この加速する世界で   作:NowHunt

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日常は続く

 ――――何言ってんだ、コイツら。というか、いきなり何の話?

 

 

 話をまとめると、昨日、加速世界で起きたことについて話し合いをしていたら、いつの間にか俺の好みを答えることになっている。しかも対象が今ここにいる3人である。よりによってこの3人からなのか……という気持ちが強い。これが奉仕部なら未だしも――いや、どっちもどっちだろう。

 

「さぁさぁ、時間は押しています。ちゃちゃっと答えてくださいな、八幡さん」

「え、なに……好み? 誰の?」

「何ですか、その間抜けそうな顔は。加速世界での貴方の最大の長所は思考から選択への時間の短さ、躊躇の無さだと言うのに」

 

 あ、この状況に置いてけぼりなの俺だけみたいだ。なんか3人とも期待の眼差しを送ってくるんだけど。好み? 俺が選ぶの? この3人から?

 

 ……一旦落ち着こう。冷静になって細かい部分を攻めて曖昧にしよう。

 

「ちなみに、その好みってのは具体的に? 特に何もないならこの話はなし――」

「あ、そうですね。前提を決めてませんでした。ういういとみゃーはどんな設定がいいですか?」

「まずは外見」

【UI> ですね。まずはそこからです】

「とのことです、八幡さん、私たちの中から選んでくださいね」

「まずは……ってことはこれ複数回あるのか……」

 

 全然曖昧にできなかった。マジで面倒なことになってきたとひしひしと感じる。

 

「外見? 外見ねぇ……全員可愛いと思いますよ、はい」

「とても棒読み。感情が籠ってない。やり直し」

 

 美早から即座にダメ出し。とりあえず誰かの名前を挙げないとこれは終わらないだろう。

 

 外見なぁ……謡は可愛らしい小学生だよな。小学生といっても、年相応の元気な姿ではなく元々の性格や家柄にBBとか含めて大人びた雰囲気を醸し出している。ぶっちゃけ小町や由比ヶ浜より大人っぽい。

 

 倉崎も高1とは思えないくらい美人だろう。由比ヶ浜に負けないくらいのお山をお持ちで……んんっ。くびれもしっかりしていてスラリとスタイルもいい。といっても、倉崎の両足は義足らしいが。まぁ、パッと見じゃそんなの思わない。……あぁ、だからスカイ・レイカーなのか。足がないから空を求めた……みたいな?

 

 で、美早か。あのさあのさ、未だに美早の名字知らないんだけど? まぁいいか。外見の雰囲気はどことなく雪ノ下に似ている。綺麗な黒髪だし、こちらも充分スタイルがいい。もちろん、雪ノ下よりは胸が…………これ以上は嫌な予感がするので止めよう。それでいて、ここの制服だがメイド服が似合っている。これは……男心をくすぐるよね。

 

 

「あー、うーん……外見ねぇ……。んじゃ、美早……で?」

 

 色々と考えた上で自信なさげに答える。

 

 ここで倉崎とかと言ったら、雪ノ下辺りに殺されそう。もしアイツがBBできたとしたら、心意使いこなせそうだよな。で、めちゃくちゃ強くなりそうだよなぁ。まぁ、年齢的にまずムリなんだが。俺が特例なだけで普通できないし。

 

 こんな適当な発言だが、それでも選ばれた事実に嬉しいのか美早は軽く頬を染めており、謡や倉崎はむくれながらこちらを睨んでくる。……こんなのに選ばれて何が嬉しいんだかな。しかも適当感が凄まじいのに。

 

 そして、そんな美早を睨みながら、いかにも不機嫌さを醸し出しながら謡はタイプをする。

 

【UI> して、その理由は?】

「明確な理由があるわけじゃないけど、何となくだな、何となく。強いて上げるなら、メイド服?」

「変態?」

「おいコラ」

 

 自分でも多少はそう思ったけども!

 

【UI> ふむ、メイド服ですか。さすがに着たことはありませんね。なるほど、八幡さんの趣向はそうだと。でしたら、私もメイド服に挑戦してみましょうか?】

「謡ならどちらかと言えば割烹着……何でもありません」

 

 真正面にいた倉崎が『それ以上口を開くと……分かっていますよね?』と言いたい非常に冷たい視線がこちらを突き刺してきた。ごめんなさい、変なことは言いません。でも似合うとは思うぞ。

 

 倉崎は咳払いをしてから話題を戻す。

 

「八幡さんの趣味嗜好がアレなのは置いておいて、次に……外見と来たら、中身ですかね? 性格とでも言いましょうか。しかし、中身とは言いますが、先ほど八幡さんは全員可愛いと仰ってくれたので、中身を答えるということは、この中で付き合いたい人は誰になるのか? ――ということになりますかね」

「ならないけど?」

「では答えてもらいましょうか」

 

 あれ、俺の声届いてる? そう思うくらいこちらと会話してくれない。きちんと狙い通りにボールを投げているのに受け取ってくれないそんな感覚。倉崎は加速世界でも特にそれが顕著だ。まぁ、ドSだから仕方ないか。いや、納得できねぇな。

 

「…………ちなみに答えなかったらどうなる?」

【UI> 私たちVS八幡さんで戦いましょうか!】

「それは普通に死ぬ」

 

 いくら俺がレパード相手では負け無しとはいえ、そこに遠距離のメイデン、超スピードのレイカーと加わると恐らく1分持つかどうかだ。コイツら相手に心意は使うわけにはいかないし、マジで成す術ないだろう。ただでさえ、レイカー相手に限った場合戦績4割切っているのに。

 

「じゃあ改めて、この中で付き合いたいなら誰?」

 

 今度は美早が紅茶を飲みつつキリッとした表情で切り出してくる。しかもちゃっかり質問変わってるし……!

 

「八幡さん、別に答えた=すぐ付き合う、告白ってわけじゃないんですから――――どうぞ、気楽に答えてくださいね」

 

 倉崎は口ではそう言うが…………その、全員の眼がギラついていて怖いんだよなぁ。表情は笑っているが、目は笑っていない。なんつーか、目の光が失われている。そんな器用なことできるんだね。君たち、餌に飢えた肉食獣か何かですか? そう思ってしまうくらいぶっちゃけ怖い。

 

 ――――とまぁ、それは置いておいて、ここで俺が考えるべきなのは誰を選ぶと無難に終わるのか、だ。それしか考えていない。

 

 例えば謡を選ぶと、やれロリコンだのやれ年下好きだのやれシャア・アズナブルだの罵られることだろう。大佐はロリコンだからな。……いや言うても一年戦争とのきのシャアとララァって別にそこまで年離れてなくない? それはいいや。で、それに加えて、謡だと倉崎経由で由比ヶ浜たちにも知らされる可能性がある。一応は共通の知り合いだからな。アイツらまでロリコン扱いにされるのは避けたい。ただでさえ、先日留美が持ち込んだ案件であらぬ疑いがかかったのだから余計にだ。

 

 倉崎だと、俺が加速世界にあまりいないことを良しとしてあらぬ噂を立てられる可能性がある。アイツ周りをおちょくるの俺以上に大好きだからな……。特にその噂を真に受けた黒チビが堂々千葉に乗り込むかもしれない。あの純情突撃バカに俺の安寧の地を奪われるわけにはいかないんだ。そして、謡と美早の2人に体目当てだの言われ、蔑んだ視線で攻められることだろう。今回は主に性格で誰がいいかを選べだが、そう言われるに違いない。

 

 となると――――消去法で選ぶとやはり無難なのは美早か。まず、雪ノ下たちは美早のとこを知らない。体の方も……なんか言い方どうかと思うけど、倉崎に比べて凹凸が激しいというわけでもないので、体目当てなどと言われることも恐らくない。性格もせっかちなのはあれだが、別段あらぬ方向にブッ飛んでいるわけでもない。性格含めてわりとお互い気が合うだろう。

 

 しかしながら、俺は先ほどでもう美早は選んでしまっている。ここでもう一度美早を選んでしまうと、バランスというか、謡と倉崎から反感を買ってしまう恐れがあるんだよな。下手に天秤を傾かせるのは危険だろう。……一番無難なのは美早だが、バランスを取り合う意味でも美早は一旦なしの方向で。そうなると倉崎か謡になる。

 

 その選択肢でどちらを選ぶかと言うと――――

 

「あー、うん。謡かな。BBやリアル含めて何だかんだ一番付き合い長いし、気心知れてるっていうか」

 

 予め考えていたこの言い訳ならどうにか理屈として通る。付き合いの長さというものは人間関係を語る上で外せないものとなる。浅いよりかは深い方が断然良いだろう。いくら謡が俺より一回り年下だろうと、これなら大丈夫なはずだ。

 

 それに言い訳だろうとわりと本心なところがある。もし謡と年が近かったら、俺はいつか告白してあっさり振られるだろう。

 

【UI> さすが八幡さん。信じていましたのです。私は何たって、もうお義母さんに挨拶済ませていますしね。私しかいないのです】

 

 謡はとても満足げに頷いている。子どもはなんて健気なんだろうか。こちらとしては、胃がキリキリと痛むというのに。なんかツッコミも疲れてきたから放っておこう。訂正する気力も湧かない。

 

「うわ、八幡さんあれですか、ロリコンですか?」

「予想通りの反応をどうも。ただな、ロリコンって正確に言えば小さい女子に特別な感情を抱く云々って話だろ。コイツは見た目小学生だが、中身と年齢ズレてるだろ。BBやってるんだし。……それを言ったら俺らもか」

 

 レベル3までなら無制限に入れないからそこまでって感じはしないけど、レベル4からはどっぷり無制限に浸る奴は多いだろう。グランデなんかはレベル4からほとんどエネミーでポイントを稼いだというある意味狂気に満ち溢れているし。

 

「まぁ確かに、あっちに長く潜っているとリアルで何をしていたか忘れるときはありますよね。カラスさんは最初ロータスたちにあまり長く入るなって忠告はされたらしいですけどね」

「私もこっちが忙しいときはあまり長く入らないようにしている」

 

 謡も頷いて同意をしている。

 

「それにな、謡はどちらかと言うと小町みたいな妹が増え――――」

 

 たような感覚……と口にしようとしたが……。

 

 えーっと……。

 

 そのー…………。

 

「…………う、ういうい? そんな負の心意を出さなくても……」

「……機嫌が悪いニコより怖い。八幡、謝って」

 

 目が完全にイッちゃるっ謡が俺をガン見してくる。小学生が瞳孔開くって恐ろしいんですが。このまま放っておくと、何か嫌な予感がする。

 

「え、えーっと……ごめんね?」

【UI> なにがごめん――なのですか? 八幡さんは何に対して謝罪をしているのですか?】

「…………」

 

 多分今の俺は顔をしかめているだろう。

 

 うわコイツ面倒くせぇ。恋人やら親やらに言われて一番面倒な言葉ベスト3位くらいにランクインする文言だろそれ。

 

 謡の隣でアワアワ慌てている倉崎を見る。視線で助けを訴えるが。

 

『八幡さん、頑張ってくださいね』

『ちょっとは助けてくれる気概はないのか』

『だって、八幡さんが悪いんですもの』

『そこを何とか頼む』

『ダーメ。ほら、ういういの機嫌を直してください!』

 

 視線のやり取りだけでこんな会話を繰り広げる。直結してないから思考発声でもなくチャットも使っていない。目と目で話ができた。なんつーか、倉崎の目がそう語っていたんだよな。そして、速攻で見捨てられた。

 

 時間にしてわずか数秒。だと言うのに謡はこちらをひとしきり睨んでから空中でタイピングをする。

 

【UI> そこ! 見つめ合って会話しないのです!】

「うっ……。あ、あら、バレちゃいました? …………この子なかなか目敏いわね」

 

 最後にホゾッと付け足す倉崎。その呟きもバッチリ隣にいる謡に届いているぞ。謡は倉崎をひたすら睨んでいる。いつものオプションの扱いが嘘のように倉崎はたじろいでいる。おぉ、なんだか珍しい。――俺が責められているのにも関わらず、不躾にもそう感じてしまう。

 

 しかし、この状態が続くと非常に困る。これ以上この話題が続くと俺が不利になるだけだ。いやまぁ、今でも充分アウトな領域にいると思うけどね。女子小学生が男子高校生を責めている絵面だなんて、どこからどう見てもヤバい奴にしか見えないだろう。

 

 こうなったら、この話題をムリヤリ終わらせるしかない。どうすれば、終わらせられる? ――――決まっている、コイツらにとって無視できない大きな話題を放り込むだけだ。そうすれば、情報が錯乱してさっきまでのことなんて忘れて有耶無耶になるに違いない。あれだ、アモアスで追加キル入れてごちゃごちゃにする感じ。

 

 

「あぁ。そういえば、昨日バイスと戦って思ったんだが――――」

 

 

 唐突に思い出した、といった風に、何気無しに普段からするような世間話を今からする口調で、話の導入を始める。いきなりの話題に加えて、3人からしたら無視できない話題だっだので、3人の視線が俺に集まったのを見届けてから、ゆっくりと口を開く。

 

「アイツの正体、白のレギオンの幹部の誰かだぞ。あくまで、様々な前提が絡み合った、という条件が入るがな」

 

 俺の言葉に。

 

「…………」

「…………」

【UI> …………】

 

 三者それぞれ目を丸くする。いや、謡はタイピングで『……』を打たなくてもいいんじゃないか。再現しなくても表情で伝わるよ? だってめっちゃ目見開いているし。面倒だろ、わざわざ打つの。

 

【UI> どういう意味ですか?】

「意味ってそのままなんだけども。えーっと、経緯を話すと、昨日バイスと戦う機会があったんだが……美早は知っているか。まぁ、そのとき戦った印象やら状況証拠やらからの推測だな。あ、けっきょくのところ加速研究会の親玉って白の引きこもりでいいんだよな?」

「あれを引きこもりと表現するのね、八幡さんは」

「実際そうだしな。穴熊の玉だろ、アイツは」

「まぁ、八幡さんの返答にはイエスですね。向こうから接触してきたので」

 

 オケオケ。その前提が合っているのなら、とりあえずは話ができる。――――と、俺は昨日バイスにぶつけた荒唐無稽な仮定を3人に告げる。

 

 

 

「…………なるほど、バイスの力の正体は分からなくても、コスモスはそれを御しやすいように幹部を使っていると」

「大方そんな感じだな。いくらバイスの反応からしてほぼほぼ当たりとは言え、確証はないからな。あまり突っ込むなよ。話半分にしておいてくれ」

「それにしても、他のバーストリンカーに化ける……システム開発者はなぜそんな仕組みを作ったんだろう。今さらながら不思議」

 

 俺の一応の忠告のあと美早はそんなことを呟く。それは確かに。心意か強化外装か分からないけど、何だって他人に化けてソイツの能力が使えるようなシステムを構築したのかは分からない。

 

「そもそも誰があんなゲーム運営しているんだろうな。加速とかいうある意味現実壊すような機能まで付けてよ」

「まぁ、それは永遠の謎よね。そのためにロータスはレベル10を目指しているのだし」

【UI> ですね。ローねぇはいずれレベル10になりたいと言っていますので、なれたらそこで確認をするでしょう。ところで、八幡さんはどんな人が運営していると思いますか?】

 

 どんな人ね。

 

「なんつーかさ、BBの運営している奴ってあまり人間味ないよな」

「人間味?」

 

 美早が聞き返す。

 

「あぁ。普通のオンラインゲームとかならさ、今はどのゲームでもかなり減ってきたけど、だいたいはメンテあるだろ。イベント始まる前とかシステム障害が起こったときとか。定期的に行うやつとかも」

「そうですね。何かしらのバグが起きたときも緊急でメンテナンスが始まるときがありますね。PCゲームやVRゲームでもそこに違いはありませんね」

 

 俺の一言に倉崎は同意して、美早と謡は肯定しておりウンウンと頷いている。

 

「でも、俺の知る限りではBBでメンテとかあった覚えないんだよな。そもそもイベント自体が数えるほど少ないってのもあると思うけど。それにしては心意やら、いくらシステムの範囲内でも普通に考えれば明らかおかしいやつとかあるしな」

【UI> そうですね、私にもメンテナンスが入った覚えがありません。恐らくですが、稼働してから一度もないのではないでしょうか】

「だろ。それにエネミーの設定とかもぶっちゃけ普通のゲームなら考えられないほどおかしいレベルまで強化しているしな。……極端な例だと四神とか。あんなの普通のゲームならクソゲー扱いされてもいいとこだぞ。まぁ、BBは本質的に格ゲーだから、あまりエネミー相手に力を入れてほしくないのかもしれないけど」

 

 どれだけ挑んでも勝ちの目がこれっぽっちも見えないとか、クリアされるためにあるゲームの観点からいくと普通あり得ないレベルだろう。

 

「エネミーやらもそうだし、さっきも言ったオンラインゲームにしてはあまりにもイベントの少なさとかも含めて、人間味しないってのはそういう意味」

【UI> なるほど。では、もしレベル10になれた人がいたとして開発者に会えるとするならば、とてもズボラな人が相手なのですかね?】

「さてな。それは行ってみないことには分からないが、もしかしたら人間ですらないまである」

「あら八幡さん、それは人間ではない。つまり――――AIってことかしら?」

「まぁ、人間味しないってさっきも言ったし、そう考えるとAIが管理していてもおかしくはないと思うぞ」

 

 無機質な相手だから、機械が相手というのは個人的に納得ができる話だ。

 

「あぁいや、つっても、もしホントにシステム管理者がAIだとして、そのAIを育てた奴は誰なんだろうな――っていう話に戻っちゃうけども。AIが充分性能を発揮するためには、まず人が教育を施す必要があるからな。謡の言うズボラな奴ってのはそうだと思うし、なんなら相当性格悪い奴だろう。そんで、何より無責任すぎるとは思う」

「それには全プレイヤーが同意すると思う」

 

 いやホントにね? 勝手に加速なんか使えるゲームを送ってはろくに説明もしない。クソ運営もいいとこだぞ?

 

 数年前……そろそろ10年経つのか記憶は定かではないが、誰が何の目的で広めたか分からないVRゲームを幅広く遊ぶためのプログラム――――ザ・シード。これのおかげでVR業界はかなりの盛り上がりを見せた。誰でもVRゲームを作れるという画期的なモノだが、もちろんゲームを作ろうとも管理するのは人間だ。

 

 しかし、BBに関してはマジでシステム管理に人がいないのではないかと思う。システムの基礎的な構築は人がやってあとはAIにお任せ――――といった感じだろうか。もしかしたら、このBBの基礎的な構築をした人は完全にこのゲームを忘れてどこかへ旅をしているかもしれない。そう思うほどにBBからは運営の色が伝わってこない。

 

「となると……そのAIはどこにあるのかしらね?」

 

 ふと倉崎がそんな声をもらす。それは考えたことがなかった。

 

「どこだろうな。パッと思い付くのは東京のどっかとかか? メインのプレイヤーたちはだいたい東京に集まっているし」

「もしかしたら、人が訪れない山奥かもしれない」

 

 と、美早。

 

【UI> しかし、ネットが繋がらない環境だと不便ではないでしょうか。何か有事があった際、お手入れも大変そうです。私はあるとしても最低限の都市部のどこかではないと思うのです】

「それなら、いっそのこと個人が持ち歩いているのでは? AIそのものをニューロリンカーに閉じ込めておくとか。それなら管理しやすいと思いますけどねぇ」

「いやー、そりゃさすがに厳しいだろ。どんだけ容量あるのか分からない……つーか、膨大なデータがありそうなのにそれをニューロリンカーだけで持ち運ぶのはキツいだろ。それこそ、この部屋くらいの大きさにデータを保存していもおかしくはないんじゃないか?」

 

 スパコンレベルなら、この部屋に収まりきるくらいの大きさではない。

 

 

「こうやって議論するのは楽しいですけど、明確な答えがないのにやってもスッキリしないですよね」

「同感だ」

 

 ――――しばらく話していたが、倉崎の一言によりその話題はここで終了した。

 

 

 

「そろそろ良い時間だけれど、お開きにします?」

 

 あれからも話題は尽きずに話していた。ふと時間を確認すれば、もう3時は回っていた。AIの話だけではなく、他にも世間話に時間を費やしていたので、いつの間にかここまで過ぎていた。

 

「だな。気分転換になったよ」

「えぇ。楽しかったわ。またこうして集まりたい」

 

 あ、美早さんや、それは勘弁で……。

 

【UI> 私も今から行くところがあるのでそろそろお暇します】

「謡、途中まで送ろうかしら?」

【UI> 大丈夫なのです】

「あらそう? ならそろそろ私も帰るわ。親に車を借りててそろそろ返さないとなのよ。怒られちゃうわ。……みゃー、美味しいケーキごちそうさま。また来るわ。八幡さんも、またどこかでお会いしましょう。ういういもまたね」

 

 とだけ言い残し、倉崎は先に優雅に帰宅した。残された俺と謡は互いに荷物をまとめて。

 

「んじゃ、俺らも帰るか。世話になった。じゃ……またな、美早。ケーキごちそさん」

【UI> ありがとうございました。美早さん、今度は客としてケーキ買いに行きますね!】

「えぇ、2人もまた。次はもっと美味しいケーキご馳走するの」

 

 屈託のない、ぶっきらぼうそうな美早からは考えられない優しい笑顔で俺たちを見送ってくれた。

 

 

 

 

 

「……さてと、駅まで一緒か。あ、それともバス?」

 

 店から出で、2人だけになった謡に話しかける。

 

【UI> 八幡さんはこのあと時間はあります?】

「一応、今日は何も予定入れてないけど」

 

 そう伝えたものの、謡は俺から視線を外し何かしら思案しているような顔付きになる。そして、きっかり5秒。謡は再びタイピングを開始する。

 

【UI> では、付いてきてほしい場所があるのです】

「……というと、あれか、家まで送ってくれみたいなのか。あそこ薄暗いもんな。いいぞ、そんくらい全然」

 

 それなら倉崎に頼めばいいと思ったが、家の方向真逆とかなのかね?

 

【UI> いえ、そうではなく。八幡さんに見てほしいものがあるのです。……その、有り体に言えば、私と今からデートをしませんか?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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