GATE~ヴァンツァー、彼の地にて、斯く戦えり~ 作:のんびり日和
フォルマル伯爵邸に侵入したカズヤ達は、足音を殺しつつ前進し伊丹が居るであろう部屋を探していた。
「右の部屋は?」
「人の気配及び灯り無し」
「……そうか。次に行くぞ」
そう言い前進すると曲がり角があり、カズヤは曲がり角の端まで行く途中人の気配を感じ取る。
(富田さん達、では無いな。1人だけだが、気配からしてかなりの手練れか?)
この場で万が一帝国兵と遭遇した場合交戦となる。そうなれば現在人質となっている伊丹が危険に晒される。カズヤは騒がれる前に無力化するしかないと考え後ろに居るダンに手信号で合図をした。
(曲がり角 先 コンタクト)
カズヤの手信号にダンは頷きそっとカズヤの背後に着く。カズヤはダンの射線が通りやすい様に身をかがめ待機。そして2人は一斉に飛び出し曲がり角に居る者に銃を向けると、其処には
「お待ちしておりましたニャ、カズヤ様。そしてイタミ様のお仲間の皆様方」
そう言いながらお辞儀をするペルシアが其処に居た。
「ぺ、ペルシアさん?」
「お久しぶりでございますニャ、カズヤ様」
「何で俺たちが此処に居ると分かった?」
「皆様が鎧戸を破壊されて中に入られた時からですニャ」
ペルシアの説明にダン達は、マジかよと言った驚いた表情を浮かべていた。
すると
『こちら富田。その、フォルマル伯爵邸のメイドと遭遇。これより隊長の元に案内してもらいます』
「あ~、了解。こちらも此処のメイドと遭遇した。こっちも案内してもらう」
無線の富田にそう告げ、ダンはペルシアの方に顔を向ける。
「それじゃあ悪いが、伊丹の所に案内してもらえるか? 他から入った者達は既にほかのメイドと共に向かっているようだから」
「畏まりましたニャ。どうぞ、此方へ」
ペルシアの案内の元、カズヤ達は伊丹の部屋へと向かう。2階のとある部屋の前に到着すると富田達とも合流し部屋の中へと入る。
すると其処には
「よぉ、お前等」
と、頭や体に包帯を巻かれた状態にも拘らず軽い感じに出迎える伊丹と数人のメイドが其処にいた。
予想の斜め上の待遇を受けている伊丹に全員茫然と言った表情を浮かべ、しばしその場を動けなかった。
カズヤ達が伊丹の部屋に到着している頃、屋鋪奥にあるピニャの部屋にはボーゼスとパニッシュが呼び出され悲痛な面持ちで立っていた。
「……此度の一件は此方の不手際であるのは明白だ。その為、何としても伊丹殿には向こうの王達に此度の一件を知られるわけにはいかん。……ボーゼス、どうすべきか分かっているな?」
そう問われ、ボーゼスは肩を跳ね上げ暗い面持ちで頷く。隣にいたパナッシュは何もしてやられない事に対して憤りを感じているのか、血が出そうなくらい手を握りしめていた。
「わ、私とて帝国にお仕えしている貴族の一人です。その手の作法は、その有しております」
「……分かった」
そう言いボーゼスとパナッシュは一礼し、部屋から出て行った。彼女達が取った行動は、此度の暴行事件を引き起こしたボーゼスの身を伊丹に差し出し、無かったことにしようとするものだった。
ボーゼスは、自身がやった行動によって帝国を危機に陥れてしまった事に責任を感じ今回の件に反対は無かった。だが、それでも愛してもいない者に自身の体を差し出すのは抵抗があった。
「……ボーゼス、済まない。何もしてやれな「いいえ、これは私が招いた事。責任は私が取ります」……本当に、済まないっ」
拳を握りしめるパナッシュにボーゼスはポケットからハンカチを取り出し、パナッシュの手を取り拳を広げハンカチを渡す。ハンカチには小さな赤い点が点々と浮かぶ。
「大丈夫です、貴方は隊の者達の所に行ってください」
そう言いボーゼスは歩き出す。パナッシュは遠ざかっていくボーゼスの背に悲観と申し訳ないといった感情を浮かべた顔を向ける事しか出来なかった。
次回予告
伊丹が無事だったことに安堵したカズヤ達。文化交流という事で色々交流をしている中、カズヤはペルシアと談笑をしていた。
そんな中、伊丹達が居る部屋の扉の前にはボーゼスが立っており自分に帝国の為だと言い聞かせていた。
次回
異文化交流