運命を変えるたった一つの-勇気-   作:黑羽焔

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ゆゆゆアニメ2期放送前に投稿完了。

2017/10/5 須美の表現を少し追加修正


第3話『はじまりの(とき)

side:紺野勇

「あれ?」

 

紺野家が生まれ故郷である大橋市へと戻り、親交のあった三ノ輪家の住人と6年ぶりに再会してから翌日、勇は朝早くに目覚めた。

 

「え?……目覚まし止まってるんだけど」

 

と、思っていたが、いざスマホを手に取るといつも設定している目覚まし機能が止められていた。スマホを持っていない手で布団をめくると、スマホの会話アプリに新着があるのに気づいた。

 

【勇、おはよう。これを見る頃には私と輝実は学校の先生との面談に行ってると思う。昨日も話した通りに学校は明日からだ。今回の面談は―――】

 

勇の通う新たな学校の転入手続きは終わっているが実際に登校するのは明日の予定である。後見人である2人が学校へ行くのはそれ以外に必要な事をするのだろうと思った。しかし、なんで目覚ましが止まっていたのか考えていると文章の後半部分にその答えがあった。

 

【追伸:勇の事だから、朝早くに起きると思って目覚ましは切っておいた。輝実から『お役目』のための引っ越しなどで数日慌ただしかったから今日一日くらいは休んでほしいと言ってた。それと……分かっていると思うが、スマホは必ず手元に持っておくんだよ】

 

会話アプリを読み終え、勇は心の中でやったと思ってしまった。

 

「いーさみー」

 

箪笥から衣服を取り出し着替え、年相応らしく何をして今日を過ごそうかと考えていると、大きくて気の強そうな呼びかけと家のチャイムの音が鳴り響く。それに気づき、勇は自室を出る。足先は家の玄関だ。

 

「お、いたいた」

 

玄関の扉を開けると、聞きなれた声と親しみのこもった感じで銀がそこにいた。

 

「おはよう、勇」

「ん、おはよう、銀。どったの?」

 

互いに朝の挨拶を交わす。

 

「ん~、なんとなく寄ってみた。……あれ? 勇、今日は平日だぞ。学校行かなくていいのか?」

 

尤もな事を銀は聞いてきたので正直に自らの事情を話す。

 

「……実は手続きの都合で、学校明日からなんだ」

 

「えぇ~。いいなぁ~、うらやま」

 

休みだっていう事を知り銀は少しぶー垂れる。

 

「ところで銀、その服って?」

 

「うん、アタシの通っている学校『神樹館』の制服」

 

肩の部分が膨らんだ特徴のもった制服に身に纏っていた銀はその場でくるりと回転して見せびらかしてくる。

 

「そっか。それじゃあ一緒の学校になるかな」

 

「へ、そうなんだ。…あ、そっか。勇のおじさん達も『大赦』の人だからか。じゃあ同じ学校になるんだね」

 

「そういうことになるね。明日からよろしくね」

 

「うん、シクヨロ」

 

銀が笑顔でピースしポーズを決める。

 

「……あ、時間大丈夫なの?」

 

「へぅっ! まず~い、遅刻遅刻!!」

 

銀は思わず声をあげると紺野家から飛び出し全力疾走で駆けて行った。

 

「……大丈夫…なのかな」

 

銀の事だからきっと巻き込まれるなあと勇は思った。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

side:三ノ輪銀

 

『神樹館』 ―――

四国の守護と恵みを司る"神樹"の名前がついた格式の高い学校。そのため"大赦"と関わりが深い。

 

「急げ、急げ!」

 

その校内の廊下を駆け抜ける銀。結局、登校の途上で色々とトラブルに巻き込まれてしまった。そろそろ神樹様へのお祈りと朝のホームルームが始まるころだ。遅刻はできないとデリカシーの欠片もないがなりふり構ってはいられない。

 

「あだっ!!」

 

危うく自分の教室である6年2組の前を通り過ぎそうになり、急ブレーキをした勢いで廊下の柱にぶつかってしまう。持ち前のガッツでひりひりする痛みに耐えながら教室の扉を勢い良く開けた。

 

「ま、間に合った」

 

「……三ノ輪銀さん。間に合ってません! 全く貴方は!」

 

安芸(あき)と呼ばれる銀たちの担任の先生に、ばん、と出席簿で軽く叩かれた。クラスの皆からも笑われる。とほほと銀は足早に自分の席へと着いた。

 

「ねぇ、なんでギンちゃんは遅れたの?」

「6年生にもなると色々あるんさ」

 

周りの級友に話しかけられ銀の周囲が華やぐ。その銀を一人の少女がじっと見つめている。

 

「あぅ、まずい教科書忘れた!」

 

(全く…底抜けるにしても底抜け過ぎではないかしら)

 

黒の髪と翡翠のような蒼に近い色の目、一言で言えば大和撫子のような特徴の少女『鷲尾(わしお)須美(すみ)』が銀の態度にいい加減ではないかと感じていた。須美は自分の隣の席に視線を移す。

 

「すぴぃ~Zzzz」

 

(また、寝てる…)

 

黄土色の髪で上品な顔立ちの少女『乃木(のぎ)園子(そのこ)』が再び夢の世界へと旅立っていた。つい数分前には起きて、自分のことを変なあだ名で呼んでいたのに。須美は園子の天然系でマイペースな行動についため息を吐いた。

 

(こんなので『御役目』果たせるのかしら)

 

「――― それでは授業を始めます」

 

須美はさらに不安に苛まれる。アクシデントがあったものの安芸先生の号令により授業が始められようとした。

 

――― リィン

 

どこからか風鈴のような静かな音が鳴り響いた。

 

――― リィン リィン リィン

 

何度も何個もの鈴の音が鳴り響く。

 

「わっ、なにこれ!」

 

その風鈴の音に気が付いた銀は周囲を見渡す。教科書をカバンから取り出しかけた隣の席の子。不運にも筆箱を落としそれに手を伸ばそうとした男の子。そして、教科書の内容を読み上げようとした安芸先生。

 

 

 

銀の周囲にいたクラス中のみんなの動きがピタリと止まった。

 

 

 

「これは……まさか!」

「あれぇ~?」

 

動けるのは銀とクラスメイトである須美と園子。一瞬何が起きたか理解できなかったが銀は真っ先に2人に駆け寄ると、

 

「みんな、停まっちゃった! 鷲尾さん、これって!」

 

須美は持っていたシャープペンシルを落としてみる。落としたはずのペンシルは空間に縫い付けられるように停まる。次に時計を見るが秒針すらも完全に停止していた。

 

「来たんだ……私たちが『お役目』をする時が」

 

この現象は聞いたことがある。こうなるという事は初であったが、須美は銀の質問に冷静に答えた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

大きなお役目でも、始まるときはいつも唐突だ。

 

僕と彼女たちが背負う過酷な運命はこの時から始まった。

 

――― いや、ずっと昔に始まっていたかもしれない。

 

僕らのお役目はその長い■■の■■なのだから。




こちらも『鷲尾須美の章』本編に突入。いよいよ2期も始まることもあってゆゆゆ2次創作が増えてきましたし自分も2作品ですし拙い文ですが頑張っていこうと思います。

次回は銀・須美・園子の戦闘回ですが、果たして主人公勇はリメイク前とは違って、どうかかわってくるのか。もうしばらくお待ちください。
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