「対戦、ありがとうございました!」
「こちらこそ。空飛ぶ相手ってのは初めてだったし、良い経験になったよ」
有田君――――シルバー・クロウとの対戦は終わった。
結果は俺の勝ち。最初はクロウのペースでわりかしボコボコにされていたが、反撃として剣を出してからの決着は早かった。
多分30秒とかからず勝利できたな。まぁ、初見の相手ならそうなる場合が多い。いくら事前に情報を聞いていたとはいえ。
「いやまさかすぐに剣を投げるとは思いませんでしたよ……。エンペラーさんの……いえ、比企谷さんのメインウェポンって聞いていたからあんなあっさり手放すのは予想外でした」
「飛ばれたらかなり厄介だし。あんなにボコボコにされたから余計にな。それに主武装だろうとあくまで攻撃の一手段に過ぎないからな」
「使えるものは何でも使うってことですか」
「そうそう、そんな感じ。結局殴って相手のHP吹っ飛ばせればそれでいいんだからな」
「うへ〜……」
有田君の疲れた声が耳に届く。
あれからの流れをざっくり説明すると、まずクロウが再度翼を振るわせ飛ぼうとした瞬間に俺は剣を投擲した。
恐らく黒チビから俺の剣の性能をざっくり聞いていたのだろう。一先ず射程外まで逃げようとしたのが分かった。そこから俺の知らない攻撃を繰り出すか、はたまた体勢を整えたかったのかは有田君に聞かないと不明だ。
しかしながら、俺が剣を召喚する前にクロウの空中攻撃にボコボコにされたからな。空中にいながらの連続攻撃……あれマジで強かったな。まさかあれで体力半分近く削られるとは思えないほどタイミングが掴めず、かなりテンポが崩された。
まぁ、そのこともあってクロウを飛ばすのは避けたかったから、初手で思い切り剣を投擲した。
投げた剣はクロウの翼に刺さり、その勢いで片翼が削がれた。俺の剣は溶解の剣。刺さった瞬間翼が熱され剣の重みで翼はボロボロになった。
その後すぐに追撃にへと俺は走り、跳躍した勢いで出したカカト落としをクロウの頭部に命中した。そのまま落下し地面に倒れたクロウへ馬乗り――――マウンティングポジションを確保した俺はちょうど横に落ちてき地面に突き刺さった剣のを手にした。もうここまできたらチェックメイトだ。
あとは剣で首を斬ってクロウのHPを吹っ飛ばした。
――――そうして戦い終わってからの俺は飼育小屋のベンチで有田君と感想戦をしている。
隣には謡も座っている。
「でもあれですね、もう少しあの剣と斬り合い……いえ、僕は素手だったから表現は違いますけど、あの剣と戦ってみたかったです」
「言っておくけど、俺の剣とマトモに近接でやり合える奴ってかなり少ないからな。それこそ高レベルの奴ら……例えば黒チビとかだな」
「そういえば、比企谷さんのあの剣の性能って具体的に何なんですか? 先輩は先輩のとはベクトルが違うけど何でも斬る剣とは言っていましたけど」
まぁ、別に教えていいか。
黒チビが黙っていたのは対戦前に情報を伝えるのはフェアじゃないとか有田君の楽しみを奪うのは良しとしないって考えていそうだから、終わった今伝えるのは大丈夫だろう。
「あー、ざっくり言えばそうだな……有田君ってガンダム分かる?」
「はい!」
「ガンダムで例えるとヒート・ホークってところ。いやガンダムじゃなくてザクなんだが」
「いや伝わりますから……」
別にビーム・サーベルでも例えとしては伝わりそうだが、実際ヒート・ホークだからな……。
「要するに俺の刀身の部分はかなり熱くなるんだよ。熱して斬る溶解の剣。それが剣の力。だから当たったらだいたいの奴は斬れるし、軽く触れてもダメージを負う」
「なるほど、だから近接キラーなんですね。たしかに破格の性能ですねそれは。当てれば勝てるって理屈も納得です。普通の近接タイプで斬り合いをするのは難しそうですね……」
「別に青だけじゃなくて、メタルや緑からも嫌われているからな」
【UI> まぁ、八幡さんは色々な方面で敵を沢山作っていたのです】
と、横にいる謡から茶々が入る。
「うっせ」
【UI> 相手の武器を奪ったり、必要以上に痛め付けたりとよくしていましたね】
「そりゃ煽れるときに煽っとかないとな。次戦うとき平常心崩してくれたら儲けもんだ。それだけで勝ちやすくなるし」
【UI> 本音は?】
「煽るのちょー楽しい」
当然現実ではそんなことしない。ゲームだからこそ……いやゲームでも煽りは許されないけど。といっても、昔の格ゲーとかであった屈伸煽りとかじゃないからな。あくまでルールの範囲内だから……。
【UI> うわー、なのです】
「喧しいぞ謡。つっても、俺よりレイカー……倉崎の方が酷いだろ。あのドS女。俺も何度ヤられたことか」
さすがに戦っている相手をビルから吊るして馬鹿にするとかそんなことしたことないぞ。
「師匠……うーん、否定できません」
【UI> それはそうですね】
満場一致。
さすが倉崎。
「そういや、そっちって遠距離攻撃あるの?」
「ないですよ」
「あ、そうなんだ。あったら強いと思ったんだよなぁ。……あれか、レベルアップの選択肢で特になかったパターン?」
「何回かありましたけど……僕はやっぱりあの世界で飛びたいので基本的に飛行アビリティ強化ばかり取ってますね」
「特化の構成なんだな。黒チビが親ならそうなるか。なんならネガビュが特化の塊だし」
それは俺もか。別に万能型のビルドが悪いとは言わないけど、こういうゲームにおいて万遍なくよりから何かしら自分の強みを特化させた方がいざってときに役立つときはある。
反面、代償として自分の苦手なパターンがきたらどうしようもないっていう弱点もある。
謡で例えるなら火属性攻撃に特化した場合、ステージがほぼ水で埋まる大海ステージがきたら攻撃力は激減する。今でこそ、だいぶ戦えていると謡は言っていたが、昔はかなり苦労したらしい。
俺も俺で使いにくい実質射程距離がかなり長い必殺技があるとはいえ、近距離ビルドだから遠距離攻撃を主体とする相手は苦手だ。
「下手に遠距離技があったとしても、それだけで本職の赤には勝つの大変そうだし飛行アビリティに集中ってのはいいと思うな」
「ありがとうございます。比企谷さんは剣の強化ですか?」
「だなー。基本的には剣の性能を強くして……取りたいアビリティがあったらそれを取ってたな。必殺技は初期のやつだけだ」
最近使ったのは隠れることができる『ハイド』と数秒先の未来を見ることができる『未来推定』か。あとはいくつかあるけど、そもそも半ば引退した今だと戦う機会が少ないから使うこともあまりないというのが現状。
「えっ、あのビルをバカスカ斬った技ってレベル1のときに付いていたやつなんですか!?」
「そうだよ。あのピーキーすぎる必殺技な。もうちょい使いやすいやつが良かったわ。剣からビーム放つみたいなのとかカッコいいのに」
たまに青の王が使っているのを見たことがある。必殺技なんだからもう少し汎用性の高い技をくれ。全く当たらない一撃必殺はいらないんだよなぁ。まぁ、その辺は必要なら心意でカバーできる。
「その辺り僕と同じですね。僕も初期の必殺技しか持ってないんですよ。比企谷さんのと比べると威力も範囲もショボいんですけど」
「へー。まぁ、必殺技はあくまで攻撃の種類が増えるだけって考えればどうにかなるんじゃない。必殺技前提の立ち回りとか対策されやすいだけだし」
「ですね」
チョンチョンと謡が俺の横腹をつつきつつ話に入る。
【UI> しかし八幡さんも、もっと必殺技も取って良かったのでは?】
「んー、今考えるとそうなんだけど、単純に剣が強かったから下手に必殺技増やすよりも剣の性能底上げした方がいいかなって。まぁ、攻撃のバリエーション増やすために必殺技欲しい場面はあるけど」
【UI> まぁ、八幡さんの必殺技、元々が強いですもんね】
使いにくいことこの上ないがな。せめて消費する必殺技ゲージが半分くらいだったら良かったのにな。全部溜めないと使えないのがキツい。
――――なんてしばらくダラダラ話していると、ふとザッザッと土を踏む足音が聞こえる。
誰か来たみたいだ。さすがにBBの話は他の人の前ですることではないと判断した俺は途中で口を閉じ、音の方向へと顔を向ける。
通り過ぎるわけではないみたいだ。どうやらこの飼育小屋に目的があるらしくこちらへと歩いている。
謡が言っていたもう1人の飼育委員の人だろうか。
そんな推測と共にこちらへと近付く人物を観察する。
長い黒髪の小柄な女性。パッと見、有田君より同じか少し高いくらいの身長だ。遠目で見た感じ、真っ平らな凹凸のない体をしている。うん、すぐにそこを見るのは失礼だねはい。
制服を着ているから、まぁ……普通に考えてここの生徒なのだろう。というか、この中学校で部外者なのは俺と謡だけだ。そんなホイホイ無関係の学校に入れるわけでもない。
しかし、他に見かけた女生徒とは着ている制服が違う。大概の人は白いワイシャツだが、近付いている人は黒色のシャツだ。きっといくつか種類があるのだろう。
「あれ、先輩」
【UI> さっちん、来たのですね】
有田君と謡が同時に反応する。2人の知り合いらしい。俺らの座っているベンチまで歩いてくると朗らかな笑顔で。
「文化祭の片付けの休憩がてらな。まだいるかなと様子を見に来たんだよ」
さっちんと謡から呼ばれた女生徒は2人に挨拶してから俺へと向かい一瞥するかのように視線を走らせている。
その視線にはまるで既視感がある。初対面の雪ノ下に近い冷たい視線だ。……いや、あれほど冷えてはないけど。あれはマジでゴミを見るかのようだった。この女生徒はせいぜいコイツは誰なのだろうと覗いているだけだ。
不審者でごめんなさいね。
「たしか比企谷さん……でしたね。こんにちは」
と、初対面だが、敬語で俺の名前を呼ぶ彼女。
……なるほど。
俺の名前を知っているということは、彼女はこの中学校の副生徒会長だ。謡が彼女に対して俺がここに入れるように手配した。ここまでは何となく推測できる。
そして、ある程度察した。謡と有田君の共通の知り合い。この2人の接点はここで飼っているホウ関係もあるが、何より同じレギオンに所属していること。そんな謡たちの知り合いが彼女。
そして、有田君が先輩と呼んでいる。その呼び方は過去に聞いたことがある。
これらから導き出される答えは――――
「敬語はいらないぞ。……初めましてだな、黒チビ」
つまり、彼女は謡たちの頭首。加速世界において数少ないレベル9の1人――――黒の王ということ。
俺がそんなことをのたまうと、彼女は顔を顰めてから大きいため息を吐く。
「全くお前はという奴は……」
いつも向こうで軽口を叩き合っている雰囲気になる。
「つーか、黒チビの性格上わざわざこっちには来ないと思っていたが」
「別にお前に会いに来たわけじゃない。ハルユキ君たちの顔を見に来ただけだ。……と、何と呼べばいい? さすがにあっちでの名前を呼ぶわけにはいかないし、呼び捨てもどうかと……」
律儀な奴だ。身バレは避けたいが、それさえなければ何でもいいのにな。
由比ヶ浜とかヒッキーだぞ。今でこそ何とも思わないが、初めて聞いたときはなんて的確な表現だとある意味で感動したことさえある。
「んー、別に呼び捨てでいいけどな。それかさっきみたいにさん付けとかでいいんじゃないか。俺は変わらず黒チビって呼ぶけど」
「ふむ……じゃあ、変わらず比企谷さんと呼ぶこととしよう」
つーか、そっちへの呼び名については何も言わないのね。
「あ、別に黒チビの名前は教えなくていいからな。倉崎から聞いたことあるけど、普段から渾名で通しているんだっけ? なら黒チビでもいいだろ」
実はこっそり教えてもらった……と言いたいが、アイツからムリヤリ聞かされたことがある。
「フーコもアイツは……」
倉崎の失言に対して頭を抱える黒チビの仕草はどうも雪ノ下に似ている気がする。やはり体型の問題も……これ以上は止めておこう。次、雪ノ下と会ったら息の根を止められる。
「それかさっき謡が言ってた……何だっけ?」
【UI> さっちんなのです】
「って呼ぶことにするわ」
「うーん、それはそれで拒否したいが毎回チビと呼ばれるよりかはマシか……」
などと頭を悩ませている黒チビ。迷うとこそこなんだな。
「しかし比企谷さんに謡……」
「ん?」
ふと何を思ったのか黒チビは俺と謡を見比べるように顔をキョロキョロとさせる。
「いやなに、何て言えばいいだろうか」
「……うん?」
「話には聞いていたが、本当に年齢差があるのだな」
急にどうした。
「高校生と小学生だからな。8歳差くらいか?」
とはいえ、上下関係で言えば謡の方が上という特殊な関係だ。小学生に頭が上がらないって情けないなおい。
【UI> そのくらいですね。しかし、このくらいの年齢差ならそんなに違和感ないと思うのです】
「大人ならともかくな……。フーコと謡なら微笑ましく見えるのだが……比企谷さんだと、どうも」
「なんだ、俺が犯罪しているとでも?」
「そこまで言わないさ」
【UI> そうなのです。もし八幡さんが捕まろうとしても私がちゃんと無罪と弁護するのです】
謡さんや? その前提止めてくれる? あと急に腕に抱き着くも止めて? 余計にアウトな絵面になるからね?
あとなんだその満足気な表情は……。
「比企谷さん、謡のこと頼むぞ」
「いや何がだ」
「何かにつけて暴走……しないように?」
随分曖昧な忠告だ。言わんとすることは分かるが。
と、黒チビもベンチに座りつつ話を続ける。
「そういえば比企谷さんは高3なのだろう? 前から気になっていたのだが、どうしてブレイン・バーストをインストールできたのだ? 前は詳しく教えてくれなかったが、あれから少々気になってな」
「あ、それ実は僕も気になります! たしか16か17歳くらいまでしかインストールできませんよね。師匠の年齢がそのくらいですし」
【UI> 八幡さんがプレイできるのって、たしか八幡さんの親の仕事関係でしたっけ?】
三者三様質問される。
この3人が疑問に思うのも理解できる。
ブレイン・バーストというゲームをインストールするには条件が2つある。それは生まれてからずっとニューロリンカーを付けていること。それと大脳的な
適性がある――――ざっくり言うと反応速度が高いかというかなり曖昧な条件だ。
後者については判断が付きにくく、インストールするにしては賭けに近い要素だ。しかし、今回話題に上がっているのは前者だ。
ニューロリンカーが発売されてから約16年。つまり、インストールできる人間の最高年齢は16歳……よくて17歳だ。対する俺は高3で……まだ1学期であり夏休みにはなっておらず、誕生日は来てないが今年で18歳。
だから、俺は本来ならインストールできないのだが。
「両親がニューロリンカーの試作段階から製作に関わっていてな。俺は当時生まれたばかりってのもあって……赤ん坊にニューロリンカーを付けて何か影響が出ないのかって実験していたらしい。インストールできたのはその影響だ。年数的には俺が世界で一番ニューロリンカーを付けているかもな。……まぁ、どちらにせよお守りの必要があったから、そのついでって感じらしかったが」
「それは……」
黒チビが目を逸らし気まずそうに言葉に詰まる。俺の出自……秘密を聞いて多少は後ろめたさが出たのかもしれない。
「言っておくが、そんな悲観的になる必要ないぞ。正直そんな記憶俺にはもうないし、別に人体に影響が出たわけじゃない。つーか、もし出ていたならまずこうしてお前らはBBをプレイできていない。あとはあれだな、この話は俺が中学生のころに親から聞いたんだが、当時はぶっちゃけテンション上がったな」
逆に赤ん坊からニューロリンカーを付けていたと知っていたから、謡がインストールの話を申し付けられたときに可能かもしれないと受け入れることができたわけだ。
【UI> そんなこと言っていましたね……】
「だって今や誰もが付けているニューロリンカーの試作品に触れていたってことだぜ。俺も制作段階にある意味で関わっているってなんか嬉しくないか?」
「その気持ちスゴく分かります」
ウンウンと頷く有田君。
さすが男の子同士。分かっているなぁ。試作品、プロトタイプという言葉は男の子なら誰もが喜ぶというものだ。
この話を倉崎にしたら微妙な表情をされたが。この感情はあまり理解されなかったらしい。
「比企谷さんがそれで良いなら私は何も言わないが」
【UI> 別に八幡さんはそのことに対してネガティブな感情は持っていないのです。これ以上突っ込むのは】
「野暮というものか」
「なんなら当時何をしていたのかめっちゃ詳しく聞いたまである。親が何言っているかチンプンカンプンだったけど」
もう少し子どもの俺にも分かりやすい説明をしてほしかった。ガチガチの専門用語使われても困る。インターフェースやらOSの説明やらされても分からないから。
「そういうものか」
「こうして楽しめているから結果オーライだ。そうでもなきゃ、俺らがこうして中学校のベンチで談笑なんて実現しなかったしな」
「……ふふっ、それはそうだな」
そう黒チビは優雅に微笑む。
「比企谷さんと戦うのは毎回楽しかったから、なるほど。結果オーライという言葉はいいものだな。どうだ? 久しぶりにやるか?」
「悪いが、俺はもう疲れた。つーか、久しぶりって……前に謡と倉崎とタッグで戦ったろ」
「タイマンでとことんという意味だ。ま、断られたのなら仕方ない」
笑っている表情を浮かべているのを見ると、黒チビもかなり整った顔付きだと再認識する。雪ノ下とどこか分類が似ている美人さだ。笑顔は画になる。
向こうでは何度もお互い競争相手として争い合っていた。それこそ互いに憎み合っていたこともあった。けれど、リアルで会って話して、友好な関係を結べたのなら、あの戦い合った日々もムダではない。
そんなことを穏やかな暖かい風と共に考える。
と、同時に俺と黒チビはベンチから立つ。
「そろそろ休憩も終わりだ。私は生徒会に戻るとするよ。文化祭の片付けもまだまだ終わっていないしな」
「俺もそろそろお暇するわ」
「比企谷さんと会えて良かったよ。少しだけしか話していないがな」
「お互いさまだ。まさかお前とリアルで話すときが来るとは思ってもみなかったけど、悪くなかったな」
その流れで謡と有田君も立ち上がる。
「じゃあ、俺はこれで。有田君もありがとな。また機会があればホウのことでも見に行くよ。そのときはよろしく」
「はい、きっとホウも待ってますよ」
【UI> 有田さん、さっちん。私も帰るのです。ではまた】
「四埜宮さんも気を付けて」
「謡、またな。昨日はお疲れ様」
有田君たちは校舎へ。俺たちは校門へ。
それぞれ別れる。
「……」
学校関係以外で知り合いがこんなに増えるとは去年の俺からすれば恐らく予想すらしなかっただろう。それもある意味敵対していた人たちと。
人生、何があるか分かったもんじゃないな。
「謡、そろそろ家に帰る?」
【UI> そうですね、その前にもう少し歩きませんか】
「どこ行くんだ?」
【UI> 特に決めてないのです。それこそ、気ままに、のんびり適当に歩きましょう】
「まぁ、それもいいな」
たまには目的もなく、行き着くままに歩くのも悪くない――――そんなことを柄にもなく思うある晴れた暑い日のことだった。
久しぶりにまたさらりと投稿するスタイル