運命を変えるたった一つの-勇気-   作:黑羽焔

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ゆゆゆ2期開始! だけど……

自分住んでいる地域だと見れないし、ほぼ利用する機会や気もなかったAmazonプライム限定配信なのが辛い。


第4話『お役目の(とき)

side:紺野勇

紺野家に来た銀であったが、学校に遅れまいと飛び出していった頃、

 

「……慌ただしく行っちゃったし、どうしよ」

 

玄関から反転し自室へと戻る。学校も明日からで今日は特にやることもない。

 

「無難に学校の準備して、何かして適当なものでも没頭してよう」

 

それでもせっかくできた休みなので、遊ぶ時間が少しでも欲しい。そう考えた勇はすぐに実行に移す。ポケットに入れていたスマホを充電器に挿すと、新しく通う学校の時間割を照らし合わせながらランドセルに教科書や筆記用具などを入れる。要領はいい方なのですぐに終わってしまった。さすがに休みになったのか勉強する気にもなれない。

 

「何か作ろうかな……って新しいキットは引っ越したばっかで買ってなかった。うん、今日はこのゲームでも進めるか」

 

どちらかと言えばインドア派の勇である。取り出したのは先週発売されたばかりのRPGと呼ばれる部類のゲームソフト。携帯ゲーム機にそのソフトを差し込んで起動させようと電源ボタンを押そうとした。

 

「ッ!」

 

そんな時、スマホからアラームが鳴り響く。勇はすぐにスマホを手にとって画面を見る。

 

「……!! そんな、神託の日取りより早い!」

 

目を見開き、画面の表示から大変な事が起こる事を知った。事前に聞かされていだが聞かされていた時期よりも早くそれが起きたのである。

 

――― リィン

 

その同時刻、大橋市のシンボルとなっている『瀬戸大橋』。その橋のワイヤー部分に吊るされている風鈴が静かに鳴り響いていた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

side:銀

銀たち3人は気が付くと学校の屋上…であった所に立っていた。

 

「うわ~~すごっ!」

 

突如として起きた異変に銀は興奮を隠せなかった。自分たちの街を見渡すと、大赦の大人たちが言っていた通りの幻想の世界に変わったことで心臓がドキドキしっぱなしである。

 

「は~……これが神樹様の作った結界の世界」

「『樹海』……」

 

普段はおっとりというかマイペースすぎる園子ですらも隣で驚きの声も漏らす。須美がぽつりと呟いた『樹海』とは神樹が作り出した結界の世界である。この場にいる少女3人は神樹様に選ばれた存在であり、この世界でお役目を行うのである。

 

(ここでアタシたちは『敵』と戦うんだ!)

 

正直にいえば怖いところもあるが、今の銀はお役目をやってやるという感じにやる気に満ち溢れていた。始まるお役目に心が躍っているような気分だ。

 

「あっ、あれが大橋かな」

 

「そうね…あそこから敵が渡ってくるのね」

 

「くぅ~~~!! 私たちが『勇者』だなんて! 興奮する!」

 

「三ノ輪さん、遊びじゃないのよ!」

 

「わかってるって!」

 

興奮が冷めあがらない銀はスマホを取り出すとぱしゃりと大橋の写真を撮る。その緊張感のなさに生真面目な須美が注意を促す。

 

――― ズッ

 

「「「(!?)」」」

 

銀たち3人は辺りの空気がずしりと重くなったように感じた。それは大橋の向こう側、壁と呼ばれる四国の結界の境目付近に現れた。あまりにも異質な巨大物体。数十メートルはあるであろう異形な存在が端を渡り始めていた。

 

「あれが……私たちの敵『バーテックス』…」

「っていうか、でかっ!?」

 

大赦から教わった敵『バーテックス』。あの異質で巨大な存在は世界の恵みである神樹へと侵攻している。あれが橋を渡り切り、神樹様に辿り着いたら、須美・園子・銀が住む世界がなくなってしまう。

 

「2人ともいい?」

 

「あぁ! 分かってるって」

「うん!」

 

「……お役目を果たしましょう」

 

この樹海の世界で動けるのは神樹様に選ばれた少女たち。須美たちの表情が一段と引き締まる。少女たちは教わったこと、これまでの訓練、神樹様を信じて端末を操作し、それを前に掲げる。

 

「あまつちに きゆらかすは さゆらかす」

 

課せられたお役目をもう一度思い返す。襲ってくる古よりの人類の天敵『バーテックス』を戦い、その侵攻を喰いとめ、人々が住む四国を守ること。

 

「かみわがも かみこそは きねきこゆ きゆらかす」

 

少女たちを取り巻く異常事態に不平不満を漏らす子はいない。これは大人たちから名誉であると言い聞かせられているからだ。3人はその選ばれた『勇者』としてここにいる。

 

「みたまがり たまがりまししかみは いまぞきませる」

 

そして、その敵と戦うための力もある。神樹様の力をもらい人類の手により製造されたシステム、それがアプリとして彼女たちのもつスマホにおさめられている。

 

「「「みたまみに いまししかみは いまぞきませる」」」

 

祝詞を唱え終えると3人は一斉にアプリのアイコンをタップする。すると同時に、彼女たちは光に包まれる。

 

神樹の力を授かった3人はそれぞれの花を咲かせる。

 

 

 

鷲尾須美は、清楚の花を咲かせ、青の衣装を纏い、弓を構える。

 

乃木園子は、優雅の花を咲かせ、紫の衣装を纏い、複数の刃からなる穂先をもった槍を担いだ。

 

三ノ輪銀は、情熱の花を咲かせ、赤の衣装を纏い、両手に1挺づつ斧を携える。

 

 

 

『勇者』としての戦闘姿となった3人は同時に大きな力が漲ってくるのを感じた。神樹様の力が銀たちの中に分け与えられているのであろう。

 

「おーっ、初めての実戦だ」

 

「合同訓練はまだだったけどね~」

 

勇者の姿へと変身したことで歳相応にはしゃぐ銀と園子。

 

「それはそれとして」

 

「?……何が珍しいの。自分たちだって変身してるでしょ」

 

「いやぁ…これは中々」

「似合ってるね~鷲尾さん♪」

 

「もう…! こんなことしてる場合じゃないでしょう!」

 

戦闘装束のインナーは体にぴったりとフィットしたものだ。クラスの中で一番成長している須美のはそのめりはりのついた身体のラインが出ている。須美は2人の視線に気づくとさっと両手で体を隠す。

 

「ともかく、どんな相手かわからないから慎重に対処しましょう」

 

こうしている間に敵は大橋を渡り続けている。慎重にいこうと須美から提案がされたが、

 

「よぅし、ぶっ倒す!!」

「あ、ミノさん。私も!」

 

「ってちょっと!? ……もう! 2人とも待ちなさい!!」

 

銀と園子が先走り、跳んで大橋へと向かう。須美が怒鳴り、その後に続いて跳ぶ。

 

(これが勇者の力、訓練とは全然違う)

 

銀たちは数十メートルを一気に跳躍して、大橋を目指す。神樹の力により身体能力がハネ上がっており、このくらいはたやすい事である。あっという間に3人は大橋へと到達した。

 

「銀様の出陣だー!」

「! 駄目、先に先制して手の内を見てからじゃないと……」

 

アクエリアス(水瓶座)・バーテックス』を視界にとらえると銀は速度を緩めずそのまま突進する。須美が矢をつがえ注意を促し、槍を構えた園子が銀の体を彩る赤い花びらが舞っているのに思わず見とれている間にも銀と水瓶座との距離がさらに詰まっていく。

 

「てやぁあああ!!!」

 

雄叫びとともに銀の初撃が振るわれる。

 

「浅い!」

 

神樹の力を纏う一撃が確実に捉えたかと思えたが、水瓶座の表皮の一部を浅く傷つけただけだった。

 

「わぁ、すごいよ、ミノさん!」

 

「ミノさんって、まだまだ始まったばかりだよ」

 

銀は踊るようにして斧を振るっていく。何度もうち付け水瓶座をスライスしていく。

 

「油断したら駄目、三ノ輪さん。それは―――」

 

須美がそう言いかけると、水瓶座が反撃と言わんばかりに頭の部分から無数の小さな水球を放ってきた。

 

「うわっ! ちょちょちょ!」

 

水球を払いのけようとした銀だったが、いくつかの水球が体につくと、失速し地面へと落下してしまう。

 

「くっそ~、なんだよコレ! これじゃまともに近づけなくなったゾ!」

 

さらにギュルンという一瞬の歪み。その視界の歪みがおさまると、なんと水瓶座の切られていた部分が再生し、新品同様の状態となってしまう。

 

「なぁ! 再生とかずるいだろ!」

 

「ミノさん逃げて!!」

「…いけない!」

 

「うわっと……まずい…ッ!」

 

銀は咄嗟に回避しようとしたが体が重くうまく動けない。体についた水球がまるで重りの役目を果たし銀の体の自由を奪っていた。取り払おうとしたものの弾力があってうまくとれない。水瓶座は煩わしく思ったのか目の前の敵を排除しようと片方の水球のような球体から水圧光線ともいえる激流が発射した。

 

「台風のすごいのみたい!?」

 

「園子!」

 

「これ傘にもなるんよ~!」

 

園子が銀を庇うように前へと出ると槍先についた複数の刃を展開し傘のようにすると水瓶座の水圧光線を防いだ。

 

「ん~~、ごめんミノさん」

「えっ」

「ちょっともたないかも…」

 

銀がリアクションする間もなく、水圧光線のあまりにも大きい威力に傘ごと園子と銀は押し流されてしまった。

 

「乃木さん、三ノ輪さん!」

 

外敵を一時的とはいえ排除した水瓶座は侵攻を再開する。大橋に張っている木の根が、水瓶座が通過する度に鮮やかだった色が黒ずんで腐食していくように枯れていく。

 

「浸食が始まってる…!このままじゃ、現実世界に影響が!」

 

水圧光線を園子が防いでいる間に、須美は矢をつがえ弓の弦を引き狙いを定めていた。須美の正面に花びらの文様のような陣が展開されおり、力を溜めることによりその花びらが鮮やかに咲く。それに比例して威力が増すのが彼女の使う武器の特性だ。

 

バーテックスの侵攻の度に、樹海の根が枯れてしまう。この浸食の具合が多くなるか、樹海を破壊し傷つけてしまうと現実世界に影響をもたらしてしまう。力がたまるのを待つ須美の表情は焦りが見えた。

 

「…早く!」

 

すべての花びらが咲き誇り須美は満を持して矢を放った。しかし、水瓶座は放ってきた矢に水球を放つ、水球は須美の矢を捕らえ、その勢いを殺した。

 

「そんな…! 全部防がれた!」

 

水瓶座は新たな外敵と判断したのか、須美に水球と水圧光線をまとめて放つ。その砲火の雨に須美は回避を余儀なくされる。

 

「(しまっ…)あぅ」

 

なんとか避けていたもののついに躓いて転んでしまう。

 

「まだだ、私たちが諦めたら ――― !」

 

それでもお役目の使命感をバネに須美は立ち上がろうとする。しかし、アクエリアスの水圧光線が須美の頬を掠める。須美の髪飾りの一部が砕け、光線は地面をえぐりながら着弾。大きな水しぶきをがあがる。

 

「あ…あぁ…」

 

着弾した箇所は大きくえぐられ大穴をあけていた。あれがもしも自分に当たっていたら、そう思うと須美の身体がこわ張る。

 

(諦めたら世界は終わってしまう……でも、こんなの)

 

強大な力を目の当たりにしたためか、アクエリアスの巨体がさらに大きく見えた。地面にへたり込んだまま須美は動かない、否に恐怖してしまったがため動けないのだ。アクエリアスは前進しながら須美に対して水球の弾幕を展開し、彼女に目掛け飛ばそうとする。

 

「いっつつ…鷲尾さん!! 動いてないと危な―――」

 

園子とともに水圧光線に吹き飛ばされていた銀が起き上がる。すると、バーテックスの脅威を目の当たりにし動けずにいる須美に気づいた、正面に回ろこむとその両肩に手をかけ揺らし喝を入れる。

 

正気をとりもどした須美だったが、同時に視界に映ったのは放たれた水球の弾幕、そのうちのひとつが銀の頭目掛けとんできていた。

 

「三ノ輪さ―――!」

 

須美が咄嗟に声をあげようとしたが、時すでに遅し、このまま銀に命中すると思われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「(!?)」」

 

が、水球が銀に当たることはなかった。風を切る音とともに須美の後ろから1本の矢が飛んできて、矢が水球に当たると須美の矢と同じように勢いを失うと思ったが、矢尻に刻まれた溝が真っ赤に光ったと思うと水球がごぼぼと音を立てて蒸発した。

 

「あの矢は…」

「うわ。危なかった~ありがとう鷲尾さん」

「違う、私…何もしてない。できなかった」

 

「ん…」

 

須美に感謝を述べる銀であったが、須美は震える声で違うと言ってきた。もしやと思い、2人は園子の方を一瞬見るが、水圧光線を防ぎ吹き飛ばされた園子が意識を取り戻し起き上がっているところだった。つまりは彼女でもない。

 

「じゃあ誰が…」

「三ノ輪さん、あそこに人が!」

 

銀が指さした方向、つまりは須美の真後ろであり、そちらへ振り向く。そこに有り得ない光景があった

 

「というより…勇者?」

 

園子のいう通り人がそこにいたのである。黒のインナーに白を基調とした軽鎧に似たベスト・ポーチ付いたズボン左手に板のような円形の盾を付けており、ボウガンを構えていた。明らかな戦闘目的の装備である。おそらく、あのボウガンから放った矢で撃ち落したのであろう。

 

「神樹様に選ばれた勇者たちですね? 大丈夫ですか?」

 

勇者たちの元へ件の人物が駆け寄ってくる。声の感じからして須美たちと同い年っぽい男の子と思えた。神樹様に選ばれた自分たち以外に人がいるのかと須美と園子は自問自答する状態である。

 

「なんで…なんでなんだよ」

 

ただ一人、駆け寄ってきた人物の顔を見て呟く。3人の中では銀だけがその人物の顔に見覚えがあったのだ。相手側も銀に気づいたのか勇者たちの目の前でその歩みを止め、互いにその名を呼んだ。

 

「え……銀、銀なのか」

 

「勇、どうして!?」

 

銀たちを助けてくれた人物は他でもない。銀にとっては顔見知りである少年『紺野勇』であったのだから。




リメイク版では勇は初戦から参戦となりました。しかし、この時点で彼は『勇者』やそれに準ずるものではないと言っておきます。

水瓶座後半戦でその正体を明らかにします。
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