ロクでなしTS転生者と禁忌教典   作:男の子に、オレはなる!

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ロクアカ八巻を読んで衝動的に書いた。反省はしている、後悔はない。女体化グレンが思った以上にどストライクだったのが悪い(すっとぼけ
ちなみに主人公は追走日誌を読んでいない設定ですので悪しからず。
見切り発車で不定期更新ですが、どうぞよしなに。


オレが主人公に出会った日

 ある日、見上げた空には城が浮かんでいた。神秘的な光景を前にして(オレ)はただ一言──

 

 

 ──(ヤロウ)、ぶっ殺してやる!!

 

 

 レーン=グレダス。理不尽な己の境遇に対する心の叫びであった。

 

 

 

 レーンside

 

 

 転生をした。二次創作界隈でもはや定番の神様転生である。しかも転生先は生前に読んでいたラノベの世界ときた。ロクでなしな魔術講師が主に女生徒達ときゃっきゃうふふ、時々バイオレンスするファンタジーだ。

 

 転生理由は知らん。オレを転生させた神は何やら長々と前口上を語っていたような気もしたが長すぎて途中から右から左に受け流した。家電とかの操作は説明書とか読まずに使って慣れる派なんだよ。

 

 ともあれ転生である。転生先を先に説明されたオレはとりあえず神がやたらと特典に勧めてくる『異能力』を全力で拒否し、もっとまともなのを寄越せと小一時間ほど言い争った。だってこの世界での異能力の扱い酷すぎるもん。便利だったり超強力な能力でも伴うリスクが高すぎますわ。

 

 結果として異能力を押し付けられることは阻止した。しかし相手さんとしては面白くなかったのか、とんでもないことをしでかしてくれやがった……!

 

『君、TS転生してもらうから』

 

 許せない、度し難い強行かつ非道である。折角可愛い女の子が沢山いるライトノベルの世界に転生できるというのに、何が楽しくて女の子になって転生せねばならんのか。誰得だよくそったれ。

 

 女の子になれてラッキー? いつでも何処でも触れる女体をゲット? 馬鹿を言え、自前(そんなもの)に一体どれ程の価値があるというのだ。

 

 いいか、よく聞け何処にいるとも知れない(阿呆)。手に入らぬからこそ、美しいものもあるんだぞ。こんないつでも手に取れて触れるものに何の価値があるッ!?

 

 オレは諦めんぞ……なに、手立てはある。ここはあのロクでなし魔術講師の世界なのだ。ならば原作でもあったあの手が使える。

 

 女体化ならぬ──男体化。

 

 主人公たるグレン=レーダスが男子禁制の女の園、私立聖リリィ魔術学院に臨時講師として潜入する際に使った手段。その手段をそのまま真逆にして男体化すればオレの勝ちだ。ザマァみろ!

 

 というかそもそもだ。オレの名前がモロにその時のグレンそのものである。容姿は子供なので断定はできないが同じだろう。手抜きも大概にしろよ(馬鹿野郎)。次会ったら絞め落とす。まあおかげですぐに男体化の可能性に気付けたのだけど……。

 

 最大の懸念はオレに魔術の才能があるかどうか、そして仮にあったとして如何にして魔術の世界に踏み込むかである。

 

 今世のオレはどういう訳か気づいたら孤児院の前にボロボロの状態で倒れていて、名前と前世の記憶以外の記憶がさっぱりなかった。転生したことによる弊害なのか(ヤロウ)の手違いかは知れないが、今のオレは何処にでもいるちょっと不幸な境遇の子供に過ぎないのだ。

 

 ロクでなし魔術講師の世界の魔術は基本的に一般市民には秘匿されている。理由はそれこそ知らん。世界の真理がどうこうとか崇高なる目的が云々とかあれこれ言っていたが、詰まるところ一般市民にとってはあの空に浮かぶ城と同じだ。手を伸ばしても届かないものである。

 

 だがそれでは駄目だ。だってこのままだと下手したら一生を女の子のままで生きなければならないんだぞ? い、嫌だ! オレは可愛いヒロイン達ときゃっきゃうふふしてあわよくばその先に行きたいんだ! 動機が不純とか知ったことか。この胸に灯る情熱の火は誰にも消せはしない。

 

 しかし、しかしだ。教えもなしに魔術をものにするのはぶっちゃけ不可能なわけで、現状ほぼほぼ詰んでいると言っても過言ではない。マジ、どうしよう?

 

 魔術に精通している人の下へ弟子入りする? 幸いここはフェジテの町でアルザーノ帝国魔術学院がある。上手くいけば学院の講師や教授に弟子入り志願できる可能性が微レ存……いや、無理だな。魔術師連中の頭の固さとか諸々考慮するに門前払いされるのが関の山だ。

 

 それよりも原作で魔女と呼ばれ恐れられていたセリカ=アルフォネアはどうだろう。今がグレンと出会う前なのか後なのかは知れないが、良くも悪くも生粋の魔術師らしからぬ性格の彼女ならばワンチャンあるのでは?

 

 ……これが現状考え得る限り最も望みがある気がするな。よし、今度孤児院を抜け出してセリカ=アルフォネアの屋敷へ行こう。そこで誠心誠意、頭を下げて頼むのだ。オレを立派な男の子にしてください! と。

 

 今後の方針を固めたところで孤児院のちびっこ連中が何やらオレの下へ駆け寄ってきた。

 

 なに? おままごとをする? いやオレはパスで。そんなザ・女の子な遊びをしていたら身どころか心まで女の子になりかねないし……え、オレはお父さん役? いつもみんなを纏めてて喧嘩も強いし男の子みたいだから? 分かっているじゃないか、ちびっこ諸君。良かろう、そのおままごと、甘んじて参加しよう。

 

 ところでお母さん役は誰? ……あぁ、ニーナねニーナ。あいつもバイトとか色々忙しい癖によく付き合うもんだ。ま、仕方ないから付き合ってやるよ。

 

 

 

  ▼

 

 

 

 オレが魔術の世界に踏み込むにあたって障害となる存在が物凄く身近にいました。何を隠そう同じく孤児院に身を寄せるニーナである。

 

 ニーナのヤツ、オレがあれこれと作戦を練ってセリカ=アルフォネアの屋敷に突撃かまそうとするとまるで心の内を読んでいるかの如く邪魔してくるのだ。ある日は泣き噦る子供達の面倒を押し付けられ、ある日は幼少組の初めてのお遣いに付き添わされて、ある日はおままごとのお父さん役を押し付けられて、ある日は院長先生との格闘術の教導がブッキングして……もうね、オレが何かを企むと反応するセンサーでも持っているのではないかと。

 

 だがオレは諦めないぞ。障害は大きいほど超えた時の達成感は大きいものだ。必ずやニーナセンサーを回避してセリカ=アルフォネアの下へ行ってやる……!

 

 ところで話は変わるが、うちの孤児院は元・帝国軍人のアルド爺さんが経営している零細孤児院だ。国からの助成金も雀の涙で爺さんが寄付を募ったりニーナがバイトしたり、皆で家庭菜園とかして保たせているが正直キツイ。このままだといつ潰れてもおかしくない現状だ。

 

 孤児院が潰れるのは困る。まだ我が野望の足掛かりすら確保できていない状況で放り出されるのは不味い。何より、今潰れたりしたらちびっこ共がのたれ死ぬ。

 

 一応、爺さんやニーナあたりにバレないよう読み聞かせや遊びの際に彼是と読み書きや計算なんかは教え込んでいるが、そんなものだけで生きていけるほど世の中甘くない。せめて今いるちびっこ共が一人前に働けるくらいの歳になるまでは存続してもらわないと困る。

 

 だからさあ、アルド爺さんよ。いい加減、オレがバイトに出るのを許可してくれませんかね? ほら、稼ぎ手が増えればもう少し経営も楽になるだろうしさ?

 

 ……え、私に勝つまでダメ? バイトに行くと見せかけて何処かへ行くのが目に見えているだって? ちっくしょう、ばれてーら。というか爺さんに勝つとか実質不可能でしょ。オレより歳上で同じく格闘術を習ってるニーナが手も足も出ない爺さんを倒すとか、ちょっと賢しいだけのガキンチョにできるわけないじゃないですか。

 

 ちくしょう、不貞腐れてやる、グレてやる。……そこでどうして微笑ましいものを見るような目をするんだ爺さん。おいこら、頭撫でんな! 小っ恥ずかしいだろうが!

 

 

 

 ▼

 

 

 

 今日も今日とてちびっこ共のお守りである。爺さんは知り合いや伝を頼って寄付を募りに出掛け、ニーナはニーナでバイト。おかげで孤児院内の最年長がオレになってしまい騒がしいちびっこ共の相手をしてやらなければならない。ちくしょう、早く男の子になりたーい!

 

 まあ文句を言っても始まらない。脳内では新たなセリカ=アルフォネア邸へ突撃作戦を練りつつ、ちびっこ共と炊事洗濯をテキパキと終わらせ、家庭菜園の経過を確認。ふむ、葉野菜は結構成長しているな。明後日くらいには収穫してもいいだろう。ミニトマトはやっと花が咲いた具合か。あとは胡瓜とか豆とかだけど、収穫はまだまだ先っぽいな。

 

 取り敢えず水を上げすぎないよう注意しつつちびっこ達に水やりをさせる。おいこら、水の入った如雨露を振り回すんじゃありません。ちょっ、土まみれの手で抱きつくなやおいっ!? 服が汚れ……あぁ、汚れて洗い物が増えた。お前、あとでデコピンな。異論反論文句は認めん。

 

 土まみれではしゃいだ阿呆をデコピンの刑に処してそいつの服だけ洗って乾かしたところでやるべきことは終わった。あとはフリータイムである。さて、オレは適当な木陰で寝そべりながら如何にしてニーナの目を誤魔化し、アルド爺さんを説得するか思案するか。

 

 などというオレの思いはちびっこ共に遊べとせがまれたことで頓挫。もうやだ、なんで子供ってばこんな無駄に元気なんだろう……。

 

 内心溜め息で一杯になりながらも元気有り余るアグレッシブ組を庭で鬼ごっこやらかくれんぼで相手してやり、小生意気でインドア派な連中には孤児院に置いてある『メルガリウスの魔法使い』を読み聞かせ、耳年増なボーイズ&ガールズとはおままごとに付き合ってやること半日。

 

 男と女の痴情の縺れをテーマにしたおままごとが佳境に入ろうかというタイミングでニーナが帰ってきた。この孤児院で一番の年長かつ面倒見の良いお姉ちゃんが帰ってきたことで、ちびっこ共はおままごとを途中で放り投げてニーナの下へダッシュする。君達、誘ってきた癖に薄情なのね……。

 

 内心溜め息一杯になりつつちびっこ共が散らかした物を片付ける。するとどうしたことだろう。飛び出していったちびっこ共がワイワイきゃあきゃあ騒ぎながら戻ってきた。そして何故かオレの両腕を掴むと有らん限りの力で外に引きずり出そうとするではないか。

 

 いや、痛いってお前ら。なんだよ、ニーナがなんかやらかしでもしたか? いっぺんに話されても聞き取れないから、オレ聖徳太子じゃないから。

 

 ……なに? ニーナが『カレシ』を連れてきた? そのカレシがオレのそっくりさんでチジョーがもつれて大変だぁ? やっべ、何言ってるか全く理解できないのだが。

 

 百聞は一見に如かず。ちびっこ達の話を聞いてもさっぱり分からないのでニーナとそのカレシ君を出迎えに出る。ちびっこ達が言う通り、ニーナは男の子を一人連れて帰ってきていた。

 

 年齢は十二、三歳ってところだろう。オレよりも若干歳下か、同い年くらいか。隣に並ぶニーナと比べると随分と幼く見える。

 

 男の子は何故かボロボロだった。路地裏で袋叩きにでもされたのか、仕立ての良さそうな服は汚れだらけ。ついでに小生意気そうな顔も傷だらけである。

 

 それよりも、だ。この少年の顔を見ていると凄まじく既視感を掻き立てられる。凄く見覚えがあるというか、具体的には毎朝鏡で見ている生意気そうな顔によく似ている。

 

 ふむ、ちびっこ達がオレのそっくりさんと言うだけあってほんとよく似ているな。少年もオレの顔を見て唖然呆然としているし、隣のニーナは悪戯が成功した子供のように笑っている。にゃろう、図ったな。

 

 まあこれも何かの縁だ。世の中には自分のそっくりさんが三人はいるというし、仲良くしようじゃないか少年。取り敢えず自己紹介でもしようか。

 

 ふむふむ、グレン=レーダスって言うのか。へー、なんだか凄く聞き覚えのある名前だなぁ……ふむ。

 

 ちびっこ諸君、彼はオレのそっくりさんではないようだ。正確にはオレがそっくりさんが正しい。何言っているのか分からないって? 安心しろ、オレも軽くパニックだ。

 

 必死こいて魔術の世界に踏み込もうとしたらあっちからやって来た。もう何がなんだか分からないが一言──

 

 

 ──(ヤロウ)、図りやがったな!

 

 

 

 

 グレンside

 

 

 学院で行われた魔術検査の結果、僕には魔術師の才能がないことが判明してしまった。

 

 ──魔術特性(パーソナリティ)【変化の停滞・停止】

 

 世界に変化と加速を齎し、齎す者たる魔術師にとって致命的な魔術特性(パーソナリティ)。この特性はあらゆる魔術による世界への干渉に常時ブレーキをかける。だから僕は今まで、どれだけ一生懸命努力しても簡単な魔術ですら一節詠唱ができず、同年代の皆に置いてかれていたんだ。

 

 セリカは知っていた。僕の魔術特性(パーソナリティ)を、僕が憧れる『正義の魔法使い』になれないことを。セリカは色々な魔術師の形があると言ってくれたけど、そんなの慰めにもならない。僕はセリカと喧嘩して屋敷を飛び出した。

 

 フェジテの街を当てもなく彷徨い歩き、気づいたら暗い路地裏に迷い込んで柄の悪い三人組に絡まれていた。魔術で返り討ちにしてやろうと思ったけど、一節詠唱ができない僕は敢え無く殴り倒されて、情けなくも袋叩きにされてしまう。

 

 抵抗も儘ならず殴られ蹴られていると、見知らぬ女の子が割って入ってきた。僕より歳上の女の子は軽々とチンピラをあしらい、地べたに倒れ伏す僕に手を差し伸べてくれた。

 

 女の子の名前はニーナ。あちこちツンツン跳ねた金褐色の髪とカチューシャ、野良猫を思わせる大きな吊り目と八重歯が特徴的な女の子だ。

 

 ニーナは立ち上がった僕の顔を見ると何故か目を見開きにんまりと意地悪く笑う。傷の手当をするからという理由でニーナは手を掴むと僕の意思など関係なく歩いていく。全身ズタボロで身も心も満身創痍だった僕に逆らう気力なんてなく、そのまま貧民街の奥地に佇む孤児院に連れて行かれる。

 

 孤児院には沢山の子供がいてニーナはとても慕われているらしい。子供達に囲まれて笑うニーナはみんなのお姉さんのようだった。

 

 そんなことを考えていると院内から子供達に手を引かれて誰かが出てくる。その誰かの顔を見た時、僕は驚きのあまり言葉を失ってしまった。

 

 ボサボサの黒い髪を後ろでポニーテールに纏めた女の子だ。歳は僕より上だろうけどニーナよりは下くらい、目つきはニーナや他の子達と比べても頗る悪い。何というか、子供らしくない雰囲気を纏っている。

 

 でもそんなことよりも驚くべきはその顔立ち。

 

 似ている、驚くほどグレン=レーダス()と似ている。性別の違いはあるけど顔立ちがそっくりなのだ。それこそ実は生き別れた姉ですと言われても納得するくらいに似通っていた。

 

 相手も似ていると感じたのかあんぐりと口を開いて硬直し、次いでニヤニヤと笑みを浮かべるニーナにガンを飛ばす。なるほど、ニーナがあの時驚いて笑っていたのはこれが理由だったのか。

 

 内心で納得していると僕にそっくりな女の子が話しかけてきた。

 

「よぉ、初めまして。ニーナのカレシ君だったか?」

 

「そんなんじゃないよ」

 

「そうかそうか。いやぁ、しっかし驚いたな。世の中、三人はそっくりさんがいるって言うけど、ここまでそっくりだといっそ生き別れた家族だとか言われた方がしっくりくるな」

 

 あっはっはっはっ、とあっけらかんと笑う女の子。僕もそうは思ったけど、もし本当にそうだったら笑い事ではないだろう。

 

「ま、これも何かの縁だ。オレはレーン=グレダス、仲良くしようぜ?」

 

 ニカッと歯を見せて笑いながら手を差し出す女の子──レーン=グレダス。何だか名前まで似ている気がするけど、取り敢えずこちらも名乗って応える。

 

「……僕……俺はグレン=レーダス。よろしく」

 

「おう! ……ん? グレン=レーダス?」

 

 固く握手を交わし合ったところでレーンがきょとんと首を傾げ、やがてその表情が引き攣ったものへと変わっていく。

 

「へ、へぇ? ぐ、グレン=レーダスか。い、いい名前だな、うん……」

 

「ちょっと、どうしたのさレーン?」

 

 不自然なくらいどもり始め、挙句だらだらと脂汗まで流し始めたレーンにニーナが心配そうに声を掛ける。

 

 レーンは大丈夫だと手を振るが誰が見ても大丈夫そうには見えない。僕に背を向けると「(ヤロウ)、図りやがったな……」とか「オレがそっくりさんかよ……」とか訳の分からないことを呟いている。けれどすぐに何事もなかったように元に戻ったので誰も気にすることはなかった。

 

「まぁ、なんだ。取り敢えず上がっていけよ。傷口の消毒とか、それくらいはここでもできるからな」

 

 僕のズタボロな格好を見て大体の事情を察したのかレーンは親指で後ろの孤児院を指し示す。やたらと仕草の一つ一つが男っぽい。口調も相俟って下手すると僕よりも男らしく見えてしまう。

 

 僕はここまで案内してくれたニーナと目の前のレーンを交互に見やり、それから小さく頷きを返した。

 

「うん、お願いします……」

 

 ──これが、僕がその後の魔術師として進む道を決めた切っ掛けを与えてくれた二人の女の子との出会いだ。

 

 

 

 

 

 

 

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