カルデアで送るベル・クラネルの日常   作:自堕落キツネ

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あけましておめでとうございます

今回は声優ネタ、ということで複数のサーヴァントの話を詰めております


リュー・リオンに似た声

カルデアには、似た声の人物達、というのが何組も存在する。

中にはベル・クラネルのオラリオの知り合いに似た声のサーヴァントも居るため、不意に聞くとオラリオでの生活を思い出し、懐かしくなることもあった。

自身が知る人物との違いに微笑ましくなることもあるのだが。

 

 

─牛若丸の場合─

 

「ベル殿ぉ~!!」

 

カルデアの廊下の向こう側から、大きめの声をかけながら彼女が駆け寄ってきた。

この呼び方に、ベルはいつも同じファミリアの『ヤマト・(みこと)』を思い出す。

 

「おはようございます。牛若丸さん」

 

「おはようございます。朝から鍛練ですか?」

 

進行方向には、サーヴァント用のトレーニングルームが存在する。鍛練を生前からの日課としている者が多いため、サーヴァントの身体能力や破壊力に耐える器具を設置しているのだ。

なお、筋肉トレーニング用の器具やサンドバッグは、発明担当のサーヴァント達により発電システムを併設してあるためカルデアの負担が多少減っている。

主な利用者はレオニダス、スパルタクス、ベオウルフ、エルドラドのバーサーカー等のマッスルなサーヴァント達だ。

 

「はい、なんでもこの間のクリスマスのプロレス?というのが今流行ってるらしくて、昨日誘われたのでレオニダスさん達に技ルールを教わりに行くんです」

 

「そうだったのですか、では、歩きながら私の用は済ませてしまいましょう。」

 

コホン、と咳ばらいした牛若丸は、真剣な表情でベルの顔を見る。

 

「なんでもベル殿はオラリオに居た頃、武神である武御雷様と知り合いであったとか」

 

「はい。神様、ヘスティア様の神友(しんゆう)だそうで、その縁で(みこと)さんがファミリアに移籍してくれましたし」

 

(みこと)殿、というのは?なにやら親しみを感じる響きですが」

 

「タケミカヅチ様のファミリアの人達は、極東の島国からお金を稼ぎに来たそうなんです」

 

「極東の島国、ですか。こちらでの日ノ本のことですね」

 

「そうみたいですね。あと、ツクヨミ様、という神様も居らっしゃったそうですよ」

 

「ほうほう、興味深いですね。しかしその口振りだとよくご存知ではないようですし、話を変えますが、なにやらベル殿は私と同じ名前の短刀を持っていたとか」

 

「そう、ですね。僕が初めてランクアップする切っ掛けになったミノタウロスの角で作ってもらったんですけど、『ミノたん』って名前になりそうだったんですよ」

 

「ふふふっ、武器につけるには少々可愛らしい銘かもしれませんね。っと、ここまでのようですね、ではベル殿。鍛練頑張ってください」

 

「はい、ありがとうございます。牛若丸さん」

 

談笑している内にトレーニングルームの入口に着いた二人は、そのまま挨拶をして別れていった。

なお、牛若丸の格好にベルの目が終始、挙動不審気味だったのは仕方ないことであった。

 

 

─アタランテの場合─

 

素材集めのために山を訪れていた一行は、一時休憩として一旦解散していた。自然溢れる光景に故郷を思い出したのか、ベルは許可を貰って散策しようとしていたのだが、念のためと同じく散策をしようとしていたアタランテと共に行くことを条件として出されたため、連れ立って森へと入った。

アタランテにとって、ベル・クラネルは実年齢と外見、精神年齢が一致している、カルデアでは数少ない子供と断言できるサーヴァントだ。

ゆえに彼女にとってベルは、強いが庇護すべき対象である。そんな彼女がベルと行動を共にするのは、マスターにとって自然とも思っていた。

 

 

 

「汝とは、間接的に色々と縁があるな」

 

そういえば、とふと思い出したようにアタランテはベルに問いかけた。

 

「そうなんですか?」

 

「汝はヘスティア様の眷属(子供)であろう?ヘスティア様はギリシア神話の女神だからな、竃を司り、家を守る優しき神だ」

 

「それに、私の宝具はアルテミス様と、その・・・アポロン様に加護を願い奉るモノだからな」

 

「あ、あはは・・・」

 

ベルと神アポロンがどう関係するのかを、彼女はマスターである立香から聞いていた。ベルの世界の神々の大半が、普段の軽薄な振る舞いをする黒髭と近いものがあるということも。

ましてや、神アポロンはベルの尻を狙っていたのでは、とも聞かされていたため、申し訳なく思っていた。

 

「あぁと、でもほら!向こうとこちらではアポロン様も違うかもしれませんし!」

 

「そ、そうか?うむ、そうだな。そういうことにしておこう。他には、そうだな。汝のスキル、『英雄願望(アルゴノゥト)』と言ったな。私はアルゴナイタイの一員だったが、違う国の読み方でアルゴノーツと言うらしいな」

 

急な話題の変換に、揃って乗る二人。話題に出してしまったが、お互いにあまり深く突っ込みたくないようだ。

 

「イアソンさんが金羊毛を求めて、アルゴー号に集めた英雄達、ですね!」

 

「汝は本当に英雄譚が好きなんだな」

 

目をキラキラと輝かせたベルにアタランテは、カルデアで彼が様々な英雄に話を聞きに行き、英雄譚を読み漁っていたのを思い出す。顔馴染みということでメディアから愚痴を聞かされていたのも含めてだ。(その代わりに女装させて遊んでいたそうだが)

 

「あとはウィーネといったか。あの幼子を、汚名を被ってでも守ろうとしたのは私には好ましい。孤児院の子供たちを泣かせたのはあまりよくないがな」

 

「たしかに、ライ達に裏切り者って言われましたけど。それでも、ウィーネを守りたかったですから」

 

照れながら、だが決意を持った返答にアタランテは顔が綻ぶ。

 

「その後で和解もできたようだしな」

 

「はい。仲直りできてよかったです。でも、なんだかルゥだけ様子が変だったんですけど」

 

「もしかしたら、何か気づいたのかもな」

 

「何かって何です?」

 

「さぁ?本人に聞かないと分からないな」

 

「意地悪言わないでくださいよ~」

 

クスッ、と笑うアタランテに、ベルも冗談染みた、子供のように口を尖らせて抗議している。

と、渡されていた通信端末のアラームが鳴った。どうやら休憩時間も終わりが近いようだ。

 

「ではマスターの所へ戻るか。どちらが先に着くか競争だぞ。言っておくが負けるつもりは無いからな」

 

「はい!僕だって負けませんよ!」

 

「「よ~い、ドン!」」

 

決着は、同時であったそうな。

 

 

 

─マルタの場合─

 

ベルにとって彼女、マルタは戦闘を共にすることがなかったため、その戦い方を知らなかった。

聖女という言葉から、オラリオで最高と評される治癒師(ヒーラー)戦場の聖女(デア・セイント)』アミッド・テアサナーレのようなサポート型と思っていた。

だが、

 

「そこっ!!」

 

トレーニングルーム、サーヴァント仕様のサンドバッグからは、壊れていないのが不思議なほどやたらと重い打撃音が鳴り続けている。

ライダーの方は聖女っぽいんだけどねぇ、と立香からは聞いていたが、まさかルーラーの方の戦い方がアマゾネスを思わせる徒手空拳(ステゴロ)とは、驚きにベルは目と口が開きっぱなしである。

しかし思い返してみれば、そういう言動はしていた気もする。不意な発言や頭をワシワシと撫でられる時など、アミッド(聖女)よりもミア母さん(凄女)を思い出させることがあった。

決して口にしてはいけない。と以前立香から言われているため、うっかりがない限りは大丈夫、の筈だ。

 

「それで?ベルはさっきからそこで何してるのかしら?」

 

ギシギシと揺れるサンドバッグの前で、ふぅ、と息を吐きながら残心をしていたマルタが、先程からずっと見ていたベルに振り向きながら声をかけた。

 

「え!?あ、いや、そのぉ」

 

と、マルタの胸に少し視線が引き寄せられていたことを自覚して慌ててしまっているベルに

 

「もしかして組手の相手をしてほしいの?いいわよ、体も温まってきたことだし、三十分一本勝負いくわよ!」

 

視線には気づいていたが、年頃の少年だから仕方ない、とベルには「マルタお姉ちゃん」((あね)さん呼びは禁止している)として寛容な気持ちで受け入れているが、無いとは思っても、エネミーの中には女性の姿を持つモノもいる。それに惑わされるかもしれない、と考えたマルタは慣れさせることも含めて組手を行うために別室へと向かった。

 

ベルの意外な奮闘に血が騒いだのか、設定した時間を大幅に越えタラスクまで呼び出したことで、二人とも大説教を受けるはめになることを、この時は想像だにしなかった。

 

 

─メルトリリスの場合─(季節外れ過ぎてますが)

 

「ほら、早くしなさい。荷物持ち(あなた)がいないと買い物だって手間がかかるんだから」

 

カツカツ、と音をたてて歩くメルトリリスの後ろを、ベルとパッションリップの二人がついていく。

ベルの両腕には紙袋が連なり、背中にはリリルカ・アーデが使っているのと同じ大きさのバッグを背負っている。

 

現在ルルハワにて、サバ☆フェス開催までの暇潰しとしてあちこちを出歩き、なんとなくでアレコレを買い占めていた。

本番で使うお金は大丈夫か、と心配になるだろうが、メルトリリスは自身の能力を活用(主にネットでの本来ならハイリスクハイリターンな稼ぎかたを)して資金を用意したのだが、稼ぎ過ぎて余りあるため「邪魔になるから豪勢に使う」と二人を連れ回していた。

フィギュア仲間で裁縫の腕も優れているメディアへの現地特有の布などの土産や、嫌味な童話作家のアンデルセンへの嫌がらせじみた土産、物好きなマスターへのからかいを含んだ土産などをベルに持たせ、背負わせ、上機嫌で歩いていた。

 

「ごめんね、ベル。メルトったら、こんなに物を持たせちゃって、私の分もだけど」

 

「いえ、いいですよ、リップ姉さん。お二人だけだと不便でしょうから」

 

ベルの隣でパッションリップが申し訳なさそうに謝るが、ベルは気にした風もなく、むしろ「二人の力になれて嬉しい」ように見える。

 

メルトリリスとパッションリップ、二人はそれぞれの事情で腕が不自由なため、ベルが二人の腕として色々代わって行動していた。

 

「リップ、ベル。次はあそこよ」

 

「カフェ、ですか?」

 

「そうよ、あそこのパフェが絶品らしいの。何人かの舌の肥えたサーヴァントがべた褒めしてたそうよ」

 

食事を取るようになって、特に甘味を好むようになったメルトリリスとパッションリップ、買い物の次は何軒も梯子しての甘味巡りを行うようだ。

 

ところで先程書いたように二人は腕が不自由である。

 

「・・・ということは」

 

「えぇ、そうよ。今度は溢さずに食べさせなさい?朝みたいに服にこぼしたらお腹にヒザ、だからね」

 

「あ、あはははは」

 

ベルは引き攣った笑顔になってしまう。

朝食の時、ベルは二人の口元へ食事を運んでいたのだが、うっかりメルトリリスのスカート、パッションリップの胸元にパンケーキのメープルシロップを溢してしまい、着替えを余儀なくされたメルトリリスに大層怒られてしまったのだ。

パッションリップは水着に近い格好だったため胸に直接かかったしまい、ベルもパッションリップも顔を真っ赤にしていて無理そうだったため、傍を通りがかった優しい女性に拭き取ってもらっていた。

 

「さ、早く行くわよ」

 

足早に向かうメルトリリスを二人も追いかけ、店の中へと入っていった。

 

ベルは無事溢すことなく食べさせ終えられたことに心底安堵していたそうな。




今更ですが、書くにあたってキャラクターのマテリアルとボイスを見て、聞いてから書いてるのですが、キャラクターの人物像をきっちり把握できてる自信はないので
「このキャラはこんなんじゃない!」っていうのはご容赦ください

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