GATE~ヴァンツァー、彼の地にて、斯く戦えり~   作:のんびり日和

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26話

「えっと、教えてもらった部屋は…、っと此処ですね」

 

そう言いカズヤは避難民達が暮らしている仮設住宅の一つの前で止まる。

 

「此方がペルシアさんのお部屋になります。何分仮設住宅なので、十分とは言えませんがどうぞ」

 

「はい、失礼したしますニャ」

 

そう言い二人は中へと入る。

避難民達が暮らす仮設住宅はどの住宅も2DKタイプで広々とした間取りとなっている。

ペルシアが暮らす部屋も一人で生活するには十分すぎる広さであった。

 

「あ、あのカズヤ様。この部屋は誰かと共同なのですかニャ?」

 

「いえ、この部屋はペルシアさんだけです」

 

カズヤの言葉にペルシアは驚きの表情を浮かべ部屋の間取りをきょろきょろと見渡す。

キッチンの備わった広々とした部屋。更に奥にも広い部屋が2つもあった。

 

「この住宅にはお風呂やトイレも完備しています。それと外の方に遠征団と避難民の皆さんとの共同風呂がありますので、ご自由にどうぞ」

 

「は、はぁ。それにしてもこの様な広々としたお部屋をご用意してくださるとは、ありがとうございますニャ」

 

「あぁ~、いや。他の避難民の皆さんと同じくらいですよ。しかも一家族、この部屋ですし」

 

「ほ、他の方々もこのお部屋と同じくらいのお部屋!? しかも一家族にですかニャ!?」

 

カズヤの言葉に驚きの余り、大声をあげてしまい慌てて口を手で覆う。

 

「えっと、其処まで驚くほどなんですか? 最初に来られた避難民の皆さんも結構驚かれましたけど…」

 

「は、はい。これほど広々とした部屋を有している家は、金銭的に余裕のある家しかありませんニャ。普通の平民で此処まで広い部屋は村長など位の高い家にしかありませんニャ」

 

「そうだったんですか」

 

この世界での生活水準の違いに驚きながらも、カズヤはペルシアに部屋の説明などを行っていく。

 

「――以上で部屋の説明は終わりですが、何か不明点などありますか?」

 

「いえ、大丈夫です。むしろ十分すぎるお部屋で驚きですニャ」

 

「アッハハハ、そうですか。それじゃあ私は向こうに戻らなければなりませんで、此処で失礼します」

 

「はい、ありがとうございますニャ」

 

カズヤは一礼し、住宅を出た後駐屯地に戻ろうとしている車両に乗せてもらい基地へと戻っていく。

 

 

 

一方ペルシアは持ってきた鞄の中から着替えやら何やらをタンスの中へと仕舞って行く。

すると扉をノックする音が鳴り響き、ペルシアは誰だろうと首を傾げつつ扉を開けに向かう。すると其処には

 

「はぁ~い、ペルシア」

 

「これはロゥリィ様。どうかされましたかニャ?」

 

扉の前にはハルバードを持ったロゥリィが立っていた。

 

「今日から暫く此処で暮らすんでしょ?」

 

「はい。暫くの間は此方で派遣団の皆さんのお手伝いをするよう仰せつかっておりますニャ」

 

「そう。それじゃあ此処の皆の挨拶回り、一緒に行かないかしら?」

 

「聖下とご一緒にですかニャ? それは光栄でございますニャ」

 

そう言い身形を急ぎ整え、ペルシアはロゥリィと共に他の避難民の元に挨拶をしに向かった。

 

 

 

基地へと戻って来たカズヤはヴァンツァーの格納庫へと向かい中へと入って行く。

そして自身が乗っていたゼニスからパーツが外されていき、ゼフィールのパーツが付けられていくのを見上げていた。

 

「修理から戻って来たのはいいけど、暫く乗る予定が無いんだよなぁ」

 

カズヤはそう零しながら見上げる。カズヤがそう零したのは、伊丹と同様にカズヤも参考人として国会に呼ばれているからだ。

 

(絶対に呼ばれた理由って銀座の事か、避難民の事かな。あぁ~、憂鬱だなぁ)

 

そんな事を思いながら立っていると、背後から

 

「ほぉ~、こんなところに居たか愚弟」

 

と言われ、カズヤは肩を跳ね上げ背中に嫌な汗が流れだす。

 

(い、いや、そんなまさか。な、なんで? い、今海の上のはずだ。だ、だから声がするはずがぁ)

 

カズヤはそんな事を思い、背後を振り向けずにいると

 

「人が話しかけているのに、無視とはいい度胸だな大尉ぃ」

 

と、今度は階級で呼ばれ流石に振り向かなければならないと感じカズヤは恐る恐る振り向くと、其処には銀髪のショーヘアで白い軍服を着た女性が立っていた。

 

「な、何で此処にいるんですか、姉「はぁ?」 し、失礼しました、リン中佐」

 

そう言い敬礼するカズヤ。カズヤの背後に居た女性、リンは鋭い目を向けながらカズヤの元に近付く。

 

「お前、今仕事中だ。公私混同は避ける様に、いいな?」

 

「い、YES,ma'am」

 

「よろしい、休んでいいぞ」

 

そう言い肩の力を抜くカズヤ。

 

「それで、何故此処に中佐が?」

 

「上層部からこいつの討伐作戦が立案され、ウチの部隊の何人かを此方に派遣することが決まった。だから私はその現地視察だ」

 

そう言いながらリンはある資料をカズヤへと手渡す。カズヤは怪訝そうな顔を浮かべながら資料を見て、眉間にしわを寄せる。

 

「これって、炎龍じゃないですか。まさかストライクワイバーンズ隊で、討伐すると?」

 

「私達だけではない、自衛隊の中からも何人か選抜することが決まった。お前、こいつに腕を破壊されたらしいじゃないか。……どうなんだ?」

 

「どう、って言われましても「お前の見解でいい。言え」……了解しました。私の見解では奴に勝てる確率は五分といった所です」

 

「ほぉ、その訳は?」

 

カズヤの言葉にリンはジッと見つめる。

 

「奴の皮膚は他のドラゴンよりも厚く、セメテリーの弾丸を簡単に弾きました。逆にAT-4やパンツァーファウストなど、火薬の入った弾頭は奴にダメージを与えました。ですが、それでも奴は生きていました。数で押せば勝てると思いますが、何分奴は空を飛べるし火を吐きます。耐熱装甲を施されたヴァンツァーでも対処できるかどうか」

 

「なるほど、お前の見解はよくわかった。今後の作戦の意見として取り入れていこう」

 

「は、はぁ」

 

そう言いカズヤはリンから目線を外し、ゼフィールの方へと戻す。ほとんどのパーツが付けられたのか、最後の調整作業に移っていた。

 

「所でカズヤ」

 

「なんでしょうか?」

 

「ストライクワイバーンズには何時戻ってくるつもりだ?」

 

「……」

 

リンの言葉にカズヤの顔が強張り、見られまいと顔を上げる。

 

「…申し訳ありませんが、自分は既にレイブン隊の隊長をしておりますので、戻る予定はありません」

 

「……そうか」

 

カズヤの返答を聞いたリンはそれ以降何も言わず、ただカズヤの隣に立ってゼフィールの組み立て作業を眺め続けた。




仮設住宅の間取り何ですが、ネットで探してきた物を参考にしております。

次回予告
国会に参考人として呼ばれた伊丹とカズヤ。
そして当日、レレイやペルシア達と伊丹達は門の向こうの日本へと行くことに。

次回
参考人招致part1~「奇跡」起こすわよ?~

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