果たして、この世で起こることは全てが必然であるのか、それとも偶然であるのか。
必然であるのなら全ての事は予測可能、対処可能であるし、それとは対照的に偶然であるのなら予測不可能、対処も不可能であることは賢明な諸君のことなら考えずとも頭に浮かんでくることだろう。
では、世に起こる事象が全て必然であるのなら、何でもできるのではないかという問いには、しかし「ノー」と答えなければならないであろう。
理由は単純、全ての事を例えば数値で表すことができたとしても、膨大過ぎて予測をすることができないからである。余りにも私たちには見えないものが多すぎる。
逆に言えば、全てのことを数値化してしまい、計算ができるのなら、一ヶ月後の天気でも、何年も先の未来ですら手に取るようにわかるだろう。
今は技術が無いだけで、将来は簡単なことなら未来視すらできるようになるんじゃないか、というのが俺の持論である。
故に、俺は心霊現象を信じないし、「奇跡」なんて言葉は使いたくもない。
少なくとも未確認飛行物体が自分の目の前に現れるだとか、物理的に起こりえないことが起こるのを自分の目で確認するか、体験するかくらいしなければ信じないことにしている。
俺はこういったことを、テレビなんかで心霊特集や奇跡! ○○のスクープ! みたいな番組を見るたびに考えている。まあ言わば科学という名の宗教の信者ってやつだ。
「信者」なんて言葉を使って表すあたり、俺もまだまだなのかもしれないが……。
まぁいいか。
さて、ここまで長々と持論について語ってきた俺だが、とどのつまり何が言いたいのかというと……。
「むっ……ぐっ……」
「どうした、頭上ががら空きだぞ?」
「ハッ!?」
「脳天かち割ってやるぜ! モーゼェェェェェェエエエエエ!!」
「ぐわああああああああああああああああ」
……少なくともこの場では奇跡なんぞ起こりえない、ということだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふむ、これで通算135戦で俺の全勝だなぁ?」
「けっ、勝ち誇りやがって……。強すぎなんだよお前は」
ここは高校の情報処理室。つまりコンピュータールームだ。
俺たち二人……俺こと夜鳥刀哉と、腐れ縁の友人、循太は無断で持ち込んだノートパソコンで「東方非想天則」という弾幕アクションゲームをプレイしていたのだ。
説明するまでもなく、この俺が圧勝。135勝という驚異の数字を叩き出した。しかし、これは別に俺が強いという訳ではない。
「違うね、お前が弱すぎるんだ」
「なっ、なんだとぅ!?」
なんせこいつ、先にプレイしていて俺に東方やこのゲームを勧めてきたくせに、コンボの一つもできやしないのだ。ゲーム音痴にも程がある。後から始めた俺の方が上手くなっているのだからよっぽどだろう。俺に勝てる日はくるのだろうかと心配になるレベルである。
「悔しかったらWikiでも見て勉強してくるんだな。コンボすらできないとはお話にならないね」
「くっ……いいだろう、今回は見逃してやる」
「どうしてそうなる」
「そ、それじゃあ気を付けて帰るんだぞ! 俺はもう帰るから……」
と、言いかけたところで俺は循太の肩を鷲掴みにした。
勿論、帰らせないためである。このまま帰ってもらっては個人的に非常に困るのだ。
「んん、俺が一度も敗北せずに通算が120勝を超えてしまった時はどうするんだったかな? なあ循太君よぉ?」
「…………」
「潤んだ目で見つめてきてもダメだ。むしろ気色悪いからやめたまえ」
「マジで言ってるのか……?」
「大マジだ。こちとら生活費の関わる死活問題なんだ。きっちり奢ってもらうぜ?」
そう、俺は循太に先ほどの条件を満たして勝つことができれば一食を奢りにする、賭けゲームをプレイしていたのだ。当然ながら俺の方も一度でも負ければ奢るという条件付で手加減無しの試合をしていたのだからちゃんと賞品は支払ってもらわないと困る。今月はピンチなのだ。
「じゃあ学校近くのラーメン屋な」
「へいへい……まったく、容赦ねえなあ」
「何を言うか、15戦も伸ばして一度でも勝てば帳消しにするとかいう追加ルール加えやがったくせに」
「うっ、頭が」
「……まぁ奢ってもらえるんなら何でもいいけどさ」
「はぁ、秋のために貯めてたのに……」
「自業自得だな。それにお前はまだまだ金あるだろ? バイトしてんだから」