序章その1 別れと始まりの出会い(西暦時代編)
【ある神の結末】
――― 2015年、7月末。
各地で地震や異常豪雨など、様々な自然災害が頻発し日本中に多くの被害をもたらしていた。
人々はこの未曾有の災害に混乱し恐怖していた。人々の
ここはそんな災害が起きている現実とは少しずれた世界。元々は様々な色をした樹木に覆われた幻想的でどこか美しいと思わせる世界だった。しかし、今はそのほとんどが枯れ朽ち果て、中には明らかに大きな戦闘があったと思わせるような破壊跡があった。
「…………」
そこに見た目は10代も満たない人間の子供と思わせるような存在がいた。便宜上『彼』と呼ぶが、消耗し身の丈に合わない大きさの剣を地面に突き刺し支えとしながら彼の頭上にある存在を見上げている。
天ともいえるほどの高さにその燃え盛る存在があり、その周囲には付き従うかのように白い身体をもった無数の化け物が浮遊していた。白き化け物は後に『バーテックス』と呼ばれる事となる存在で、その生命体の中心にいる燃え盛る存在はその生命体を創成した産みの親ともいえる存在である。
『神』……人々から言わせればそうとしか形容できない大いなる存在。天から見下ろす場所にいる子供と思わせるような存在もまた神なのである。しかし、彼神はこの世界の者ではない。この世界に偶然やって来た異世界を旅する大いなる存在なのであった。
【異世界の神よ。何故、ここまで戦う? 何故、反逆した神々に加担する?】
後に『天の神』とも言われる燃え盛る存在が唯一人残された神に説う。天の神の目的は驕り高ぶった人類を粛清、そのためにバーテックスを創り遣わした。しかし、彼神に反発し多くの神々が裏切った。そんな彼は反逆した神の急先鋒でもあった。
「僕は正しいと思った方を選んだまでだ。君は結論を急ぎ過ぎている。……みんなの意見を聞かず君の道理を押し付ける時点でそれは破綻している。それじゃ、みんなからも受け入れられない! もっと話を聞いてくれれば……」
彼は無駄だと思うが天の神に言葉をぶつける。天の神は理解できなかった。なぜ我の結論が受け入れられないのかと。結局、天の神は反逆した多くの神々をその力でねじ伏せた。
【黙れ!……もはや時間がないのだ。あの罪深き生物にはもはや未来は任せることはできない。何故、奴らを信じる!?】
「人類には我々の英知を遥かに超える可能性がある。……いつも最悪になる前に止めてきた。僕はその未知の力を信じている」
【信じているだけで何も変えられるか!!!】
人でいえば激昂したかのように大きく燃え上がる天の神。自らの尖兵であるバーテックスに命じ彼にトドメを刺そうとした。その刹那、彼神たちは北に二つ・南に二つ、光の柱とが立ち昇り神々はその力の反流を感じた。
「……間に合ったようだね」
【貴様…一部の土地神がいないかと思えば、このための時間稼ぎか!?】
天の神が彼の狙いに気づき怒りに呼応しさらに燃え上がる。
「……今は無理でもきっと……」
彼はぽつりと呟く。今の状態では天の神に勝てないことを戦う前から見抜いていた。天の神はそれほどの強大な存在となりえたのである。もしも敗北したときに備え、付き従った『土地神』とも言える存在が結界を張り人類を守るための安寧の地を作り上げるように命じた。少なくともこの結界内ならバーテックスは手出しできず人々は生きられる。この瞬間、未来へつなぐための賭けに勝ったのだ。
【主!】
「ッ! 無事だったのか」
彼を主と呼ぶ小さな従者のような存在が彼に元に駆け寄ってきた。この存在は異世界の神ともいえる彼がとある世界にて自らを消滅させようとしたのを見つけ紆余曲折を経て彼の従者として生まれ変わり共に旅をしていた。
【主、土地神は御役目を全うしました…残りは人々が結界へと避難する時間を稼ぐだけです】
「そうか。君以外は?」
【……もう、私だけです……覚悟はできています。最後までお供します】
「そうか……」
彼は自らに置かれた状況を悟る。むしろ、従者がここまで生き残れた事に安堵の表情を浮かべると剣を支えにして立ち上がる。言葉から従者は覚悟を決めており最後まで彼についていくつもりであろう。
【なっ…!? 主、どういうことです!?】
彼が手をかざすと従者は薄い膜のような結界に包まれる。従者はそれを破れず抵抗することもなく戦いの場から遠ざかっていく。
「分かってくれ。今残っている戦力ではバーテックスが現実世界へと出現するのをすべて止めるのは無理だ。そうなると人類の粛清は時間の問題だ。……僕に付き従ってくれる人々もいるが生き残るのは極少数……もしかしたらいないかもしれない。だけど、生き残ってくれていたらその人たちはきっと…次の道標を見つけられないだろう。それを導くための存在が必要なんだ」
【その役目はあなたがやるべきです!?……それに…土地神との約束は?】
「それをやるのは君の役目だ……未来へと導いてくれよ」
【あるじぃぃぃぃぃぃぃ!!!】
従者は慟哭とのいえる声を響かせ遠ざかっていく。残された彼は天へと見上げる。
「愚かだと思うか天の神よ。だがそう遠くない未来に人々を信じてくれた神々が選ばれた『勇者』とともにその鉾を君へと突き立てるであろう。……こんな僕を信じてくれた人間たちよ。あとは頼んだぞ!」
その場から飛翔すると剣を構え天の神へと真正面から向かって行った。
(最後まで諦めた訳じゃないさ。……『神樹』…必ず帰る。そう約束したからな……)
――――――――――
――― 数か月後、香川県丸亀城。
手に一振りの刀を持った『
「今日もここに来たんですね」
「あぁ…」
隣にいる少女は『
あの日、若葉はひなたとともに白き
「忘れてはならないと思うと自然にここに足を運んでしまうんだ」
「若葉ちゃんらしいですね」
その力で多くの人々を守ることが出来たが同時に多くの命が失われてしまった。若葉はそれを忘れないためにもこうして瀬戸内海を見ることが多い。2人は言葉を交わさず只々瀬戸内海と見つめ時間だけが流れていく。
「自由時間も終わりですね。そろそろ戻りましょう」
「あぁ…」
生まれ故郷である四国香川へと逃げ延びることのできた2人だったが、今は若葉と同じような力に目覚めた4人の少女と共に丸亀城へ事情も完全に飲み込めないまま分からないまま連れてこられ生活している。
ひなたに促されその場と後にしながら若葉は似た境遇をもつ少女たちとどう接するか考えていた。
「あら?」
「ひなた?」
その途上、突如としてひなたが駆けだす。不審に思った若葉はその後を追う。ふと見れば石垣の近くに生き物のような何かが倒れていた。2人は石垣の下へと降りるとひなたがその生き物を抱える。
「なんでしょうか?」
「こんな生き物…見たことないぞ…」
小学生であるひなたが抱えることができる小動物的なサイズで、美しい白銀に光る体毛に覆われ頭に一本の角のような奇妙な生き物である。
「とにかく、誰か大人の人を見つけてこの子を介抱しましょう」
「……大丈夫なのか?」
「なんとなく放っておくわけにはいきません」
「そうだな……そうだ。あの人を呼ぼう」
若葉とひなたは即断すると彼女らにとって頼りになる人の所へ向かう事にした。
この出会いが彼女たちを取り巻く運命に関わってくることは……この時点では誰も知る由はなかった。
序章はもう1話投稿予定です。時系列は跳んで神世紀時代へと入ります。オリ主はその話からの出番です。