HAHAHA
カルデアにおいても(何かしらの存在により)一大イベント(強制)となるバレンタインデイ。
朝から漂うチョコレートの香りに包まれながら、マスターたる立香も日頃の感謝の気持ちを込めて、チョコレートを一人一人手渡していた。
そんな彼女の前に、山のようにチョコレートの包みを両手で抱えたベルが向こうから歩いて来た。
「あ、おはようベル。凄いチョコの山だね。」
「?あ、お姉ちゃん?ごめんね。今ちょっと前が見えなくて。」
「あはは、それだけ抱えてればね。紙袋使う?」
渡すためのチョコレートを入れていた、今は空の紙袋をベルに渡す。
「ありがと、お姉ちゃん。」
ゴソゴソと抱えていたチョコレートを紙袋にしまい、改めて向き合う。
「はい、ベル。ハッピーバレンタイン!!」
「ありがとう、お姉ちゃん。」
差し出されたチョコレートをベルは笑顔で受け取った。
なお、彼に渡されたチョコレートは全て甘くない物である。甘い味が苦手なことを(14歳には珍しい、という認識が強い為に)皆が知っていたからだ。
「僕も用意してたんだけど、部屋に有るから来てもらっていい?」
「うん、いいよ。」
部屋は近かったので、二人で移動しベルは部屋に備え付けの冷蔵庫と収納棚から包装を一つずつ取り出し、立香へと手渡す。
「はい、お姉ちゃん。ハッピーバレンタイン。」
「わぁ、ありがとう!ねぇ、開けてもいい?」
「うん。」
中には、ヘスティアやヴェルフやリリ、シルやリュー等のベルの仲間や知り合い達の顔を模したチョコレートが並んでいた。
「おぉ~!凄いねベル!でも、食べるのがちょっと勿体無いかなぁ。」
「アハハ、うん僕も作ってから気付いたんだ。それと、もう一つの方が普通の人形(ねんどろいど風)だから。エミヤ兄さんとクロヒゲ兄さんに教わって頑張ってみたんだ。あ、削ったチョコはちゃんと再利用したからね?」
「アハハ、あの二人かぁ。」
「うん、クロヒゲ兄さんはお姉ちゃんに『このカルデアに居るサーヴァント全員のフィギュアを30CMverとねんどろいど風を作って贈る』って張りきってたよ。」
「おぉ~、流石クロヒゲ、凝ってるねぇ。」
「フフ、だから僕はカルデアに来れない僕の向こうの仲間達の人形を作ったんだ。それと、食べ辛かったらメディア姉さんが魔術で保存してくれるって。」
「ううん、美味しく頂くよ。」
「そう?今食べるならお茶を用意するけど。」
「うん、お願い。」
「じゃ、ちょっと待っててね。」
部屋の簡易キッチンで紅茶を淹れる。エミヤから教わり、『一応合格』と言われた腕前で淹れられた紅茶と共にベルのチョコを味わう。
まったりとしたベルの部屋での時間は、立香を探す面々に襲撃されるまでゆっくりと流れるのであった。
甘い展開なんて、自分にはムリですわぁ。