パーシヴァルの物語   作:匿名

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お待たせいたしました。今回も遅れてすみません。本当に……すみません。

それと、Garden of Avalon まだ途中ですけど聴きました。良いですね。それぞの騎士達の思いが語られていて、大変興奮しました。
ていうか、ケイ卿のオラオラを想像してしまった自分は間違ってないはず。

……どうでもいいことですが、オリジナル小説を書きたくなってくる今日この頃……。


14━ある騎士の話

 ━━━━分かっている。

 

 ━━━━分かっているさ。俺が『アイツ』を救えないくらい。

 

 ━━━━だからこそ、何処からともなく現れ、 いとも容易く『アイツ』を救ったお前が凄くて。

 

 ━━━━ただ、それを俺は認められなかっただけの話だ。

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 俺とパーシヴァルの出会いは、最悪なものだった。

 俺がパーシヴァルの奴を初めて見かけたのは、戦場だ。ある騎士から自陣の後方より奇襲を受けたと報告を耳にし、急いで来た道を戻った。

 駆けつけた頃には既に、我が義妹のアルトリアがランスロットと共に敵勢力と応戦しており、慌てて俺もそれに参加した。正直戦う事は得意じゃなかったがな。何はともあれ、襲い来る敵を倒していく。

 そんな時だった。アルトリアと肩を並べ戦場を駆ける朱を見たのは。

 

 あんな騎士居たかと、心に疑問を持ったが、その時は戦場の最中だ。気にしている暇などある訳が無い。

 気になりながらも、それは後だと剣を構え敵を倒していた。それがパーシヴァルの姿を初めて見た時だ。

 

 次に、アイツと話をしたのはテントの中でだった。

 奇襲を退け、死者が殆ど出なかった事を喜びながら、自陣に戻っていく。そして備え付けたテントに入ると、アルトリアと腐れ魔術師から朱い奴の紹介をされた。

 聞く限り、途中からこちら側に加勢してくれたらしい。確かに傍目から見ても、あの戦場ではパーシヴァルのお陰で勝てた事が理解出来る、それ程までにパーシヴァルは活躍していた。

 ただ、一つ気に入らない事がある。

 

 それは、パーシヴァルがマーリンの知り合いだという事だ。人の子に竜の概念を含ませる。所謂、概念受胎ってやつだ。それだけでも胸糞が悪くなる。

 そんな事を平気で行う腐った魔術師だぞ、そいつの知り合いだと紹介されて、はいそうですかと信頼出来る方が難しい。事実、その時は俺の様に顔を顰める奴の方が多かった。

 

 ……話を戻そう。

 俺とパーシヴァルの会話は、なんとない普通のものだった。だが、逆に普通故に俺は気に入らなかった。

 礼儀を知らない事もそうだったが、俺はアイツに一つ問うたことがある。まあ簡単に言うと、「王の事をどう思ってるか」と言うものだ。

 そしたらパーシヴァルは、「なんとも」と心底どうでもいいと、興味の無さそうな声音で答えた。

 

 その時からだ、俺がパーシヴァルを認めなかったのは。

 パーシヴァルからして見れば知り合ったばかりの王様ってだけで、本当に、本心からの何気ない一言だったのかも知れないが、俺ら騎士からしてみれば納得のいく答えではない。

 国の為、民の為、今ある尊い人々の営みを守る為に、俺らは──俺の場合は少し違うが──アルトリアに仕えている。そこには些細な違いはあるが、一貫して皆忠節を尽くしている。

 愛国心もなければ、忠義もクソもない赤の他人を、少なくとも俺は信じる事が出来なかった。

 

 以来、パーシヴァルを見掛けては嫌味を言うようになった。

 だけど、俺がなんと言おうがパーシヴァルは飄々と受け流す。

 こんな事を続けて居ても無駄だとは分かっていたが、止めることはしなかった。そしてまた、そんな無駄な事をする自分にも苛立ちを覚えていた。

 

 ある日、アルトリアの雰囲気が柔らかくなったのを感じた。周りは気付かない程の些細な変化だが、ガキの頃から長年アイツといた俺には直ぐに分かった。

 変化の原因はすぐにパーシヴァルだと言う事も分かった。アルトリアに対してのパーシヴァルの雰囲気が何処か馴れ馴れしかった為すぐに気付いた。流石に正式な場ではそんな事は無かったが……。

 今でこそ、いい意味でアルトリアに変化を齎したパーシヴァルには感謝しているが、その当時の俺からしたら、アルトリアに取り入ろうとしているようにしか見えず、更に激しく当たる様になった。

 

 そして遂には、全く関係の無いクンネヴァールを叩いてしまうという事件を起こしてしまった。ああ今思い出すだけでも腹が立つ。勿論自分自身にだ。

 それにより一時期は円卓の席を下ろされそうになったが、まあ色々あって謹慎で済んだよ。

 ……けど、パーシヴァルとの仲は最悪以下になった。

 

 然し、そんな俺とパーシヴァルの仲を一転させる出来事が起きた。

 それは戦場での話だ。戦力の大半を出さなければ行けない程の激戦が起きた。

 そんな大規模な戦だ。当然、俺も駆り出されたよ。……まったく、机に向かって雑務をこなしている方が性に合うってのにな。

 

 勇猛果敢に雄叫びをあげ、剣を振るう敵を殺しながら、戦場を回っていると、パーシヴァルが死体に躓き体勢を崩したのが見えた。

 敵に囲まれているパーシヴァルを見た時、あぁ死んだなと思ったよ。助けなかったのかって? ……その時の俺とパーシヴァルの関係を考えてみろ……つまりはそういうことだ。

 

 それから暫くしてだ、また戦場を駆け巡る彼奴を見つけた。どうやら助かったらしい。

 そんな時だった、パーシヴァルの奴に数瞬気を取られていた俺は、情けない事に不覚を取った。

 今度は俺が絶体絶命に陥ったって訳だ。傷は浅くなかった、走る激痛で片膝を付き、動くことすらままならない。

 その時は正直、柄にも無く罰が当たったんだと思ったよ。パーシヴァルを見捨てた、な。

 

 敵が槍を振り下ろした時、すべてを諦めた。

 ……血が滴り落ちる。それは地面にではなく、貫通した槍を伝いながら俺の頬に着地した。

 俺に刺された痛みなど無く、目の前にいるパーシヴァルが苦痛に顔を歪めていた。

 そう、パーシヴァルは俺を庇い串刺しにされたんだ。

 

 驚愕に目を見開く。

 パーシヴァルの奴が俺を庇う理由など無いはずなのに、此奴は俺を庇った。

 その理由を聞きたくて、敵を殺し、横になるパーシヴァルの胸元を掴んでいた。何故だ、何故俺を助けた。

 

 「見捨てようと思ったけど……あんたの嫌味(お小言)が聞けなくなると思ったら、勝手に体が動いた」

 

 それに、アルトリアが悲しむからと、掠れた声で答えた。

 どうやら此奴の中で、俺の嫌味は日常になっていたらしい。は、呆れたぜ。この時になって漸く理解した、此奴は相当な馬鹿だ。俺は見捨てたのに、此奴はそんな俺を助けた。会うたびに罵るような相手をだ、馬鹿以外の何者でもない。

 ……だが、この馬鹿の事を侮蔑し、見捨てようとした俺は…愚か者だ。

 

 気が付けばパーシヴァルを背負って陣営に戻ろうとしていた。

 後ろからは、大丈夫だ、と声がするがそれを無視して自陣にに向かう。幸い、先程敵将は取ったと声が聞こえた。

 

 その後、陣営に戻った俺は、何故かパーシヴァルの傷がテントに着く頃には塞がっていた事に驚きながらも。

 これまでの事を謝罪した。……あんなに軽く許されるとは思わなかったが。

 その日以来、俺とパーシヴァルの仲は改善されて行った。……かと言って、その当時は、まだ礼儀がなっていないパーシヴァルにグチグチ言う事は変わっていないがな。

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 「お、ケイ」

 

 パーシヴァルは、渡り廊下で偶然見掛けたケイに声を掛けた。

 向こうは一瞥すると、なんだお前かと、一言呟き直ぐに歩き始める。パーシヴァルは小走りで、彼の隣に行く。

 

 「なんだケイ、もう雑務は終わったのか?」

 「今日の分はな」

 「さっすが」

 

 おちゃらけた雰囲気で、ケイの肩を軽く叩くパーシヴァル。ケイは何処か鬱陶しそうにしながらも、それを振り払う事はせずに、黙っていた。

 そんな二人からは、友情が見て取れる。これも、戦場での一件から互いの認識が改まった事による恩恵だろう。

 他の騎士達も、この二人が親友の様な間柄だと認識する程だ。

 

 「……何故付いてくる」

 

 すたすたと歩いて暫く、先程から気になっていることを、ケイは聞いた。

 

 「やる事ないから」

 「ならば何故此処にいる?」

 「さっきまで先生ん所に居たんだけど、先生が用事で帰っちまってよ」

 「……イーテル卿か」

 

 今日は非番だった為、やることも無いパーシヴァルは、朝からイーテルの元に向かい雑談をしていた。

 然し、そのイーテルが居なくなり、畑でも弄ろうとしていた所にケイを見つけたのだ。

 

 「つまりは、暇潰しに俺についてきたという事か」

 「正解」

 

 ヘラヘラ笑うパーシヴァルに、ケイは少し青筋を浮かべる。

 ケイはこれから別の仕事なのだ、暇潰しという理由で付いてこられては困るというものだ。

 

 「フン、暇ならば泥遊びでもしていろ」

 「相変わらず辛辣だな……。それに、俺が遊ぶ……じゃない弄るのは土! 泥と違う」

 「泥も土も変わらん。俺はこの後も仕事だ、邪魔をするだけならば何処か行け」

 「いや変わるから……。でも仕事か。ならしゃあない、下町にでも行くかぁ」

 

 そう言ったパーシヴァルは、ケイと別方向に歩き、手を振ってわかれた。ケイはそれを見送ると、うるさいのが消えたと溜息を吐く。

 あの戦場以降、ケイを見つけては近寄って煩く話し掛けてくるパーシヴァル。昔の自分が見れば、今の状況に驚くだろう。まさかあれ程嫌っていたパーシヴァルと仲良くなるとは。

 世の中何がどう転ぶか分からないと、ケイは皮肉気な笑みを浮かべながら、再び歩き始めた。

 

 

 

 

 




粗い、とにかく粗い。
……修正入るかもです。

それと今回の話で評価落ちそうだなぁ。こんなのはケイ卿じゃないとか思われそうで心配です。
もしそう感じましたら、感想欄にて言ってくださると嬉しいです。


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