パーシヴァルの物語   作:匿名

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駆け足です。
長くなるとやる気がなくなるので……

※ほんの少し加筆しました。7月15日(AM0︰09)



02━邂逅

 「ハァ、ハァハァ」

 

 深い森の中を一人の少年が駆け抜ける。

 木々の葉と葉の間から入り込んだ木漏れ日は、その特徴的な薄い赤色の髪を照らす。

 少年の先には、普通より一回り大きな兎が走っている。

 

 「クソッ速い! けど……」

 

 ニヤリと口角をあげる。

 少年はただ追いかけていた訳では無い、ある場所へと誘導しながら走っているのだ。

 

 「━━っ!?」

 「かかった!」

 

 地に足をつけて逃げていた筈の兎は、いきなり視界が反転して体が浮き上がった事に驚きジタバタと暴れている。

 その宙に吊るされジタバタと足掻く兎を見ながら、この罠を仕掛けた少年はヤッター! と手を挙げながら喜んでいた。

 罠に上手く誘導できたのもそうだが、何よりこの後の昼食の品が一つ増える、その事が嬉しくてたまらないのだ。

 

 「はは、母さんも喜ぶぞ」

 

 吊るされた兎を逃げないように下ろし、苦痛なく死ねるよう首の骨を折る。

 こうして手に入れた食料を、母の喜ぶ姿を思い浮かべながら肩に担いで、少年パーシヴァルは自分の母が待つ家に帰った。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 「ハッ! ヤッ!」

 

 昼食を終えた昼下がり頃、赤髪の少年パーシヴァルはウェールズの森に来ていた。

 目的は剣の修練をする為、今も手に持つ身の丈より少し大きい剣を上から下へ、右から左へと規則性もなく降っている。

 

 「……ふぅ」

 

 暫くして、一度休息を取って剣を立てかけ木陰に座る。

 

 「色んな事あったな……」

 

 ふと、この世界に来たばかりの頃の出来事を思い出す。

 生まれ変わってから、早いものでもう12年経つ、その間に自分は随分と変わったと言えるだろう。

 生前での後悔故か、まず今の母親に優しくなり最初は渋々手伝っていた狩りや農作業が、今では楽しくなっている。

 

 それだけではない、魔法や人を殺す害獣の事を知ってからは護身術に剣を始めたりもした。

 パーシヴァルの母は護身術とは言え、彼が剣を持つ事に非常に猛反対していたが、それを一週間かけ何とか説得したりもした。

 

 他にも年寄りが多いこの村を豊かにする為に、生前で習った、覚えた知識を絞ったりして大変だけども充実した日々を送っている。

 

 「魔法使いたいなぁ」

 

 ふと、唐突に思った。

 無理な事は分かっている。

 この村には魔法を使えるものなど居らず、教えてもらう事など出来ない。

 いやそれどころか剣もまともに扱える人すら居ない、でなければ自分はこんな所で、一人で寂しく修練等していない。

 だがそれでも、魔法に憧れるのは仕方ないだろう。男とはカッコイイものに惹かれる生き物だ、ましてや魔法のマの字すら存在しないような世界で育ったなら尚更。

 

 「やるか……」

 

 魔法の事は一旦忘れて修練を再開する。

 剣を構え、目の前に敵が居る事をイメージし、そして腕を振り上げ一気に下ろす。

 下ろしきった剣を再び前に持っていき構え直す、これの繰り返しだ。

 そんな事をパーシヴァルは日が暮れるまで、飽きもせず淡々と続けた。

 

 

 その帰りだった。パーシヴァルは剣を肩に担いで家に帰る為に歩いてると、一人うつ伏せになりながら倒れている奇妙な格好をした男性を見つける。

 大変だ! と急いで近寄って頬を軽く叩き大丈夫か、と声を掛けた。

 

 「ん、んん……あいたた、ここは……」

 

 男性は呼び掛けに反応して目を覚ますと、むくりと起き上がり周囲を確認する。

 起き上がった事にパーシヴァルは良かったとホッと安堵した。

 

 「う〜ん、随分と遠くまで飛ばされたなぁ」

 「なぁアンタ大丈夫か?」

 「うん? ああうん。大丈夫だよ。ありがとう」

 「いや、礼はいいよ。それより何で倒れてたんだ?」

 

 話しながらも目の前の男を少し観察する。

 上を白い着物で揃え羽織っているローブも白、下は黒色のズボンだが、髪も白髪でどんだけ白色が好きなんだと言いたくなるような奇妙な服装だ。

 そして、何より気になるのは変な形の杖だ。その格好も相俟ってまるで魔法使いの様だ。

 

 「用事で出掛けた先で揉め事があってね」

 

 どう言う揉め事があれば森で倒れるような事になるんだ、そう言いそうになったが我慢した。

 出会ったばかりの相手にいきなりツッコむと言う失礼な事はしない、それがパーシヴァルだった。

 

 「へぇ……ところでアンタ、この後の当てはあるのか?」

 

 この森で倒れているような奴だ、恐らく寝床に困っている筈、そう考えたパーシヴァル。

 パーシヴァルは男に聞くと、案の定白髪の男は無いよと即答し、いやぁ困ったなぁと、パーシヴァルをチラチラ見ながら実に白々しく言う。

 

 

 「ハァ……まぁいいや、なら俺の家に来ないか?」

 「おや、良いのかい? どこの誰ともしれない私を家に上げても、何か悪い事をするかもしれないよ」

 

 白髪の男は態とらしい顔でニヤリッと笑ってみせる。

 脅しているつもりなのかも知れないが、見た目のヒョロさやその優しい声のせいで全く怖くない。

 

 「本当に悪い事をする奴はそんな事は言わないさ。それに宛のない奴を放置出来るほど堕ちちゃいないんでね」

 「そうか、ありがとう少年君」

 「どういたしまして、あと少年君はやめてくれ。俺にはパーシヴァルって名前があるからそう呼んでくれ」

 「うん分かったよ。改めてありがとう、パーシヴァル」

 

 そう言って先程とは違い今度は、ニッコリと笑って白髪の男は感謝を述べた。

 

 「そうそう、名前を教えてくれ。ずっとアンタ呼びじゃ失礼だからな」

 

 パーシヴァルがそう言うと、白髪の男そう言えばと今気付いたように自己紹介を始める。

 

 「私はマーリン。人呼んで花の魔術師。気さくにマーリンさんとでも呼んでくれ。堅苦しいのは苦手なんだ」

 

 こうして人類史に名を残す事になる二人の英雄、花の魔術師(マーリン)未来の円卓の騎士(パーシヴァル)は邂逅した。

 

 

 

 




主人公の宝具は別の伝説から持ってこようかなぁ何て思ってます。
まぁ宝具が出てくるまで続けばの話ですが。

あと、主人公は魔法と魔術の違いがまだ分かっていません。

……評価や感想くると嬉しいなぁなんて……

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