GATE~ヴァンツァー、彼の地にて、斯く戦えり~   作:のんびり日和

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20話

「いっつつぅ……、あれ、此処は」

 

体中から襲い掛かってくる痛みに気付いた伊丹は目を開けると、其処は知らない天井でベッドで寝かされていた事に気付く。起き上がろうとすると体を優しく抑える腕が出てきて伊丹は腕の伸びた方を見ると其処には黒髪のメイド服の女性が立っていた。

 

「お気付きになられましたか、ご主人様?」

 

「えっ? メイド? って、うぇっ!?」

 

伊丹は目の前にいた女性以外にも3人のメイドが自分が寝ているベッドの周りを囲っていた事に驚きながらそっと横になる。

状況が整理出来ず、伊丹は記憶が途切れる前に有った出来事を思い出す。

 

(た、確か姫さんの部下の薔薇騎士団の人達に絡まれて、それで咄嗟に部下達を逃がしてそれで捕まってボコボコにされて……。とすると此処は)

「あの、此処ってもしかしてイタリカの…」

 

「はい、フォルマル伯爵邸です」

 

やっぱりか。と納得した表情を浮かべ、伊丹は部下達は無事に逃げられただろうかと思い顔を黒髪の女性へと向ける。

 

「あの、状況は? 俺の部下は「ご心配ありません。伊丹様のお仲間は無事逃げられたそうです」 そ、そうですか」

 

伊丹の問いに部屋に入ってきたカイネが答えながら、伊丹の寝ているベッドの傍へと歩む。

 

「フォルマル伯爵邸でメイド長をしております、カイネと申します。伊丹様がこの街に連れて来られた後騎士団の方々は領内の警護に向かわれました。そして騎士団の隊長方をピニャ様は激怒され黄隊の隊長であるボーゼス様ががお怪我を」

 

「そ、そうですか」(あの縦ロール、ボーゼスって言うんだ)

 

カイネの説明を受けながら考え事をしていると、突如カイネ達は深々と伊丹に向かって頭を下げた。

 

「この度はこのイタリカを救っていただきありがとうございます‼ 伊丹様、そしてそのお仲間の方々によってこのイタリカをお救い頂いた事、感謝の仕様がございません。此度の一件、もしこのイタリカを焦土とかすのであるならば我々は手を貸す所存です。ですが、ミュイ様だけは何卒矛先を「あ、いや。俺達そう言う事はしませんから!」

 

伊丹は突然焦土にするなら手を貸すと言ってきたカイネに遮る様にしないことを叫ぶと、カイネとその周りにいたメイド達はホッと胸を撫で下ろした。

 

「それでは伊丹様、明朝お仲間の方々がお迎えに上がられるまで此処に居る者達が伊丹様の身の回りのお世話をさせます。どうかごゆるりとお寛ぎ下さい」

 

「「「「宜しくお願い致します、ご主人様」」」」

 

「よ、よろしくお願いしまぁす」

 

メイド達の丁寧で綺麗なお辞儀に伊丹は終始照れ顔であった。

 

 

 

その頃ダン達はと言うと、イタリカの門前に広がる林の中で身を潜めていた。

 

「さて、此処まで気付かれることなく近づけたがどう侵入するか。篝火があぁも照らされていちゃあすぐにバレてしまう」

 

門前にメラメラと燃えながら辺りを照らす篝火にダンは口を尖らせながらカズヤ達に意見を求めた。

 

「下に居るのは、民兵の人達ですね。上に居るのが民兵か帝国兵かどっちか判れば、入れるんですけどね」

 

「此処からでは何とも言えませんからね。運悪く帝国兵だったら、即座に戦闘になる恐れがありますし」

 

「こういうお城みたいな街ってどっかに排水路とかがあるんじゃないの? そっから入れば中に潜入できるんじゃない?」

 

「恐らくあると思うが、立派な鉄格子で守られてるだろな。排水路は街に潜入する時によく使われるルートだから対策がされていても可笑しくないぞ」

 

それぞれ案を出すも、どれも危険を伴うモノばかりであった。それぞれ案を出しているとテュカが栗林の肩を叩く。

 

「ねぇ、だったら私に任せてくれない」

 

「え、テュカに?」

 

「何か案でもあるのか?」

 

ダンはテュカに顔を向けると自信ありげな表情で頷く。

 

「うん、眠りの精霊に力を貸してもらうの」

 

「眠りの精霊?」

 

「私達人種とは違ってテュカの様なエルフ族は精霊に力を借りて魔法を使う」

 

「なるほど。それだったら誰も傷付けることなく潜入できるな」

 

レレイの説明を聞きダンはテュカの案で行くと決め、テュカ、レレイそしてロゥリィは林からではなく少し暗い所から道へと出て真っ直ぐ門の中へと入って行った。

 

 

 

「――ったくよぉ、何にもしてない帝国兵の奴らめ。あれこれ指示しやがって」

 

「おい、上に居る帝国兵に聞こえるだろ」

 

門内には敷かれた防馬柵の近くで文句を垂れ流す民兵とそれを咎める民兵が居た。彼等は遅れてやって来た帝国兵にあまり良い顔をしていなかった。

 

「構う事ねぇよ。…あれ? あれ使徒様達じゃねぇか?」

 

文句を垂れ流していた民兵が指さす方に咎めていた民兵が顔を向けると其処には顔にペイントが施されたレレイ達が居た。

 

「どうしてこんな時間に此処に?」

 

「さぁな。何か忘れ物でもされたんじゃないか?」

 

そう言っているとテュカが二人の元へやって来た。

 

「こんばんわ。ちょっといいですか?」

 

「えっ!? へぇ、何でしょうか?」

 

「城壁に居る人達って帝国の兵士達なんですか?」

 

「そ、そうですが、それが何か?」

 

「いえ、ちょっと。教えてくれてありがとうございます」

 

そう言ってテュカは手を振りながら去って行く。

 

「なんで、帝国兵達の事を聞いてきたんだ?」

 

「さ、さぁ? 何かあるんだろう。俺達はこれから起きることに何も見ていないし、聞いていない事にしよう」

 

「だな。あの人達はハケンダンの方々と共に行動されているんだ。何かあるんだろう」

 

そう言い2人はレレイ達が通った事、そしてこの後何が起きようと自分達は何も見ていないし聞いていないと決めた。

 

テュカが二人の元に戻って来た後、城壁上に上る階段を上がり確認すると数人の帝国兵達が眠い目を必死に開けながら警備していた。

 

የመተኛት መንፈስ…(眠りの精霊よ…)

 

そう呪文を唱えると、門上に居た帝国兵達は強い眠気に襲われバタバタと倒れ眠り始めてしまった。そして手を高い位置から振るい門の外に居たダン達に合図を送る。

 

「合図を確認。これより中に入るぞ」

 

「了解。サージェント桑原、これより街に侵入します」

 

『了解です。お気を付けて』

 

街へと侵入しダン達は伊丹が居ると思われるフォルマル伯爵邸へと向かった。




次回予告
街へと侵入したダン達。帝国兵達を掻い潜りながらファルマル伯爵邸へと到着し、建物内へと侵入するが伊丹の傍に居たメイドにその動きを感づかれてしまう。

次回
伊丹救出作戦後編~建物内に侵入者です~
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