極東支部配属と新兵3人組
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訓練場から出てくると俺はエントランスにやって来た。丁度今はみんな出払っているいるようでいるのは受付嬢さんと同年代くらいの少年だけだ。俺は一応その横に座る。
「ねえ、ガム食べる?」
「くれるならありがたく」
隣に座っていた茶髪の少年がそう言ってポケットを探る。
「あ、切れてた。今食べてるのが最後だったみたいごめんごめん」
「残念」
ちょっと欲しいなと思っていた俺は少し残念に思う。ま、仕方ない事だが。
「そういやアンタも適合者なの?」
「そうだよ、ついさっき適合試験を受けたばかりの
「じゃあオレと同じか、少し上っぽいけど……まあ、一瞬とはいえオレの方が先輩って事で!」
「ああ、構わないよ」
「よろしく!」
「よろしく」
そこにもう1人フェンリルの制服を着た人影がやって来る。
「あ、貴方達も今日適合した人ですか?」
「そうだよ、俺は一応『新型』、こっちの……」
「おう、オレは『旧型』だよ。アンタは?」
「ボクも『新型』です。よろしくお願いしますね」
「よろしく」「よろしくな」
3人が集まっていると階段から1人の女性が降りてくる。白い服を着て右手の腕輪には黄色のテープにより封印処置がなされており、左手にはクリップボードを持っている。1つ言いたいのだが……
露出度高過ぎませんか、極東支部の女性の人……
受付嬢の人はそうでもないがゴッドイーターの女性は皆やけに薄着か露出が多い服を着ている人が多いのだ。……防御力とか大丈夫なんだろうか?
そんな事を考えていると白服の女性が目の前まで来ていた。
「立て」
「え?」
隣の茶髪の少年は唐突過ぎて間抜けな声を出すが俺は『知ってる』のですぐに立つ。もう1人の新型の子も俺につられて立ち上がった。
「立てと言っている!立たんか!」
「ひいっ⁈」
茶髪の少年は弾かれた様に立ち上がった。
「これから予定が詰まっているので簡潔に済ますぞ。私の名前は『雨宮 ツバキ』、お前達の教練担当者だ」
彼女はそう言って手に持つクリップボードに目を落とす。
「藤木コウタ、巫咲ソラ、神薙ユウの3名ははこの後メディカルチェックを済ませたのち、基礎体力の強化、基本戦術の習得、各種兵装の扱いなどのカリキュラムをこなしてもらう」
そこまで言って彼女は1度言葉を区切り、俺達3人の目を真っ直ぐ見回した。
「今までは『守られる側』だったかもしれないがこれからは『守る側』だ。よってつまらない事で死にたくなければお前達は私の命令には全て『はい』か『Yes』で答えろ、いいな?」
その言葉に込められた重みに平和な世界でいた俺を含め2人も息を呑む。まだ圧倒的に覚悟が足りていなかったのだ。しかしあまりに沈黙していた時間が長かったので……
「分かったら返事しろ‼︎」
「「「はい‼︎」」」
少し怒られた。
「では早速だがメディカルチェックを始めるぞ。まずば巫咲、お前からだ。ペイラー・榊博士の
雨宮教官はそう言って2階にあるエントランスを指差す。
「今日からお前達が世話になるフェンリル極東支部、通称『アナグラ』だ。もうじき何組かの部隊が帰投してくるだろう、帰投してきたら上に居るメンバーに挨拶の1つもしておくように、以上だ」
「「「了解」」」
「ふむ、宜しい」
しっかりと『Yes』で答えたので彼女は少し満足気に頷くと用事があるのか1度席を外して行った。
「ま、取り敢えずオレ達だけでも先にしっかり自己紹介を終わらせとくか。オレ、コウタ。第1世代のアサルトが神機だ。趣味はバガラリーを見る事!」
「ボクはユウ、雨宮教官が言ってくれてたけどフルネームは『神薙ユウ』だよ。神機は第2世代の新型、刀身はショート、銃身はアサルト、盾はバックラーだね。宜しく」
「俺は巫咲ソラ、ユウと同じ第2世代の新型で……どう設定したっけ?」
「設定してないの?」
確か最初は自動的にロング、アサルト、シールドで設定されている筈だが隣にいる
「そう言えば雨宮教官が言ってたけど装備とかは『ターミナル』っていう端末で確認できるらしいよ?してみようよ」
「そりゃ良いな、つー事で後輩ソラよ確認するが良い」
「はいはい、でも先に先輩方への挨拶が先。その後にね」
「「はーい」」
確かに気になるもののラボに行くまでの時間が若干押しているのもあり、先にこれからお世話になる事になる先輩方ベテランゴッドイーター達に挨拶する事にした。……ところでなんでそんなに君達息ピッタリなの?
まあ、そんなことは置いといて俺達は2階のエントランスに上がりそこにいた先輩方それぞれにひとりずつ挨拶していった。
……………数分後
「ふう、これで終わりかな?」
「ああ、さっきの人で終わりだと思う」
偶然エントランスにいた元ゴッドイーター、百田ゲンさんを最後にそこにいた先輩を一通り済ませた俺達は1階に戻っていた。
「色んな人がいたな」
「確かに、なんかおっかねえ人そうな人もいたけど……」
「それはコウタがいきなりタメ口で話し掛けたからだと思うが?」
「あ〜、それは確かに。いきなり先輩相手にタメ口は駄目だよね?」
「ぐっ……」
約1名挨拶早々「ちーす、よろしくお願いします先輩〜」とか言って先輩に青筋立てさせたおバカがいたが俺とユキさんは普通に挨拶をこなしたので問題はなかった。唯一問題があったとすれば寧ろコウタがなんでそんな挨拶の仕方したんだとユウに肘打ちされたくらいである。
そんなこんなで挨拶回りだけで約1名の所為で矢鱈と焦らされたりと色々あったが残念な事にエントランスにある大時計の針を見ればもう一五○○の5分前になっていた。
「あ、ヤバい。ラボに行く5分前だ」
「それはマズイね、早く行った方が良いんじゃないかな?ラボの場所だってボク達は良く知らないし……」
「ごもっともです。取り敢えず行ってくる」
「早く終わらせてこいよな、お前の神機の確認まだオレ達としてないんだからな!」
「分かってる、さっさと行ってきます」
「いってらしゃい」
俺はユウとコウタに軽く手を振りつつ取り敢えずエレベーターに向かう……っと、その前に、
「ちょっと済みません、榊博士のラボってどうやっていけば良いんでしょうか?」
1度しっかりカウンターで受付嬢さんにラボへの道順を確認しに行った。
なんとも締まらない気がしたのは多分気のせいだろう……そう多分、maybe……