この加速する世界で   作:NowHunt

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デート?……デート?…………デートかな……

 倉崎たちと別れたあと、謡に『デートをしませんか?』と誘われ、イマイチ状況が飲み込めず、渋々了承してから30分経った。あれから美早の店から移動して、どうしてか杉並の中学校の校門前に俺はいる。

 

 途中、謡とタッグを組んだから下手に襲われることはなかったが、正直杉並にいるというだけで末恐ろしい。気が気ではないというか、なにせ杉並は黒チビたちの領土だからな。いつ乱入されるか分かったもんじゃない。この前みたいにレイカーと黒チビが組んでいるかもしれないし。あれは序盤の草むらで魔王にエンカウントするようなもんだから。

 ここ数年、めっきり対戦とかしなかったのにここ数週間かなりの頻度で東京に訪れているから、周りからどう思われていることやら。

 

「…………」

 

 しかし、それはさて置いて、謡は中学校の校門前から動きがない。もしかすると、謡の行きたい場所とはこの中学校なのだろうかと推測する。それでも不可解な点はある。コイツ、まだ小学生だろう。確か5年のはずだから、まだ中学校見学の時期でもない。なぜ中学校に?

 

 とりあえず確認を取ろう。

 

「謡、目的地ってここなのか?」

【UI> はい。ここで合っています。ここは梅郷中学校なのです】

 

 合っていたらしい。しかし、特に聞き覚えのない学校名だ。ただ、どことなく既視感があるような……ないような……。

 

 というか、ニューロリンカーの発達した現代において、こういう中学校は原則として生徒や教師といった関係者しか敷地に入れないようになっている。部外者が入るためには教師などから入校許可証が必要だ。それは高校生である俺はもちろん、俺の隣にいる小学生の謡も例外ではない。

 

 謡はそんなことは気にせずに慣れている雰囲気なのが不思議だが、とりあえずは謡が何かアクションを起こすまで待つとしよう。

 

「あー、ここで誰かと待ち合わせでもしているのか? ……もしかして留美とか」

 

 その間、適当に話しかける。

 

【UI> 違いますよ。そもそも、デートと言ったではないですか。留美ねぇ含め、特に誰も呼んでいません。あ、そういえば、前に八幡さんとのツーショット写真を送って怒られたのです】

「そうだよ。お前があんな写真送るせいであのあと大変だったんだぞ」

【UI> 事の顛末は聞きましたよ。なかなか面白い状況だったとか】

 

 まさか。全く笑えませんでしたことよ?

 

【UI> それと全く同じ構図で留美ねぇが八幡さんとの写真を送ってきたときはちょっとムカついたので……あ、申請通りました。これで八幡さんも学校に入れるのです。今から入校許可証送りますね】

「え? あぁうん。……うん?」

 

 確かに『梅郷中学校入校許可証』が送られてきた。けど――――え?

 

「今から入るの? ここに?」

【UI> はい。ちょうど校内に案内したい場所があるのです】

「えーっと……どうやって入校許可証ゲットしたの? さすがに部外者すぎだろ、俺」

【UI> 私、この中学校の副生徒会長と個人的に交流がありまして、今回はお願いして八幡さんの分もご用意いたしました】

 

 …………怪しい。ひたすら怪しい。謡やネガビュの面子の年齢、そして杉並という地区――様々な状況から推測するに、この中学校はぶっちゃけそうなのだろうと予想がつく。や、まだ分からんぞ。ただただ謡のリアルな付き合いがここにあるかもしれない。……あるかもしれないじゃないか!

 

「それより、俺の素性とかどう説明したの?」

【UI> 一応お名前だけ向こうに渡しました。必要事項でしたので】

 

 う、うーん……まぁ、そのくらい当然か。

 

「ちなみに……や、いいや別に」

 

 敷地内に入れば分かることだ。…………そんな現実見たくないから確認しないでおこう。

 

【UI> では行きましょうか。私に付いてきてください】

「おう」

 

 謡のあとに続き、若干ドキドキしながら学校に入る。大丈夫だよね、不審者って思われたししないよね。今日は休日でがっつり私服だし、俺の怪しさ度合いに余計に拍車がかかるだろう。

 

 しかし、総武高も大概だが、この中学校も相当外観綺麗だな。最近はわりと公立校でも補修工事も進んでいるし、中もさそがし綺麗なのだろう。……ん、見渡していると、部活をしている生徒以外もわりといるんだな。何やら慌ただしそうだ。……あ、ここ私立なんだ。

 

「休日なのに生徒数わりと多いな」

【UI> 昨日文化祭があったので、片付けなどしているかもしれませんね】

 

 そういえば、謡や倉崎たちは昨日黒チビたちの文化祭に参加したと言っていたな……いや、これもう確定だろ。わざわざバースト・リンクしなくても分かる。ぜーったいいるよ、あの突撃バカ。つっても、別にだからといって俺に弊害があるわけでもない。黒チビたちもその辺りの分別は弁えているだろう。

 

 もしかしたら、野次馬精神が働いて様子は見に来る可能性はある。しかし、そこは必要経費というか、勝手に学校にお邪魔しているんだ。副生徒会長とも言っていたし、遠目に見られる分は大丈夫だな。

 

 俺ができるのは話しかけられませんように、と祈るだけだ。ぶっちゃけいくら黒チビだろうと、初対面の相手に話しかけられてマトモに対応できる自信がない。

 

【UI> ところで、八幡さん。昨日なんですが、どうやら心意を使ったみたいですね。かなり久しぶりに使ったとのことでしたが、大丈夫でしたか? それこそ数年振りでしょう】

「お前の玄武抑えつけるほどのモンじゃないよ。ただの基礎とちょっとした応用しか使ってない。いくら久しぶりとはいえ、大したことはない。俺の心意はある意味俺の欲望……みたいなとこあるから。といっても、そこまで大きくはない欲望だし。それに、俺は俺の心をちゃんと管理できている……と思うしな」

 

 心意を使うと、心の闇に引っ張られる云々言われているが、その感覚は正直俺には分からない。そんなの味わったことないし、そんなめちゃくちゃに心意を使うほどの危険な場面に出くわすこともそうそうなかった。エネミー狩りも俺の必殺技で事足りるしね。

 

【UI> それなら良かったのです。確かに八幡さんの心意はそこまで規模の大きいものではありませんね。あくまで自分で完結しているというか。……あ、着きましたのです】

 

 とはいえ、オープンスペースで会話する内容じゃないけどな?

 

 

 適当に謡の隣で歩いていると、どうやら目的地に着いたみたいだ。校舎の裏っかわに案内されたけど……ん、何かある。これはどこからどう見ても――――

 

「飼育小屋?」

 

 どの学校にもありそうなごくごく普通の飼育小屋があった。

 

【UI> はい。ここに私たちが飼っている子がいるのです】

「ほー。いや、なんでここ? お前の小学校は?」

【UI> 私の小学校の飼育小屋は取り壊しが決まりまして、私の通える範囲の学校がここくらいだったのです。それに、ここにいる子は私の手からしかエサを食べてくれませんので】

「あー、前に話してたケガした動物拾ったときの話か」

 

 まだ謡と再開する前、俺らは定期的に連絡を取り合っていた。近況とかを話していた……まぁ、ほとんど雑談だったが。そこでそんな話をされたことがあった。

 

【UI> そうなのです】

「そういや、その動物がどんなのが訊いたことなかったな」

【UI> 見れば分かりますよ。とても臆病な子なのでゆっくりとお願いします】

「おう」

 

 そう忠告されたので、あまり音は立てずにゆっくり飼育小屋を覗く。チラッと。そこにいたのは、おそらく全長20cmを超える体躯、白に近い灰色をした体毛と立派な翼。そこにいたのは鳥なのだが――――それだけいうわけではなく、丸く膨らんだ顔、下に大きく湾曲する嘴、赤金色の丸い両面。

 

 オウムやインコのようなただの鳥ではない。猛禽類だ。フクロウ……じゃなくて。

 

「ミミズク?」

【UI> アフリカオオコノハズクといいます】

 

 ほぇー、立派な鳥だ。鷲とかもっと大きいフクロウ辺りなら動物園で見たこともないが、こんな近距離で見るのは初めてだ。なんかフクロウとかは単独でジッとしているのに惹かれたというか、まるで俺みたいなぼっちなのかなぁ……と、中学のころは思っていたり。

 

 いやー、しかし、迫力あるなぁ……。なんてポケッとした顔でミミズクを見てると、謡が苦笑して。

 

【UI> そういうところはまるで男の子ですね】

「え、なに、俺女の子に見えるの? 女装してもムリあると思うぞ」

【UI> 違います。なんか八幡さんのそういう純情な部分を見ることがあまりなかったので】

「さよかい。このミミズクの名前はあるの?」

【UI> ホウ、と言います】

「もうちょい捻れば?」

 

 なんて安直な。うちのカマクラを見習え。

 

【UI> 決めたのは私たちクラスの同級生たちの多数決ですから】

「あぁ、そういうね」

 

 それならそうなるか。ホウ……改めて観察してみると、なんか俺をガン見してくるな。部外者がいきなり現れたらこうなるよね。ごめんなさい。

 

「ところで、今日はなんでここに?」

【UI> まずエサを与える必要があるので。1日1回、私の手から与える必要があります】

「なるほど。エサというと……なんかのお肉?」

【UI> 察しがいいですね。しばらくお待ち下さい】

 

 そうやって、謡が身に付けていたカバンから色々と取り出す。いそいそと取り出したのは、おそらくエサである肉が入っている保冷用のパックと小刀。……小刀? おぉ、ナイフというよりかは小刀だな、これ。木製の鞘に6cmほどの刃渡り。

 

「――――」

 

 あ、めっさカッコいいな。こういうのリアルで見るとテンション上がるね。夜の吸血鬼狩りでもしたくなる。真・アルクェイドルート、心よりお待ちしております。アルクェイドに心を奪われた者の戯言でした。

 

 いきなり謡が小刀を持つ姿に対して内心ちょっとワクワクしている俺を余所に、謡がパックから取り出したのは冷凍の……多分これはマウスか、そこいら辺りのお肉だろう。丸々1匹出てくるとは思いもしなかったけど。

 

 謡はそんな俺の様子をパチクリとした目付きで眺めてから片手でタイプをする。

 

【UI> あまり驚かれないのですね。梅郷中学校の飼育委員の方はこの冷凍マウスを見て非常に驚かれてましたよ】

「まぁ、丸々出てきたのには多少驚いたけども、拒否感とかそういうのはないな。その、なんだ、食べるってとどのつまりそういうことだろ。どんな生物でも、生きるために他の命をありがたく貰っているんだから、そこに敬意はあれど嫌悪感はないよ」

【UI> なるほどです】

 

 口ではそう伝えるけど、謡が冷凍マウスを捌こうとする光景は少しばかし似合わないと思うな。うん。

 

 そして、謡はパックの蓋を引いて器用に冷凍マウスを小分けする。あっという間に食べやすいサイズに切り分けられていて、その腕に素直に感心する。

 

【UI> エサは冷凍マウスたけでなく、ウズラやヒヨコも与えたりするのですが、今日はこれだけです。冷凍マウス……正しくはピンクマウスと言いますが、それだけだとカルシウムが不足することがありますので】

「ほー」

【UI> 八幡さんがホウさんに与えてみますか? より正確に言うと、私の隣でホウさんが食べる様子を見るという意味になりますけど】

「……やー、さすがにこれ以上近付くのはちょっと怖いな。それに臆病なんだろ。初対面の相手がいきなり来たらビビるだろ。遠目に見とくだけにしとくわ」

【UI> 分かりました。ちょっと残念です】

「貴重な謡を後ろからじっくり観察するよ」

【UI> その言い方はイヤらしいのです】

 

 自分でもそう思いました。

 

 

 

 

 

 ――――数分後、無事エサやりを終えた謡は後始末を済ませ、近くにあったベンチで休んでいる。俺も隣に座る。

 

「お疲れさん。貴重なもん見れたわ。普段の謡ってこんなことしているんだな」

 

 そんなことをボツリと漏らす。

 

 実際、謡が手袋をしてお肉を与えている場面はなかなかにカッコいいものだった。そして、ホウがお肉を食べる場面もかなりの迫力だった。こんなのを間近で見れるとはな。また謡に頼んで謡視点からの映像も見てみたい。

 

 そして、ホウにエサを与えている謡の表情も印象的だった。日常では見ることのできない、まるで親が子どもを世話するときのような微笑みは、謡もそのような顔をするのだと意外だった。

 

【UI> ありがとうございます。そうですね、今日八幡さんを誘った理由はそこなのです。最近フーねぇと八幡さんが遭遇してからか、私とも会う機会が増えて、八幡さんの日常や雪ノ下さんたちといった交友関係を知ることができました。しかし、その逆……最近の私のことはあまり言ってなかったので、こうして、私を見てほしかったのです】

 

 照れ臭そうに謡ははにかみながら、そう言葉にする。

 

 言われてみれば、日常の謡を知る機会なんてそうそうない。

 

 いや、小学生の日常生活を細かに知っている高校生とかそれだけで通報もんだから、当然と言えば当然か。それでも、何気ない謡の日常の一端を知れて、俺も嬉しく思う。互いの話題としてはBBがかなりの比重を占める。ただ、それだけではない謡を見ることができ、貴重な時間だった。

 

 それに加えて、普段見れることのない表情も……謡の年の子に言うのもなんだが、素敵だったと素直にそう感じる。

 

【UI> だから、その……】

 

 途中で止めてどうし――――

 

「……ぁ…………んんっ。……ぁ……ッ」

 

 謡は途中でタイプする手を止め、口を開こうとする。運動性失語症である謡は声に出して喋ろうとすると、それができずにまるで息が吸えていないような非常に苦しそうな症状に陥る。そんな様子を見て、俺は慌てて静止にかかる。

 

「謡、大丈夫。謡の気持ちはちゃんと伝わるから。……ムリしなくていいよ。ちゃんと治ってから改めて言ってくれ。苦しそうな顔じゃなくて、それこそ笑顔でな」

【UI> ……分かりました】

 

 ちょっと不満そうな顔付きになる謡。そういう顔されると非常に申し訳ないが、やっぱり俺の親の苦しそうな顔は見たくない。それは本当に親だからかと疑問に思うが、今は深く考えないことにした。

 

 それも……さっきのセリフ、今思い返すと恥ずかしくなってきた……。これは夜にベッドで悶えるパターンだ。もうやだぁ、お家帰るぅ……。

 

【UI> では、そのときが来たらお願いします。逃げるのはなしですよ!】

「……ん、分かった」

 

 ピシッと指を刺され、如何にも逃げたら許さないと言いたげな表情になる謡であった。

 

 

 ――――そして、しばらく2人で何も話さずボーッとベンチで堕落を貪っていると、どこからか足音が聞こえる。

 

「――――」

 

 徐々に足音が大きくこちらに近付いてくるので、ふと視線を音の方向へ向ける。

 

 足音の主はどうやらここの男子生徒だ。遠目でも分かるくらい太めの体型。中学生の年でその体型は大丈夫なのかと一抹の不安を覚えるが、他人の俺が心配できることではないか。……それに俺の知り合いにも似たような奴いるし。名前は……材……なんだっけ? 知らない人ですねぇ。めっさ矛盾したこと思ってる。

 

 とまぁ、どこぞの小説書きのことは置いといて、その太めの生徒は飼育小屋に用があるのかどんどん近付く。

 

「あ、四埜宮さん、もう来てたんだ」

【UI> 有田さん、こんにちは。はい、今日のエサやりはもう終わりましたのです。有田さんは今日当番ではありませんよね。もう伊関さんが掃除は済ませていたので】

「あ、そうなんだ。僕は文化祭の片付けがてら様子を見に来たんだけど……そのー、えーっと……」

 

 謡と知り合いなのかひとしきり挨拶してから、この場にいるのがどうも不自然というか明らか不審者みたいな俺に対して、怪訝そうな視線を向ける。こんな部外者がいてホントごめんね?

 

「ど、どちら様でしょうか……?」

 

 恐る恐る訊ねてくるポッチャリな生徒……謡が有田と言っていた生徒に軽く頭を下げる。

 

「あ、比企谷八幡と言います。えーっとー……その、なんかお邪魔してます」

 

 つい敬語になってしまう。いやね、こんなアウェーな空間だと腰が低くなるんだよね。

 

「あ、はい。有田晴雪と言います。あ、ここの飼育委員長をやっているので、四埜宮さんとは知り合いです。こちらこそよろしくお願いします。それで、比企谷さんはどのようにここへ……?」

「隣にいる……謡がなんか誰だっけ? そっちの副生徒会長に取り次いで入校許可証を発行してくれたんで。いやまぁ、俺は向こうの顔は知らないんですけど」

 

 一応年下だけど、わりと焦って変な敬語で話してしまう。恐らく有田君もかなりコミュ症というか人見知りの部類なのだろう。互いに挙動不審なのが分かる。なんだこれ。

 

「そうなんですか。先輩が……なるほど。えーっとですね、ちなみに、比企谷さんは四埜宮さんとどのような関係なんです……?」

 

 はいはい、これは何度目の質問なのだろうか。倉崎から奉仕部の面々や留美、上月や美早、そして今回で有田君か。この短期間でめっさ答えている気がするのは気のせいですか? まぁそれはいいとして、どうやって答えようか……。雪ノ下たちのときと同じように答えるかね? 倉崎はBBやっていたし、話早かったけど。

 

「いや別に、普通に知り合――」

【UI> 私の彼氏……と言ったところでしょうか】

「ちょっと謡さん?」

 

 あなたそういう勘違いされること言わないでくれます? 警察待ったなしですよ?

 

「ほー。彼氏……彼氏さんでしたか。…………え、えぇぇぇ――――!?」

 

 あらやだ、有田君めっちゃ素直だなぁ! 

 

 目を丸くして勢いよく驚いている。こんな妄言信じるなんて。よくよく考えてほしい。和風の可愛らしい女子小学生と他称目が腐っている男子高校生だぞ? 明らか不釣り合いというか不自然すぎるだろ。街中歩いているときとか職質されないかビクビクしながら過ごしているというのに。なにそれ一生引きこもりたい。

 

「違うから。謡もほんっと勘弁して。この年で前科持ちとかシャレになんねぇよ」

【UI> まったく、八幡さんはすぐそういうことを言いますね。ヤレヤレなのです】

「謡がどう思おうが、端から見たら相当ヤベぇからな?」

 

 そんな俺と謡の様子を有田君は「ほぇー」と言いたそうな雰囲気で眺めている。

 

「仲良いですね。四埜宮さんが尻に敷いている感じがなんか新鮮です」

 

 その表現如何なものか?

 

「まぁ、仲良いってのは否定しないけど…………なぁ、謡。俺ら仲良好だよね?」

【UI> どーしてそこで不安になるのですか……】

「や、仲良いと思ってるの実は俺だけとかそんな勘違いしたくないし。ちょっと自信なくなってきた」

 

 あるじゃん。自分だけそう思っていて、実際相手はそうでもないパターンとか。それでバチクソ勘違いしたら死にたくなる。

 

【UI> 大丈夫ですよ。私と八幡さんはとっても仲良しなのです】

 

 うん、そりゃ良かった。そう安堵していると、謡は唐突に話の流れを打ち切り別の話題へ移行する。

 

【UI> 八幡さん、有田さんには諸々言ってもいいと思いますよ】

「え、それどういう意味?」

 

 と、いきなりの内容に疑問を持ち、俺の質問に答える前に謡は有田君に諸々――――俺らの出会いである事故のことやら俺らの関係性をチャットで素早く伝える。そして、あらかた訊いた有田君はどこか納得した表情を見せる。

 

「あ、そうだったんですか。四埜宮さんが事故に遭いかけ比企谷さんが助け…………あれ、それどこかで訊いたような……?」

 

 有田君は不思議そうに首を傾げる。

 

 え、ちょっと待て。有田君、これ聞き覚えあるのか。いやいや、どこでだ? 俺は有田君とは初対面だし、当然したことないから謡がとっくにしていたとか。……いや待て。以前にわりと人数いるところで話をしたことがある。この中学校は黒チビの本拠地――――ていうか、俺ここに来たことあるしな。あっちで。つまりは、有田君もそういうことだろう。

 

 とりあえず有田君には聞こえないよう小声で。

 

「…………謡、有田君って誰だ? 色で言うと」

【UI> 銀です】

 

 銀……シルバー。それはつまるところ、加速世界で唯一自由に空を駆ける鴉。レイカーよりも自由自在に。加速世界でもかなり有名なんだが、それが有田君……というわけか。

 

「マジかよ」

 

 そういう繋がりか、と今さら納得する。人は見かけにもらないものか。まぁ、あっちとこっちではキャラを作っていて別物だろって奴もたまにはいるしな。せっかくのゲームだし、ロールプレイしたいのは分かる。や、有田君と話している感じキャラ自体はそこまで差はないような。

 

【UI> 有田さん。ぶっちゃけると、八幡さんは私の子ですよ。前にもお会いしましたよね】

 

 お前はお前でぶっちゃけすぎだよ。

 

「……………………」

 

 おい、完全にフリーズしちゃったじゃねーか。もうヤだ、この親……。ブレーキはどこ?

 

「おーい、有田君?」

 

 俺が呼びかけてからきっかり5秒。意識を取り戻したのか有田君は。

 

「…………あ、あの比企谷さん。ほ、ホントにそうなんですか?」

 

 恐る恐る訊いてくる。俺はいきなりの事態で多少戸惑いつつも返答する。

 

「あー、そうだよ。前にここでその話したことあったしね」

「え、えぇ。ありますけど……ちょっと信じられなくて。いきなり校内にいた人が四埜宮さんの彼氏さんで、エンペラーさんだったとは……」

「気持ちは分かるが、あれだ、一旦潜って確かめてみてくれ。校内ネット繋がってるから」

「い、いえ! そう言うってことはホントにそうなんだって分かりますから」

「…………ってあれ? いや有田君。マジで違うからな。謡の言うこと鵜呑みにしないでね?」

 

 なんか君勘違い起こしてない? 大丈夫?

 

 そして、俺の様子なんざ素知らぬようにすぐさま有田君は俺に向き直り。

 

「あ、あの! 比企谷さん。よ、良ければこのあと対戦お願いしていいですか?」

「それくらいなら全然」

 

 勘違いが解けたのか分からないまま有田君と対戦することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これ書いている最中に月の裏側の情報が出てきたから死ねない理由ができた

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