妄想に取り憑かれて書き始めました。
宜しくお願いします
人間が居る。悪魔が天使が居る。龍も神も存在する。聖書神話、中華神話、日本神話、ギリシャ神話は幻想ではなく過去の事実。全ての神話が入り組んだ世界。
夜深く蝙蝠の翼を背負う存在が空中を飛ぶ。
数は十数体、飛行機やその類の道具を使わずしてその飛行はあまりに自然的なもの。
聖書に登場する悪魔そのものだった。
片手に「悪魔の駒」を弄ぶ一体の悪魔とその眷族は家畜と見下す人間の村へ向かう。
「悪魔の駒」、あらゆる生物を悪魔へと強制的に変質させ同時に強化させる呪具がある。
「王」を除くチェスに見立てた5種15個の駒を持ち、自身を「王」に見立てた悪魔は駒を生物の体内に入れることでその存在を眷属悪魔として使役することが出来るのだ。
各駒に応じて強化される性能は異なり、悪魔の世界では主と眷属を駒とした模擬戦闘が競技として人気を得ている。
貴族制である悪魔界でありながらゲーム成績は名誉だけでなく爵位にまで大きく影響する程だ。
ゲームを勝ち進むために強い駒が必要。眷属を埋めるために悪魔十五体が人間界へ渡ったのだ。
これから襲う村に優秀な家畜が居たなら儲け物、下僕としてしまえばそれで終わり。
居なかったとしても次の村か町に向かえばいいだけのこと。
寧ろ当たりを引くまで虐殺を愉しめる。
悪魔からすれば当然である考え、王である上級悪魔は名誉を勝ち取った未来、虐殺を愉しむ未来を夢想し悦に浸っていた。
人間界の戦力からすれば少なくとも片一方の未来は決まっているも同然だった。
静かに笑い声を発しているところに衝撃と振動。
声が出なくなり胸から違和感を覚える。
地上を見下ろす視線を更に下げ、王は自身の胸に突き刺さる矢を見た。
首から十字架を下げ、弓を片手に悪魔の群れを狙う男が居た。
男が放った第一の狙撃により最優先目標の上級悪魔が墜落中。
眷属悪魔たちは主を救おうと列を崩している。
首に十字架を下げる男は一気に勝負を着けると決断した。
「――虚実の境は荒れ狂う」
錬鉄ならぬ鏡映の呪文とともに、弓とは逆の手の上に向こう側が認識できないほどの無色の魔法力が噴出し、空間を歪ませ、収まる。
何も無かったその手には深紅の槍が握られていた。
必殺の呪いを纏っていた槍、その虚像を弓に番え引き絞ると同時、槍は僅かに意匠を変え矢に変わる。
「
山なりに射出された矢は瞬く間に三十の鏃となり空中の悪魔へ降り注ぐ。
強靭性を高められた「戦車」は耐え切れずに体を穴だらけにした。
俊敏性を高められた「騎士」は数の暴威に墜落。
魔力を高められた「僧侶」は障壁を展開する前に貫かれた。
「兵士」八体全て残らず地上に落とされる。
暴威の矢、高所からの墜落、槍の持つ不治の呪い。
三重の要素に襲われ特別な回復手段を持たない眷属達に生存の可能性は残らない。
彼らを率いて凱旋するはずだった「王」は「女王」を無理やり楯とし生き長らえるしかなく、眷族の命を捨て駒とし森に逃げ込んだ。
――意気揚々と人間界へ侵入した上級悪魔とその眷属十四体は人間一人も捕食することできずに壊滅した。
射掛けた男は冷静に「王」である上級悪魔が逃げ込んだ一角を見つめ、任務に就いたもう一人の祓魔師に連絡を取る。
「主は逃走中、女王、他の眷属の消滅を確認。俺たちは主の追撃を優先する。」
王への追撃は容赦なく、躊躇なく行われた。
夜深く月や星の光も届かない暗い森の奥深く。
人が居るはずのない場所で、勇猛な叫び声と幾度の金属音が響いた。
三人の男女が人にあるまじき動きで森を移動し、ぶつかり合う。
男の一人は黒い蝙蝠のような翼を背に持ち、それに相対する男女一組は共に十字架の首飾りを身に着けていた。
「……なるほど。既に結界の中に閉じ込められているというわけか」
木々が衝突によってなぎ倒され、覗く空を背に悪魔が呟く。
既に何度か逃走を果たそうとしたのだが、いくら飛んでも二人組を引き離すことが出来ないでいた。
「そうだ、結界を破壊するためには俺を倒すしかないぞ。」
祓魔師の一方、右手の指に三本の投擲剣――黒鍵を挟み持つ男が答える。
その目は鋭く、逃がさないと告げていた。
「ハ、逃げる気など無い。見下した上で殺してやろうと思ってな!」
悪魔が空中に踊り出る。遮る木々の無くなった地上に向け魔力弾を連射。
上級悪魔に恥じない魔力が地を這い蹲る人間へと降り注いだ。
それは回避を許さず敵を捕らえ地面諸共爆発する。巻き上げられた土の幕が天を覆った。
「天上に住まうあの方でなく、地の底を住処にする悪魔が見下すなど口にするか」
青に緑の一房が入る髪の女が、両刃の斧に巨大な刀身が付いたような聖剣を振るう。
剣からあふれんばかりの光の力は、降り注ぐ魔力弾の大半を薙ぎ払った。
破壊特化の聖剣が、悪魔の攻撃を通すなど許しはしない。壊されなかったのは地面に外れた弾丸のみだ。
間髪入れず、煙の中を直進する閃光三つ。
男が手に持つ黒鍵で、攻撃直後の硬直を狙い撃ったのだ。
柄と鍔と刀身によって見立てられた十字架は悪魔にとって弱点の一つ。
当たればそれは物理攻撃以上の激痛と損傷をもたらす。
しかし今は夜、悪魔の時間。その目は暗闇にもかかわらず、剣を確実に捕らえていた。
人間には無い翼を誇るように、易々と地上からの攻撃を躱していく。
「人間など悪魔の生贄よ。見下すことが当然だろう!」
「そんなのは大昔の話。後ろしか見ないから、こうして追いつかれ追い越されるのだろう?」
口だけを嘲笑にゆがめ、男が挑発の言葉を乗せる。悪魔もまた、笑みを浮かべた。
空気が変わる。より重く冷たく。
ここからは言葉は不要。向けるは殺意と凶器のみだと互いが理解した。
悪魔は空中を縦横無尽に飛び回り、細かな連射を行う。
魔方陣から大量の弾幕が出現した。空に光る星々と同等の数が、そのまま地を這う二人を襲う。
聖剣を持つ女が迎撃し、男が黒鍵で反撃するが、悪魔を捕らえきれない。
悪魔は不規則な飛行で攻撃を回避しながら、魔力の雨を途切れさせない。
女が必死に防いではいるが、振り払い続ければ体力が尽きよう。
事実、防ぎきれなかった魔力と飛び散る瓦礫によって、細かい傷が生まれている。
更に外れた魔力弾は木々を吹き飛ばし、飛行する悪魔に有利な戦闘領域を拡大させる。
相手の不利が深まり、自身の有利は増すばかり、確実に悪魔は勝利に近づいている。
これだ。相手の手が届かぬ空で、人間にはない体力と魔力量でじわじわと痛めつける。
悪魔たる力を存分に示してやる。
相手に刻まれる傷に比例して、湧き上がる愉悦に悪魔の顔が歪む。
同じようなタイミングで放たれた何度目かの黒鍵を、もはや危な気なく余裕をもって躱す。
その余裕が悪魔を救った。頭上から迫る白刃が視界の端を掠める。
悪魔は無理やりに身をよじる。回転する陽剣は腹を掠る形で通り過ぎた。
一瞬の安堵。
その油断が悪魔を刻む。
回転し、迂回した中華双剣の片割れ、陰剣が背後から翼を急襲したのだ。
直線の動きに慣れきった体は、湾曲な動きに対処できなかった。
いや白刃に気づき対処して見せたが、無理な動きが生んだ硬直を更に黒刃が狙ったのだ。
黒鍵も陽剣も光輝く剣。さらに聖剣までもあった戦場で陰剣は悪魔の目をすりぬけた。
悪魔は翼を貫かれながらも、無理やり飛び続ける。
しかし――。
「――壊れた幻想。」
男の呪文、その一言で剣は黒翼を抉った状態で爆発した。
悪魔は片翼をもぎ取られ墜落、地面に叩きつけられ、数瞬意識が混濁する。
人間界へ飛び出し、人々を喰らってきた。
まだ味わいたい。まだ愉しみたい。上級悪魔たる己がこんな家畜どもに敗けるなどありえない!
その気概は無理やりに意識を繋ぐ。
聖剣を既に振りかぶった女が迫り来るさまが揺れる視界に入る。
墜落の衝撃を耐え、制御できる魔力を全て込めた障壁を展開した。
しかし悪魔は判断を間違えた。
彼女の武器は聖剣の中でも特に攻撃力に優れる破壊の聖剣。
当人の魔力弾をことごとく迎撃してみせた聖剣だ。
そして攻撃にこそ、その本領が発揮される。
悪魔はがむしゃらにでも、這い蹲ってでも回避を選択するべきだった。
光刃は悪魔の障壁を容易く叩き割り、かざした腕を切り落とし、その体を破壊した。
残るのはクレーターとその内部を踊る光の粒子のみ。
上級悪魔として生まれ、数々の人間を食らった悪魔のあっけない最期だった。
一撃必殺。
悪魔の中でも上位に居る存在、その障壁をもろともしない一撃。
こと真正面での戦闘においてエクスカリバーの名に恥じぬ力だった。
「悪魔討伐完了。さすがだな、ゼノヴィア。」
悪魔の消滅を確認した男は構えていた黒鍵を下ろし、聖剣使いをねぎらう。
十字架剣の刀身を消し、柄と鍔だけになったそれを服の中に戻した。
ゼノヴィアの持つ大剣から聖なる光がゆっくりと薄らぎ、視界が徐々に暗くなる。
しかし先ほどの戦乱の中とは違う、安心をもたらす静かな闇が戻った。
「私は準備された止めを貰っただけだ。」
ゼノヴィアと呼ばれた女が聖剣に布を巻き、背中に背負う。
自分がやったことなど魔力弾の迎撃と墜落した悪魔への追撃だけ。
それしきの事で褒められても、満足できないという意思表示が含まれていた。
「奴が聖剣を最重要視していたからだ。」
ジェイルは首を軽く振り、苦笑しながら彼女に告げる。
実際、悪魔はゼノヴィアを最も警戒していた。
だから最初に退避を選び、逃げられなくなっても、距離を取り彼女を防御に専念させたのだろう。
最も中華双剣の持ち手が奇襲の矢を放ち眷属を壊滅させた人間だと理解できる手段があればどうだったか。
「こちらは何度も守られた。感謝する。ゼノヴィア」
「言葉は受け取っておくよ。そして協力に感謝する。ジェイル・ネース」
簡単に手を結んだ後、互いに神への祈りを捧げた。
悪魔は滅んだが、しばらくは結界を張り様子を見なければならない。
戦闘が終わったのを確認した結界担当のエクソシストに後を任せ、ジェイルとゼノヴィアはそれぞれの教派に属する教会に帰還した。
「中級眷属悪魔の群れとその頭の上級悪魔、討伐完了した。死傷者はいない。」
ジェイルは直接の上司の居る教会に戻り、任務の報告を行っていた。
といっても帰りの道で報告書は書き上げてあった上に、既にある程度の報告を受けているはずなので簡単に済ませたが。
「そうか……いや良かった。」
満足そうに頷く男。身を包んでいる服装は教会の中でも上層部に位置づけられていることを表している。
落ち着いている風貌をしているが、大人しい男ではないことをジェイルは知っていた。
今も既に何通りかの未来を予想しているのだろう。
ジェイルは本来、対悪魔討伐隊に所属するため目の前の男とは関係ないのだが、危機的状態から救い出された時の借りと取引の結果、ある程度利用しあう関係に落ち着いている。
お互いの分野が異なるためぶつかることは滅多に無く、ある程度討伐依頼を優先すれば男もいくらか頼みを聞いてくれるのだ。
また、男の意欲は教会の中では珍しく、優先事項が神や悪魔より人間であることもジェイルの高評価に繋がっていた。
教会の上層部にはとても多いのだ。神への奉仕を行動原理とする者が。
方向性が異なるというだけでどちらが悪いというわけでないため、何をするわけではないが、人間の守護を優先するジェイルには合わないことも間々あった。
「で、アーシアの捜索に何か成果は有るか?」
仕事の報告が終わり、しばしの沈黙を嫌うように言葉を告ぐ。
「目撃数が限りなく少ないんだ。治癒能力以外には突出しない魔女ならすぐに見つかると思っ……」
「おい」
ジェイルが上司の言葉を打ち切る。鋭い目つきがより険しさを増す。
アーシア・アルジェント。
かつて聖女として人々を癒していたが、悪魔を癒したことで異端と判断され魔女とされた。
ジェイルと同じ孤児院で育った幼馴染であり、修行中は何度も助けてもらった言わば恩人でもある。
「・・・すまない、君が彼女を守りたいのは知っているが、これはどうしようもない。」
天使の奇跡や悪魔の誘いが実際に存在する世界で、教会の異端認定は大きな意味を持つ。
例えジェイルが最上級悪魔を討伐できたとしても認定を覆すのは難しいだろう。
「当分討伐任務は無い筈だ。情報があったら教えてくれ」
ゆっくりと扉を閉めて退出する。
自分の仮部屋へ戻り、ジェイルは部屋の椅子に凭れ、ため息紛れに零した。
「どこに居るんだ……。アーシア」
ジェイルの固有結界の中に存在する武器は無限とは程遠い
聖杯戦争に登場した武器のみをかろうじて継承できた
現状、Fate/staynightに登場した宝具、武器しか心に留めて置くことができない