パーシヴァルの物語   作:匿名

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お久しぶりです。
今回も遅れてすみません。
何回目でしょうかこのやり取り……。

とりあえず、お先に今回の話をどうぞ。


19━破滅の足音

 同日の夜。

 十六夜の月が地上を照らし、星々が人を眺めている。

 “みんなのお友達パーシヴァル農園”─そう呼ぶのはパーシヴァルだけ─という巫山戯た名の、郊外に存在する不可侵の楽園。

『美味しいモノが選り取りみどり! みんなの宝箱だよ? 』を謳うこの農園は、そのキャッチフレーズに違わないほど、栄養満点味覚満点の豊富な作物が実っていた。

 実る色彩の少し外れ、そこの小さな小屋に三つの影がある。

 パーシヴァル、アルトリア、モードレッドの昼間の三人だ。

 四角形の卓に、向かい合うようにアルトリアとモードレッドが座り、上座にパーシヴァルが座っていた。

 

「……」

「……」

「……」

 

 三者無言。

 重苦しい沈黙が、パーシヴァルには質量を伴ってのしかかっているように感じた。

 アルトリアとモードレッドのこの二人、口は開かないくせにお互いにガンを飛ばしあっており、しまいには両者揃ってパーシヴァルを睨む始末。

 蛇に睨まれた蛙……否。龍に殺気向けられたすまないさんである。

 冗談もほどほどに、四つの翡翠の目からありありと、「何のつもりだ?」という感情が伝わって来る。

 さてどう口火を切ったものか、と足りない頭を必死に働かせパーシヴァルは愚考した。

 

「……あ、二人とも、お、お菓子いる? 小腹すいてるだろ?」

「いらねぇ」

「私も今は結構です」

「あ、そう……」

 

 撃沈。

 光の速さで地上に堕とされた。

 メーデーメーデーと脳内に警鐘が鳴り響く。

 

(くそ、勢いでこんな事しなければ良かった! ……けど、何とかしねぇと……)

 

 自分の軽率さを唾棄しながら、必死に話題を探す。

 パーシヴァルはそれ程までに二人に仲良くして欲しいのだ。

 家族……と言う間柄にするには、今日だけでは時間が無さすぎる。ならば、せめて友人か親戚程度には……とパーシヴァルは思っていた。

 だが、今はそれも難しいだろう。

 モードレッドは未だにアルトリアに近づこうとする気持ちはある、しかし対するアルトリアが、拒絶に似たものをモードレッドに向けているからだ。

 全てを寄せ付けぬ獅子の如く、モードレッドを威圧しているようにも見えるのはパーシヴァルの気のせいではないだろう。

 

「……パーシヴァル。私は貴方に呼ばれたからここに来ました。しかし、何故モードレッド卿もここに居るのです?」

「いや。ほら、二人には仲良くして欲しくて……」

「その事なら昼間に申した筈です。用がそれだけなら私はこれで……」

「あぁいや、まてまて。そういう事じゃなくてさ」

 

 必死に引き止めるパーシヴァルに、アルトリアは何が言いたいのか分からず怪訝な顔をする。

 そういう事でないのならどういう事だ、と正面に座るモードレッドもそんな雰囲気を出していた。

 

「確かにアルトリアには王として、騎士達の頂点に立つ者として譲れないものがあるのかもしれないけど。それはそれとして、家臣と仲が悪いのは如何なものだろうか?」

「む、確かにそうですが……」

「それにほら、王様が一家臣とギクシャクしてたら指揮にも影響するかもだし」

 

 王として凡そ完璧と言えるアルトリアは、モードレッドとの関係を表にすることはないだろう。

 だが、円卓の面々やその他騎士に知られるのは時間の問題だ。

 もしそんな事になれば、モードレッドは騎士王に嫌われている等、色々な負の噂が立つかもしれない。

 そうなれば終わりだ。確実にどちらかの指揮系統に影響が生ずる。

 モードレッドだった場合は、騎士王に非礼を働いき不興を買ったものとして。

 アルトリアだった場合は、円卓に座す一騎士すら制御出来ぬ王として。

 それぞれ彼女らをよく思わない輩に、影で騎士達の間に広められるだろう。

 アルトリアもその考えには至った為に、パーシヴァルの言葉に足を止めた。

 

「……いいでしょう」

 

 渋々と言った風に、椅子に座り直した。

 なんとか引き止められたことに、パーシヴァルは安堵し心で一息つく。

 

「さて、アルトリア。確認だけど、頑としてモードレッドには王位継承を譲る気は無いんだな?」

「無論です」

 

 その言葉にモードレッドの顔が苦くなる。

 

「分かった。まあ、正直俺もモードレッドにその器はないと思ってるしな」

「はあ!?」

 

 机をばん! と叩きモードレッドが立ち上がった。

 パーシヴァルは宥めるように、まぁまぁと言いながらモードレッドを座らせる。

 

「じゃあモードレッドに聞くけど、王になったとしてどうする?」

「どうするって。んなもん、王として民を導けばいいんだろ?」

「どうやって?」

「……アーサー王みたいに……」

「だったらアルトリア(アーサー)で十分だろ?」

 

 パーシヴァルの言に、うっと面を言葉を詰まらせた。

 現王であるアーサーと同じ執政をするのであれば、それは王を引き継いだ意味が無い。

 ならば、不老不死であるアーサーが引き続き王として君臨していればいいことだ。

 王を継ぐという事は、己の力でどう民を導き、如何な法を敷き、どうして国を存続させるかを考えなければならない。

 そこに似たものはあれど、同一のものなど決してないのだ。

 それをするには、モードレッドはカリスマが欠けている、人望が欠けている、思慮が欠けている。

 ━━何より神秘の衰退し続けるこの世に置いて、アルトリア以上の覚悟がなかった。

 

「と、話はズレたが。アルトリアの意思は分かった。だから、分かった上で言う」

「……?」

「なあ、せめて家族と認めてやってはくれないか?」

「それは……いえ、出来ません」

「まあ、だろうなぁとは思ったけど……。けどさ、いきなり頭ごなしに否定されるモードレッドを、俺は少し可哀想だと思う。だから、その、なんてかさ、少しずつでいいからモードレッドの事を理解してあげてほしいんだよ。断るにせよ、そうした上で、アルトリアの出した答えで断ってあげてほしい」

 

 真摯な顔を向けられた。

 が、その直後にふいっと気まずそうに視線を一旦外し、元に戻す。

 

「なぁんて、これは俺のワガママなんだけどな! ……だからそんな重く捕えないで、一家臣(赤の他人)の戯れ言だと流してくれてもいいよ。アーサーとしてもアルトリアとしても」

 

 自分(パーシヴァル)のワガママ、そう言って頬を指で掻き誤魔化すように苦笑いをした。

 内心で悪い事を言ってしまった、とパーシヴァルは罪悪感に襲われる。

 流してもいいとパーシヴァルは言ったが、生真面目なアルトリアはそうしないだろう。

 その性格を分かった上で言ったのだから、パーシヴァルは自身の事を最低だ、と自嘲した。

 次いで、モードレッドの方を向く。

 

「そしてモードレッド、お前もお前だ。家臣がいきなり兜を脱いで、あなたの子ですって言われても、そりゃ認められる訳ないだろ」

「でも……!」

 

 抑えるように、モードレッドの言葉を遮った。

 

「でもじゃない。家族として接するには、お前もアルトリア(アーサー王)の事を知らなすぎる」

「……」

「ましてや王位継承なんて以ての外だ。仮に継承権があったとしても、周りはお前について行かないぞ? 無論、俺もだ」

「……っ」

 

 パーシヴァルのその一言が、モードレッドにはショックだった。

 モードレッドは、誰よりもパーシヴァルは自分の味方だと思っていたからだ。

 そんな者から、例え王になったとしても仕えない、そも王の資格がないと言われて僅かながら裏切られた気持ちになる。

 だが、そんなモードレッドをフォローする様にパーシヴァルは続けた。

 

「勘違いすんなよ? モードレッドが真に民を思う王なら、俺も従おう。だが、お前が王になりたいのは、それがアーサーに認めてほしいという思いからだ。そんな個人的理由では、誰一人導けない」

「だったら! だったらどうすりゃいいんだよ!?」

 

 モードレッドは親から怒られた子供のような顔で、吐き捨てるようにそういった。

 

「だから言ってるじゃん、お前もアルトリア(アーサー)もまずは互いの事を知れって。……いきなり家族は無理がある。まずは互いに互いが距離を近づけないといけない。再三言うが特にモードレッド、お前はアルトリア(アーサー)の事を知る努力がいる。たとえ少しずつでも、だ」

 

 ━━アーサーを知れ。

 モードレッドの脳内にはその言葉が反響する。

 アーサーを知れとはどういうことか、アーサーの何を知れば近づけるのか。

 必死で考えるが、思考を巡らせるより戦う事の方が得意なモードレッドは思い浮かばなかった。

 

「なにを、すればいいパーシヴァル?」

 

 絞り出すように、そう言った。

 自分の言いたいこと言い終えて、すっかり油断していたパーシヴァルは、うぇいっ!? と変な驚き方をする。

 

「なにをって、んん〜。互いの好きな食べ物を理解する、とか?」

 

 自信なさげに語られたその言葉に、なんだそれ、と微妙な顔をするモードレッド。

 それを察したパーシヴァルは、矢継ぎ早に声を発した。

 

「し、仕方ないだろ! 俺も自分で言っといて何をすればいいのか思いつかなかったんだから!」

「はあ!? 自分で言ったことだろ!」

 

 それから、ギャーギャーとパーシヴァルとモードレッドの言い合いが始まった。

 それを傍らで見ていたアルトリアは、パーシヴァルから言われた事を自分なりにどうすればいいのかを考えていた。

 

(互いを知る、ですか……)

 

 それは円卓の騎士達の事を理解してあげられたパーシヴァルだからこそ、重く聞こえる言葉だった。

 パーシヴァルの言うことも一理ある。

 ならまずは知る事にしよう、モードレッドという騎士を。

 アルトリアは目の前で口喧嘩をする二人を見ながら、そう思うのだった。

 

「よし! なら、第一歩として今から食事会でも開くか? 二人のために好きな物を何でも作ってやるぜ?」

 

 直後、アルトリアの目がギラついた。

 その日の夜、気まずいお見合いのような食事会が開かれたそうな。

 

 *

 

 時刻は深夜、日付が変わった頃だった。

 蓄えていた食料の八割がアルトリアとモードレッドの胃袋の中に消えた、混沌の食事会の後の事。

 パーシヴァルは農園に来ていた。

 減らした備蓄を補充するためだ。

 

(まさか、モードレッドとアルトリアが大食い対決を始めるとは思わなかった……)

 

 アルトリアはモードレッドの前だからか、王としての雰囲気を解くようなことは決して無かったが、どこか柔らかくなったのを感じた。

 この分なら今回は大丈夫だろう。直接解決する事は出来ないが、切っ掛けを与えるぐらいならばパーシヴァルでも出来る。

 想定しうる中で、あれが最上だった。

 後は、モードレッドの努力次第だ。

 

「……ん?」

 

 農園を歩いていると、枯れた葉を見つけた。

 それだけならば不思議は無い、農園で枯れる事など日常茶飯事─と言ってもこの農園ではなかなか無い─だ。

 だが、おかしな事に枯れた葉が大量に落ちていた。

 

 ━━嫌な予感がした。

 

 枯れた葉をたどって先に行くと、そこには大量に死滅した作物があった。

 

 




お久しぶりです。
再度お詫びを、遅れてすみませんでした。
今回の話は、時間の合間に書いて消して書いて消してを繰り返した、所謂難産だった物です。
少し無理矢理な気もしますが、その時はご指摘頂けると嬉しいです。

あと一ヶ月以上書かなかったせいかスランプ気味で、話の構想も出来ているのですが上手く言葉に出来ません。
ですから、申し訳ありませんが次回は今以上に遅れると思います。

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