慶一side
年が明けて冬休みも終わり、寒さにかじかむ手をこすり合わせながら学校へと向かう途中、自分の前方で片膝を抱えてうずくまってる女生徒を見つけた。
特徴的な紫色の髪、頭に乗ってる黄色いリボンを見た時ああ、この子は確か同じクラスに居た柊さんだと解った俺はとりあえず柊さんに声をかけてみる事にした。
「おはよう。柊さん、だよね?どうしたの?こんな所でうずくまって」
そう俺が声をかけると柊さんは涙目の顔をこちらに向けて
「ふぇ?あ、確か同じクラスの森村くん、だったよね?」
恐る恐る俺に返事を返す柊さん。
俺はその言葉に頷きつつ
「ああ。同じクラスだったけどこうして話すのは初めてだよね?でも、どうしたの?」
そう言って柊さんにうずくまっていた理由を聞いてみると
「あ、その、わたし、おねえちゃんに置いてかれておねえちゃんに追いつこうと一生懸命走ったんだけど途中でうっかり転んじゃって膝すりむいちゃったの・・・。」
膝を押さえながら泣きそうな顔をしている柊さんを見て
「そうだったのか、えーっと・・・・・・。」
事情を聞いた俺はきょろきょろと周りを見回してみた。
すると近くに公園があったので、とりあえず柊さんの応急処置をしようと思い、柊さんに声をかけた。
「柊さん。ほら、立てるかい?」
そう言って柊さんに手を伸ばす。
「え?あ、うん。」
一瞬、俺の言葉にびくりと身を振るわせる柊さんは、そう言いつつおずおずと俺の手を取り立ち上がる。
「とりあえずそこの公園へ行こう。傷の手当てもしないとね。」
少々びくびくしている柊さんに俺は傷の手当てをしようと思い柊さんにそう声をかけると、おどおどと俺を見ながら
「え?で、でも迷惑じゃないかな?」
と、柊さんはばつが悪そうに俺に言ったが
「そんな事はないさ。まあ、怪我人を見かけた以上はほおっておけないし。」
俺は笑ってそう言うと、柊さんは少し顔を赤らめてバツの悪そうな表情を見せながら
「わ、わたしも怪我したくてしたわけじゃないよう・・・。」
と、慌てながら弁解する。
それを見た俺は柊さんに背中を向けてクスリと笑うと、柊さんを公園のベンチへと連れて行き、座らせてから
「ちょっと待っててね?」
と、言いつつおもむろに鞄からハンカチと消毒液と絆創膏を取り出し、ハンカチを水にぬらして柊さんの所へ戻ってきて
「はい、傷見せて?」
そう言うと、柊さんはおずおずと擦り剥いた膝を俺の方に差し出して
「う、うん・・・これでいい?」
と言う柊さんに俺も頷き、俺はすばやく柊さんの膝の怪我をハンカチでぬぐい、消毒液をかけて、絆創膏を貼り付けた。
「はい、終わりっと。」
そう言いつつ、傷の処置を終えたのだった。
俺が治療を終えると柊さんは心持ち安心したような表情を見せながら
「あ、ありがとう森村君。でも鞄の中にそんなものが入ってるなんてすごいね~。」
と、俺に礼を言いつつも俺の持ち物に驚いているようだった。
俺はそんな柊さんの言葉ににこりとしつつ
「この位なんてことないさ。それに俺も武術やってる関係上、怪我はつきものなんでね、いつもこういう物を持ち歩いてるのさ。」
そう説明すると柊さんは驚いたような顔になって
「へえ?武術やってるんだ、すごいね~。ところで武術ってなんだっけ?」
と柊さんが思わぬボケをかましてきたので俺はずっこけそうになりつつも苦笑しながら
「己の体を使って戦う、格闘技の事だよ。」
と軽い説明をすると柊さんは納得したように頷いて
「あ、そういう事なんだね?あはは、一瞬わからなかったよ〜。」
と笑いながら俺にいいつつ何気なしに時計に目をやった瞬間、柊さんが慌てだして
「いけない!このままじゃ遅刻しちゃうよ〜・・・あ、森村君、膝の怪我治療してくれてありがとうね。それと森村君も急がないと遅れちゃうよ〜?」
と俺に言いながらも走りだしたので
「おっと、それじゃ俺も行かないとな。柊さん、今度は転ばないようになー。」
と、柊さんに忠告を飛ばしつつ俺も一緒に走りだしたのだった。
学校に着く頃に再び柊さんが転んでいたのを見かけた時には思わずため息がでていたが、とりあえずまた柊さんを助けて何とか無事遅刻寸前だったが学校へと辿り付くことが出来た。
・・・・・・そして放課後。
俺はそろそろ帰ろうと教室をでて昇降口に向かっていたが、その時前方から何か忘れ物でもしたかのように慌てて走ってくる柊さんを見つけた。
俺はなんとなくいやな予感を覚えつつ、柊さんを見ていたが、俺とすれ違い柊さんが俺の後ろへ至った瞬間
「きゃっ!」
という短い悲鳴とドテッという何かが転んだような音を聞き、恐る恐る後ろを振り返ってみたら案の定柊さんが転んでいたのだが、その瞬間俺はものすごい速さで前に向き直った。
「ひ、柊さん、大丈夫?」
俺は柊さんに背中を向けたままで声をかける。
「い、いたいよう~・・・あ、そ、その声は森村君?う、うん・・・また膝擦り剥いちゃったけど・・・でもどうして後ろを向いてるの?」
柊さんは背中を向けて立っている俺にそう声をかけたが俺は振り向けなかった。
なぜなら転んだ柊さんはその・・・スカートがめくれていて・・・
「柊さんすごくいい難いんだけど、その、スカートめくれてるから・・・。」
俺がそう言うと、柊さんが俺の背後で慌てだしたようで、ごそごそと動くような音が聞こえた。
それと同時に柊さんは声に焦りを滲ませつつ
「は、はわわっ!ごめんね今直すからまだこっちみないで〜!」
そう言いながら自分の服装を整えている衣擦れの音を聞いたが、やがてそれが済んだようで
「も、もういいよ?こっちむいても。」
と、照れながら俺に言う柊さんに心の中で安堵のため息をつきながら俺は、柊さんの方に向き直り
「大丈夫?また膝擦り剥いたって言ってたけど?」
俺がそう尋ねてみると柊さんは涙目で
「う、うん。ちょっと痛いけど何とか大丈夫。」
そう言って痛々しく笑う柊さんに俺は再び鞄から絆創膏を取り出して柊さんの膝に貼ってあげた。
「やれやれ、2度あることはと言うけれど3度目があったね。」
俺が苦笑交じりにそう言うと柊さんは顔を赤くして
「うう、転びたくて転んだんじゃないもん。ううわたしってつくづくドジだなあ・・・。」
と少し落ち込みながら俺に言っていたが、やがて元気が出たのか俺に柔らかい笑顔を向けて
「でも、ありがとうね森村君。今日は結局3回も助けてもらっちゃったね。」
と嬉しそうに言う柊さんに俺も笑顔を返しつつ
「まあ、俺はたまたま近くにいただけだよ。柊さんの運が良かったんじゃないかな?」
と柊さんに言うと
「う~ん?そうなのかなあ?」
といいながら少し考える仕草をしていたが、やがて何かを思い出した柊さんは
「あ、おねえちゃんやこなちゃんやゆきちゃんに待っててもらってたんだった・・・ごめんね?森村君私行かないと〜。」
と言って走り出そうとする柊さんに俺はもう1度忠告の為に声をかける。
「ああ、今度は転ばないように気をつけろよー?」
と俺が言うと、柊さんは走りながら俺の方を振り返りつつ俺に手を振りながら
「うん、気をつけるよ~。それじゃまたね〜膝小僧の恩人さん〜。」
と言いながら去っていく柊さんを見つめながら今日も一応の人助けができたなと頷く俺なのだった。
つかさside
森村君と別れてみんなの元へ急ぎながら
(あの人がおねえちゃんやこなちゃんが言ってた森村君なんだね・・・朝からなんか恥ずかしい所みせちゃったな〜・・・でもわたしの怪我の治療してくれたりとか結構優しい人みたいだなあ・・・でも結局帰りも恥ずかしいとこ見せちゃって、はうう、穴があったら入りたいかも・・・もうすぐ2年生になるけどもしもクラス一緒になれたら今度はお友達になりたいなあ・・・・・・)
「つかさ、遅いー!」
「ずいぶん待たせたみたいだけどなんかあったの?つかさ。」
「なんとなく嬉しそうな顔してるみたいですが何かいいことありましたか?」
「うん、実は今朝と帰りにね・・・・・・」
3本目の旋律が重なる・・・・・・