かの雄々しきヴィクトールに祝福を!   作:ばくねつしゃいにんぐ

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アバロン帝国詩序章 ヴィクトールの勇 アバロンの勇

 帝国歴1000年、かの雄々しきヴィクトールは憤った。魔物共が跋扈し、麻のように乱れた大陸に再度覇を唱えんと平定に尽力する、偉大なる父の居ぬ間に攻めいったかつての英雄に憤った。

 クジンシーである。家々を打ち壊し、今まさに罪なき町人に手を掛けようと酷薄に嗤うのはかつての英雄クジンシーである。

 怒りに体を委ね、拵えさえ満足に仕上がっていない大剣を掴み、具足も満足につけぬまま、襲いくる魔物共を遍く打ち倒し、守るべき民を宮殿へいざなう最中であった。守るべき民である。守るべき民をかつての英雄が今まさに殺めんと嗤っているのである。

 

 許せるものか、断じて許せるものか

 

 かの雄々しきヴィクトールは憤った。満身創痍でありながらも、不世出と評された己の身体を酷使し、刹那の間にクジンシーへ詰め寄り、未完の大剣を叩き込んだ。

 

 アバロンは私が守る

 

 かの雄々しきヴィクトールの決意とともに、荒れ狂う大河がごとき剣閃が煌めく。裂帛の気合とともに放たれた流し切りはクジンシーの腕を鮮やかに切り裂いた。

 

 浅い ならば今一度

 

 よろめきながらもなお嘲笑うクジンシーへ向け、アバロンの歴史と己が使命を込めた必殺の流し切りは放たれた。

 強かに胴を穿ち、かつての英雄はまさに風前の灯。だがなおヴィクトールを嘲笑う。

 

 ほう これはたまらん

 

 そうつぶやき放たれた邪法ソウルスティールは非情にもヴィクトールの胸を貫いた。見る間にクジンシーの傷は癒えた。

 雄々しきヴィクトールは憤った。憎き敵も見えぬ。自らの鼓動も聞こえぬ。偉大なる父、優しき弟。ああ麗しのアバロン。己の未熟が故に守れぬのか。己の未熟が故に失うのか。許せぬ。許せぬ。

 

 アバロンは私が守る

 

 既に命の火は消えながらも立つ雄々しきヴィクトール。否、彼はヴィクトールではなくアバロンである。麗しのアバロンである。

 力なく振るわれた未完の大剣は深々とクジンシーに突きたち砕けた。かの剣もまたアバロンである。

 砕けた剣は楔を残した。偉大なる父、優しき弟が為の楔となった。

 アバロンとなったヴィクトールに恐れをなし、敵わずと見るや逃げ出すクジンシー。自らの内に撃ちこまれた楔に気づかず逃げ出すクジンシー。

 

 ああアバロン。ああアバロン麗しの。

 

 力尽き地に伏した彼を囲み嘆くは民。アバロンの民である。

 

 ああアバロン。ああアバロン麗しの。

 

 偉大なる皇帝レオンが叫び駆け寄ろうとも、アバロンは嘆く。未だアバロンの夜は明けぬ。未だアバロンの夜は明けぬ。

 

 だがアバロンの夜明けは近い。

 

 帝国の夜明けは近い。




あーばろんあーばろんうーるわしのー
未完の大剣=クレイモア→Claymore→Crymore
なーんてね
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