GATE~ヴァンツァー、彼の地にて、斯く戦えり~ 作:のんびり日和
伊丹は糧食班、施設建設班に出す書類を書き終えテントなどを持って避難民達の元に持って行き全員へと配りテントを立て始めた。
「これで全員の住む場所は問題ないな」
「そうですね。後、これを皆さんにお配りするだけですね」
そう言い黒川が持っていたのは、携帯食料である戦闘食料2型と呼ばれるものだ。中には白飯、チキントマト煮、コーンスープが入っている物だ。
黒川はそれを温め、避難民にそれぞれ配った。
それから数日が経ったある日、アルヌスの丘から程近い森林にレレイとカトーは来ていた。目の前ではユンボやブルドーザーが森を開拓していた。
「何じゃあこれは?」
「私達の家を作るために開拓しているらしい」
「ほぉう。そうなったらやっと荷場車から本を降ろせるわい。ワシはちと寝る」
そう言いカトーはテントの方へと向かった。レレイは派遣団の事をもっと知ろうと観察していると視界の端にテュカが居る事に気付く。
「こんなすごい光景を見逃したってお父さん知ったら、がっかりするだろうな。後で教えなきゃ」
そう言い光景を見ていると、自衛隊員とアメリカ陸軍の建設班の人達が近づく。
「コラ、君達。危ないから下がってなさい!」
そう言われ、2人は下がるとレレイは香ばしい匂いに気付きその方向に目を向けると自衛隊の移動式かまど『野外炊具1号』が置かれていた。
その傍では過去に老舗料亭で腕を磨いていた古田が大根の皮を切っていた。
(自店の出店資金を稼ぐために入隊したんだが、まさか此処でも包丁を握るとわな)
そう思っているとその傍にレレイが来て、大根を興味深そうに見ていた。
「ん? あぁ、大根だよ。だ・い・こ・ん」
「ダイコン?」
「そうそう。大根」
そう言うとレレイはダイコン。と興味深そうに見つめる。
(やはり彼らの事を知るには言語を学ばないといけない)
そう思っていると
「皆さぁ~~ん! 名前登録しますので集まって下さぁい!」
そう言われ避難民達と共に黒川の元へと向かう。
「儂はカトー・エル・アルテスタン。こっちは弟子のレレイ・ラ・レレーナ」
「私はコアンの森のホドリューが娘、テュカ・ルナ・マルソー」
「暗黒の神、エムロイに仕えるロゥリィ・マーキュリー」
と、避難民達の名前登録を終え伊丹は名前と年齢を確認する。
「老人3人、ケガをした中年が3人、後は19人の子供。…ん?」
伊丹は15歳にも拘らず大人と明記された3人に目が留まった。
「どうしたんですか伊丹さん?」
そう言いカズヤは伊丹が気になった部分に目を向ける。
「いや、15歳なのに大人ってどう言う事なのかなと思ってな」
そう言い目の前にいるレレイに目を向ける。隣にいた黒川が訳を話した。
「この子が言うには15歳で大人だそうです」
そう言うとレレイはコクコクと首を縦に振る。
「テュカは165歳」
そう言うとその場に居たカズヤやダン達は目が点となった。
「……本当にエルフだったのかよ」
アイリッシュは驚きからそう呟く。
「えっと、それでもう一人は?」
そう伊丹が聞くと、黒川は半信半疑の様な目線を子供達が遊んでいる方へと向ける。
「あの神官少女らしいのです」
そう言うと全員疑いの目を向ける。
「そんな馬鹿な」
パックはそう言うと同意するようにレッカーも頷く。
「それじゃあ幾つなんだ?」
ダンがレレイにそう聞くとレレイは
「私達より年上。年上の年上のもっと年上」
そう言うとダン達は疑問符を浮かべカズヤは
「それじゃあ幾つなのか聞いてもらってもいいですか?」
そう言うとレレイは物凄き勢いで首を横に振る。
「……怖くて聞けない」
そう言いわれ伊丹はロゥリィに目を向ける。
(一体幾つなんだ?)
そんな目を向けるとロゥリィは、ん?と顔を向ける。
そしてその日の夜。カトーの元に避難民達が集まっていた。
「儂らはずっと派遣団の者達に助けてもらってばかりじゃ。せめて生活費くらいは自分達で何とかせんと」
そう呟くと全員何か当てはないのかと考え込む。すると何かを思い出したのかレレイが口を開く。
「丘に沢山の翼竜が死んでた。あれを貰えれば」
「ふむ、明日彼らに頼んでみるか」
そう言いその日はお開きとなった。翌日、カトーとレレイは早速伊丹の元へと向かい訳を話す。伊丹は上司の元に行き話をして暫くして戻って来て報告する。
「何と、全部採ってもいいと言っておるのか!?」
「そう言ってる」
カトーはレレイを通して伊丹の言葉を訳してもらい、伊丹が伝えた報告に驚いていた。
「別に特に必要って訳でもないし、射撃の的にしか使ってないからご自由にどうぞ」
そう言われカトーはポカーンと口を開きっぱなしとなった。その後、避難民達は翼竜の鱗を丁寧に剥がし取り、綺麗に磨き袋に詰める。
「―――それでこれ1枚で幾ら位になるの?」
ロゥリィは鱗を持ちながらレレイに聞く。
「これ1枚でデリラ銀貨30枚から最高で70枚。そしてデリラ銀貨1枚あれば最高で5日は生活できる」
そう言うとロゥリィはへぇと笑みを浮かべ後ろを振り向く。其処には鱗の入った袋が2つと牙が2本あった。
「それじゃあ私達大金持ちって事ぉ?」
そう言うと全員が生唾を飲み込む。
「それでこれを何処に卸そう? できたらちゃんとした大店に任せたい」
レレイがそう言うとパイプ煙草を吸っていたカトーはそうじゃと妙案を浮かべる。
「テッサリア街道の先にイタリカと言う街がある。そこに旧知の友が店をやっておるから其処に頼もう」
それから暫くして伊丹達第3合同偵察隊はイタリカへと向けるべく準備をしていた。
「俺達は運送係なんすか?」
「まぁいいじゃん。避難民達が自活するのは悪い事じゃないんだし」
そう言っているとレレイ達がやって来た。
(ハケンダン達が居れば安全に行ける)
そう思っていると伊丹は視線を向けていたレレイに首を傾げる。
「どうかしたか?」
「何でもない」
そう言い高機動車に乗り込む3人。そして偵察隊はアルヌスを出立した。
その頃、そんなイタリカから程近い修道院にピニャは訪れていた。そして中へと入ると一人の白髪の重症者の老人が居た。
「……デュラン殿下」
そう呼ぶとデュランは顔をピニャへと向ける。
「なんじゃ 姫様か。……まさかわざわざ帝都から…は、敗軍の将を笑いに来られたのか?」
そう言うとピニャは慌てた表情で近寄る。
「め、滅相もございません‼ この近くで情報を集めておりましたら高貴な方が此処で治療を受けていると聞き参った次第です」
そう言うとデュランはそうかとだけ伝え、顔を天井に向ける。そしてピニャにある事を聞く。
「姫は何も知らぬか?」
「え?」
「姫は何も知らされておらぬのか? アルヌスの丘で何があったのか? 我ら諸王国軍に何があったのかを?」
そう言いデュランは自身の推論を述べる。
「帝国は既に異界からの敵に敗れておったのではないのか? 帝国はそれを知っていて牙を向ける恐れがある我ら諸王国を招集し、我らを敵へと押し付けた」
そう言うとピニャは慌ててデュランの横に着く。
「た、確かに以前帝国は負けた事は存じております。ですがどの様な敵が待ち構えていたか知らせて―――」
「姫よ、我々は大陸を守るべく死力を尽くし最後の1兵になるまで戦った。だが我らの敵は背後に居った」
そう言い目に力を入れ睨むような眼をピニャに向けるデュラン。
「帝国だ。帝国こそが我らの真の敵だったのだ」
「陛下、せめて、せめてどのような敵だったのかお教えください‼」
そう言い腕に掴んできたピニャをデュランは振るい掃った。
「どの様か敵か、それは姫自らアルヌスに行かれることだ」
そう言いデュランは何も話さなくなり、ピニャは悔しさを噛み締めながら扉へと向かう。
「これだけは言っておいてやろう姫よ」
デュランにそう言われピニャは顔を向ける。
「お主達帝国が呼び寄せた軍団は神の如き軍団。呼び寄せた敵にいずれ帝国は敗れるであろう‼」
そう言うと体を休める様にベッドに倒れるデュラン。ピニャは手を力強く握りしめ修道院から出てきた。外ではハミルトン、ノーマ、グレイが居た。
「姫様、まさか騎士団でアルヌスの丘に突っ込むとかおっしゃらないですよね?」
ハミルトンからの冗談にピニャはフッと笑みを浮かべる。
「そんな馬鹿な事をするわけが無かろうが。だが一度アルヌスの丘に行かねばならないのは確かだ。ノーマ、本隊に移動の指示を。グレイ、この先は?」
「この先、アルヌスに向かう途中にイタリカがあります」
グレイの言葉にピニャはイタリカか。と呟く。
次回予告
イタリカに鱗を売りに来た伊丹達第3偵察隊。だがイタリカは絶賛戦闘中だった。伊丹達はイタリカの人々の為その場に留まり戦闘に参加するのだった。そんな中、カズヤは其処で運命の出会いを果たす。
次回
イタリカ攻防戦~前編~