この加速する世界で   作:NowHunt

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部室でわちゃわちゃ

「うーっす」

「……あら、由比ヶ浜さんは?」

「まずそれか。俺に挨拶とかないわけ?」

「…………挨拶?」

「たっぷり間をとって失礼なこと言ってんじゃねぇよ。由比ヶ浜は掃除だ」

 

 謡と別れ、美早や上月に絡まれた日から数日が経ち、学校も終わり放課後。

 

 いつもの部活のお時間です。半ば勉強会になっているが、それも致し方なしだろう。たまーに、ごく稀に依頼が来るけど、大概が一色が生徒会の雑用を押し付けるくらいだ。主に出番は俺だが、ピンチなときは雪ノ下も駆り出される。……由比ヶ浜? あれは事務作業向いてないだろ……。適材適所だ。

 

 というより、受験生となると学校に足を運ぶのも面倒になってくる。今さら新しく習うこともほとんどないし、ぶっちゃけ学校の先生より塾の先生の方が教えるの上手だったりする場合がある。

 いくら進学校の先生とはいえ、受験特化してる塾の方が分かりやすい。受験とは関係ない授業だったらもう別の科目の勉強をしてしまうくらいだ。

 もちろん例外もいて、平塚先生辺りは受験向けの勉強など教えるのは上手だ。

 

「そう……」

 

 それはそれとして、雪ノ下さん、露骨に残念そうな顔しないでくれます?

 

 とりあえず俺も座席につき、テキストを開く。日曜は色々あったが、切り替えて勉強だ。

 

「ところで比企谷君」

「どうした?」

「今日依頼人が来るそうなのよ。平塚先生経由で連絡があったわ」

「一色とかじゃなくてか?」

「みたいね。……誰かしら」

「雪ノ下さんか? 先生経由だったら」

「……可能性はあるわね」

 

 ニューロリンカーがあるこのご時世、関係ない人はフリーに入れる大学ならまだしも、小学校に中学校、高校は入校許可証がなければ入れない。それは先生や生徒会長とかが発行できるものだ。

 いくら雪ノ下さんといえども、卒業生がホイホイと学校へは入れない。だから、先生経由って言われると、まあ、想像してしまうよな。あの人なら簡単に入ってしまいそうだけど、さすがに無理があるだろう。

 

「雪ノ下さんから何か連絡あったのか?」

「特にないわ」

『ならやっぱり違うんじゃ……いや、あの人ならサプライズとかで来そうだな』

「全くよ……。けれど、わざわざ先生に連絡しているから姉さんとは違う人だとも思うのよね。姉さんだったら先生を黙らせてそう」

「それもそうだな。てか、先生経由ってことはやっぱ雪ノ下さんみたいな学校外の奴か? わざわざ俺たちに?」

「さあね。そこまで知らされてないわ。……誰かしら?」

「やっはろー! 遅れてごめんねー!」

 

 と、タイミング良くなのか由比ヶ浜が勢いよく扉を開けてきた。

 

「さあ、ゆきのん。昨日の復習してきたから答え合わせや解説よろしく!」

「ごめんなさい、由比ヶ浜さん。やる気があるのは嬉しいのだけれど、今日依頼人が来るそうなのよ」

「えっ、そうなの。……あれ、まだ来てないの?」

「まだだな。紅茶とかの準備しとくか? せっかく土曜日買ったんだし」

「そうしましょう。由比ヶ浜さん、手伝ってくれる?」

「もちろん!」

「比企谷君は椅子でも用意しといて」

「りょーかい」

 

 3人総勢でテキパキことを進める。俺だけ仕事量が楽なのはありがたい。自分の仕事を終わらせたらすぐさま休憩だ。社会人になってもこうでありたい。いや、社会人になりたくない。誰か養って。雪ノ下さんに魂捧げれば養ってくれそうな気がする。これは……絶対無しだな。悪魔に魂売る気には到底なれない。

 

 と、そうこうしていると、ノックの音が聞こえる。

 

「お前らいるかー?」

 

 平塚先生が入ってきた。先生が珍しくノックをした……だと!?

 俺が先生はやればできる人だと感激に打ちひしがれていると、その足元に見慣れてはいないけど、俺らの見知った人物がいることに気付く。あ、先生はやればできるんだから頑張って婚活成功させてね!

 

「ルミルミじゃないか」

「ルミルミ言うな。キモい」

 

 長い黒髪に整っている容姿。そして、どこか達観している雰囲気を放つ少女――――鶴見留美がいる。開口一番からキツいな。

 

「留美ちゃん久しぶりー」

「鶴見さん、元気にしてたかしら?」

「うん。久しぶり」

 

 留美は雪ノ下と由比ヶ浜とも挨拶を交わす。

 

「先生、依頼人って留美ですか?」

「うむ。昨日学校に連絡があってな。ちょうど面識のある私が受け持ったわけだ。何、知らない仲じゃないだろう? 君たちに相談事があるらしい。具体的な内容は聞いていないから、そこはよろしく頼む」

「えぇ、分かりました。鶴見さん、こちらに座って」

「では、私は仕事があるので失礼する。ああ、依頼が終わったら鶴見君を連れて職員室に来てくれ」

 

 それだけ言い残して部室から去る先生。……後ろ姿ムダにカッコいいよな。女らしくないというより、男らしさが勝っているというか。やっぱり婚活成功しなさそう。先生だし。

 

「留美ちゃんは紅茶飲む?」

「あ、はい」

「どうぞー」

 

 由比ヶ浜が紅茶を渡してから定位置に座り、雪ノ下が話を切り出す。

 

「それで鶴見さん、依頼って何かしら?」

「また学校で何かあったか?」

 

 やはりそこが心配になってくる。

 

「ううん、大丈夫。上手くやってる」

「じゃあ、何かな? あ、進路の相談とかかな?」

「ううん。今日は八幡に用事があって。でも、八幡の連絡先知らなくてここに来た」

「俺?」

「ヒッキーに?」

 

 クリスマス会終わってから会った覚えはないけど。

 

「2人も見て。これの説明がほしい」

 

 と、留美がニューロリンカーを操作して俺らに画像を送信した。

 ……って、これ……謡と俺だ。

 

「うわっ、ヒッキー……」

「――――比企谷君?」

 

 うん、ゴミを見るような目つき。特に雪ノ下なんか人を2、3人殺してそうな目つきだ。東峰さん並の迫力。

 

 つか、よくよく見れば、これ日曜に謡と撮った写真じゃないか。そういや、留美に送るとか言ってたような……。

 

 なんか改めてじっくり写真を見ると、謡っでばノリノリで俺の腕に抱きついているな。当時は気にしてなかったけども。こうやって見るとめっちゃ距離近い。雪ノ下たちが引くのも分かるくらい。これを本当に留美に送ったの? 謡さんや。

 

「これ私の親戚……いとこなんだけど、なんで八幡といるの? 急に送られてきて……。意味分かんないし、質問してもはぐらかせるし」

 

 そこでまさか突撃してくるとは。

 

「この子、あれよね? ついこの間に会った……謡ちゃんだよね?」

「え、知ってるの? おっぱい大魔神」

「何その呼び名!?」

「…………ッ!」

 

 雪ノ下、止めて! そんなに自分の胸と由比ヶ浜の胸を見比べないで! 遺伝子的にはまだ可能性あるから。この年だし、成長止まっているだろうし、ぶっちゃけかなり望み薄だろうけど。まだ希望はあるから! それと留美も敵を見る目で由比ヶ浜を見ないであげて。

 

「それで、どうなの?」

 

 あらやだ、この子マイペースすぎる。

 

「えっとね、土曜日に知り合って一緒に遊んだんだ。随分と大人びている子だったよね」

「……………………そうね。比企谷君と知り合いだったわね。そういえば、あのとき謡さんも鶴見さんのこと話していたわ」

 

 随分と長い間でしたね、雪ノ下さん。そんなに由比ヶ浜を敵対視しなくても……。

 

「それ初耳。八幡、いつういと知り合ったの?」

 

 留美は謡のことういと呼んでいるんだ。倉崎と呼び方似ているな。俺もそう呼びたい。

 

「あー、数年前だな」

「……どういう関係?」

 

 なんでこんなに問い詰められているのか。俺何も悪くないよな? 何このデジャヴ。雪ノ下たちと倉崎たち、美早たちと同じ感じだ。つまり、説明が面倒!

 それで、関係ね。親と子で通じるわけないし、そんなこと言ったら下手すら通報されかねん。

 

「謡が事故に遭いかけたところ俺が救けた。そこから知り合っただけだな」

 

 謡が聞いたら『そんなに安っぽい関係じゃないのです』と怒りそうだが。

 

「あ、そういえば、ういも昔そんなこと言ってた気がする。……ふーん、それが八幡なんだ」

「おう」

 

 とりあえずは説明に関しては乗り切れたか……?

 

「それは分かったけど、あの写真は何? ういと距離近くない?」

「それは謡に言え。俺は知らん」

「やー……。ヒッキー、これはあまりにも謡ちゃんと近すぎだよ……ちょっとズルくない?」

「鶴見さんと由比ヶ浜さんの言う通りね。思わず通報したくなる1枚だわ。謡さんはとても可愛らしいのに、隣のゾンビがかなり恐ろしい存在ね。ある種の不気味さを感じさせる写真だわ。あなた謡さんの引き立て役なの?」

 

 3人に問い詰められ、どう切り出せばいいのか判断に迷う。ちょくちょくディスられたのは俺の人徳の成すところだ。マイナス方面の人徳ってなかなかないぞ。誇っていいのか?

 

 そして、1歩間違えれば本当に通報されかねない雰囲気が漂う。相手側には容赦のなさで知られる雪ノ下がいる。あいつはこういう場合において、かなり危険な存在だ。どう答えるのが無難だ。

 というより、この写真、謡が提案して謡がくっ付いてきた写真だから俺には否がないはずなのに、俺に罪がある気がしてならない。

 

「一応本当のことを言うと、久しぶりに謡と会ったときにあいつが『留美に自慢したい』と言い出して撮った写真だぞ、これ。何度でも言うが、謡の距離の近さに関しては知らん。いつの間にかこうなっていた」

 

 嘘は言っていない。真実だ。責任を謡に押し付けている感は若干否めないが、これが限界だ。許せ。

 

「……ねぇねぇ、ゆきのんに留美ちゃん。ヒッキー嘘はついていないと思うよ。……にしては、ピッタリ引っ付きすぎだとは思うけどね!」

「この男にここでわざわざ嘘をつく度胸も器用さもないから、そこは信用できると思うわ」

 

 褒められているのか分からないが、弁明はできたみたいだ。悪魔に命乞いをしなくて済んだ。

 

「2人が言うなら分かった。これはういが私に対して当てこすりで送ってきた写真だと」

「そこまでは言ってない。謡もそこまで考えてないはず」

「こうなったら徹底抗戦」

 

 まあ、自慢したいとは言っていたが。

 

「八幡」

「何?」

「仕返しがしたい」

「仕返し?」

「うん」

「謡に?」

「うん」

「……具体的に?」

 

 嫌な予感しかしない。

 

「同じ構図で写真を撮ってういに送りつける」

「俺を巻き込むな」

「争いの渦中にいながら何を言っているのかしら……」

 

 呆れながらこめかみに手を当てる雪ノ下。それ久々に見たな。

 

「でも、留美ちゃん。それはヒッキーと近すぎるよ……羨ましいし」

 

 ちょっと由比ヶ浜さん? さっきから反応に困ること言わないでほしい。

 

「だったらおっぱい大魔神もすればいい」

「だからそれ止めてってば!」

「くっ……」

 

 そうだぞ。留美がそう呼ぶ度に雪ノ下がダメージ喰らってるんだからな。ほら、見なさい。雪ノ下めっちゃ微妙な表情してるでしょうが!!

 

 

 




次回はアクセル・ワールドの本筋に触れるかなーと思います、多分。そして、アクセル・ワールド読み返したら時系列ごっちゃになってた。そこまで影響しないはずだから俺は気にしないことにした


なろうでオリジナル小説書いてます。わりかし真面目に書いているのでよろしければぜひ。評価や感想などお願いします!
https://ncode.syosetu.com/n2569fu/


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