ハイスクールD×D 魔王ルシファーの親友はルシファー   作:竜星

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第3話:明星の召喚者

 深夜の廃屋(はいおく)

 濃い敵意や殺意が立ち込めている。俺たちに何かが近づいて来る。まあ、間違いなくはぐれ悪魔だ。

 

不味(まず)そうな臭いがするぞ? でも美味そうな臭いもするぞ? 甘いのかな? 苦いのかな?」

 

 地の底から聞こえるような低い声音。そして漂う不気味さ。

 

「なあ、リアス。あれが標的のはぐれ悪魔?」

「ええ。あれがはぐれ悪魔バイサー、あなたの標的よ。さっさと消滅しちゃいなさい」

「年下のガキに命令されるのはちょっとムカつくが、まあさっさと終わらせるってことには同意だな」

 

 ケタケタケタケタケタケタケタケタ……。

 変な笑い声が俺たちの耳に届く。

 人間とも悪魔とも違う声。紛れもない異形の存在が発するものだ。俺たちの前に姿を現したのは、上半身裸の女。しかも下半身は獣だ。

 両手に槍らしき得物を持った異形の存在が、俺に向かって突っ込んで来る。

 槍の一突きだったが、それを俺は避けることなく片手で受け止めた。

 

「遅い。しかも軽い」

 

 俺は槍を押し返して、はぐれ悪魔バイサーを後方に吹っ飛ばした。

 

「主のもとを逃げた挙句、己の欲求を満たすためだけに暴れまわる異形の存在よ。我――ウィルフレッド・アルシエルの名において、消し飛ばしてやる」

 

 俺は手招きして挑発する。

 

「こざかしいいいいぃぃぃっ!! 小僧ごときがぁぁぁぁぁ!!」

「小僧? はは。面白いこと言ってくれるじゃないか。雑魚になめられるのは、(かん)(さわ)るな」

 

 槍を振り回して攻撃して来るバイサー。そのことごとくを俺は避ける。

 受け止めることもできるが、どれほどの実力なのかを一応確かめてみるのもいい。だが、この槍の攻撃だけでも十分に把握できる。分かっていたことだが、凄い弱い。

 

「話にならん」

 

 俺はさきほど同様、バイサーの槍を受け止めて後方に吹っ飛ばす。すぐに体勢を整え、バイサーが俺に突っ込んで来る。

 もう付き合う気のない俺は、片手をまっすぐ突き出して炎の魔力を放つ。

 

「ぎぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 バイサーの絶叫が(とどろ)く。

 俺の攻撃はバイサーの首と胴体の付け根を貫いた。五メートル近い巨体が勢いよく倒れる。が、いつまで経っても立ち上がる気配がない。

 

「え。まさか、あれだけで気絶しやがった? さすがに驚きだ。ここまで弱いとは」

「すっげー」

 

 兵藤一誠のそんな呟きが聞こえてきた。

 

「なあグレイフィア。俺、鈍ってるどころか、かなりパワーアップしてるみたいなんだが」

「そうね。私も驚いてるわ」

「ウィル。あなたの実力がとんでもないだろうことが、少しだけど分かったわ。早く消し飛ばしなさい」

 

 リアスに言われ、俺はさっさと決着を着けようと魔力による攻撃を実行に移そうとする。

 俺は右手を胸の前あたりに突き出し、上にかざした。そして魔力を球体状に凝縮させていく。

 ただ純粋な魔力。炎や水、雷をはじめ、悪魔の貴族が持つ家の特性すらも含んでいない純粋な魔力の球体。だというのに、それは見た目にも危険だと思える異様なオーラを放っていた。

 

「はぐれ悪魔バイサー。俺はお前が何をしてきたかもしれない。ただ、はぐれ悪魔は冥界の危険因子であることに違いはない。俺は友の冥界を守りたいという思いのため、お前を排除する」

 

 バイサーの体が微かに動いた。気絶から目覚めたのだろう。

 ケタケタケタケタケタケタ……。

 弱々しくも、笑い声が俺に届く。

 

「バカらしい」

 

 微かに異形の声とは思えない弱い声で言ってきた。

 

「最後に言い残すことがあれば、聞いてやる」

「……殺せ」

「そうか」

 

 魔力の球体が一気に巨大化していく。そしてバイサーの全身を覆った。次の瞬間にはバイサーの体が膨れ上がり、異様な音を立てて弾け飛んだ。

 それはまるで、膨らませ過ぎた風船が破裂するかのようでもあった。

 

「たく。面倒なことに駆り出されたもんだ」

 

 溜息を一つ吐いた俺が言う。

 

「お疲れ様。あなたの実力は見させてもらったわ。最後の攻撃。よく純粋な魔力だけで、あれほどの威力を発揮できるものね。さすがにあれには驚かされたわ。私はアルシエルとしての力を見られるかもしれないと期待したのだけど」

「ごめんだ。あの程度の相手に本来の魔力を使うつもりはない。純粋な魔力。それだけで十分だ。俺にはそれを可能にするだけの破壊力がある」

「……そうみたいね。まあ、いいわ。私の下僕たちにも良い経験になったでしょうから。あなたの戦闘を見るというのは。私自身、少し勉強させてもらったわ」

「それは良かった」

 

 リアスは戦闘の最中、新人悪魔こと兵藤一誠に色々と説明していたようだ。

 悪魔の戦いとは何か。悪魔の駒のことも色々と言っていたみたいだが、それを兵藤一誠は実感することはできていないはずだ。特性について聞いても、それを直接目にしたわけではないのだから。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 グレイフィア、黒歌、白音と自宅に戻っていたはずの俺は、どこか見知らぬ場所におそらく召喚されていた。

 しかし俺はまだ、リアスの眷属たちの行っているチラシ配りなどを命じてやらせているわけではない。だから召喚されるはずがなかった。が、俺は一つの可能性に思い至っていた。魔法によって召喚されたのではないかと。

 視線の先には、外見的年齢は同じくらいの少女が玉座を思わせる椅子に座っていた。その後ろには二人の従者らしき少女たちの姿もある。

 金にも銀にも思える綺麗なストレートの長髪をした美少女。瞳は青く、頭にはティアラのようなものが見て取れる。指には指輪をしていた。

 神聖とでも言うべき近寄りがたい独特なオーラを(まと)っている。が、どこか(はかな)げにも見える。

 少女はグレイフィアを凌駕するのではないかと思うほどの整ったプロポーションをしていた。

 俺の直感が訴えかけてくる。この少女はただの人間ではないと。

 

「俺を呼び出したのは、お前か?」

「はい。僭越(せんえつ)ながら、魔法使いとして悪魔召喚をさせていただきました。あなたは魔王ルシファー様で間違いないですか? しかし噂に聞く御姿とは違うような気もしますね。なぜでしょう。わたしは魔王ルシファー様を呼び出すために召喚魔法を研究し尽くし、求めるものを完成させて実践に(のぞ)みました。魔王ルシファー様でないはずがないのですが」

 

 と、少女は聞いてから自分で懇切丁寧(こんせつていねい)に説明までしてくれた。

 

「娘。俺はウィルフレッド・アルシエル。魔王ルシファーではない」

 

 しかし驚いた。

 真の魔王の血筋である俺を召喚させるほどの魔法を自ら編み出し、それを可能とする。並の魔法使いではまず不可能だ。

 目の前の少女はもしかしたら、相当な逸材なのかもしれない。

 

「違うのですか。それは残念です。私は失敗してしまったのですね」

「そう落ち込むな。それより娘。お前は何者だ?」

「そうですね。悪魔召喚でも自己紹介はしておくべきですね。私はあなた方悪魔の中で、『七十二柱(ななじゅうふたはしら)』と呼ばれる者たちをかつて使役した魔法使い――ソロモン王の末裔(まつえい)。今はシバと名乗っております。しかし本名ではありません。私は生まれて今まで名を持っておりません。ちなみに所属は『黄金の夜明け団(ゴールデン・ドーン)』です。まあ、組織内でははみ出し者ですが」

 

 俺は少女のその自己紹介を聞いて驚きを隠すことができなかった。

 当然だろう。目の前に居る少女は、()の魔法王――ソロモンの末裔を名乗っている。それが真実にせよ、虚偽(きょぎ)にせよ、冷静でいられるはずがない。

 仮に真実とするなら、さっきから俺がこの少女に感じているただならぬものにも多少なりとも説明がつく。

 俺を見た少女は小さく笑んだ後に言う。

 

「驚いてますね。でも事実ですよ。魔法王ソロモン。その末裔が居たことに驚かれているのですか?」

「まあ驚いてないと言えば嘘になるな。だが、シバの女王がソロモンの子を身籠(みごも)ったという伝承はあるわけだからな。その末裔が今も存在していても、不思議はないな」

「私は虚偽など申し上げておりません。魔法王ソロモン――真の末裔です」

「聞かせてくれないか。お前はどうして魔王ルシファーを召喚しようとした?」

 

 わざわざ召喚魔法を研究し、求めるものを完成させてまでルシファーを呼び出そうとした理由。それを俺はどうしても聞いてみたかった。

 特に理由もなく、そんなことをするものなどいないはず。そこには何か特別な思いがあるはずだ。

 

「私の願いを聞き届けていただきたかったからです」

「願い?」

「そうです。願いです。私の願い――それは人間の身である以上は手にすることはできないでしょう。伝承の中には人の身でありながら、その願いを手にしたものもいます。しかし、今の私には手にすることはできないでしょう。それを手に入れたという記録は、もう数百年以上も確認されていないのですから」

「お前の願いを察することはできるが、一応は聞いておこう」

「私の願いは一つ。永遠の命です。それを授けて下さればいいのです。私にはもう時間があまりにないものですから」

 

 俺はソロモンの末裔だという少女の内に目を向ける。

 そこには今まで俺が感じていた神聖さとはかけ離れた何かが(うごめ)いていた。その正体は正直わからない。生物と定義できるものでないことだけは確かだ。

 

「時間がないと言ったのは、その体の内に蠢くものが原因だな?」

「その通りです。私の願い、叶えてはいただけませんか? どんな対価でもお支払いします。この短い命以外であれば」

「お前の願いを聞き届けることはできない」

 

 俺ははっきりと告げた。

 予想していたのか、ソロモンの末裔はうっすらと悲しげな笑みを浮かべるだけだった。

 

「しかし、それは魔法使いであるお前と、悪魔である俺の間に契約を結ぶ場合の結果だ。その願いを叶えてやる方法が一つだけある」

 

 そう言ってから俺はソロモンの末裔に言う。

 

「お前に人間を辞めるほどの覚悟があるのなら、お前の願いを叶えてやれないことはない。代わりにお前の全てをいただく。それでもいいならばの話だ」

「聞きましょう」

 

 悪魔の事情にも精通している魔法使いである以上、この提案が何を意味しているのかは薄々感じているはずだ。

 

「お前を眷属悪魔として転生させる。そうすれば永遠に近い寿命を得ることができ、お前の願いは叶うことになる。永い時間をかければ、お前の中で蠢くものの正体も、それを除去する方法も見つけることができるかもしれない」

「私の中に蠢くものの正体なら分かっています」

「聞かせてもらっても?」

「構いません。これはソロモン王より続く魔法の代償(だいしょう)とでも言うべきもの。最初は微量なものでありました。しかし、それが世代を超えて子々孫々(ししそんそん)に至るまで継承され続け、私の代には三十年も生きられないほどに肉体を(むしば)むものとなったのです。今日(こんにち)に至るまであらゆる魔法に手を出して、成功と失敗を繰り返した結果とも言えます」

 

 魔法に代償はつきものではある。しかし、世代を超えてまで肉体を蝕む代償など見たことも聞いたこともない。俺が初めて遭遇したケースだ。

 

「私の運命と受け入れることができれば簡単なのですが、残念ながらそれはできそうにありません。私は天命を成就することもできず、死すということを受け入れられない。それならば、魔王ルシファーにすべてを捧げてでも運命に逆らってみようと思ったまでです。まあ、それも失敗してしまいましたけど」

「娘、選べ。お前が運命に逆らいたいと本当に望むなら、その命を俺が拾ってやってもいい。お前に迫る死を受け入れるか、悪魔として運命に逆らうか」

 

 俺は別空間に保管している『悪魔の駒』が入った箱を手元に出現させると、『僧侶(ビショップ)』の駒を取り出した。それも『変異の駒(ミューテーション・ピース)』の一つを。

 おそらく、目の前に居るソロモンの末裔を眷属にしようと思えば、『僧侶』の駒一つでは足りないはずだ。内に蠢く何かがある種の変異的な力を娘に与えているのは間違いない。

 そうなれば駒を二つ消費することになる。ならば、ここでこの駒を使ってしまうのも悪くない。

 

「さあ、どうする?」

「悪魔に転生ですか。このまま死ぬくらいなら、それも悪くはないでしょう」

 

 そこまで言って、ソロモンの末裔たる少女は俺の目をまっすぐと見る。

 

「悪魔ウィルフレッド・アルシエル。私は今より人間を辞め、あなたに全てを捧げましょう」

「眷属悪魔として転生する。そういうことでいいんだな?」

「そう受け取ってもらって構いません」

 

 俺は『変異の駒』である『僧侶』の駒をソロモンの末裔に投げ渡した。

 

「私はあなたの『僧侶』の駒を受け取らせていただきます」

 

 ソロモンの末裔の胸の中に、漆黒の輝きを放ちながら『僧侶』の駒が沈んで行く。

 

「どうだ? 何か変化はあったか?」

「いえ。今のところは特に何も変化はありません。しかし、私の中で蠢くものの力が小さくなっているのは感じます」

「それは良かった。これでお前は俺の眷属になったわけだ」

 

 と、そこまで言って俺は面倒なことをしてしまったのではないかと思い返した。

 大きな戦力を得たのは嬉しい限り。しかし、ソロモンの末裔を眷属にしたことで、ここのところ触れていなかった問題を自分で蒸し返したことになっていたことに気付いた。

 

「……どうしよう」

 

 このことをあの二人が知れば、必ず蒸し返してくるに決まっている。そして今回ばかりは先送りにすることはできないだろう。

 こんなところで、思い至ったら即行動の自分の(さが)が裏目に出るとは思わなかった。もう少し考えるべきだった。眷属にする前に思い至っているべきだったことだが、こういう時に限って、後になってから気付く。

 

「どうかしましたか?」

 

 俺の様子に何か異変を感じ取ったのか、ソロモンの末裔が聞いて来る。

 

「いや。お前が気にすることはない。それよりも。お前のことは何と呼べばいい? ソロモンか? それとも今名乗っているというシバで呼ぶべきか?」

「あなたにお任せいたします。わたしは自分の名にこだわりはありませんので」

「そうか。じゃあシバと呼ばせてもらおう。ソロモンよりも呼びやすいし」

「私は何とお呼びすればよろしいのでしょうか? 主様? それとも王様と呼ぶべきでしょうか?」

「いや。普通に名前で呼んでくれていい。お前がその呼び方でいいのなら別に受け入れるが、できれば名前にしてくれ」

「分かりました。ではウィルフレッド様とお呼びしますね」

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

「帰ったぞ」

 

 召喚されて自宅に魔法陣で転移して帰った俺だったが、出迎えた三人の顔はいつになく険しかった。

 

「ねえウィル。後ろの娘、誰なのかしら?」

 

 グレイフィアが聞いてくるので、俺は怒られるのを承知の上で答えた。

 

「新しく俺の眷属になった『僧侶』のシバ。()のソロモン王の末裔だ」

 

 その答えにグレイフィアよりも先に、黒歌と白音が異議を申し立てた。こうなるのを予想していたとはいえ、面倒なことになった。

 

「ウィルちゃん。私たちはまだ眷属にしてくれないのに、新しく作って来るってどういうことかにゃ」

「そうです。新しい眷属を作るのなら、私たちを今すぐにでも眷属にして下さい」

「……やっぱり」

「当然にゃ」

「当然です」

「もうちょっと待ってって言ったら?」

「新しい眷属を作って来てる以上、これ以上は待てないにゃ」

「待てません」

 

 どんどんと俺に迫って来る黒歌と白音。壁際にまで追いやられた俺に逃げ道はなかった。

 

「さっさと駒を出すにゃ」

「出して下さい」

 

 二人して、俺の体中を触りまくって駒を探し出した。残飯(ざんぱん)を漁っている猫のようにさえ見える。

 俺は上着を脱がされた。

 黒歌がぺろりと舌なめずりする。何か、それだけで凄い嫌な予感がした。

 

「にゃあ!!」

 

 黒歌が俺の下着に手を伸ばそうとしたところで、グレイフィアが止めに入った。凄いオーラを漂わせている。

 

「黒歌、白音。そこまでになさい。駒を出させる方法は他にあるわ」

 

 有無を言わさないグレイフィアの圧力に、黒歌と白音は逆らうことができなかった。いや、実際には二人だけじゃない。これは俺にも向けられることになる。

 

「ウィル。さっさと駒を出しなさい。こんなところで死にたくはないでしょう」

「……はい」

 

 別空間から箱を取り出し、中から二つの駒を取り出した。『戦車(ルーク)』の駒が二つ。

 

「黒歌。お前は生粋のウィザードタイプだから『僧侶』でもいいと思ったんだが、弱点を補うためにも『戦車』に据えようと思う。白音は黒歌とは対照的にパワータイプ。長所を伸ばすために同じく『戦車』。お前たちを姉妹揃って『戦車』に据えることにした。お前たちの力なら、並の悪魔なら駒を二つ消費しそうなものだが、俺なら一つの消費で何とか眷属にできるだろ」

 

 王の資質次第で転生させる駒の数は少なくできる。開発したアジュカ本人から聞かされたことだ。俺なら、大抵の相手は一つの消費ですませられるのではないかとも言われた。

 その大抵の相手に含まれなかったのが、ソロモンの末裔であるシバ。

 本人の潜在的(せんざいてき)、すでに発揮されている素質もさることながら、あんなものが内にあれば、それはもう一つですませられる範疇を超えている。いくら俺が魔王の末裔だとしても。

 

「異論は?」

「ないにゃ」

「ありません」

「そうか」

 

 俺は二人に駒を手渡した。しかし、凄い勢いで俺の眷属は増えている気がする。

 最初のグレイフィア。そしてシバ。今の黒歌と白音。一週間も経たないうちに四人の眷属を得ることになった。正直、すぐにでも全ての眷属が集まって来るのではないかと怖くなる。

 グレイフィアもシバも行ったように、黒歌と白音も駒を手にして決まり文句のようなセリフを口にする。

 

「私――塔城黒歌はあなたの『戦車』の駒を受け取らせていただきます」

「私――塔城白音はあなたの『戦車』の駒を受け取らせていただきます」

 

 二人の胸の中に駒が沈んで行った。

 俺はやれやれと頭を掻きながら、その光景を見ていた。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 色々あったが、明日に備えて寝ようとしていた時だった。俺の部屋のドアが開いた。

 気になって視線を向けると、そこにはグレイフィアの姿がある。何、どういうことと俺は状況を把握することができていなかった。

 黒歌と白音は姉妹で同じ部屋を与えているし、グレイフィアにも自身の部屋を与えていた。それは今日から同居人となったシバも例外ではない。

 自室があるはずのグレイフィアが、俺の部屋にこんな時間に訪れていることが理解できなかった。

 

「ちょっと、いいかしら?」

「……ああ」

 

 電気もついていないために顔の表情も見えないかと言うと、悪魔は夜目が効き過ぎるために昼と同じようにはっきりと視認することができる。

 グレイフィアはなぜか頬を赤らめていた。

 

「どうした、グレイフィア。こんな時間に何か用でもあるのか?」

 

 てか、何で枕を持参しているのか説明を求めてもいいのだろうか。

 

「そういうわけではないのだけど」

 

 と言いつつも、俺の部屋に侵入してきた女王様は同じベッドで横になった。

 

「……あ、あの、グレイフィアさん。これはどういうことでしょう? 説明を求めても?」

「私はあなたの『女王』。お互いにかけがえのない絶対的な信頼ができる間柄にならないといけないの」

「それは分かってる。それに今更言うのもなんだが、俺はお前に絶対の信頼を寄せてる。それはお前も一緒だと思ってたんだけど」

 

 布団を深くかぶって、俺に顔を見られまいとしているグレイフィアが更に答える。

 

「それはわかってる。でも新しい眷属が増えて、もっと強固な絆をあなたとの間に築いていかなければと思ったの。だから、わたしもこの部屋で生活することにするから」

「……マジで?」

「ええ」

「いや。この家に一緒に住んでるってだけで、十分に絆を築いていけると思うんだが」

 

 グレイフィアが布団から顔を出して、俺を抱き寄せる。豊満に実った双丘に顔が埋まる。

 普段の服装ならまだしも、今のグレイフィアは純白のネグリジェ姿。それもかなり薄く、下が透けて見えていた。

 正直、この状況は男として嬉しい限りではある。しかし、グレイフィアがこんなことをしてくるなんてどういうことだ。らしくない。

 

「……グレイフィア。どうしたんだ? らしくないだろ」

「そんなことないわ。言ったでしょう。あなたとの絆を深めるためだって。それにあの二人や、新しく加わったシバに後れを取ることはできないもの」

「……どういうことだ?」

「相変わらず鈍いのね。でもいいわ。今はそれでも。いずれ私たちの気持ちに気付いてくれれば」

 

 わけの分からないことを言うグレイフィアに、俺の脳内は「?」で埋め尽くされてしまった。

 

「……私たち?」

 

 俺の返しにグレイフィアはただ笑むだけだった。

 そろそろ放してくれないものかと俺は思案していた。これでは寝ようにも眠れない。それどころかいろいろと起きてしまうではないか。

 そんな俺の気持ちなど知る由もなく、グレイフィアは俺を枕にして眠りにつきはじめた。まあたまにはいいかと思い、俺は明日寝不足になるのを覚悟した。




第3話です。

今回は一気に三人、眷属が増えました。
二人はもともと眷属になっていたようなものですが、こんな形で眷属にすることになるとは思ってなかったです。
新しい眷属ができたら二人とも黙ってないだろうなと思い、このような形になった次第です。
できるだけ早く出したいと思っていたオリジナルキャラも今回出すことができました。

ハーレムもののつもりなのに、今のところあまりハーレムできないことに苦悩してる今日この頃です。
グレイフィアばかりが目立ってる気がするので、そろそろ他の子たちも主人公と絡ませなければと思っております。
次の話で、猫姉妹と絡ませられればと思ってますが、できるかどうかはまだわかりません。

完成したら投稿していこうと思ってましたが、毎週土曜日更新に変えようかと考えております。できたら、土曜日と日曜日の連日更新をしていきたいです。
でも連日になるとキツイかもなので、多分土曜日更新になると思います。
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