難を予見して悲しみ、キャメロットを去っていった。
こうして、野蛮なる騎士ベイリンは、一転して最優の騎士として暫しの間名をブリテン島中に轟かせる事となる。
その活躍は、アーサーと敵対する他の王の軍勢を一人で殲滅したとも伝えられるほどに凄まじいものだったと言う。
そして、アーサーに敵対する王達への戦が少し落ち着いた頃に、ベイリンはアーサーに旅に出ると告げた。
「理由を聞いてもよろしいでしょうか。サー・ベイリン」
「……最優の騎士としては情けないと思われるかもしれないが、俺には仇がいるのですよ、王。俺は母を殺したとある魔女を探しているのです」
復讐。
成る程、確かに最優の騎士としては少々名に泥をつける行為ではあるだろう。
だが、剣は未だベイリン以外には抜けない。
ならば、その復讐すらも剣は認めていると言う事だ。
「無論、王達との決戦時には何処に居ようと駆けつけます。だからどうか……」
「構いませんよ。貴方はこれまで多くの功績を残し、私に貢献してくれました。ちゃんと戻って来てくれるのならば、私も文句など言いません」
「……感謝します。あなたが王で本当に良かった」
そう言って、ベイリンが踵を返し歩き始めたその瞬間。
ベイリンから、途轍もない殺気が噴出した。
アーサーも困惑してベイリンに訊ねかける。どうしたのか、と。
「ベイリン?どうし––––––貴女は?」
そしてベイリンに近付き、彼の視線の先に居た人物を見て、アーサーは困惑した。
「久しぶりですね、アーサー」
「貴女は……エクスカリバーを授けて下さった湖の……」
「記憶に留めておかれたようで光栄です……そして、そちらの方が、
「……湖の乙女。私の騎士をそのような名で呼ばないでください」
思わず、アーサーは顔をしかめる。
が、暫くして場に漂う雰囲気が異様なモノになっていくことをアーサーは感じていた。
何方もこの様に礼儀に悖る態度はみだりにしないはず。
どうしたと言うのか、二人とも––––––?
そう困惑しているアーサーの前で、遂にベイリンが最優の騎士の剣を引き抜き、湖の乙女にその切っ先を向けた。
「……!何をしているのです!サー・ベイリン!その方は私の恩人ですよ!」
「……こればかりは止めないで頂きたい、王よ。私が先程話していた魔女––––––それはこの女の事だッ!!」
「随分な言い草ですね……!私の兄である騎士を殺した、貴方がそれを口にしますか!」
「ハッ、理由や経緯はどうあれ、アーサー王ではなく他の王に従う騎士、戦であるならば何者であれ敵は切らねばなるまい?子供でもわかる道理だぞ、魔女め!」
目の前で交わされる舌戦に、アーサーは閉口した。
片や臣下であり、今の今まで尽くしてくれた最優の騎士。
片やエクスカリバーを与えてくれた大恩ある湖の乙女。
どちらの味方をすればいいのか、アーサーは固まってしまった。
そして、その一瞬の内に、湖の乙女はベイリンではなくアーサーに向けて言葉を吐いた。
「アーサー王!貴女が手にするその聖剣!エクスカリバーの代価を今、ここで求めます!この騎士を騙る蛮人……或いはこの者に剣を与えた湖の乙女の首を!」
「なッ……!落ち着きなさい!乙女!」
「ハ、正体を表したな魔女が!王よ、この者をどうか斬らせて頂きたい!」
「ベイリンも!火を注がないで下さい!……マーリン!マーリンはいますか!?」
アーサーは己が頼る宮廷魔術師を呼び出す。
彼ならば、この場を上手くしのいでくれるだろうと考えたからだ。
今にも乙女に切りかかりそうなベイリンを抑えつつ、湖の乙女にも落ち着くよう話しかけるアーサー。
ほんの少しして、マーリンがその姿を現した。
「……おやおや、影から見てはいたけれど。ベイリン、君は取り敢えず少し頭を冷やしたらどうだい?王の最優をこれからも名乗りたいのであれば、ね」
「…………ッ!!」
歯が砕けるのではないかと言うほどに激しい歯軋りが、ベイリンの葛藤を物語っている。
そして、一際激しく乙女を睨み付けたかと思うと––––––。
「………………許した訳ではない。この様な邪悪であれ、女は女…………婦女子を騎士が切ったとなれば王の名にも泥を塗るだろう。だが忘れるな、貴様はいずれ天の火に焼かれ地獄に落ちるだろう。俺は精々、天から母や弟と共に貴様を嘲笑ってやろう……俺は城に戻らせてもらうぞ、マーリン」
「最後に忠告しておく、魔女。王がいなければ貴様の首……天が罰を下すまでも無く既に地に落ちていたと思え」
去り際にそう告げて、辺りに充満していた殺気を霧散させた。
––––––悲劇の騎士は、ここで悲劇への道筋を一つ、自ら絶った。
もしも、ここで彼が制止を無視し乙女に斬りかかっていれば、彼の人生は間違いなく破滅へと向かう筈だったのだから。
隠し切れぬ怒気と殺気を身に纏いながら、ベイリンは大人しく城へと帰っていった。
これにはアーサーもマーリンも息をついた。
〝さて、此方は取り敢えず大丈夫そうだが、問題は……〟
「なぜ止めるのです!アーサー王!マーリン!彼は我が兄の仇なのですよ!?」
「湖の乙女、君も落ち着きたまえよ。ベイリン卿は矛を引いたのだから。彼よりも古き者である精霊の君が落ち着きを取り戻さなくてどうする?……確かに、君は僕の願いを聞いて儀式通りエクスカリバーをアーサーへ与えてくれた。それには頭が下がるが……仇が目の前にいるにも関わらず、復讐心を呑み込んだ立派な騎士へ、君が一方的に攻撃するつもりかい?」
「……それはッ!しかし!」
「……湖の乙女。貴女の要求はそれ以外ならば騎士道に則るモノである限り何でも叶えましょう。ですから、どうか抑えてください。ベイリンも、貴方と同等かそれ以上の殺意を抱いていた筈なのです」
「…………あの者を、貴女は庇うと言うのですか?偉大なる赤竜の化身であるアーサー王!」
はぁ、と溜息をついて、マーリンは魔術を発動させる。
これ以上話していても疲れるだけだと判断したのだ。
「まだ、ベイリンの方が君よりは冷静だったよ。もう帰りなさい、送ってあげよう」
「な––––––マーリン!何を––––––!」
憤怒の形相を端正な顔に浮かべたまま、湖の乙女はマーリンの手によりアヴァロンへと強制送還された。
無論、この様な事が再び起きぬよう、仕掛けもキッチリとしてある。
「マーリン、少々強引過ぎたのでは……」
「まぁ、古い概念である精霊の彼女の考えはちょっとやそっとで変わるものではないからね。あぁ、アーサー、君は再びベイリンと乙女が出会う事を恐れているのかな?」
「まだ遺恨は残ったままです……もしまた彼と彼女が出会えば……」
「ふふん、君ならそう言うと思って、彼と彼女には不邂逅の呪いをかけておいたよ。互いに姿が認識出来なくなる魔法だ。僕オリジナルだから、湖の乙女達精霊にすら解けないよ……神霊が関与すれば話は変わるけど」
「……大丈夫なのですか?」
「……そう言われるとちょっと温かったような……?次に見かけたら記憶を弄っておくよ。双方の」
◆
こうして、ベイリンは一先ずの落とし穴を回避した。
だが、彼にはまだ多数の地雷が未来に待っている。
それらをどうしていくのか、それを一先ずは追っていくとしよう。
歴史的にも珍しい二刀流の英雄ですよね、ベイリンは
ちゃんと原典の資料に二刀使いと明言されてるのはベイリン、ギャラハッド、武蔵ぐらいしかぼかぁ知らないですね、無知なだけかもしれませんが
続くかはわかんないです
とりあえず思いついて投稿したので
好評なようなら頑張らさせて頂きます……多分