GATE~ヴァンツァー、彼の地にて、斯く戦えり~   作:のんびり日和

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12話

アルヌスから出発した伊丹達。車内はのどかな雰囲気を出しているが、先日の炎龍がまた現れるかもしれないために警戒していた。

 

「はぁ、なんで子供達を連れて出ないといけないんだ? あのカトーって言う老人一人と俺達で良いんじゃないのか?」

 

アイリッシュはまた戦闘に巻き込まれるかもしれないのにレレイ達を連れて出るのが不安でいたのだ。

 

「カトーはアルヌスにいる他の避難民達の傍に居ないといけない。だから弟子であるレレイに頼んだんだろう。それにあのレレイって言う子、見た目とは裏腹にかなり努力家みたいだぞ。この前も『貴方達の言葉を教えて欲しい』って片言な日本語で言ってきたんだしな」

 

ダンはそう言いアルヌスを中心に描かれた周辺地域の地図を見ながら方角を確かめる。すると

 

《3-1からトゥームストーン指揮官送れ》

 

「こちらトゥームストーン指揮官、送れ」

 

伊丹から突然無線が入り、何かあったのかと思いダンはそれに出た。

 

《前方、恐らくイタリカと思わる街から黒煙を確認。対空警戒を厳にしてこれよりイタリカに接近する。送れ》

 

「黒煙? 火事とかではないのか?」

 

《いや、レレイが言うには火事にしては大きすぎるらしい。それと……ロゥリィが言うには血の匂いがするって言うんだ》

 

「血の匂いだと?」

 

伊丹からの報告にダン達はまたトラブルかと思い、了解と送った。そして第3合同偵察隊はイタリカへと接近する。

 

 

 

イタリカ。広大な穀倉地帯を有した街でテッサリアが街道とアッピア街道の交点にあり交易によって発展した街である。そんな街は現在――

 

「いけぇ‼ 攻め落とせぇ‼」

 

大声をあげながら多くの鎧を纏った者達がイタリカを攻撃していた。この者達はアルヌスにいる派遣団を撃退すべく集った元兵士達。つまり敗残兵たちであった。彼らは国に帰ろうにもそれだけの食料も無ければ資金も無い。ならばどうするか。近くにある街を襲撃し金目の物を略奪し、そのまま居座ろうと考えたのだ。そして目を付けられたのがイタリカである。

 

城壁の上から弓を構え、矢を放つピニャ。矢は兵士の一人に命中し倒された。

 

「クソォ! 退けぇ! 退けぇ‼」

 

そう叫び声が響き、盗賊団となった敗残兵達は退いて行った。その光景を見たピニャは一息つき城内に降りて行く。

 

「ノーマ、ハミルトン! 無事か‼」

 

「……い、生きてま~す!」

 

「……じ、自分も……な、なんとか……」

 

2人は手を挙げながら無事を知らせる。すると大剣を肩に担ぎながらグレイが現れる。

 

「薄情ですなぁ姫様。小官の心配はしてくださらんのか?」

 

「貴様が無事なのは分かり切っている」

 

そう言うとグレイはワッハッハー。と笑う。そしてピニャはノーマとグレイに破壊された門の代わりに馬防柵を作る様に指示し、イタリカを統治しているフォルマル伯爵邸へと向かい軽く食事を終え、客間に置かれているベッドで横になった。

 

何故彼女達が此処に居るのか。それは彼女達の勘違いから始まった。アルヌスの情報を集めていたところ、イタリカが戦闘集団に襲われていると聞き例の傭兵団、つまり特地派遣団と思ったピニャ達がイタリカに急行。だが其処に居たのは連合諸王国軍の敗残兵達で構成された盗賊団であった。ピニャ達は仕方が無く指揮を執り盗賊団達と戦っていたのだ。

 

ピニャは疲れから寝ていると突然顔に水が掛けられた

 

「なっ、何事だ!? 敵か!?」 

 

そう叫び、起き上がるピニャ。目の前にはフォルマル伯爵邸に仕えているメイド長、カイネが水が入っていただろうボウルを持っていた。そして隣ではグレイが困惑した表情で立っていた。

 

「……敵かどうか姫様ご自身で確認してください」

 

そう言われピニャは首を傾げながらも濡れた体を拭き、装備を身に纏い南門へと向かう。

南門に到着するとハミルトンもグレイ同様困惑した表情でいた為、ピニャは声を掛ける。

 

「どうしたハミルトン」

 

「その、外を見てください」

 

そう言われ城門の扉についている覗き窓から外を窺う。外には緑と砂色をした物体……自衛隊の高機動車、軽装甲機動車。そして海兵隊のクーガーHとアメリカ陸軍のヴァンツァー用の輸送車が停まっていた。

そんなことを知らないピニャ達は困惑していた。

 

「何でしょうあれ?……木攻車でしょうか?」

 

「いや、……あれは鉄だ」

 

「な、中に人が見えますな……」

 

覗き窓で外を確認していると、ノーマが城門上で誰何を始めた。

 

「何者だぁ‼ 敵でないなら姿を現せ!」

 

そう大声で叫んだ。

 

 

叫び声は伊丹達の元まで届いており、どうするかと相談していた。

 

「うへぇ、お呼びじゃない感じじゃん」

 

「怪我してまでこの街で売るべきじゃないと思うっす」

 

伊丹と倉田は頬を引きつらせながら城門を見上げる。するとクーガーHに乗っているダンから無線が入った。

 

《こちらトゥームストーン指揮官。伊丹、彼女達の身の安全を考えて別の街に行かないか?》

 

「そうだね。という訳で他の町に「却下」い、いやけど君達の安全を考えたらさぁ」

 

そう言い伊丹はレレイを説得するがレレイは頑なに拒否する。

すると後ろにいたテュカが割って入って来た。

 

「ちょっとレレイ。其処までこの街にこだわる必要があるの? これ以上この人達を危険な目に合わせる必要があるの?」

 

「だからこそ行く。私達が行って敵でない事を伝えれば派遣団の評判を落さない」

 

そう言い車から出て行こうとするレレイ。テュカは何処か納得のいかない雰囲気を出しながらも同じく立ち上がる。

 

「……分かった。私も行くからちょっと待って。矢避けの加護を掛けるから」

 

そう言いテュカは魔法を唱えると、風の様な物が若干吹く。

 

「何だか面白そうだから私も行くわぁ」

 

そう言いロゥリィも戦斧ハルバードを持って車から降りる。

 

「えぇ~。どうしよぉ」

 

伊丹は3人だけで行かすわけに行かないと思っていると無線越しにダンが語る。

 

《伊丹、3人が行くなら俺が護衛で行く。伊丹は車両に「いや、俺も行くよ」分かった》

 

そう言い無線は切れ、伊丹は64式を肩に担ぎ外に出る。

 

桑原曹長(おやっさん)、暫く指揮を任せた」

 

「了解です。お気を付けて」

 

車両から降りた伊丹はダンと合流し、3人の後を追った。城門まで到着し、伊丹は扉をノックする。

だが扉の奥からは反応が無く、ただ時間だけが過ぎていく。

 

「……遅いな」

 

「やはり、警戒しているんだろう。もう諦めて他の街に行った方が良くないか?」

 

ダンはもう諦めた方が良いと言い帰ろうとする。扉の前に立っていた伊丹もレレイ達に帰ろうと伝えようとした瞬間、扉が急に開かれ伊丹の顎にクリーンヒットし倒れ込んだ。

 

「よく来てくれたぁ‼ ……あれ?」

 

そう言いピニャは素っ頓狂な顔を浮かべる。3人とダンは呆れた様な目を向けながら立っていた。そして足元に目を向けると、人が倒れておりピニャは振るえる指で自身を指さす。

 

「も、もしかしてわらわの所為か?」

 

そう言うと4人は息を揃えて頷いた。ピニャが固まっているのを見かねたダンは伸びた伊丹を担ぎ中へと入って行った。

5人が中へと入って行ったのを確認した偵察隊は報告があるまで待機していると、全車に桑原からの無線が入った

 

《各車、隊長から中に入っていいと許可を貰った為城内に入る様に。但しヴァンツァーは城内に入らず城門付近で待機。以上》

 

《【了解】》

 

全員車両を動かし自衛隊、海兵隊の車両は中へと入って行きヴァンツァーと輸送車は城門のからほど近い林に車両等を隠す。

 

「はぁ、やっと中に入れた」

 

カズヤはさっさと売って退散しようと伊丹に言いに城内に入る。

すると

 

「おい、本気で言ってるのか伊丹‼」

 

そう叫び声が聞こえ、カズヤは駆け足で声が響いた元へと向かう。

高機動車とクーガーHが停まっているところではアイリッシュが伊丹に喰ってかかっていた。

 

「俺達は今帝国と言う敵と戦っているんだぞ‼ それなのにその帝国と共闘するだと? ふざけているのか‼」

 

「ふざけてませんよ。第一この戦闘に参加するのはあの姫さんの為じゃない。この街に住んでいる人達の為なんだ」

 

その光景を見ていたカズヤは近くに居たレッカーに訳を聞いた。

 

「レッカーさん、何があったんですか?」

 

「伊丹とダンが城内に入って、この街の現状を聞いてきたらしいんだ。そしたら商取引とかできる状態じゃないらしく、伊丹はだったら自分達も手を貸すと言って戻って来たんだ。そして皆に報告した瞬間、アイリッシュがキレたと言う訳だ」

 

「なるほど。確かに正義感の強いアイリッシュさんは、俺達の世界でテロをした帝国に手を貸すなんて屈辱でしょうね」

 

喧嘩を見守っていたダンもアイリッシュの説得に加わる。

 

「アイリッシュ、お前の気持ちはよぉく分かる。だが俺達が此処で見放して街の人達はどうなる? それにこの街の当主はまだ16歳の少女だ」

 

 

「「「!?」」」

 

ダンからの突然の報告にアイリッシュ達は驚く。

 

「俺達が見放せばあの子はこの街を失う。更にこの街に住んでいる人達も居場所を無くす。お前はそれでもいいのか?」

 

そう言われアイリッシュは振るえる拳を握りしめながら、拳をクーガーHの扉にぶつける。

 

「……そう言われたら手を貸さなきゃならねえじゃねぇか。分かったよ、伊丹。手は貸してやる。だが、帝国が少しでも俺達に武器を向ける様なら容赦はしねぇからな!」

 

そう言いアイリッシュはMk.48を持ち城門上へと向かった。

 

「悪いな伊丹。アイツは根は良いが、正義感が強いんだ」

 

「いや、誰だってあぁ思ってますよ」

 

そう言い丸く収まった様子になった為、カズヤが伊丹に近付く。

 

「伊丹さん、もしかして俺達だけでこの街を防衛するんですか?」

 

「いや、俺達だけじゃあ厳しいかもしれないからアルヌスに応援を頼んだ。応援部隊が来ればあの姫さんも理解するだろうし」

 

「? 何がですか?」

 

「俺達と戦うより、仲良くした方が良いってね」

 

そう言い笑みを浮かべる伊丹。カズヤとダンはその顔を見て、この人はやっぱり何処か凄い人間だと理解した。

 

「さて、それじゃあ姫さんから頼まれたこの南門を守るんだが。カズヤ、お前はヴァンツァーを起動させて待機しておいてくれ。あれが見えていれば、少しは抑止力になるだろうし」

 

「了解です。じゃあ起動【ニャー】おりょ?」

 

カズヤはヴァンツァーを起動しに向かおうとしたが、足元に泥で汚れた子猫が居た。

 

「ん? なんだ野良ネコか?」

 

「いえ、飼い猫みたいですね。ほら、首輪してますし」

 

そう言い拾い上げた猫の首付近を見せる。

 

「どうする? その辺に放置するか?」

 

「いえ、少し街の人達に聞いて来てます。流石にこの時間に襲ってくる可能性は低いとおもいますし」

 

そう言いカズヤは猫を抱きかかえ、輸送車に乗せていたMP7を持って街の人達が集まっているところに向かった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

栗林はカズヤ一人で行動させるのは危ないのではと思い伊丹とダンに意見具申した。

 

「あの、大尉一人で向かわせて良いんですか? 流石に危ないのでは」

 

「ん? 大丈夫大丈夫」

 

「そうだな、アイツだったら大丈夫だろ」

 

そう言いダンと伊丹はそれぞれ南門を防衛すべく準備に取り掛かった。栗林は何処か納得がいかない表情を浮かべながらも暗視装置を取りに向かった。

 

 

「さて、お前の飼い主さんは何処に居るんだろうな?」

 

そう言いながら猫を抱きかかえ街を歩くカズヤ。街の人に聞いても分からないと言うばかりで、本当に捨て猫なのかと思いながらも探していると、街の中心の噴水へと到着した。

 

「ん~。これだけ探しても見つからないとなると、お前の飼い主さんはもう「あの、ちょっとよろしいでしょうか?」はい?」

 

呼ばれたカズヤは振り向くと、其処には猫耳をした紫の髪をポニーテールに纏めたメイド服の女性が立っていた。

 

「その小猫の首輪を見させてもらっても宜しいでしょうか?」

 

「え、えぇどうぞ」

 

そう言いカズヤは女性に猫を渡す。

 

「あぁ、ミュイ様の猫ですニャ! どうも見つけて下さってありがとうございますニャ‼」

 

「いえいえ。偶々門付近で迷子になっていたもんですから、飼い主が探しているんじゃないのかと思って探していただけですので。では自分はこれで」

 

そう言いカズヤは伊丹達の元に戻ろうとすると

 

「あの!」

 

「ん? 何か?」

 

「お名前を窺っても宜しいでしょうか?」

 

女性に名前を聞かれ、カズヤは体を向け敬礼しながら名を名乗る。

 

「日米特地派遣団、機動中隊レイブン隊指揮官カズヤ・ハミルトン大尉です」

 

「私はペルシアと申しますにゃ!」

 

そう言い互いにそこで別れた。




次回予告
戻ってきたカズヤはヴァンツァーに搭乗し待機した。その頃アルヌスでは伊丹からの応援要請に応えるべく、第4戦闘団が救援に向かいに行くべく準備していた。更に海兵隊にレイブン隊所属の2機が出撃準備を行っていた。

次回
羽を広げるワルキューレ達
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