この加速する世界で   作:NowHunt

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強襲

「……魔都ステージか」

 

 上の世界に降り立った俺はまずステージを確認する。

 

 魔都ステージ。

 ここの特徴と言えば、地形オブジェクトが異様に硬く、熱攻撃ができる俺や絶対切断を繰り出せる黒チビ辺りではないと斬れないほどの硬さを誇る。多分赤の王の攻撃力でも厳しいのではないかと思う。あ、あと、青の王なら斬れるか。神器だし。

 そして、霧がかなり濃密で動きにくいステージだな。建物の外観もかなり変化しており、窓はよく分からない金属に変わっている。薄暗くいのも合わさり解放感なんて皆無なステージだ。

 

 しかし、今回に限っては当たりの部類だ。大海ステージとか引かれたら移動に困る。まぁ、もしクソステージ引いてもステージ変遷を待つくらいの余裕はあるだろう。あれ、変遷されるまでどんだけ時間あったっけな……。最近ろくに入ってないから普通に忘れた。

 

 俺のタイムリミットは20日。加速世界で20日経てば強制的に現実世界に引き戻される。現実世界ではどれくらい経つかって……あぁ、計算めんどくせぇ。別に長くはない。というより、あんな面倒な計算いちいち出来る奴いるのか。この程度なら、もし俺がいる間に小町が帰ってきても怪しまれないだろう。

 

 さて、その間に加速研究会の奴らをぶっ倒す。できれば1人くらいはPKしたいが、さすがに厳しいか。どうせ加速研究会の奴らがいたとして強制切断は設定しているだろうしな。爪痕残せれば御の字だ。

 

 そうと決まれば東京まで移動しよう。千葉からだし時間はかなりかかるだろうな。徒歩で行くか……いや、さっきアイツらと話したときに電車とかって俺言ったよな。体力はゲームだから使わないけど長時間の移動は精神が削られる。あれ、魔都ステージって動いているっけ。ていうかこんなことでわざわざポイント使いたくねぇなぁ。余ってるけど、稼ぐ手段全然ないし。エネミー苦労して倒しても大してポイント貰えない。

 

 どうせネガビュの奴らも青龍と戦って間髪入れずにメタトロンと戦うわけでもない。何日か休憩くらい挟むだろう。ならゆっくり行っても問題ない。

 

「ただ……」

 

 どうやって加速研究会の奴らと接触するかだな。いやね? 場所ならだいたいの目星は付いている。ネガビュたちと話したときに連中のトップの予想はついてる。どうせ白のクソ共の領地荒らせばいいんだからな。

 それに加えて、カレントから白の王の正体を聞いたこともある。さすがに名前や容姿はさっぱり分からないが、年齢程度なら分かる。それさえ分かれば、自ずと本拠地は絞ることができる。

 

 今メタトロンがティムされていて、アイツがいる場所って港区からだいぶ離れているしな。

 

「やっぱしんどいな」

 

 なんだかんだで東京まで行くのはしんどい。まぁ、最悪心意使えばどうにかなるか。でも、心意使うとエネミーよってくるからそれは避けたい。というより最近使わなさすぎてちゃんと使えるか少し心配だな。

 と、そんな不安を抱えつつのんびり歩き千葉駅までやってきた。さぁ、電車あったっけな。あったとして動いているかな。

 

「……お、あったな」

 

 線路の上に立って電車を見つけたはいい。入り口にパネルがあり、動かすこともできる。ただ、俺の考えているよりポイントかかるな、これ……。

 現役時何回か使ったことはあるけど、千葉から東京までの距離は初めてだからな。こっちはあまり稼げない地域いるのにこれはキツい。やっぱり倉崎にでもねだれば良かったとちょっと後悔している。

 

「これで収穫なしだったら杉並で暴れようそうしよう」

 

 そう半ばふざけた決心を決めて電車に乗る。したらしたで多分ネガビュの幹部たちに返り討ちに遭うだろうな。クロウ辺りをボコれば黒チビ直々にお出ましになるな絶対。もしかしたら謡と戦わなければいけない。遠距離相手はどうも苦手意識が強い。

 

 電車の中は一昔前の蒸気機関車のようだ。魔都ステージだからこの造りなのかな。これがもし他のステージだったらどうなるのか。墓地ステージだったらさらば電王のときのような骸骨のような外観だったりするのか少し興味あるな。

 

 それはさておき、目的地を東京都港区へ設定する。さて、行くとするか。ここにいればエネミーに襲われる心配もない。ゆっくり休め……いや、誰かが線路上でエネミーと戦っていたら危ないな。まぁ、千葉で戦おうなんてする奴いるわけないか。俺だってどこにどのエネミーがいるとか把握しきれてないし。

 

 問題は東京に入って港区までの間だな。そもそも直接の対戦ならいざ知らず、いつでも自由に入れる無制限フィールドの世界でばったりと遭遇することはかなり確率が低いことなんだが。……あれ? そうなるとやっぱ加速研究会の奴らと接触するのは厳しいか。

 

 まぁ、あれだ、もしかしたらネガビュがカチコミかけるかもしれんし、そのときに隙突いて上手いことかっさらえることできれば最高だな。

 

 

 

 

 ――――電車で待つこと1時間。

 

「港区か……」

 

 ようやく港区に着いた。ほぼ寝てた。

 ただ、せっかくの東京なんだが、景色は薄暗くて見栄え悪いな。平安ステージ辺りならもうちょい華やかで綺麗なんだけどなぁ。

 

 今さらだが東京の地理感覚これっぽっちもねぇ……。住んでたの数年前だからな。しかもあまり行ったことのない港区だ。下調べは軽くしたことあるけども。

 

「まず、どこに行くかだが――――」

 

 誰に聞かせるわけでもなく俺は独りでに呟く。これは現時点で俺の考察だ。

 

 

 加速研究会のボスは白の王ホワイト・コスモス。その正体は黒チビの姉。さっきも考えたが、さすがにホワイトの奴の名前も容姿も分からないし、黒チビの方のリアルも割ろうとは思わない。俺はそこらは割り切っている。

 

 ただ、黒チビは中学生。BBの最高年齢は俺という特例を除いて恐らく高1。いくらホワイトのクソ根暗が化け物染みた力を持っていてもそこは変わらないだろう。いやまぁ、アイツが開発者側にいたら話は全く別なんだが……それを言い出したらキリがないので今回は置いておく。

 

 その仮定を重ねたとして、白のコミュ症は最低で高1、もしくは可能性は薄いけどギリギリ高2。で、黒チビはお嬢様の家庭らしい(別に仮定と家庭をかけてるわけではない)。だったら、自ずと白のアイツらのいる学校も絞られていく。自と白って似ているよね。うん、どうでもいい。……アカン、話が逸れてく。

 

 

 事前に調べたところ港区で有名なお嬢様学校と言えば――――エテルナ女子学院。

 

 

 白のレギオンの本拠地は恐らく、きっと、メイビー、ここで間違いないだろう。他に目立つようなお嬢様学校ねぇし。別の場所を本拠地にしてたらそれはもう俺の予想が外れたということになる。

 しかし、どのレギオンも基本は学校を主体にして行動している。なぜなら学校には校内用のネット回線があり、そこに繋げていると外部からの回線には繋がらないからだ。つまり、外から襲撃を受けることはほぼないということだ。だから、本拠地は基本学校で合っているとは思う。

 

 どうしようかね……どこから監視するか。

 

「その前に……『ハイド』」

 

 一言呟く。

 

 俺のパッシブスキルであるハイド。名前がどシンプル。効果はこれまたシンプル、相手やエネミーからの隠蔽。完全に姿をくらませることができるスキルだ。バースト・リンカーやエネミーのHPを俺の攻撃で少しでも減らせばその効果は消える。再使用までは最低5分。そして、完全に退避して相手の視界から外れないといけない。

 

 完全に不意討ち用です。まぁ、通常対戦のときはカーソル出てしまうので、いくら隠れても位置バレるんだけどね! 複雑な地形ならまだ可能性あるけど、草原ステージみたいな平坦なら効果がなさすぎる。

 このスキルマジで使えねぇ……。無制限フィールドじゃなきゃ意味がないやつ。ていうかエネミーに不意討ちしてどうなるんだよ……。大して効果薄いのによ。もうちょいマシなのにしてくれねぇかな。

 

 ダークネス・エンペラー――――皇帝に隠れるスキルがあるとはこれいかに。多分ダークネス要素かな。

 

「ホントこのスキル使えねぇな……」

 

 愚痴りながら離れた場所に高い建物あるので上から監視しようとしたが――そういや魔都ステージだな。建物に入れねぇわ。クロウやレイカーみたいに飛べるのなら話は別だが。

 

 ……大人しく変遷待つか。このスキル基本攻撃しない限り永続なのは強いと思うけど、そもそも無制限フィールドでプレイヤーと戦うこととか普通に少ないから、これまた微妙なスキルということになる。

 

「ハァ……」

 

 建物の影に隠れて変遷を待つ。こういうときが無制限フィールドでは暇すぎる。

 

 2時間ボーッとしていると変遷きた。世紀末ステージか……。これなら建物の上から監視できるな。

 

「暇だ……」

 

 高い建物の屋上へ移動して適当なところに腰を掛ける。

 

 今ごろアイツら青龍と戦ってるのかね。いやホントよくやるわ……。ぜーったい戦いたくないな。しかも青龍ってレベルドレインを持っているとかなんとか。それでカレントはレベル1になったからな。

 

「――――」

 

 というよりマジで暇すぎる。誰か適当に連れてきた方が良かったな。いや、それだと隠蔽バレるか。世の中上手く回らないもんだ。

 

「暇だ……」

 

 よく全盛期の俺は頻繁に1日以上潜っていたな。下手すりゃ1ヶ月はいたことがある。スゴいな俺。素直に尊敬するわ。ただのゲーム廃人を尊敬とかは正直微妙な気はする。プロでもない限りこれといって生産性ないしな。俺の持論として、人様に迷惑かけなかったら、別に何しても良いとは思うけど。

 

 

 

 

 ……………………。

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 

 

「あれからどんぐらい経った……?」

 

 確認してみると……15時間くらいか。あー、体凝るわぁ。いや、ゲームだし別に凝るとかないんだけどね。なんか途中から時間の感覚失せてたわ。寝てはないけど、軽く意識飛ばしてた……。

 

「――――」

 

 

――――だが、そのおかげで収穫見付けたぜ。あの学校の影に誰かいる。

 

あれは……あの文字通り頭でっかちな紫野郎。いや、アイツは女か。女に野郎はおかしい。なら何て言う? ババァでいいか。エセ関西弁を操る超絶胡散臭いウッザい奴――――アルゴン・アレイ。

 

 俺アイツのこと嫌いなんだよなぁ……。ただただ表面上しか喋らなくて信用ならない。ちょっと話すくらいでは分かりにくいが、その実、接していると薄々見えてくる常に誰かを見下している態度があまりにも鼻につく。多分信用ならない度合いで言うと、陽乃さんを越えるレベル。あの強化外骨格とは別の類。

 あの人は分厚い上っ面でそれっぽい言葉で場を引っ掻き回すことをよくするが、それでも接していると、どんな人物なのかは少しだけ見えてくることがある。しかし、アイツの言葉はひたすら羽のように軽い。その全てが胡散臭いのだ。だから俺はアイツが嫌いだ。

 

 カレントの報告によりアイツが研究会のメンバーだってことは知っている。元々キナ臭い奴だしな。

 

 当然隠蔽しているこちらにはまるで気付いていない。

 

「着装、ブレード・オブ・フュージョン」

 

 俺の手には……うん、慣れ親しんだ感触だ。色んな戦闘で色んな奴の武器を奪って戦ってきたが、これがやっぱ一番馴染む。俺の主武装だしな。実のところこれめっちゃ軽い。軽いのに高温のブレードとは、一体全体どういう仕組みなんだろうか。

 

 そんな疑問は置いておいて必殺技ゲージは満タンだ。――――さっそく仕掛けるか。

 

 

 

 

 

 

 

 




前回投稿したとき恐らくですけど最高日間6位までいきました
とても嬉しくて思わずスクショしましたw

読んでくれて感謝

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