視界が晴れる。目を開き、
破壊された屋敷の残骸、地面に見える大穴、そして私を見据える金髪の少女。
「吸血鬼…か。自ら出るとか言ったけどあんくらいなら自分で撃退できんもんかね…。武器もどっかいってるし…」
『アははハははハハハ‼︎』
少女が突っ込みながら薙いだ炎をジャンプで躱す。それと同時に、近くに落ちていた屋敷の残骸を掴み、力を込める。
「上手く出来るかなっと…お、出来た出来た」
残骸が黒い炎に覆われ、たちまち身の丈程の漆黒の大剣へと姿を変えた。それを肩に担いで、少女へと走りーー
『アハは、スゴいすごい!もっと私とアソ「遅い」ーアアアッ!』
ー振り下ろす。切れない様に手加減したけど、それでも勢い余って遠く吹き飛んだ。
「うーん、やっぱりこの程度なら1人でやれただろうに…剣作っただけで割と力使ったみたいだけど」
『アハはハハハハ‼︎アナタはトッテモ強イのね‼︎私が、私ガ壊してあゲル‼︎ 禁弾【カタディオプトリック】!』
少女から大小さまざまな球体が不規則に曲がりながら私に飛んでくる。
「これが何だっけ、スペルカードってやつだっけ。確かに色が沢山で綺麗とは思うかな。」
弱いけど。一応剣を盾にはしてるけど、衝撃とか全然来ないし。
「えーとこの子のスペルはっと…これかな? 斬符【エレメントブレイド】」
適当なのを引っ張り出して剣をすくい上げる。たちまち黒い炎が吹き上がり、周りの地面ごと少女を飲み込んでいった。
「あ、やばいやっちゃったかな?殺しちゃ駄目そうだったから加減したんだけど…」
地面とか陥没してるしやりすぎたかな?そんなすぐ死ぬとは思わないけど。試しに残骸を投げ入れる。
「あ、生きてた生きてた」
思いっきり火柱が上がって残骸と周囲の地面が燃えた。そのまま少女が飛び上がり、こちらに向かって手を向けて来る。表情的に怒ってるのかな?
『ウウウ…!壊ス壊ス壊ス壊ス…‼︎QED【495年の波紋】!!』
周囲から鋭い弾が飛んでくる。弾が小さいから前より弱いんじゃないかなあれ。
「まぁ良いや。こっちも時間無さそうだし…そろそろ終わらせないとね。」
少女目掛けて飛ぶ。飛んでくる弾を無視して少女に剣を打ち付ける。
『ウアアアアアア‼︎』
少女も剣を振りかざして応戦してくる。何度か打ち合い、鍔迫り合いになった所で私の剣が、徐々に押し込まれ、そのまま弾かれた。
「あっちゃー、やっぱ純粋な力だと無理かな」
『アハはハハハハは‼︎コレで終ワリヨ‼︎』
がら空きになった胴体へ剣を突き入れて来る。私は反対の手を剣にかざして、
「はい残念っと」
『!!』
剣の先端を素手で掴み取る。そしてーー
「
少女の剣を、私の黒炎が包み込む。そのまま剣は形を変えて私の手に収まった。
「よっと!」
『グウウウッ…⁉︎』
そのまま両手の剣で少女を叩き落とす。剣を炎の弾に変えて、少女に向ける。
「じゃ、これでサヨナラ。 ーーー【月蝕】」
炎を放つ。少女を挟む様に左右から迫り、着弾したそれは、巨大な爆発となり少女を吹き飛ばした。
「ふう、終わった終わった」
地面に降り立ち、少女の飛ばされた方を見る。所々服が焦げたりしてるけど、多分生きてるだろう。
「それよりも、こっちが問題と…」
近くの残骸の上に倒れこむ。
「もうこの子の魔力のほうが持たないし、ここで一旦休むかな」
屋敷の方からいくつか足音が聞こえる。多分この子を探しに来たんだろう、その時に私のままだと色々とややこしい。
「もっと力が無きゃ、約束を果たすなんて夢のまた夢だよ、少年」
こちらに向かって来る足音を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。