この加速する世界で   作:NowHunt

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なんか、めっちゃ長くなった。ぶっちゃけ流し読みでも問題ないなと書いてて思った。もうちょい短くできなかったかなぁ。でも、分けたら分けたで中途半端だし……


加速研究会、ISSキット、そして、王

 この朽ちたコンクリートや錆びた鉄骨のあるステージは風化だな。

 レイカーにリアル割られた時と同じだ。個人的には戦いやすいステージ。

 

 俺はロータス……黒ちびとレイカーの観戦者としてある中学校にいる。名前は分からないし、場所も分からない。特に見覚えはない。

 

 それもそうか。俺は引っ越す前は練馬に住んでいた。杉並はそこまで詳しくない。

 

 辺りを見渡しても、誰もいない。謡ことアーダー・メイデンもいない。俺は校庭の端にいる。

 

 どこ行きゃええねん………。

 

 関西弁なのはご愛敬。

 

 謡と一緒にいたはずなのに。観戦者は基本リアルと同じ場所に転送されるが、俺も初めての遠隔コードでの観戦だ。バラバラに飛ばされるのか。

 

 とりあえず校舎を目指すとするか。

 

 軽く走って校舎の入り口に着く。

 

「あっ」

 

 そこにはレイカーとメイデンがいた。

 

「皇帝ちゃん、もう皆集まってるわよ」

 

「行くのです」

 

「だったら、最初に集まる場所教えろよ」

 

 今、自然にメイデン……謡が喋った。

 ニューロリンカーの思考発声や他のVRゲームでも話すことはできないが、何故かこのゲームでは自分の声で話すことができる。謡がこのゲームをやる理由は自分が話せるからという理由も含まれている。

 

 

 

 

 

 寂れた廊下を歩き、階段を登り、どこか分からない部屋の扉をレイカーが開ける。

 

「レイカーとメイデン、ご苦労。久しいな、エンペラーよ」

 

 くっそ偉そうな口調で俺を出迎えるのはメイデンが所属しているレギオン、ネガ・ネビュラスのリーダーであるブラック・ロータス。『黒の王』と呼ばれている。

 

「うぇ!?先輩!こ、この人は誰ですか?」

 

「あ、メイデン。この銀色の細いのが鴉か?」

 

 一応、謡ではなく、メイデン呼び。

 

「そうなのです」

 

 ほー、こいつが噂の飛行アバターか。しかもレイカーより長い時間飛べるらしい。それに加えて黒ちびの子とレイカーの弟子。スペック高すぎない?

 

 いつかは手合わせしてみたいな、シルバー・クロウ。

 

 銀か…………。メタルチャートではどこに属していたっけな?

 

「マスター、僕にも説明をお願いします。この人は第一期のネガ・ネビュラスのメンバーなんですか?」

 

「おいこら、俺はレギオンに入ったことはないぞ」 

 

 メイデンの情報を纏めると、博士ことシアン・パイルがこの青いデカブツだな。確かに綺麗な青色だ。ナイト並に綺麗な色だ。

 

「はいはーい、私にも教えてくださ!」

 

 騒ぐのは緑のF型アバター。あれはヒーラーだったはず。多分こいつがネガビュで一番チートだな。

 

 いくら攻撃が強かろうとHPが無くなれば、戦えない。しかし、ライム・ベルがいると、永遠とまではいかないが、長時間戦えることになる。だから、ヒーラーは回復手段の乏しいこのゲームでは重宝される。

 

 こう見ると……うへぇ、かなりの粒ぞろいだな、ネガビュは。

 

「ええい!話が進まん!エンペラーよ、自己紹介しろ」

 

 黒ちびに剣を……腕を?向けられる。俺の方が年上だぞ。敬え!

 

「では、私からするのです」

 

 そこで割って入るのは親のメイデン。

 

「この方はダークネス・エンペラー。レベルは7。今回は、加速研究会、ISSキットについて第三者の意見を聞きたいとのことでお連れしました」

 

 この名前は本当に恥ずかしい。システム管理者を恨みたい。もっとマシな名前あっただろ!

 

「れ、レベル7!?そんな人が」

 

「あれが、あの皇帝?引退したと噂を聞いたが……?」

 

「メイちゃんとはどんな関係なんですかー?」

 

 と、ネガビュの新参3人衆が騒ぎ出す。

 

「メイデン、あれをもう言っていいか?」

 

「そうしないと話が進まないのです」

 

「じゃあ、そこの緑の、名前はライム・ベルだったな。お前の質問に答える。メイデンは……俺の親だ」

 

 少し間が空き、

 

 

「「「「ええええええ!!!!」」」」

 

 

 黒ちびと3人衆の声が重なる。煩い。

 

「………って、あれ?先輩は知らなかったんですか?」

 

「ああ。う……メイデンに子がいるとは初耳だ。というよりレイカー、お前は知っていたのか?」

 

「えぇ」

 

「てことは、エンペラーさんとレイカーさんと何かしら接点があるんですか?」

 

「そうよ、パイル。この前偶然リアルでばったりと会ったのよ。その時に聞いたのよ」

 

「まさかのリアル!?レイカー姉さんスゴーい」

 

 一言でいうならば、カオス。それに尽きる。

 

 俺とメイデンは下がりながら様子を見ている。

 

「……悪いな」

 

「気にしません。いずれこうなっていたのですから。その代わり、今日は夕方まで一緒にいましょうね?」

 

「……おう」

 

 

 黒ちびに近づき、小声で

 

「ちなみに、俺がなるべく言わないでくれって頼んだだけだからな。あいつを責めないでくれよ」

 

「う、うーむ。それは分かった。……そうか、だからリアルでレイカーが何か企んでいそうな笑顔をしていたわけだ」

 

「つーか、本題に入らなくていいのかよ。5分経ったぞ」

 

「そうだな。それより、新しい3人の名前分かるのか?」

 

「メイデンから聞いてる」

 

「なら始めよう。おい、クロウたち静かに!質問なら後で余り次第直接してくれ」

 

 黒ちびの一言で見事に静かになり、各々適当な場所に座る。隣にはメイデンがいる。

 

 さらっと面倒なこと言われた……。

 

「では、エンペラー。お前はどのくらい加速研究会とISSキットについて知っている?」

 

「加速研究会はお前らがあった被害ぐらい。ISSキットは心意を簡単に使えるってことと寄生能力があるってこと」

 

「うむ。それで、思い付いたことや何か疑問点はあるか?」

 

「ISSキットの寄生能力を詳しく教えてくれ」

 

 心意を簡単に使えるってのも気になるけど、まずはコレだな。

 

「宿主があるコマンドを言うと、相手に寄生する。もしくは、無理矢理相手のアバターに植え込む、くらいですかね」

 

 と、レイカー。

 

「それだと宿主のキットは消えるのか?」

 

「いえ、あれはコピーなので消えません。宿主に残ったままです」

 

 パイルが言う。

 

 それは引っ掛かるな。………コピーだと?

 

「そのコピーと元の能力差はどのくらいある?」

 

 レイカーが挙手し、 

 

「ほとんど同じです。近距離と遠距離の心意技を使います。当然、心意なので熟練度の差はありますけど」

 

 それはスゴいな。寄生するにしろ、無くなるか、どこかしら能力は低くなるもんだ。

 

「……なるほど。なら、レイカーか黒ちびは、今まで存在した寄生オブジェクトで、ここまでのコピーを持ったのを見たことがあるか?」

 

「ないですね。皇帝ちゃんが言った通りそこはずっと気になるんですよね」

 

 その呼び方はどうにかしてほしい。

 

「黒ちびと呼ぶな!……だが、そうだな。私もここまで完璧にコピーする寄生アイテムは初めてだ」

 

 古参の2人が言うならそうだろうな。

 

「質問いいですかー?」

 

「どうした?ベルよ」

 

「私そんなにその寄生オブジェクトのこと知らないんですけど、コピーって珍しいんですか?」

 

 チラッとレイカーが俺に視線を送る。俺が教えるのか。

 

「そうだな。お前らで身近だった災禍の鎧で例えると、初代の災禍の鎧とシルバー・クロウが使った災禍の鎧では能力や性能が違うだろ?」

 

 俺はクロウを見る。

 

「は、はい。あれには今まで戦った膨大なデータがありました。それを使えばほとんどの攻撃やアビリティ、必殺技、それと心意にも対応することができました」

 

 改めて、災禍の鎧のヤバさを感じる。

 

「それに加えて、災禍の鎧に呪われた人たちのアビリティや必殺技を使えました」

 

「なるほど。だから、これほど均一化したISSキットは異質ということですか?エンペラーさん」

 

 パイルが簡単に纏める。

 

「そういうことだな」

 

「でしたら、皇帝ちゃんはISSキットのコピーについての考察はあるのかしら?」

 

「私も聞きたいのです」

 

 レイカーとメイデンが聞いてくる。

 

「まぁ、穴が多い仮説になると思うから信用はあまりするなよ。………そうだな、いくらコピーといっても、システム的にはアイテムを別の奴に譲渡しているってことになる。かなりの数が必要だ」

 

「ふむ。エンペラーよ、つまり?」 

 

「ISSキットをどう造ったのかは分からないが、造った奴にアイテムを完璧にコピーできるアビリティがあるんじゃねーの?……ってのが、俺の仮説だ。例えば加速研究会がそういうアビリティ持ってる奴をずっと隠しているとか。ISSキットの大元があればできるだろ」

 

「そ、それチート過ぎないですか!?」 

 

 クロウが叫ぶ。

 

 ゴメン、俺もそう思うわ。そんなアビリティがあれば、神器でも量産できるかもしれないからな。制限はあるかもだけど。

 

 でもな、

 

「………そんな奴がいたんだよ。昔に」

 

 懐かしい。何回も戦った。勝って、負けてを繰り返した。とても、とても強かったな。

 

 そのアビリティはコピーではない。だが、同じ威力、同じ射程、同じ性能の武器を造ることができる。コピーといっても遜色が無いほどに。

 

「そ、それは誰ですか?」

 

 パイルが尋ねる。

 

 チラッと黒ちびを見ると、少し震えている。俺が誰のことを言ったのか理解している様子だ。

 

「先代赤の王、レッド・ライダー」

 

 そして、俺は、ゆっくりとその名を口にする。

 

 ――瞬間、空気が冷えるのを感じた。

 

 それもそうだ。先代赤の王をこの世界から退場させた奴がここにいる。

 

 ………なあ、ブラック・ロータス?

 

 俺はそれに関して恨んでない。もう引っ越してたからな。話を聞いた時は衝撃だったが。

 上を目指す以上、争いは避けられない。お前のその逃げない姿勢には敬意を表する。

 

 例え、それが仕組まれていたとしても……………。

 

 

「新顔3人は知らないだろうから説明しておくと、レッド・ライダーのアビリティは武器創造。ざっくり説明すると、赤の王のお手製武器を自由に何個も造れるアビリティだ」

 

 黒ちびを気にしつつも、クロウたちは驚く。

 

「まぁ、武器創造について詳しくはレイカーたちに聞いてくれ」

 

「では、赤の王のアビリティが関係しているとお考えになるのですか?」

 

 メイデンが俺を見て疑問を投げかける。

 

「もちろん、最有力候補は加速研究会がコピー系のアビリティを持つ奴を隠している説だ。………ただ、この可能性もある………あ、ある?………えっ、あると思う?」

 

「自分で言っておいてそれは何ですか!!」

 

 俺の親、可愛い。

 

「なら、皇帝ちゃんはどのくらいの割合で赤の王が関わっている可能性があると思うの?」

 

「1%あったら良い方」

 

 俺は即答する。

 

「あなたが言ってるわりには随分少ないのね」

 

「だってこの世界から退場した奴なんて見たことないし。前例がないから強く言えない。何せ、記憶も消えるからな」

 

「あら、それは知っていたのね」

 

「大分前にPKに襲われたことがあったからなー」

 

 その時はサドンデスカードを使って無制限フィールドで戦った。普通に勝った。弱かった。

 

「…………それ、初耳なのです。どうして教えてくれなかったのですか?私、あなたの親ですよ?そんな事あったら教えるのがあなたの義務ですよ?どうしてなのですか?」

 

 俺の親、怖い。声がいつもより低いよ?大丈夫?

 

「と、特に問題なかったからな」

 

 変な汗掻きそう。

 

「…………次はないですよ。そういう隠し事をしてたら許さないのです」

 

 心配してくれるのはありがたいが、メイデンの圧が……その………怖い。他の面子も若干引いてるぞ。

 

 まだ色々と隠し事あるんだが。その内の1つは今のネガビュに言うべきじゃないから黙っているけど。

 

「意見、いいですか?」

 

 と、俺の思考を遮るように、挙手するのは、

 

「パイル、どうしたの?」

 

 クロウの言った通り、シアン・パイルだ。

 

「先程エンペラーさんが言った赤の王が関わっている仮説は、僕個人の見解としてはアリだと思います」

 

 お、マジで?

 

「説明、お願いできるかしら?」

 

 レイカーも意外そうだ。予想外からの一言だもんな。

 

「はい」

 

 パイルはゆっくり深呼吸をしている。そして、切り出す。

 

「僕はISSキットを使ったことがあります」

 

「らしいな」

 

 予め謡から聞いてある。

 

「それと、これは僕の経験ではありません。クロウとベルの話です」

 

「私なの?」「えっ?」

 

 クロウとベルは同時に驚きの声をあげる。

 

「僕がISSキットに呑まれそうになった時、2人が助けてくれました。睡眠時に直結するという不思議な方法でしたが」

 

 ……そんな方法か。びっくりするわ。

 

「その時、夢の中ですが、クロウとベルはブレイン・バーストの中央管理システムという場所に行ったそうです」

 

 ブレイン・バーストをインストールした奴はその日に過去のトラウマ等の夢を見る。それを基にして、アバターが生成される。

 このゲームは現実に干渉する。だから夢の中ってのは理解できる。しかし、聞き慣れない名称があるな。

 

「中央管理システム?」

 

「はい。名前の通り、ブレイン・バーストの全ての情報がそこにはあるのでしょう」

 

 まあ、どのゲームでもメインのサーバーはあるからな。おかしくはない。夢でそれを見れるのはおかしい気がするけど。

 

「も、ももも、もしかして、た……パイルはフランと会った時のことを?」

 

 フラン?誰だそれ。そんなのいたっけ……?

 

 俺が記憶を探っていると、ベルもハッとした表情になる。アカン、話が見えない。

 

「そこで、クロウとベルは昔、ブレイン・バーストから退場したバースト・リンカーと会話しました」

 

 パイルに続き、ベルが、

 

「名前はサフラン・ブロッサムです」

 

「………は?」

 

 急な展開に頭が付いていけない。間を置き、思考を正常にする。

 

 その名前は知っている。

 直接会ったことはない。俺が始めた頃にはいなかった。

 

 でも、ナイトとかの古参に教えてもらった。『バースト・ポイントの貸し借りのできるレギオンを結成して、このゲームから退場する者を無くそうとした』と。話があまりにも大きすぎる。誰もが無茶だと思っただろう。

 ナイトに『それほどの構想を実現できる力はその人にあったのか』とも聞いたことがある。そしたらあいつは何て答えたっけ………。

 

「続きをお願いするのです」

 

 メイデンの言葉で意識は戻る。

 

「その出来事を聞いて考えました。本当に、ブレイン・バーストから退場したプレイヤーは記憶を失ったのか?……と」

 

「つ、つまり?」

 

 クロウの言葉にパイルはこう結論付ける。

 

「記憶を失ったわけではなく、システムに奪われた。中央管理システムの中にブレイン・バーストにまつわる記憶が保存されているのでは?……だから、クロウとベルはサフラン・ブロッサムと会話ができた。そして、今、僕はそれを引き出せる人がブレイン・バーストにいると予想しました」

 

「…………………」

 

 その話に誰も言葉が出ない。

 

 長い沈黙が続く。

 

「なぁ、レイカー」

 

 その中で俺は尋ねる。

 

「何かしら?」

 

「この考え、お前はどうだ?」

 

「3割アリね」

 

「同じく」

 

 壮大だが、話の筋は通っている。十分にその可能性がある。説得力はかなりある。

 

 全損した奴を蘇生できるのかは不明だが。

 

「じゃ、じゃあ、加速研究会はそこにあるかもしれない赤の王の記憶を使っているって?……でも、それだとアビリティを使える説明は付かないと思うよ」

 

 クロウが捲し立てる。

 

「忘れたかい?クロウも過去のアビリティや必殺技を自分の体で使ったことがあるだろ?どんなシステムで、どういう理屈でかは説明できないけど、災禍の鎧という実例がある。可能と考えるべきだ」

 

「あっ、そっか」

 

 災禍の鎧ヤベーイ。

 

「俺はないけど、ネガビュは、そのサフラン・ブロッサム以外のいなくなったプレイヤーを見たことはあるか?」

 

 俺の一言で、全員が首を横に振る……………が、さっきから黙っている黒ちびだけがやけに反応が遅かった。

 

 何か隠しているのか?俺はともかく、ネガビュにも言えないことを。……もしかして、見たことあるのか?後でレイカーにチクっておこう。 

 

「もし、赤の王を使っているなら、加速研究会のリーダーは誰か分かるな」

 

 ポツリとそれだけ口から漏れる。

 

「ほ、本当ですか?」

 

 クロウは恐る恐る尋ねてくる。ベルも似たような感じだ。

 

「蘇生させたバースト・リンカーを命令できる前提ならの話だがな」

 

 一呼吸置き、続ける。

 

「加速研究会のリーダーは何年も前から武器創造を自分の計画――ISSキットに使おうとした。でも、赤の王は誰よりも真っ直ぐな奴だった。ごり押しって言葉が個人的には似合うな。そんな赤の王が加速研究会に従うわけがない。多分……そこら辺り見つけたんだろうな」

 

「それが退場したプレイヤーの蘇生方法ですか?」

 

 メイデンの言葉に頷く。

 

「そいつは決して表舞台には現れない。何故なら、それだと目立ってしまう。今まで影に隠れながら計画を進めてきた。それでは駄目だ。全部無駄にしてしまう」

 

「ならどうするか?簡単だ。赤の王を誰かに始末させればいい。都合のいいことにレベル9同士の戦いはたった1回の勝敗でポイント全損することができる」

 

「そして、そいつはブラック・ロータスを使った」

 

 恐らく新顔3人はその話を知らないのだろう。何が何だか分からない雰囲気だ。黒ちびが自分の意思で赤の王を殺したと思っているのだろう。だが、それは違う。

 

 俺も謡から聞いただけだが…………。

 

「こ、皇帝ちゃんはロータスが赤の王を殺すように唆した人物が加速研究会党首と言いたいの………?」

 

 レイカーの声が珍しく震えている。

 

「まあな。あ、ちなみに、加速研究会がコピーアビリティを隠している場合は違うと思う………いや、それでもあいつならあり得るな」 

 

 つーかあれだな。ここまでの結論、仮定多すぎだろ。証拠がなさすぎる。こんなんじゃ、ネガビュからしたら確証は全く持てないな。

 

「えーっと、もしかしたらそういう可能性もあるかもー、ってことを頭に入れてくれたらいいから。こんな仮説を鵜呑みにする方がいざという時危ないからなー…………」

 

 最後にこれだけ付け加えておく。

 

「いや、参考になった。感謝する、エンペラー」

 

 ようやく黒ちびが喋った。判断が覚束ない、とても小さい声で。

 

 

 

 

 で、残り時間は大体5分か。けっこう余ったな。

 

「じゃ、レイカー。引き分けにでもして帰らせてくれ」

 

「その前に鴉さんたち、質問はあるかしら?」

 

 チッ!覚えてたか。抜かりがないな。

 

「はい!どのくらいエンペラーさんは強いんですか?」

 

 と、ベル。

 

「一応レベル7だしそのくらいだ。それと同レベルの時期なら黒ち……ロータスより勝率はいいぞ」

 

 俺の武器と必殺技は相性それなりに良かったからな。まぁ、あいつがレベル差ついた辺りから負けが多くなった。

 

「ロータス先輩、それって本当ですか?」

 

「腹立たしいことにな」

 

 すっかり本調子とまではいかないが、黒ちびは心の整理をつけたようだな。

 

「それより、貴様はいつメイデンと知り合ったんだ?」

 

「黒ちびよ。リアルのことを聞くのはマナー違反だぞ。あれだ、ちょっとした縁だ」

 

「だからそれで呼ぶなと。……ま、それはすまない。少し気になってな。メイデンのリアルと知り合うほど年齢が近いわけでもあるまい」

 

「確かにけっこう離れてるけど」

 

 えーっと、小4って……9歳?10歳?で、俺が17でもうすぐ18か。うっわ、マジかよ、倍近く差があるな。ちょっとショック。

 

「私が車に轢かれそうになった時に身を挺して助けてくれたのです」

 

「おい!」

 

 思わずメイデンに突っ込みを入れる。せっかく黙ってたのにさらっと言うなよ。

 

「ほう。このご時世に車の事故か。珍しいな」

 

「そいつ趣味で旧世代のAIを搭載してない車を使ってたんだとよ。その運転手が救急車呼んでくれたわ。めちゃくちゃ俺らに謝ってた。その後普通に警察に捕まってたな」

 

 ホント、根は良い人だろうに、なんであんな旧型乗っちゃうかな。そういうのは私有地で乗りなさい!

 

 次にクロウが意気揚々と、

 

「もし良ければ、ネガ・ネビュラスに入りませんか?」

 

「俺はレギオンに入るつもりはない。つーか、お前がそれを言うの?勧誘って普通はレギマスの役目じゃない?………俺、東京に住んでないし、あまりレギオンの恩恵受けないからメリットない」

 

 それと下手に入って断罪されたくない。

 

「このままでは男女比が………その……………」

 

 今度は申し訳なさそうに言うパイルを横目にネガビュのメンバーを見渡す。

 

 スカイ・レイカー。現役女子高生。美人のドS。

 アーダー・メイデン。可愛い女子小学生。

 ブラック・ロータス。女子中学生。生意気。

 ライム・ベル。恐らく女子中学生。活発?

 シルバー・クロウ。恐らく男子中学生。よく挙動不審になる。

 シアン・パイル。恐らく男子中学生。賢そう。

 

 

 そこにまだネガビュの前には見せててないが、全身水の奴(女子)もいる。

 それと鉛筆(男)は……あいつレギオン移籍してたよな。引っ越す直前に言われた。内緒にしとけという条件で最後に手合わせした。あいつの強さチート。直接斬り合って1分保てた俺を誉めていいと思う。最短2秒。

 

 こうして見ると確かにネガビュは女子多い。昔はそうでもなかったな。

 

 クロウの肩をポンと叩く。 

 

「頑張れ」

 

 で、俺は投げやり。そんなの知りませーん。

 

 

 

 そんな感じに駄弁っていると、もう残り時間は1分切る。

 

「今回は我々の話に参加してくれて、改めて礼を言う。ありがとう」

 

 黒ちびから丁寧に挨拶を受ける。

 

「おう」

 

 そして、俺は少し気の抜けた声で、

 

「あまり色々と考えすぎるなよ。考えるのは良いことだが、それに囚われすぎると、正しい判断ができなくなる」

 

「いや…………。私も薄々感じていた。もしかしたらあいつが加速研究会に関わっているかもしれないと。今日でまたそれは一段と近づいた」

 

「そうか」

 

 短く返す。

 

「それでは、皇帝ちゃん。またの機会に」

 

 レイカーの不穏な台詞。

 

「そんな機会もう来ないだろうな」

 

「それはどうでしょう」

 

 ウフフと笑うレイカーが怖すぎる。もうリアルで会う必要なんてないぞ。俺が会いたくない。だって何されるか分からねーもん。

 

 と、ここで時間切れ。中々濃い30分だった。

 

 

 

 

 

【UI> お疲れ様でした】

 

 現実世界に戻ってきて真っ先に目に写ったのはこの文字列。

 

 それを打った謡の表情はどうも穏やかじゃない。

 

「久しぶりにあいつらと話できて楽しかったよ」

 

 これは紛れもない本心。昔に戻れたみたいで懐かしかった。

 

【UI> それで八幡さん。加速研究会のリーダーは第一期ネガ・ネビュラスを解散に追い込んだ人なんですか?】

 

 ………やっぱり悩んでるのはそこか。

 

「俺は実際この目で加速研究会の奴らを見たことはない。俺が知ってるのは謡から聞いた話とさっきネガビュと会話した分。立証できる物は何もないけど、第三者からしたらそう思っただけだ」

 

 加速研究会が今までしてきた事は規模が違う。大きすぎる。それが出来るのはバースト・リンカーの中でも、最も得体が知れなく、一番強いあいつだと…………。

 

 1度だけあいつと話したことがある。まるで、不思議な魔力で自然と向こうに心を許してしまいそうな感覚に陥った。

 雪ノ下さんと話した時も似たような感覚がしたけど、あれはそれ以上に危険だ。毒、それも猛毒。あいつの言葉は人の心を蝕む。直情タイプの黒ちびが典型例だ。

 

 だから、加速研究会のやり口があいつと同じだと感じる。……っていう俺の下らない勘だ。

 

「そういや、黒ちび何か隠していたよな」

 

 ふと、さっきのことを思い出した。

 

【UI> 私もそう思いました。八幡さんの問いかけに対してかなり反応が遅れていたのです】

 

「絶対とまではいかないけど、全損した奴を見たことはありそうだったよな」

 

【UI> 恐らくそうでしょう。もしくは、それに近い経験をしたとか】

 

「だろうな。俺から言うつもりだったが、謡も分かってるなら、レイカーにもその事伝えといてくれ」

 

【UI> 了解なのです】

 

 それだけ謡は文字を打つと、頭を下げて、

 

【UI> 私自身も今日のことをよく考えておきます。ありがとうございました】

 

「………どういたしまして」

 

【UI> 30分ほどしたら、岡本さんが帰ってくるので、一緒にお昼ご飯にしましょう】

 

 そう年相応の笑顔で微笑んだ。

 

 

 その後は岡本さんと謡が料理した昼飯を食べた。俺も何か手伝おうとしたが、客人ということできっぱりと断られた。あ、昼飯は美味しかったぞ。

 

 で、昼飯を食ったら、謡の部屋で俺は受験勉強。英語の長文をじっくりと読む精読を重点的にやった。きちんと品詞分解をして、文の構造を理解することに努めた。じっくりと時間をかけて1つの難関長文を解いて、単語や文法の見直し。

 たまに謡の勉強で分からない範囲があれば教えた。算数ならまだ俺だってできるから!………といっても俺の親は成績面は優秀なんだけどな。

 

 最後に1時間くらいは互いに学校であったことや世間話をした。

 

 いつもはメールだけど、直接面と向かって話すと言葉以外にも伝わる情報が多い気がする。

 何が言いたいかと言うと、笑顔で色々語る謡が超可愛い。

 

 もう俺、ロリコンでいいかなって思ってきた。いやいや、まだセーフ…………。

 

 また適当に遊びに行くと約束をして、家に帰る。その途中に本屋で紙の参考書買ったり、小町に土産買ったりと寄り道しながら帰った。

 

 帰ったら帰ったで小町に質問攻め。正直に謡の家に行ったと言うと、

 

「小町も行きたかったー!謡ちゃんをナデナデしたい!」

 

 と騒ぐわ騒ぐわ。ものすごい喧しい。

 

 小町はブレイン・バーストをしてないけど、俺の事故の関係で知り合った。で、謡がとっても大好き。まるで自分の妹みたいに可愛がっている。そこはレイカーと似ているような………いや、小町はあんなにドSじゃない!

 

 

 翌日の放課後、奉仕部は依頼がない時は勉強会。

 

 俺も分からない所があったら雪ノ下に質問している。たまに平塚先生にも。奉仕部では基本雪ノ下は由比ヶ浜に付きっきりで勉強を見ている。

 

 雪ノ下の解説はとても分かりやすい。語彙力が豊富ってのが良いよな。色々な言葉で説明してくれる。ただ、ちょくちょく毒舌挟んでくるけど。

 

 あ、そうそう。由比ヶ浜は普通に俺の連絡先をレイカーに教えたことを忘れてたな。個人情報だからしっかりしてくれ………。まぁ、由比ヶ浜はちゃんと謝ってくれてたし、許しはした。頼むから気を付けてくれよ。

 

 

 奉仕部も終わり、夜の7時頃。

 

 今日は予備校はない。部屋にいる俺は参考書をベッドで寝転びながら読んでいる。が、ダラダラ読んでるだけであんまり頭に入ってこないけどな。あれだな、腹へった。

 

 ピコン!

 

「………お?」

 

 と、ここで俺の捨てアカ用のメアドに連絡が入る。このメアドを知っている奴は1人だけしかいない。

 

 そのメールにはこう綴られていた。

 

 

 

 

『20時きっかりにいつもの場所で待ってるの』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次か次辺りで戦闘シーン書きたいな。
可笑しな点、不明な点があったら教えてください。自分のできるかぎり分かりやすく書いたけど、原作読んでないとキツいかなー……
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