クリス先輩がこんなに可愛いわけがない! 作:TearDrop
作者はクリスちゃんも好きだが、切ちゃんも好きなんだ……(絶唱顔
次回こそ、クリスちゃんの出番を多くしますから!石投げないでお願いします何でもしますから!!
リディアンに来て、一週間が経とうとしていた。少しずつリディアンでの生活に慣れ、友達も少しずつではあるが増えてきた。
そして本日は土曜日。
学校が休みの為、一週間の疲れを癒していた。リビングで寛ぐ律と、昼食のそうめんを茹でる母親。庭で野菜を植える父親。
なんて事もない一般家庭で流れる普通の日常。そんな普通の生活がどれだけ良いか、律はスマホ片手にそんな事を思いながら、昼食が完成するのを待つ。
「ふぅ……律。暇なら一緒に野菜を植えないか?」
「いいけど……こんな暑い日に野菜を植えるってどうかと思うんだけど?」
「何を言う。こんな暑い日だからこそ、いい汗掻いて、母さんが作った料理を食べる!最高じゃないか!!」
「父さん、私を褒めても何も出ねーぞこのヤロー」
「さぁ律!ほら、これ持って!」
「あ、うん。人参にジャガイモ……キャベツ?」
「あぁ、夏まきって言ってな。7月から8月にやるんだよ。父さんも最近知ったんだけどな!」
笑いながら、野菜の苗を植えていく父。今年で五十歳になる父親は、どんなに暑かろうが寒かろうがいつでも元気。
律は一度、なんでそんな元気でいられるのと父に聞いた事があった。その時に言った父の言葉が、今でも印象に残っている。
『う〜ん……律や母さんが居るからかな』
短いながらも、強い言葉。その時の父は、かっこよく見えた。一緒に苗を植える事三十分。
母親が昼食を作り終え、父と共にリビングへ戻った時だった。ふと、スマホに視線を移すとメッセージが届いていた。スマホを開き、メッセージを確認すると苦笑いを浮かべる律。
日常会話だけでなく、メッセージでも語尾に〝デス〟を付ける相手といえば、切歌しかいない。
どうやら、この後予定はあるかとの事だった。昼食終わりでもいいかなと連絡を送ると、すぐに返事が返って来た。
『いいデスよ〜!それじゃあ、○○町の商店街で待ち合わせデース!』
「商店街?なんで商店街なんだろう……」
「友達からか?」
「う、うん。この後、予定があるから昼食終わりでもいいかなって送ったら、○○町の商店街で待ち合わせしようって……」
「商店街かぁ……よくちっちゃい頃、律を連れて遊びに行ってたなぁ」
「そうねぇ。あの頃は律はまだちっちゃくて可愛いかったわねぇ」
「む、昔の話は良いから、早く食べようよ!」
律は椅子に座り、手を合わせて合掌し、待ち合わせの場所へ急ぐ為に昼食を食べ始める。
◇◇◇◇
「それで、なんで商店街で待ち合わせなの?」
「決まってるじゃないデスか。なんたって今日はーーーー抽選会なんデスから!!」
切歌と待ち合わせ場所に指定していた商店街にやって来た律は、切歌の〝抽選会〟と言う単語に違和感を感じた。
何故抽選会なのだろうか。確かに律達が来ている商店街は様々な店が立ち並んでいる。
品揃えも良く、近所に昔から住むご老人達や主婦達に愛され続けている程である商店街だが、何故抽選会なのだろうか。
「前にこの商店街に来た時に、お肉屋のおばちゃんから抽選券を貰ったのデスよ!」
「だから僕に抽選をさせる為に商店街の品物を買わせたのか……それで、お目当の景品はあるの?」
「もちろんデス!お目当の景品は……あれデース!」
切歌が指差すのは、でかでかと組立テントに置かれた看板に貼られた〝黒毛和牛500g〟だった。
「く、黒毛和牛……?」
「そうデス!最近アイドルとして頑張ってるマリアがお疲れなんデスよ……だから黒毛和牛を当てて、マリアに喜んでもらおうと思ったんデス!」
笑顔を見せる切歌を見て、急に目頭が熱くなる律。
目頭を抑える律を見て、切歌が首を傾げる。
「あれ、どうしたデスか?」
「う、ううん……なんか、急に涙が出て来ちゃって……歳なのかなぁ?」
「私たちとそんなに歳変わらないじゃないデスか!?」
なんて良い子なんだろうと、目頭が熱くなる律はふと、何時もなら切歌と一緒に居るはずの調がいない事に今更であるが気づく。
「そういえば月読さんは?」
「調は少し用事があるみたいで……だから、一人じゃ黒毛和牛を持って帰れないので律を呼んだんデス!あと、他の景品が当たった場合の荷物持ちデース!」
「あっ、持って帰る気でいるんだね……」
「当然デース!」
もはや、持って帰る気満々でいる切歌。
(多分、生モノだから持って帰れないんじゃ……でも、すぐに持って帰れたりするのかな?よく分かんないけど、暁さんは当てる気でいるし、僕も頑張ろう)
それから、切歌と律は抽選会が行われる列に並ぶ。
思ってたより人が多く並んでおり、結構時間が掛かるんだろうなと律が思っていると、目の前の切歌のうなじに目が行った。
たらりと流れる汗が、切歌のうなじに流れる。そして視線は切歌の横顔に向けられる。
(こうして見ると、暁さんも可愛いなぁ……いやいや、僕には雪音先輩っていう好きな人が……!)
「律、どうしたデスか?」
「な、なんでもないよ!うん、なんでもない!」
「そ、そうデスか……それにしても暑いデスねぇ」
「そうだね……なら、飲み物買ってくるよ。代わりに僕の抽選券渡しておくからさ」
「良いんデスか?なら、お願いするデス」
律は抽選券を切歌に渡し、その場から離れ飲み物を買いに行く。
近くに自販機が無いか探すが、どこにも見当たらない。近くのスーパーなら飲み物が売ってるかもしれないと思い、スーパーまで行くが生憎休店日で閉まっていた。
「しょうがない……少し遠いけどコンビニまで飲み物買いにーーー」
「あれ?お前、こんな所で何してるんだ?」
「なにって、飲み物を買いにーーーーえっ?」
聞いたことがある声だなと、声がした方へ振り向くと其処に居たのはーーー想い人であるクリスがアイス片手に立っていた。
「ゆ、雪音先輩!どうして此処に?」
「買い物に来たんだけどよ、定休日だったてのを忘れてたなぁ……お前はなんで此処に?」
「この近くで抽選会があって、其処に暁さんと一緒に来てたんですけど……この暑さで喉渇いちゃって、飲み物を買いに来たらお店閉まってて……」
「なるほどなぁ……お前ら随分仲良いけど、付き合ってんのか?」
「なっ……つ、付き合ってませんよ!?確かに暁さんは可愛いけど、なんていうか……その……」
「冗談だって、そんなに慌てんなよ。さて、これからどうすっかなぁ」
クリスはアイスを舐めながら日陰に隠れ、律もクリスから少し離れて日陰に隠れる。スマホを開き、天気を確認すると、気温は30度と表記されていた。
真夏日と化した今日。
早く切歌の下へ戻らないと熱中症で倒れてしまうかもしれない。取り敢えず、早く切歌の下へ戻ろうとした時だった。
遠くの方から、切歌が律達の下へ走って来た。息を切らして、肩で息をする切歌。少しばかり、胸の谷間が見えてしまったが、役得としておこう。
「暁さん、どうしたの?」
「そ、それがデスね……律に貰った抽選券も一緒に回したんデスよ……当たらなかったデース……!」
「そ、そっか……なら、どうしようか。せっかく来たんだし、どっかでお茶でもしよっか?ゆ、雪音先輩もどうですか……?」
「あたしは遠慮しとく。これから晩飯の買い物しなくちゃなんねぇから」
「そ、そうですか……それじゃあ、また学校で」
律と切歌はその場を去り、何処か涼める場所を探し求める。それを見つめるクリスの目は、何処か寂しそうであった。
◇◇◇◇
律の母親ーーー律ママは、元ヤンキーであった。
昔は色々ヤンチャしては人様に迷惑をかけていた程の不良娘であった。しかし、律の父ーー律パパと出会ったのが、律ママの運の尽きであった。
ーー僕は貴女に一目惚れしました。僕と付き合ってくださいッ!!
本来なら、ヤンキーである律ママにそんな事を言ったら殴られるであろう。しかし、そんな律パパの言葉に律ママは意外な返事を返した。
ーー……はい。
チョロかった。
息子の律も初めて二人の馴れ初めを聞いた時にそう思った程である。それからヤンキーを卒業し、真っ当な道を歩み始めた律ママは高校卒業後、律パパと一緒に暮らし始め、初体験や何やら色々済ませ、今に至る。
そんな律ママは、鼻歌混じりに買い物に来ていた。
お目当の食材を求め、買い物カゴにどんどん入れていく。カゴから溢れ出るのではないかと心配されるくらいな程、買い物入れていく律ママ。
ふと、奮発してお肉でも買おうと思い、肉に手を伸ばした瞬間だった。別の客と手が重なってしまう。
「あら、ごめんなさいね。どうぞどうぞ」
「あぁ、いえ。あたしはいいんで……どうぞ」
別の客ーーー雪音クリスは律ママに譲ろうとするが律ママは頑固として譲らない。律ママはどうしたものかしらと心の中で囁き、ふとある事を思いつく。
「なら仕方ないわね……貴女、うちに来ない?」
「ーーーーは?」
それからが早かった。律ママは半端強引にクリスを家に連れて帰った。まさか、半端強引に連れて来られた家が、自分の後輩の家だとはこの時のクリスは、思いもしなかった。
如何でしたでしょうか。
少しでも楽しんで頂けら幸いです。そして、短編日間ランキングの方でこの作品が13位に入っておりました。ありがとうございます!
みんな、クリスちゃんが好きなんですね分かります。
次回もお楽しみに!