カルデアでは、婦長ことナイチンゲールによる指導でうがい、手洗い、食事の30分後と睡眠前の歯磨き、などの生活習慣が徹底されている。
守らなかった場合は婦長による指導(ヘルアンドヘルモード)が成されるため、破る者はほぼ居ない。誰だってオキシドールでジャブジャブされたくはないからだ。
だが、意識していても徐々に歯磨きが雑になっていってしまう者も少なくないため、不定期に指導とチェックが行われ、また、子供組と呼ばれるサーヴァント達は二人一組となり相手の歯を「悪い菌と汚れをやっつける」という遊び感覚で磨くため、ルールの再確認として婦長がお手本を見せることから始まる。今回もベルがお手本の相手となる。他の子達より口のサイズが大きめのため、見せやすいからだ。
「では皆さん、これから歯磨きの見学を始めます。画面はちゃんと見えていますか?」
は~い!と元気よく返事をする見学者達。
歯医者で見かけるベッドに寝かされ、口を大きく開けたまま固定され、頭や腕、体も固定されたベル。
天井からカメラが吊るされ、見学者達はそれをモニターで見ている。
「分かっていると思いますが、見づらくなりますから動かないように」
「
「歯は順番を決めて磨きます。例えば、右下、左下、右上、左上、のように順番を決めておくと磨き忘れが無くなります。次に歯の外側、内側、食べ物を噛む噛み合わせの部分、とこちらも順番を決めて磨きます。では実演を始めます」
ナイチンゲールは歯ブラシを装備し、ベルの口に入れた。
口の中、というのは感覚器官の一つであり、実際はかなり鋭敏である。
いつものこととはいえ、他者に触れられ、刺激されるのはいまだ慣れない。
しかも婦長は真剣にやるため、その端正な顔が近いうえに、豊満な胸部が顔の傍で揺れ、時折当たるのだ。
年頃の少年であるベルにとって喜ばしくも気恥ずかしいことであるし、普段面倒をみている子供たちは歯磨きの復習のため真剣に自分を見ているため逃げ出すこともできず、ただ顔を赤く染め、この時間が終わるのを待つことしかできない。体が固定されている理由の一つでもある。
シャコシャコと口内を磨かれ、歯を綺麗にされたベルはしかし、まだ解放されない。
「次に、舌の汚れを除去します、こちらは
コクコクと素直に頷く子供たちへ、舌の表面を掻くための器具を見せながら説明をする。
それは木製で、草刈りの鎌を連想される形状だった。
「では開始します。舌を動かさずにいてください」
再び、ベルの羞恥に耐える時間が始まる。
こうして、婦長の尽力とベルの心労により、カルデアは清潔、健康を維持された生活が保証されている。
「アナタはたしか、まだ歯を磨いていませんでしたね」
「クハハハハ!鬼たる我がするわけが」ガッ
「強制連行します」
「離せ~!!」ズルズル
どうやら、悪い子に婦長の指導がなされるようだ。