2017/7/20:サブタイトル修正並びにリメイク版との変更点解説追加。
【神世紀、運命の『であい』】
――― 神世紀292年。
西暦という古い暦から新たな暦と変わってから幾時も流れた。『神樹』という恵みと守護ををもたらす神によって四国地方に住む人々に安息をもたらされていた。
ここは四国香川県『
その街中にある公園の一角、僻地ともいえる場所のベンチに少年がぽつんと腰かけていた。6歳にもなり小学生となる遊び盛りの歳であるにも関わらず、悲しそうで、寂しげな表情を浮かべ俯いていた。
(……黙って出てきちゃったな)
顔を少しあげ、ちらりと辺りを見渡す。彼と同じくらいの年齢の子供たちがはしゃぎ、友達と遊んでいたり、父母と思わしき大人たちとの『家族』の団欒の光景が広がっていた。
(……父さん……母さん……)
少年はそれを恨めしく思ってしまった。普通の家族にとってごく当たり前な光景だが今の彼にとってはただ辛いものであった。
「寂しい…よ……」
少年の目から涙がこぼれ落ちる。彼の心は失意と悲しみで一杯となっていた。
「ねぇ、どうしたの?」
その心情につい言葉を漏らしてしまう。すると、突如として聞こえてきた声に反応し目からこぼれ落ちた涙をごしごしと拭う。顔を見上げると少年と同年齢と思わしき子供がそこにいた。
「そんなしみったれた顔してさ。何かあったの?」
「……女の子?」
「あれ、よく分かったね。たまに男の子に間違われるのにサ」
――――――――――
side:女の子
「いってきま~すっ!」
灰色に近い髪が特徴の女の子が元気よく住んでいる家を飛び出した。
「今日はどっこへ行こうかなぁ~♪」
鼻歌を交えながら生まれ住んだ街中を散策する。幼児なため回れるところは限られているがうきうきとした感じで何をして遊ぼうかと考えていた。
「んっ?」
近くの公園に差し掛かった頃、見渡すと離れた一画のベンチに自分と同じくらいの年の男の子がいた。よく見ると何か落ち込んでいるように見える。
(あの子、どっかで見たような……ん~)
首を傾げ一瞬考えるがその前に体が動いた。彼女は考える前に動いてしまう猪突猛進な性格だ。それにいつも困っている人は見過ごせないこともあり、その性分から放ってはおけ
ず、気づけば声をかけていた。
「ねぇ、どうしたの? そんなしみったれた顔してさ。何かあったの?」
男の子が顔を見上げる。どうやら呼びかけに気が付いたようで、女の子は何があったのか気になり彼の前に歩み寄る。
「……女の子?」
「あれ、よく分かったね。たまに男の子に間違われるのにサ」
今の女の子の格好はショートパンツにシャツと上着で、髪もそれほど長くは伸ばしていない。外で遊ぶことも多いのか動き易い服装を好んでおり一見男の子と見間違う事も多い。
目の前のベンチに座っている男の子はそれを一発で見抜いてきた。それにより女の子の目が点となった。
――――――――――
side:3人称
「だって、男の子にしては華奢な感じだし。もしかしたらと思って…」
「ふ~ん。そっか」
女の子であることを見抜いた少年に対して感慨の声をあげる少女。少年はぽつりと呟くと再び黙ってしまう。
「あのさ…何で悩んでるか分からないけどさ。アタシで良ければ話してくれないかな?」
「どうせわからないよ……。だから、僕の事は放っておいてよ……」
純粋な善意のつもりで少女は聞いてきた。それに対して少年の口から出たのは明確な否定の言葉。少年としては今は1人になりたいという気持ちである。
「よくないよ!」
しかし、少女はつい口調を強くして言ってきた。ある意味無鉄砲な言葉に少年はえっ、と呆気にとられてしまった。
「……たしかにわからないよ。そうやって閉じこもっていたら…話してもくれないんじゃ何もわからないよ!」
「な、なんで?」
「あたしはそうやって困ってそんな顔してるのを放っておけないタチだからさ」
「は…はぁ。そ、そんなタチなんだ」
呆気にとられていた少年だったが少女の人柄と純粋な言葉に突き放そうとする態度が少しづつ治まってきた。そして、いつの間にか胸の内を少女に打ち明けた。
少年の両親がもういない。不幸な交通事故に巻き込まれて亡くなってしまったのである。
その喪失感から空っぽになった彼にとってごく当たり前な日常の光景はまぶしすぎた事。そして、失った事で寂しくなり泣いていた事を少女に伝えた。
(あちゃー、ちょっと聞いてはいけない事を聞いてしまったかな。だけど、前にどっかで……あっ)
少女の両親は神樹を奉る組織『
「ご…ごめん!」
「な、なんで謝るの?」
「辛かったのにそんな話しさせちゃって、アタシお節介すぎて…ずけずけと踏み込んじゃったからさ」
頭を下げ謝ってきた少女に対して少年は必死に宥めようとする。なんとか少女の動揺を治めると少年の心は先ほどとはうって違い非常に落ち着いていた。
少女は反省し終わったのか話題を戻すことにした。
「なあ、両親がいなくなちゃって。こう聞くのはなんだけどさ、他に話せそうな人はいないのか?」
「……母さんのお兄さんと父さんの親友だった人が」
少年は両親が亡くなって、残った彼が天涯孤独となった身を案じてなのか保護者としてすぐに名乗りを挙げてきた2人について話した。
「その親戚の人に寂しいって話してみればいいんじゃないかな?」
「そうなのかな?」
「そうだよ。だって、君の事思ってなければそんな事言ってこないと思うよ。あたしの親もそうだしさ。あたしだったら悩み過ぎてパッパラパーになってガッーってなるからそうする」
少女は、彼女の両親がいつも猪突猛進でトラブルが多い少女に対して呆れることはあれど、いつも正面から見てくれてその気持ちをぶつけてくれることを話した。
「……それって悩むより行動しろっていうことでいいんだよね。……うん、決めた。僕、おじさんたちに今の気持ちを正直にぶつけてみることにするよ」
少し納得していない様子だったがその胸の閊えのような蟠りが解けたのか、少年は意を決したかのように少女に告げた。
「そっか。頑張れよ」
『―――!!』
話し込んでいると少年と少女を呼ぶ声に気づく。
「おじさんたちだ」
「あれ、あたしの父ちゃんと母ちゃんがいる」
何故か少女の両親と少年にとって親戚ともいえる大人が辺りを探しているのに気づいた。2人は大人たちの元へと向かおうとしたが、あっと少女が思い出したかのように少年に向かい合って口を開く。
「そういや名前を言ってなかった……あたしの名前は銀、『
「……僕の名前は……勇…『
これが2人の『であい』であった。
これにて序章は終了。次回からわすゆ編開始です。
幼年期時代だけど銀はほぼわすゆのまま据え置きにしてしまった。
【リメイク版への変更要素】
●紺野勇(当小説オリ主)
銀との出会いを両親が亡くなった際の時系列に。これにより銀とは幼馴染の関係となります。
●三ノ輪銀(『鷲尾須美は勇者である』・『鷲尾須美の章』原作キャラ)
当小説メインヒロイン枠は変わらず。オリ主との出会いのエピソードを変更・独自設定として追加。この話により命の尊さと知ったという事に(アイデア元は2章EDテーマである『たましい』)。