元祖最優ベイリンIF 作:ケセランパサランマン
お気に入りも7件と、嬉しいもんですね
これはちょっと書きだめていたので早めに投稿します
アーサー王伝説終了までは脳内プロットあるので、多分大丈夫だ!
その日のケイは、珍しく機嫌が良かった。
アルトリアがアーサー王となって以来、ケイは心を痛めながらも彼女に尽くして来た。
しかしある日、ケイはアルトリアに替わる王の素質を持つ者を見つけたのだ。
しかもその者は、立派で聡明で、血筋も貴く腕っ節も並みの騎士では比べ物にならないと言う完璧な存在だった。
「どうだ?このキャメロットの王城は」
「ええ、流石は誉れ高き騎士王の城と街です。感服いたしました」
サー・ガウェイン。
後に円卓でも最強を争う優れた騎士であり、アーサー王の甥でもある騎士。
「フン……そう畏まらなくても良い。いずれはお前の城になるやも知れんのだからな」
「ハハハ、そんな事はありえないでしょう。アーサー王は私などよりも立派なお方です。ご冗談も程々にして頂けると有難いです、サー・ケイ」
周囲の騎士達は、そんなガウェインとケイの様子を見て、余り良い顔をしない。
これはガウェインではなく、ケイに問題がある。
アーサー王が信頼し、また重用しているケイではあるが、弁舌は兎も角剣の腕はそう大したモノではない。
ガウェインがアーサー王の甥であると言うことは他の騎士達も耳にしている話なので、側から見るとケイがガウェインに取り入ろうとしているようにしか見えないのだ。
無論、ケイの真意はそんな浅はかなモノではないのだが。
「……ここが、アーサー王のおられる玉座の間だ。くれぐれも粗相はするなよ?王も俺も、お前には期待している」
他愛のない話をしながら、ケイはガウェインを値踏みする。
そして、そうこうしている内に、遂にアルトリアが待つ玉座の間が彼らの眼前まで迫っていた。
「わかりました……失礼いたします!」
そう言って、ガウェインは玉座の間へと足を踏み入れた。
「……これは」
そして、その存在感に圧倒される。
華美過ぎず、質素過ぎない装飾は星の光を宿しているかのように薄く光を帯びており、無駄のない完成された場と言うイメージを思い起こさせる。
だが、それだけではない。
その中央に座す、冠を頂いた騎士の王。
アーサー王の威光が北極星の如く、無数の
「良く参られましたね、サー・ガウェイン。名乗りましょう、私こそがこのブリテンの王、アーサー・ペンドラゴンです」
その凜とした声に、浮ついていたガウェインの気持ちが引き締まる。
身体は小さいながらも、この者こそが真の王者。
ブリテンを導く偉大なるものだと理解する。
「ッ、失礼しました。つい見惚れてしまいまして……私はオークニーの王、ロットが長子ガウェイン。アーサー王、貴方の騎士となるべくして参上いたしました」
「……ええ、存じています。しかし貴方の父君と私は……」
「過去の確執は気にしないで頂きたい、王よ。私は父を尊敬していますが、それ以上に貴方という存在に憧れているのです。我が父の軍勢も、貴方の騎士達を傷付けたでしょう?お互い過去の事は水に流すべきです」
元々ガウェインはアーサーを恨んではいなかった。
戦争であれば、何方かが死ぬ。
敗者と勝者が生まれる、それは当然の事だからだ。
そして、直にアーサーの王気に触れ、ガウェインは確信した。
この王こそ己が真に支えるべき王だと。
「……ありがとうございます、ガウェイン。そして、私の騎士になりたいと言う話ですが、無論問題ありません。来る者拒まずですから」
「ハッ、我が忠誠と剣はこれよりアーサー王、貴方様の物です……では、失礼します」
「期待していますよ」
王が今は一介の一人の騎士に過ぎない己に期待してくれている。
その言葉が、彼により一層の忠誠を誓わせるのであった。
◆
後の太陽の騎士ガウェインと騎士王アーサーが初めて顔を合わしていたその頃。
ベイリンは湖の乙女と会っていた。
無論、彼を憎んでいる乙女ではなく、彼女は彼に最優の騎士の剣を与えた乙女である。
「……それで、今更何の用だ?貴女にはこの剣を与えてもらった事を感謝しているのだが」
「貴方の仇のあの乙女に関して、少しお話しさせてください」
「……自分の同胞は殺すな、とでも言いたいのか?」
ベイリンはマーリンから掛けられた魔術の事を教えられている。
もう彼女とは会うことがないはずなので、貴女の心配は杞憂だと、そう伝えようとして––––––。
「彼女が、貴方か私の首を求めていた事はマーリンより聞き及んでいます。彼女は、私にも恨みがあるのです」
予想していたモノとは違う話をしだした乙女に、少し反応が遅れた。
「……なんだと?」
「彼女の父君は……紆余曲折ありまして私が殺したも同然なのです。故に、私から剣を与えられた事も相まってあそこまで過激な事を申し立てたのでしょう」
「貴女と魔女の間で何があったかは知らんし、知るつもりもないが……我が母の仇である以上、あの魔女には同情出来んな。それで?どうやら貴女の話はそれだけでは無いようだが」
この女は強かだと、ベイリンは野生の嗅覚とでも言うべき直感で感じ取っていた。
そのような話は本題ではないとベイリンにも予想がついた。
「ええ……これはベンウィックとガリア周辺一帯を支配する湖の乙女……ギネヴィア様に聞いたお話なのですが、近々ベンウィック相手に他国が戦を起こすだろう、と」
そして、湖の乙女が切り出した本題は、ベイリンを驚愕させた。
何故ならば。
「なんだと?ベンウィックとガリアと言えば、王の盟友であるバン王とボールス王が治めている国ではないか!」
そう、その二つの国の王は主君アーサーの盟友なのだ。
それが攻められるとするならば、こうしている場合ではない。
この話を王に伝え、今すぐ軍を編成し進軍せねばならない。
「貴方には、アーサー王の軍勢に先んじて彼らの援軍に向かって欲しいのです。彼の一騎当千、最優の騎士であるベイリン卿に」
「……だが、ブリテンと彼の地には海が隔たっている。俺一人分の船ならば直ぐにでも用意出来るが、あの速度では間に合わんのではないか?」
「ええ。ですので、私がこうして参ったのです……湖の乙女の加護。水面を歩けるようになると言うモノです。受け取って頂けますか?」
それは聞いたことがある祝福だった。
主君であるアーサー王も、たしかまた別の湖の乙女に同じ加護を受けていたと彼は記憶している。
「……確かに、俺の脚力であれば船よりも速く、全速力で走れば一日あれば辿り着くだろうが……海を駆けろ、と?」
そこで言葉を切り、ベイリンは沈黙する。
やはり無理な相談だったか、大人しく先にアーサー王に伝えるべきだったか、と乙女は立ち上がろうとして。
目の前の男が笑っていることに気付いた。
「面白い。是非やらせてくれ」
と言い放った。
時は終わりかけとは言え未だ神代。
海には強力な魔物がいたり、危険はあると言う事は目の前の男ならば理解している筈なのに、面白いと言えるその精神性は間違いなく英雄と言えるだろう。
「王にはまだまだ返せぬ恩がある。我が弟ベイランを王の騎士にしてくれた事と言い、私をあの場で冷静にしてくれたことと言い……王がいなければ、俺は最優の騎士などとはとうの昔に呼ばれなくなっていたやもしれん……あぁ、そう言えば」
そこで思い出したかのように唐突にベイリンが声をあげた。
「貴女の名は何と言うのです?正直、学の無い身としては同じ湖の乙女が多すぎて覚えきれんよ」
「……分かりました。では、私の加護を授けます。大人しくしていて下さいね。それと、私の名前はニムエとでもお呼びください」
そして、ニムエは妖精文字をベイリンの肉体と魂、そして最優の騎士の剣に刻んでいく。
◆
そして、アーサーのもとへガウェインを案内したケイは、今マーリンと対峙していた。
「おい、この非人間……」
「おや、なにかな?サー・ケイ。随分と急いで来たようだけど……ガウェイン卿の案内は終わったのかい?」
「……黙れ!貴様なら俺の要件などとうに理解しているだろうが!アルトリアが王である必要などもう無いだろう!?ガウェイン、あの憎たらしいまでの好青年ならば、次の王としての力も、素養も、血筋も全く問題ない筈だ!」
呑気なマーリンの口調に、ケイの怒りが破裂する。
普段は冷静に振舞っている彼が、この様に激情を露わにする所を見れば、他の騎士達も戸惑いを隠せないだろう。
「そうだねぇ、確かに彼は優秀なようだ。血も、アルトリアの甥であるし後継者としても、さしたる問題はないだろう」
「だったら!」
食い下がるケイに。
「––––––でも彼では力不足さ」
マーリンは残酷な真実を口にした。
「今までのブリテンならば彼でも十二分に王として通用しただろうさ。だが、神秘が薄れていくこれからの新時代の王としては、彼は相応しくない。君も薄々気付いているだろう、ガウェインではアルトリアの王才に及ばない、と」
「……クソッ!」
ケイも頭の奥では理解していた。
アルトリアを超える王など、このブリテンには未来永劫現れないだろうと言う事は。
名君ウーサーと赤い竜の力を宿した人造の、至高の王。
それを超える存在など、神秘が薄れて来ているこの先の世界では誕生する筈がないのだ。
「古い時代の終わりを告げる鐘として……バン王とボールス王の命は、もうすぐ尽きるだろう」
そう語るマーリンの眼はあくまでも冷静に、冷徹に、この世界全てをただ静かに見据えていた。
……しかし、本来ならばもう既に死していた筈の騎士が、ブリテンの様々な運命を少しずつ歪めていく。
戦闘出て来てませんが、次の話でようやくちょこっと出ると思います
今書いてる感じだと
てかランスロット・デュ・ラックって湖の騎士って意味なんですね
本名は息子さんと同じギャラハッドさんだとか
ボールス王とその息子騎士ボールスと言い、昔は名前考えるの面倒だったんでしょうかね?