「美早はいつ気付いたんだ? 特にボロ出したつもりないんだが」
雑談がてら俺から話を切り出す。
「最初は勘。あなたが家族と話す姿が似通っていた」
「そこまで似てるか?」
確かにあっちではキャラ作ってないし、性格が大きく変わるわけでもない。倉崎もそれで気付いたけど、そんなに分かりやすいか?
「でも、ここってローカルネット繋いでないだろ? 店内グローバルネットだし、どうやって分かったんだ? マッチングリストで俺を見付けても、対戦申し込まない限りそれが俺って分からないはずだが」
「……それは教えない」
おい、それを教えてくれないとこれから身バレの危険が俺にあるんだが。千葉にいるときは大丈夫だろうが、それでも気になる。
「あー……皇帝よ。あんまり深く追求しない方がいいと思うぜ」
何かを察したらしい上月が苦笑いをしつつそう告げる。
「何でだよ」
「パドはせっかちだからな。かなり強引な手を使ったんだろう。ま、大丈夫だ。パドは安易に言いふらしたりしねぇよ。もししたら私が責任持って断罪してやるよ」
「そのときは甘んじて受ける」
断罪……BBからの永久追放。まあ、頭がそのくらい言うなら少しは信じるか。
「そもそも、パドは今日までお前さんと話したことないんだろ? 名前くらいしか知らないっぽいし、情報の漏らしようがないじゃねぇか」
「……それは言えてるな」
面倒なのでこれ以上は問わないことにした。身バレしたこちらが不注意だっただけだ。
「しゃ、改めてあたしからも自己紹介を。プロミネンス2代目頭首、スカーレット・レインだ。以後、よろしく」
「おう」
「……時に、皇帝よ。うちに入るつもりはないか?」
「プロミネンスにか?」
最近よく誘われるな。
「ああ」
「お断りだ。メリットない」
「……だよなぁ。もう練馬に住んでないしそう答えるよな」
「つか、いきなりどうした?」
「あたしはお前さんと直接戦ったことないけど、無所属でかなり強いって訊くからな。そりゃ頭首として勧誘の1つくらいはしたくなる」
「そういうもんか。……まあ、親が所属しているレギオンにも入ってないし、義理もあるんで今後レギオンには入るつもりはない」
だったらかなり不本意だがネガビュに入っているわ。謡がいるからな。
「ん? 皇帝の親って誰だ? うーん……これといって訊いたことないな」
「教えない」
「NP。多分私は知ってる」
「マジか! パド、教えてくれ」
「ネガビュのアーダー・メイデン。……エンペラー、これで合ってる?」
「…………正解だ」
なぜバレた。いや、思い当たる節はある。すぐに理解した。あれか、さっきの黒ちびたちとの戦闘か……。
あんなに目立ったらそりゃ勘付くわな。失敗したかも。俺ほとんどタッグ組んだことないしな。
「え? どういうことだ? なんで分かったんだ?」
「つい先程、エンペラーとメイデンがタッグで戦ってたとカッシーから興奮ぎみで連絡があった。そこから予想。エンペラーはタッグを組むことはほとんどなかった。レギオンにも入っていない。そして、何より――――エンペラーと仲の良いリンカーはそんなにいなかった」
カッシー。確かその名前はプロミの幹部的立ち位置の奴か。
というより。
「そういうこと本人の前で堂々と言わないでくれます? 失礼ですよ?」
事実だけども。合う奴大体は敵だけど。俺に面白そうとからかってくる輩はそれなりにいたけど。
「へー、あのメイデンか。カッシーが連絡するってよっぽどだな。なあなあ、誰と戦ったんだ?」
「…………黒ちびとミサイル女」
「……黒ちび、ミサイル…………え? えぇ!? はあ!? アイツらと!? 何考えているんだ!? ……つーか、あれだな、お前らもよくやるな……」
赤の王にまで呆れられる始末。アイツら自由奔放すぎないか?
「言っておくが、乱入された側だからな。俺から絶対申し込まない」
「今はその話題で持ちきり。良い勝負だったらしい。多分ブックメーカー辺りが拡散している」
アキバの情報屋か。アイツならすぐに俺らが親子だって広がりそうだ。
別にめちゃくちゃ隠していたわけじゃないけど、しばらく騒ぎになりそうな予感がする。これは謡に迷惑かけるな。また謝っておかないと。
「メイデンって多分あたしと同い年くらいの年代だよな。……皇帝は何歳なんだ?」
「今年で18」
「ということは、高3?」
美早が不思議そうに首を傾げる。
「おう。詳しくは言わないけど、俺はインストールできるんだよ。多分俺が最年長だな」
「まあ、そこは深くは訊かないけどよ……随分とメイデンと年の差あるな」
「ホント、それ色んな奴らに尽く言われるんだけど」
ネガビュと面々と奉仕部。
「お、おう……。そりゃ悪かったな、皇帝よ。ただ、やっぱ気になるな。年が近かったら同級生やら先輩後輩やらで納得できるが、こうも離れているとな。危険な匂いしかしないぞ」
「メイデンの個人情報を守るために俺からは黙っておく。そんなに気になるんなら直接聞け。機会あるのか知らないが、アイツならを嬉々として話すぞ」
「それでいいのか」
「まあ、俺からの許可を取ったって言えばいい」
「そういえば、エンペラーはネガビュには入らなかったの?」
そう美早が尋ねる。
「当時のネガビュは俺らの関係知らなかったからな。特に勧誘は来なかった。というより、ネガビュの面々と戦うことの方が圧倒的に多かったな」
「あー、噂じゃロータスにも勝ったことあるんだっけ?」
「同レベル帯だったら俺の方が戦績良かったからな」
「マジかよ」
「レベル差がついたらさすがに勝てなくなってきたけどな」
やっぱステータス差が響いてくるよな。それに加えてあの何もかも斬る剣も強くなるから俺じゃ手に負えなくなった。
「ふーん。というと、ポイントはけっこう余裕ある感じか? 8に上げないんだ」
「もうほぼ引退した身だから、あまりレベルとかどうでもいい。たまーに千葉の辺境で独りエネミー狩りする程度しかやってないし。最近ちょっと復帰したけど、それっきりだからな」
「ほー。そういや、パドとは戦ったことあるのか?」
「…………」
美早は沈黙。その理由は知ってるけどな!
「おい、パド?」
「……勝てたことない。一度も」
「……うへぇ、パドが? マジかよ?」
相性が良いのかけっこうな数を戦いはしたが、ほぼほぼ俺の勝ち。引き分けはステージギミックのせいで何回かあった。
遠隔の赤のくせに基本レパードは近接だし、そういう奴ら相手だと俺の剣はかなり有利になる。何でも斬れて、触れたら溶ける――――溶解の剣。この剣は近接キラーとして知られていた。
ぶっちゃけると、近接――特に青系統の奴らからはかなり嫌われていたレベル。何せ剣での斬り合いが実質不可能だからな。俺に有効的なのナイトくらいだ。
逆に俺が苦手とするタイプは幻覚系や遠隔技を使う奴ら。例えば赤や紫だな。紫の王には成すすべもなくやられたことがある。あれはアイツをめちゃくちゃにおちょくった俺が悪いが。
あとはレイカーみたいに素早い奴だ。スピード型相手だと、攻撃が当たらなかったら勝ちようがないというわけだ。
そういえば、BB内で新しく主武装としてバイクに乗っている奴がいると訊いたことがある。こう考えると、そのうち戦闘機に乗った奴とか現れないのかな。ミサイルポンポン撃ったり、ガトリング砲空中からぶっ放したり……さすがにないな。ゲームバランス崩壊待ったなしだ。
緑は……いくら防御に自信があろうと熱して斬れるからそんなに苦手意識はない。メタルカラーも似たようなもんかな。今のところ遠隔技を使うメタルカラーってドレイクくらいしか知らない。
だから赤の王と戦ったら多分負ける。火力が違いすぎる。近付ければ何とかなるかもだが……俺にはレイカーやクロウみたな機動力はないからな。
「うちのパドが勝てたことないのか」
「まあな。どや」
「……次は勝つ。私はまだ現役。ブランクがある今なら」
「せめてレベル上げろ。永遠のレベル6」
「…………」
「……まあ、美早……レパードがポイント貯めてる理由は大体だが、知ってるからな。そんな簡単にはいかないか」
「どういうこと?」
俺の呟きに目敏く反応する。
こんな個室だったらすぐ聞こえてしまうか。
「まんま言葉通りだ。俺もちょっと……いや、ちょびっとは情報持ってるからな」
敢えてこの言い方をする。美早は……うん、想像ついたような顔つきになる。察したかな。
紅茶を飲んで一息つける。
「まあまあ、パドも皇帝もそれくらいにしておけ」
上月の中止で話は一旦打ち止め。
「よし、加速世界の話はここまで。ティータイムの再開といこうじゃないか」
「……だな」
まだ苺のラビリンスは半分ほど残っている。今はこれを食べよう。
もう加速世界の話はあれだし、何か話題を振ろう。ここで話題選びをミスると、気まずい空気が待っている。慎重に、慎重に……。何にするか。いくら向こうで話したことがあっても、リアルでこうして話すのは初めてだ。
まずは無難に。
「美早って高校生?」
「高1」
「卒業後もうここで働くのか?」
「その予定」
「大学とか専門は考えてない感じか」
「下手に専門系行くよりかはここのシェフのとこで習った方がいい。伯母さんにずっと任せるわけにもいかない」
「ほー、なるほど」
「…………はちまっ……えっと、エンペっ……えー」
美早は俺をどう呼ぶのか迷ってるのか。向こうの話をしているときはエンペラー呼びでもおかしくなかったが、こうリアルの話をするとなると変だと気付いたのだろう。さっきも悩んでたしな。
俺もレパードではなく、美早と呼んでいる。それで、コイツの名字何? いい加減名前呼び恥ずかしいんだけど。
「比企谷でいいぞ」
「いやいや、ミャア。ここはビシッと名前で呼べよ。ねー、八幡お兄ちゃん」
「あざといやり直し」
「……だから何だよ、それ!」
危ない危ない。思いの外この呼び方にグッと来てしまった俺がいる。できればもう1回呼んでほしいくらいだ。小町や一色、謡といい、俺、年下に弱すぎないか。あ、戸塚にもお兄ちゃん呼びされてみたい。昇天しそう。やはり戸塚は最強か。
「は、はち、はちま……ううんっ。……それで、八幡は進学なの?」
「おお、よく頑張ったな」
「……ニコ、止めて」
「へいへい」
2人のやり取りは置いておいて。
「一応は進学だな。県内の私立文系を目指している。国公立は早い段階で諦めた」
「こっちの方には行かないの?」
「それも考えたが、何だかんだ千葉のが楽だからな。何より実家から近いし、あとはまあ、BBも無縁な地域だし。滑り止めにいくつか東京の大学も受ける予定だな」
「へぇー、八幡はあまりあっちは好きじゃないのか?」
と、上月が問いかけてくる。
「確かに加速とかは便利だけど、あくまであれはゲームとして割り切っているからな。リアルを蔑ろにしてまでやろうとは思わない」
中学の頃はそれでのめり込んでしまった。しかも、無制限でかなり長い時間ぶっ通しでプレイもしてリアルが大変だったこともある。それからはきちんと制限をかけて楽しんでいる。
「そりゃあたしもその意見には同意だな。つっても、まだ小学生だから、リアルはそこまでなんだけど。ミャアはあれだろ、やっぱここの時間が大切だろ」
「向こうもここも同じくらい大切」
「……嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
スゲぇイチャイチャするな、コイツら。雪ノ下や由比ヶ浜に続き、新しいゆるゆりだな。けっこう2人してピッタリくっついているし、仲良いを通り越している気さえするぞ。あれか、親子? じゃなくて姉妹?
「でさ、八幡は彼女いるのか?」
唐突に繰り出させれる上月の爆弾発言。
「は?」
「ただの恋バナだよ。小学生だとこういう話題あまりねぇし気になるんだよなぁ。ミャアはこれだし、知り合い共はあれだし」
「だからってなぜ俺……。逆に聞くが、いると思うか?」
「分かんないから聞いているんだよ」
「いない」
「ほー、意外だな」
「どこがだよ」
「こういう奴に限って案外いるかなって思ったんだよ」
「そうかい」
こういう奴ってそれ褒めているのだろうか? いや、どう考えても褒められている気はしないな。貶されているだろう。
「なら好きな人は?」
「…………いない」
「お、その間……本当は?」
「いねぇよ」
一瞬色々な人の姿を思い浮かべたが、今はきっと好きという感情より憧れの感情の方が強い……と思う。
「だってよ、ミャア」
「うるさい」
――――と、何だかんだで楽しく語り合い、時刻は2時くらいになる頃にはもう解散した。
俺は上月と美早に別れを言ってからケーキをいくつか買い、無事に家に帰った。
それからは小町とケーキ食って1日を終えましたとさ。
ちょっと強引ですが、収集つかなさそうだったんでここで切りました。
当初は謡と楓子のダブルヒロイン? ……ヒロイン? の予定だったのにパドが可愛くて……。次の出番いつになるかな
感想どしどしお待ちしています!