東方鵺行記   作:タリオン

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 どうも、タリオンです。お久しぶりでございます。
 ちょっとずつネタは頭に浮かびつつあるんですけど、忙しくて中々書く機会がありませんでしたよ。書くスピードも相変わらず遅いですしね。
 かなり時間がたちましたが、その分今回は文字数多めでお送りしますので許してください。

 それでは第二十二話、どうぞ。


第二十二話

 

 

 

 

 やぁどうも、夜鳥剣二だ。

 

 

 長かったが、やっとここまで来たぜ……。そう、命蓮寺までな!

 この重厚で雰囲気のある佇まい……正に寺って感じだな。ただ、見たところは普通の寺なんだけど合ってるんだよね? 藍さんに聞いてきたから間違いないとは思うけども……。

 門は既に開いているけど、これは入ってもいいのかね?

 

 

 ま、俺には入る以外に選択肢は無いけどね!

 

 

「つー訳でおじゃましまーs」

 

 

『こーんにーちわーー!!』

 

 

「うぉう!?」

 

 

 いきなりビビッたー……鼓膜が破裂するかと思ったぜ……。右の方から拡声器使ってシャウトしたぐらいの爆音が聞こえてきたが、この大声の正体は大体予想つくな。

 ズバリ、

 

 

「山彦か!!」

 

 

『山彦だ!!』

 

 

 おぉう、すごくハッキリと返された。若干、というかほぼ声が被った。これも山彦ゆえだろうか?

 しかし声でけぇな。寺とかは俺の中では静かなイメージだったが、この大声で雰囲気ぶち壊しだな。それが悪いとは言わないが。

 

 

「まぁそれはおいといて」

 

 

「私のアイデンティティーを華麗にスルー!?」

 

 

 すかさずツッコミ。キレがいい。だがここはあえてさらにスルーだ!

 

 

「君ってこの寺の修行僧だよね?」

 

 

「私の台詞までスルー……まぁいいけどね……。あなたの言う通り、私はこの命蓮寺の修行僧だけど、何か用でも?」

 

 

 ぬえの居場所が知りたいんだけど、と言おうと思ったが、初めて会った人間が仲間のことを知っているのもどうかと思ったので、名前は伏せることにした。

 

 

「や、ちょいとこの寺に住んでる、ある妖怪に用があってね。所在を知りたいんだけど、ここの代表みたいな人は今いるかい?」

 

 

「さっき帰ってきたところだけど、君って人間だよね、なんでまた一人でこんなとこまで? もしかして、私達のことを退治しようなんて思ってないよね?」

 

 

「いや、そんなつもりは無いけど。一介の人間にそんな大それたことはできないよ」

 

 

「ならいいや、あそこから寺に入ればいいよ」

 

 

「……俺が言うのもなんだけど、ちょっと警備が雑過ぎやしないか?」

 

 

「いや、自分で何もしないって言ったじゃない。まぁ、騒動が起こったら他の妖怪が止めてくれるだろうし、ぶっちゃけあんまり心配しないでいいんだよね」

 

 

 へぇ、この寺の中では常に誰かが目を光らせてるってことか。事を起こしたら、雲山みたいな奴が駆けつけてくる……なるほど、それは確かに怖いわ。そんなことは無いとは思うが、一応寺の中で荒事が起こらないように気を付けとくか。

 

 

「それじゃ、寺に入らせてもらうわ。道案内ありがとさん、掃除頑張ってねー」

 

 

「くれぐれも気をつけてー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寺の中を一頻り歩くと、本堂に着いた。他の部屋からはまったく気配も話し声もしなかったから、ここに誰かがいることはほぼ確定だろう。しかし移動中に誰にも会わなかったのには疑問が残るが……逆に怪しまれなかったとポジティブに考えとくか。

 

 

 さて、ここまで来るのに何週間か過ぎた。割と短い期間だったが、その密度はかつて山の中で遭難してサバイバルをした時と勝るとも劣らない。そんな日々を過ごしてやっとぬえに会えるのかと思うと……っとと、まだここにいるかどうかは分からないんだっけか。

 ふすまの前で深呼吸して……行くか、と決心した俺が、本堂のふすまを開けて見たものは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰ってきたのはいいけどさー、結局みんなはどうするつもりなのよ?」

 

 

 不機嫌そうにそう言ったのはムラサだ。しかしその気持ちは分からないでもない。何もできないまま寺に戻ってきて、何もせずにこのままダラダラしているのは非常に居心地が悪い。

 私としても早くこの状況から抜け出したいので、必死に打開策を考えているのだが……どうにもこうにも方法が思いつかないので仕方がない。

 

 

「今また同じ場所に戻ったところで前と同じ結果になるのは目に見えてるからね……それに、ご主人にばかり業務をまかせておくのは気が引けるし、目標があそこから出てくるまでは打つ手なしだね」

 

 

「わ、私は一人でも大丈夫ですよ!」

 

 

 そう言った寅丸に対して、ナズーリンが呆れた感じで溜息をついた。

 

 

「ハァ……帰ってきてからご主人が踏んでしまったドジの後処理するのに何時間かかったと思ってるんですか? 次にここを離れた時にはもっとひどい有様になっていることが容易に想像できるね」

 

 

「うぅ……」

 

 

 でも、確かにこれは仕方ないよね。もう大惨事だったもん。主に台所と作業部屋が。ここに集まっている者総出で後片付けをやらなきゃ追いつかなかったからね。

 

 

「まぁまぁ、その話はそのくらいにしてご飯にしましょう。皆帰ってきてから後片付けに追われて何も口にしていないでしょう? お腹が減っているはずよ?」

 

 

 聖がそう言った瞬間、全員からお腹の音が鳴った。勿論、聖も含めて。皆、聖が言うまでお腹が減っていることを忘れていたらしい。そして、その瞬間、笑い声が部屋中に木霊した。

 

 

「皆忘れてたの? アッハハハ! おっかしー!」

 

 

「こうも綺麗にタイミングが合わさるとはね……」

 

 

「と、とにかく何か作りましょうか。何人か来てくれますか?」

 

 

 その声に真っ先に反応をしたのは一輪と雲山だった。

 

 

「私が行きましょう」「……」

 

 

 その二人についで、ナズーリンも立ち上がる。

 

 

「なら私も行こうか」

 

 

「わ、私も……」

 

 

「あ、人手は足りているのでもう結構です」

 

 

「やんわりと断られた!?」

 

 

 ということで、この部屋に残ったのは私、ムラサ、星の三人だ。私は普通に料理が出来ず、星はドジを踏んでしまい、ムラサは何故か水難事故を起こしてしまうので、このメンバーだ。

 しかし、私はそんなことよりも雲山が料理班に入っているということに違和感を感じる。どうやってあの手で料理をするのだろう。謎だ。

 と、その時、足音が外から聞こえてきた。この時間帯はほとんど人はいないから、かなり珍しいことだ。

 

 

「ん、誰か来たみたいだね。新しい入門者かな?」

 

 

「まっさかー、こんなお寺に頻繁に人が来るわけが……」

 

 

 そして、ふすまの方に目をやった。すると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちわーっす。聖さんいますかー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはあまりにも唐突だった。

 

 

 光さえも飲み込んでしまいそうな闇のように真っ黒で、クセのある髪。見た目は細く、周りの人と比べると少し高めの背丈。糸のように細い目。手に下げた鞄には、私の羽と同じ色の青と赤の線がそれぞれ入っていて、黒い本体のアクセントになっている。

 間違いない。今着ている服こそ前に見た時とは違うものの、それ以外はまったく同じだ。私の中の記憶にある人と寸分違わない。

しかし、いきなり過ぎて思考が追いつかない。何分経ったかよく分からないが、呆然としていた頭がハッキリするまでにとても時間がかかったように感じた。

 

 

 私は、今まであったことを思い出しながら、その場から立ち上がってその人の元へと駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちわーっす。聖さんいますかー?」

 

 

 っと、聞くまでもなかったようだ。どうやら一番目の部屋でビンゴだったらしい。

 それにしても、無事にこの世界に帰れていたようでよかった。本当によかった。元気そうでなによりだぜ。当の本人は、開いた口が塞がらないといった様子でこちらを見上げている。まぁ、こんだけ長い間姿を見せなかったら当然の反応か。

 ……ここは俺の方から声かけた方がいいのか? と思っていると、ぬえが俯いてしまった。よく見れば肩も震わせているみたいだ。

 はっはーん、さては会えたことが嬉しくて泣きそうになっているな? ぬえはああ見えて照れ屋だからなぁ。元の世界でもまさにツンデレって感じだったし、今回は我慢できないんだな? そうなんだろ?

 そうなると、紳士な俺はぬえを抱きしめるという選択肢しか選べないって訳だ。ハハハ、すまないな君たち、私は先に女の子を抱きしめるというステップを登ってくるよ。

 え? 逆になんでお前は女の子を抱きしめたことが無いんだ、って? うん、そう思った奴はとりあえず飯食って寝ればいいと思うよ。

 てなことを頭の中で考えていると、ぬえが立ち上がった。と、同時にこちらに向かって駆け出してきた。よし、もうこれは完璧に俺の推論通りだ。

 腕を大きく広げて、「俺の胸に飛び込んでこい!!」と言わんばかりの格好でぬえが来るのを待つ。といってもそれは一瞬のことだ。眼前に迫って、ぬえを抱きしめようとしたところで、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんっ……の馬鹿剣二ィィッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 罵声と共に岩をも貫きそうな程、固く握り締めた拳が顔面に飛んできました。

 

 

 

 

 あるぇー? おかしいな……俺の予想ではこの後に胸に抱きついて泣かれるぬえを俺が慰めるという画が出来上がるはずだったんだが……。

 そんな妄想も虚しく、拳が顔面にクリティカルヒットした俺は、ふすまを貫きながら綺麗な放物線を描いて外へとブっ飛んでいった。そして、地面と背中が接触し、肺から空気が吐き出されると同時に、ここに来てから何度目かも分からないブラックアウトを

 

 

 

 

 しなかった。というか、できなかった。

 

 

 

 

 何故なら、ダメ押しとばかりにさらにぬえが俺の上から飛びかかってきて、馬乗りをしたからだ。

 

 

「グッフゥ! ちょ、ぬえさん、それは流石にモラル的な意味でどうかとおも……ブッ」

 

 

 盛大に鼻血を吹き出しました。殴られて鼻血出すのってかなり久し振りな気がする。そうあれは中……イタイイタイイタイ。ちょっとマジで遠慮ぐらいはしてくれ……ませんよね。

 

 

「うるさい! こんだけ心配かけて何処ほっつき歩いてたのよ!」

 

 

 馬乗りしてきてさらに顔面パンチて。ひどいと言うよりも先にえぇ……って感じがするな。今も殴られ続けてるけど、そこは描写すると色々不味いかと思われるので、割愛します。

 

 

 結局、呆然としていた星さんと村紗さんが目の前の惨状に気がついて、ぬえを止めるまで殴られ続けることとなった。解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは災難だったわねぇ。まぁとにかく皆お腹空いてるでしょうし、ご飯を食べましょう」

 

 

 聖さんが言ったときには、全員が食卓についていた。というか聖さん、俺の話はスルーですか、そうですか。

 机の上にはホカホカのおにぎりがたくさん並べられた皿と、漬物が置かれている。品数は少ないが、まだ湯気がたつほどの出来立て感満載のおにぎりがたくさんあるだけでも最高の昼食になるだろう。

 

 

「それでは……」

 

 

「「「「「「「いただきます」」」」」」」

 

 

 すかさず手を伸ばし、おにぎりを一つ取ってほおばる。うーん、この温かさと絶妙な塩加減がたまらん。握り方もふっくらとしていて非常にいい。やっぱおにぎりは出来立てだよね。ムッ、あえて具なしの塩おにぎりか。だからこその漬物か。味に飽きてきた時に食べるためだな。よく考えられている……。

 おにぎりをしっかり咀嚼し、飲み込む。そして、口を開いた。

 

 

「ぬえよぅ。さっきも言ったと思うけど、ここでの勝手が分からないのにすぐにここには来れないよね……?」

 

 

「……」

 

 

「怒んないで!? 俺だってそれなりに頑張ってここまで来たんだぜ!?」

 

 

「……じゃあ、今まであったことを全部話してよ」

 

 

 ムム、どうしようか。割とのんびりしたり、寄り道したりしたこともあったからな、ここは一つ話を盛って……

 

 

「本 当 のことを話してよ?」

 

 

 ……どうやら俺に逃げ道は無いようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ!? なんでそんなとこに行ったりしてんのよ! あんた馬鹿なの? 死ぬの!?」

 

 

「だからそれは成り行き上からして仕方なかったんだって! 」

 

 

「成り行き上ってアンタねぇ、直ぐにでもここに来れたでしょうが!」

 

 

「道分かんねぇのにどうやってここまで来いと!?」

 

 

 嘘はついてないぜ。嘘はな。

 

 

「誰かに道聞けば良かったじゃない、それで直ぐにここまで来れば良かったのよ!」

 

 

「聞いてここまで来たのにこの時間だぜ!? お前は俺に瞬間移動でも使えってか?」

 

 

 繰り返し言うが、嘘は(ry

 

 

「ぐっ……とにかく、あんたが全部悪いのよ!」

 

 

「ついに明確な理由も無くなりましたか!でも俺は寛大だから、今からでも謝るってんなら許してあげないこともないんだけど?」

 

 

「誰があんたなんかに謝るかぁ!!」

 

 

 そんな感じでワーワーギャーギャーと言い争いを続けていると、聞き捨てならない言葉が何処からか聞こえてきた。

 

 

「なんだ、結局二人とも仲良いじゃありませんか」

 

 

「「誰がこいつなんかと!!」」

 

 

 奇しくも言ったことが被ってしまった。俺はそこまでで終わったが、ぬえは例の台詞を言った当人に向かって妖力弾を放ち、当たって吹っ飛んでいったのをナズーリンが見て「ご主人ーー!!」とか叫んでいたような気がするが、俺は何も見ていない。

 

 

「どうせあんたにことだから、『嘘自体はついてない』とでも言い張るつもりなんでしょう? 私には全部お見通しよ!」

 

 

 チッ、いつものことながら、勘がいいな。

 

 

「な、何を言ってんだ? 俺にはちょっと意味がワカラナイナー」

 

 

「ほら最後の方だけ棒読みになった! さぁ、洗いざらい吐いてもらうわよ!」

 

 

「俺にだって黙秘権はあるぞ! どうしてもっていうなら弾幕ごっこで勝ってからだ!」

 

 

「私に勝てるとでも思ってんの?」

 

 

「じゃあ確かめてみるか? んん?」

 

 

「のぞむところよ!」

 

 

 と、会話を終えたところで、二人共が立ち上がった。俺がぬえを見下ろして、ぬえがこちらを見上げる体勢で睨み合う。

 ……正直、啖呵切ったのはいいけど、Exボス相手に勝てる気がしないんだよなー。一応、新しいスペカも考案してあるし、使おうと思えば使えるんだけど、それでもやはり心もと無い。できるなら万全の状態で挑みたかったが、仕方ないか。

 よし、覚悟決めてくぞ……ッ!?

 

 

 分かる。分かってしまう。後ろから恐ろしいほどの量の殺気、いや、少し違うか。とにかく、怒気のようなものが吹き荒れているのを全身で感じる。

 全身から冷や汗が吹き出すのを感じながら、横目でぬえをチラリと見やると、不味いことをした、というような顔で硬直していた。

 

 

 あー、ダメだ。俺もこの怒気の正体分かってしまった。どうしよう……俺、あの人が怒るとこってあんまり想像できないんだけども。

 いつまでもここでジッとしているわけにはいかないので、錆び付いたブリキ人形の首のようにギギギと首を回して見てみると、そこにはものっそいダークな笑顔を浮かべて、こめかみに青筋がビキビキと浮き出ている聖さんが、ぬえと俺に挟まれるように間近にいた。

 

 

「ど、どうも……」と、俺。

 

 

「ど、どうしたの、聖……?」

 

 

 そのぬえの一言で、聖さんの頭からプツッっという音が聞こえた気がした。

 

 

「お二人共、お食事中はお静かに♡」

 

 

 その言葉と共に、鋼みたいに固く握り締められた拳が二つの脳天に直撃して、鈍い音が頭二つ分鳴った。

 

 

「「ーーーーーーーーーーーッッッ!!!」」

 

 

 声にならない悲鳴をあげてその場に蹲る二人は、その後しばらく悶絶して動くことが出来ませんでしたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」」

 

 

「さぁ、片付けをしましょうか。いつもと同じようにお願いしますね。あと、剣二さんはそこに座っていてください。お茶を淹れてきます」

 

 

「はぁ、どうも」

 

 

 聖さんの一言で、その場にいた俺以外の全員がしゃべりながら動き出した。和気合い合いとしていて、非常に結構なのだが、一人だけ取り残された俺にとっては居心地が悪くて仕方がない。結局、食事を作ったメンバーが片付けをして、その他は何処かへ行ってしまった。散歩にでも行ったのだろうか。

 畳に仰向けに寝転がって、イグサの匂いを嗅ぎながら静かに待つことおよそ五分。湯気の立ち上る湯呑を二つ、小さな盆にのせて聖さんがやってきた。

 

 

「ふふふ、お疲れですか?」

 

 

「はは……お恥ずかしながら、体力が無いもので。少し距離を歩いてきただけでこのザマですよ」

 

 

 まぁ、それだけじゃあ無いけどね。ここに来る前にマヨヒガでスペルカード作ったってのもあるし、一番の理由はあなたに殴られたことですかね、聖さん。綺麗に山形のたんこぶができちまいましたよ。

 しかし、喧嘩してたから悪いのは俺の方なんだろうけど、なんか釈然としない。

 

 

「そうですか。それはいけませんねぇ。なんなら私が指導しましょうか? 体力には少しばかり自信がありますから」

 

 

ゴクリ、と唾を飲み込み、少しばかり間をおいてから答えた。

 

 

「い、いやぁ、遠慮しておきますよ。自分でやりますんで」

 

 

 聖さんの特訓とか何やらされるか分かったもんじゃないから、こういうのはスルーに限る。もしかしたら一日に感謝の正拳突き一万回とかやらされるんじゃなかろうか。

 

 

「それは感心です。さて、本題に入りましょうか。あなた……剣二さんは今後どうする予定なのですか?」

 

 

「そうですねー、とりあえず、元の世界に戻る方法は見つかったので、春くらいまでは幻想郷をブラブラと巡っていきたいと思ってます」

 

 

「そこで、です。何をするにしても準備は必要でしょう? ここでそういったことをしていきませんか?」

 

 

「え、そりゃまぁできた方が嬉しいですけども……迷惑かけちゃいますし」

 

 

「いいんですよ、こちらもぬえが大層お世話になったようですから。」

 

 

「でも、ほんの数日間でしたから。その程度でお世話になるわけにはいきませんよ」

 

 

「それならば、ぬえがそちらにいた日にちの分だけこちらにいるというのはどうでしょうか。これで同じ条件ですが」

 

 

「うーん……しかしですね……」

 

 

「貴方が嫌というのであれば別に里に行ってくださっても構わないのですが……こちらとしては、お礼が出来ないというのは心苦しいのです。どうか一日だけでも居ることは出来ませんか?」

 

 

 いや、こちらとしても悪くはない、っていうか破格どころじゃない条件なんだけど……。ホラ、如何せんここって妖怪寺な訳じゃないですか。その辺りがどうも嫌な予感しかしないというか……。

 事実、人間目的で入りたがってた妖怪もいた訳だし、さっき食卓に集まってたときみたいに襲われないとも限らないしね。

 あぁ、そんな顔で見ないでくださいよ。そんなの引き受けるしか無くなるじゃないですかー!

 ……でも、人里行ったとしても住むアテが無いのも事実なんだよね。結局、ここで泊まるしかないのか。

 

 

「分かりました。ここでしばらく休ませてもらうことにします。私がここを発つ日までよろしくお願いします」

 

 

 俺が承諾した途端に眉が上がって明るい表情になる聖さん。マジ聖母だと思う。

 

 

「そうですか! 是非ゆっくりしていってくださいね」

 

 

「お気遣いなくー」

 

 

 ま、これでしばらくは衣食住困ることなく過ごせるだろう。安全は完全に保証された訳ではないけど、藍さん特製の御札を持っているから、この寺の妖怪が強くない限りは多分大丈夫だと思うんだけど……。

 心配しても仕方ないものは仕方ないし、常にほんの少しだけ気を張っておくしかないか。

 そんで、これからどうしようかなー。まだ何も考えてないし、そろそろ計画を練らなきゃいけないよね。でないと幻想郷を旅行するなんて到底無理だ。

 頭の中で計画を立て始めたとき、聖さんが立ち上がった。

 

 

「それでは、私は人里の方に用がありますので、半刻ほど失礼させていただきます。用があれば先程集まっていた者達の誰かに言ってくだされば問題無いと思います」

 

 

「これはご丁寧にどうも。私は大丈夫ですから遠慮なく行ってきてください」

 

 

 いってきます、と聖さんは廊下の方に消えていった。再び部屋の中を静寂が包む。といっても少しは片付けをしている人達の笑い声なんかが聞こえてくるんだけど。

 すっかり冷えてしまった茶をすすりながら、さっき中断してしまった、計画を立てることを再開する。

 考え始めると、やっぱりどこへ行こうか夢が広がる。守矢神社でも良し、永遠亭でも良し、太陽の畑……はとりあえず保留で、魔法の森は瘴気を防ぐ手段が見つかれば行ってみたいね。

 他にも色々……と考えてたところで、星さんらしき人の悲鳴と、食器が割れる音が盛大に聞こえてきた。何故アンタがそこにいるんだ、とか、何故手伝おうとした、とかツッコミどころがありすぎるんだけど。

 

 

 考えるのもいいけどまずは食器の片付けからか、と独りごち、その場からよいしょと立ち上がって割れた皿の掃除に向かう俺なのであった。

 

 

 

 





 時間が欲しいです……。いくらあっても足りないぜ……。どっかに売ってませんかね、リーズナブルな値段で。
 春休み始まってから部活の方も忙しくなってきましたし、これからもこのペースが続くかもしれなです。ハイ。
 これからも頑張っていきたいので、読んで下さる方がいるなら応援よろしくお願いします。
 それでは、また。
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