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悪魔陣営と聖剣使いの戦い。グレモリー眷属の騎士、木場優斗が追放された祓魔師、フリードと激しく剣閃をぶつけ合う。
悪魔の駒の一つ、騎士により強化される特徴は速度、それにあらゆる能力の魔剣を生み出す神器『
人外の速度に容易く追いつくフリード。彼が握るその剣こそ、所有者に迅さを与える『天閃の聖剣』である。彼らは剣をぶつけ合った瞬間のみ姿を現し、数秒後には離れた場所に姿を現し殺意をぶつけ合う。
それは『悪魔の駒』の一つ、『戦車』によって膂力の向上した搭城小猫や、特権こそあれ特徴の無い『兵士』兵頭一誠と匙元士郎では介入できない戦場だった。
しかし直接介入はできなくとも支援は充分に行える。一誠の『赤龍帝の籠手』による『譲渡』が木場に力を与え、匙の『
「上です!」
その警告にフリードから離れる木場。同時に上から光の剣を構える堕天使の信者たちが飛び掛る。迎撃に小猫が自分と同じ大きさの岩を投げつけた所で、光となり霧散した。
「幻影!?」
攻撃の結果に驚く一誠たちを見下ろして廃墟の屋上に科学者を思わせる一人の神父が立っていた。「聖剣計画」の責任者、人体実験を繰り返した「皆殺しの大司教」バルパー・ガリレイ。
その手には先ほど見た剣と似た意匠の聖剣が握られている。幻を操る夢幻の聖剣。それを使って戦士の幻影を作り出したのだ。
意識が離れた隙を逃さずフリードが天閃の速度で突出した小猫を襲う。最上級の聖剣による攻撃だ。下級悪魔でしかない小猫が無防備に食らってしまえば消滅は免れない。
それは理解して、しかし攻撃直後の小猫は動けない。
エクスカリバーを止められるのはエクスカリバーのみ。駆けつけたイリナの擬態の聖剣が複雑極まりない軌道で天閃の聖剣を弾き、ゼノヴィアの破壊の聖剣が体勢を崩したフリードへと振り落とされた。
フリードが弾かれた天閃の聖剣を防御に回したのを見て、ゼノヴィアは防御ごと打ち破ろうと力を込める。破壊の聖剣はエクスカリバーの中でも威力に重点を置いた能力、他のエクスカリバーでやすやすと防げるものではない。
そしてゼノヴィアは無意識に距離を取った。
フリードの体勢がオカシイ。直感的に取った行動の根拠が遅れて頭の中で形になる。あの構えはまるで二刀流のよう。そこで気づく。フリードも気づかれたことを悟った。天閃の聖剣と逆の手に現れたのは透明の聖剣。最上級の聖剣としての威力を保ちながら刀身あるいは使い手を透明とする危険極まりない能力を持つ。
それはつまり透明にした聖剣でやられる前にやるカウンターを狙っていたということ。
奇襲の機会を逃したゼノヴィアが一誠たちとイリナに合流し、にらみ合いに至ったと同時、黒鍵の矢が光の尾をなびかせ屋上のバルパーに迫った。
不意打ちの一矢は建物を食い破りこそすれ、飛び降りたバルパーに傷を負わすことは出来なかった。
ジェイルはバルパーの回避に違和感を覚え、弓を下ろす。
戦士ではないバルパーの反応が早すぎる。少しも尻ごむことなく飛び降りた。初めから警告されていたような――考察途中、ジェイルの中で時が止まり音が消えた。
何処からか身を貫く狙撃の視線。
直後、瞬き始めた星々を圧倒する一条の流星がジェイルに襲い掛かった。
「――やはりな」
コカビエルは先の戦闘で少なからず相手を理解していた。
ジェイルは戦闘に誇りを持ち込まないという点で騎士というより兵士に近い。
奇襲を狙える場所のどこかに潜んでいると踏み、バルパーを狙わせたのだ。
そしてコカビエルの狙いは目下ジェイルただ一人。
狙撃直後のジェイル目掛け放たれた槍は、精密に圧縮された光を纏い進撃する。
槍の進路に数多の大剣が出現し、その道を塞ぐ。食い止めることはできなかったが数本破ったところで光槍の軌道がずれた。僅かな角度の歪みは進むほどに大きな差となり狙いを外れ夜空を裂く。
コカビエルは投擲槍の結果を気にすることなく、槍を構え翼を羽ばたかせ追撃を仕掛けた。
コカビエルとの再戦が始まった。
勝敗は付かなかったというのはジェイルから言えば正しくない。
生きるか死ぬかがはっきりしなかっただけで、遠距離戦闘から槍使いに接近された時負けたと感じたのだ。
故にこれはジェイルにとって雪辱戦。
越境した大剣四本を自身の周りに侍らせる。切っ先を地面に向けたその剣は翼のようにも見えた。
コカビエルの翼の扱いを魔術により何度も反復経験しジェイルの能力に応用した技術。
数を重視した剣軍重射と対になるよう操作性による質を重視した刃翼陣形。
コカビエルの十枚の翼とジェイルの四枚の刃翼がぶつかり合う。
経験でも枚数でもコカビエルが勝る。しかし刃翼を使い捨て前提の相打ちを狙うことによってギリギリで持ちこたえ、完全に刃翼陣形を突破される前に爆破、もしくは自ら破棄しコカビエルの体勢を崩す。
ジェイルが新たに心に映したものを留めておけるのは三日が限度。湖面に映っていた武装は徐々に存在感が薄れ、姿が擦れ消える。その三日間で越境魔術によってコカビエルの戦いの体験を反復させたため、コカビエルと幾度の戦闘経験を擬似的に得ていた。
その結果コカビエルの動きの特徴とそれに対するコツを一度の戦闘で得ることに成功していた。
鋼が弾く輝きと光の放つ輝きが煌く戦場の下で、エクスカリバーが生み出す戦場がある。
バルパーは確かに戦闘者ではない、それは確かだった。
そしてエクスカリバーの研究者であることも事実だった。
それはつまりエクスカリバーの能力を最も熟知している人間の一人であることは疑いようが無いということ。
夢幻の聖剣を武器ではなく能力の触媒として扱い、支援に徹すれば厄介この上ない存在だった。
そしてフリード・セルゼン、彼も人外との戦闘経験の高い戦士だった。
神器や聖剣を持たず戦い抜いた人間であり、教会の教えを無視し、人外への殺意のみの戦闘狂であるが故に異端とされた彼の技量はこの戦場に立つ誰よりも高い存在だった。
同時発動こそできないが、戦場の流れを読みきり天閃の聖剣と透明の聖剣を切り替えていく。
エクスカリバーは固有能力を別としても聖剣として最上級であることに変わり無い。
光を弱点とする一誠たち悪魔、防御力の低いゼノヴィアとイリナではかすり傷が致命傷となる。そんな状況においてフリードの聖剣は最悪の固有能力を持っていた。
幻術が入り乱れる戦域に紛れる、見えない高速の暗殺者。その連携は恐ろしいというしかない。
それでも猫又の鋭い感覚を持って気配を感じ取る小猫を中心に連携すれば突破は可能だった。
しかし時折、降り注ぐコカビエルの流れ弾によって悪魔と聖剣使いの連携攻撃は中断され、フリードとバルパーに立て直す時間を与えてしまう。
一つの戦闘として見るならばジェイルとコカビエルは互角である。しかしもう一つの戦闘に勝算をもたらしている時点でジェイルよりも余裕を保っているのは間違いなかった。
ジェイルもそれを悟り、刃翼陣形による中距離戦闘を中断、堕天使の槍と翼を避け自分の有利な間合いをぶつける攻防に移行していた。
弓矢による遠距離、干将莫耶を主軸に武装転換による近距離、数と越境速度に長ける剣軍重射による全距離、これらを相手に悟られること無く切り替えていく。
そして、古の大戦を乗り越えた堕天使の経験は祓魔師の技全てを凌駕した。
まだ切り札となる武器は使っていないが、自らが練り上げた奥義さえもコカビエルには通用しなかったのだ。
「僕が囮になる。兵藤君、ドラゴンショットで幻ごと吹き飛ばすんだ!」
悪循環を辿る戦況に焦れたのか、実験体であった時の仲間を殺された憎しみに駆られたのか、木場が幻影の戦域に飛び込む。確かに赤竜帝の倍加によって強化された一誠のドラゴンショットは山の頂上を吹き飛ばした実績を持つ。
しかし隙の大きい技を熟練の戦士であるフリードが許すはずも無い。
透明な状態で潜り込んだ死角から、高速の聖剣二刀流をもって襲い掛かる。
気配を察知した小猫が一誠を押し倒し斬線から引き離した。
ゼノヴィアが攻撃を仕掛けるが、聖剣同士のぶつかり合いの余波が協力関係にある悪魔の肌を焼くに終わる。
幻の中に突入した木場。フリードが一誠を攻撃した以上、この奥に居るのは戦士ではないバルパーのみ。想定とは逆に一誠を囮としてしまった、心中で謝罪しながらも足を止めない。今あるのは聖剣と仇への恨みだけ。
ゆえに外からの投擲槍への反応が遅れた。コカビエルの一撃が幻の外から撃ち込まれたのだ。幻によって極限まで隠された一撃、驚愕に足を止めた木場になすすべは無かった。
追いついたイリナが擬態の聖剣を盾に変化させ庇ったが、成すすべなく木場もろとも吹き飛ばされた。二人は地面に叩きつけられピクリとも動かない。
代わりにコカビエルはジェイルの斬撃を肩で受けたが、黒の中華剣、干将の一撃ならば致命傷にはならない。
それどころかジェイルの腕を掴み固定、作り出した隙をコカビエルは逃さない。
光で編みこまれた短槍が盾となるべく越境された大剣をすり抜け、回避と反撃を許さない速度を持って迫る。
ジェイルは背筋に冷たい死を感じながら、コカビエルの肉体に食い込んだ干将から手を離し、壊れた幻想により起爆。
しかし堕天使は体内に捻じ込まれた爆発に一切怯むことなく、攻撃を続行する。
ジェイルは驚きながらも敵の肉体的な硬直を逃さず振りほどき、新たに越境した干将莫耶を体と槍の間に割り込ませる。斬撃だけは防いだ。しかし衝撃は支えきれない。
体勢が容易く崩された。追撃が来る。
迫り来る死の気配にジェイルの精神が薄く鋭く引き延ばされ。知覚する時間の流れを遅くする。ジェイルの頭の中で警鐘が鳴り響き、しかし体は指示を受け付けず悲鳴を上げるだけ。
首と目を最大限動かす、視界の中で既に距離を詰めた堕天使が槍を振りかぶっていた。
大剣を動かすも間に合わない、自身の体は衝撃で自由が利かない。死に際の思考が数ある選択肢を浮かべ間に合わないと結論を下す。
雷と水、紅の魔力がコカビエルを狙い撃った。万物を破壊する滅びの魔力、コカビエルとしても無防備で受けるには危険すぎる代物だ。翼をもって雷と水を容易く霧散させ、槍を振るい滅びの魔力を打ち払う。
「魔王の妹か!」
槍を回転させ、距離を取るコカビエルと同じ高度で翼を広げる四人の悪魔が居た。
最強の魔王の妹リアス・グレモリーとその女王、姫島朱乃がそれぞれの魔力を纏わせる。唯一の女魔王の妹ソーナ・シトリーが水の魔力で獣を形作り、その女王、真羅椿姫が薙刀を構えた。
「ごきげんよう。落ちた天使の幹部さん。泥棒よろしくコソコソと何をしているのかしら?」
優雅に挑発するリアスに、愉しげにコカビエルは答える。
「そうだったな! せっかく始めようというのに、まだ俺は宣戦布告をしていなかった。目的を答えるのなら――戦争だよ。お前たちの領土で聖剣による騒動を堕天使幹部たる俺が起こせば、天使も悪魔も堕天使も本腰を入れざるを得ないだろう?」
干将の壊れた幻想は肩はおろか胸の肉を大きく抉っていた。それを気にしていないかのように嗤うコカビエル。自分の命より戦争に重きを置いていることは初対面のリアスたちにも明らかだった。
せっかく追い込んだジェイルではなくリアスたちを相手にするあたり、勝敗よりも闘争を目的としているのだと分かる。
それともここで終わらせるのは惜しい、もう一度機会を与えてと思ってか。
「せっかく宣戦布告をしたんだ。そうだな、お前たちの本拠地である学園で暴れたほうが取り返しの付かないことになるだろう。よし、これより学園を破壊し街を蹂躙しよう。それを防ぎたくば存分に作戦を立てて来い。」
コカビエルはジェイルを最後に一瞥し、一誠たちへの光の奔流を置き土産に学園の方向へ飛び去った。
純粋な速力でコカビエルに追いつける者は居ない。
地上のフリードとバルパーも透明の聖剣、夢幻の聖剣の能力によって既に姿を消していた。
コカビエルが言い放った宣言。
領土を荒らされる悪魔にとっても、数万の人々が殺されるのを見過ごすわけにはいかない祓魔師にとっても負けられない一戦を告げていた。
急いで戦力を確認し、作戦を立てた上で学園まで戻らなければならない。
とにかく、ジェイルとリアスたちは急いで地上に向けて移動を始めた。