この加速する世界で   作:NowHunt

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最近、このシリーズしか書いてない気がする……




情報屋

「よう、久しぶりだな」

 

 今のステージは大雨。そのせいで目の前のこいつがスゴい見えにくい。光る目がなければ絶対見えない。

 

 

 こいつは『アクア・カレント』。第一期ネガ・ネビュラスの幹部だったメンバー。俺と同じレベル7だったが、今はある事情でレベルは1。でも、強い。だって今のこいつはレベル詐欺だもん。こんなレベル1がいてたまるか。

 

 

 ここはリアルで千葉駅のホームに位置している。

 

 カレントにいきなり呼ばれた。晩飯食ってから小町にちょーっと嘘ついて、千葉駅エリアのギリギリまで来ている。

 

「つーかよ、さっさとレベル4に上げて、無制限フィールドで話そうぜ。リアルで家からここまで移動するの面倒」

 

「私は気にしないの」

 

「俺が気にするんだよ。って、お前は今ここにいるんだよな?」

 

 聞いているのはリアルの位置。

 

「ええ。母親と一緒にいるの」

 

「もう8時だぞ。子供は帰って寝なさい」

 

「ちょびっと年上だからって調子に乗らないの。車の中だからすぐに帰れる。それにどうせリアルでは2秒」

 

「あっそうですか。……そうそう、今日ネガビュの連中と会ったぞ」

 

 愛するネガビュのことだからカレントは驚くかなーと思ったけど、ダメだ、表情がまるで読めない。逆に表情の読めるアバターが少ない。

 

「そう…………」

 

 少し間が開き、

 

「メイデンに誘われたの?」

 

 あ、そういえば、カレントにはあっさり親が謡って見抜かれてたな。さすが情報屋。

 

 黙ってもらう代わりにこうしてメアド交換してたまに情報のやり取りをしている。

 

「加えてレイカーにリアル割られた」

 

「ご愁傷さまなの」

 

 仲間に向かってその言い種って………。

 

「それで、今日はいきなり何の用だ?いつもならメールだろ」

 

「直接話したかったの。データに残るのも不味いと思った。ギャラリーは………」

 

「ここは過疎地域だからな。いないいない。確認もした」

 

 メインメニューからギャラリーがいるかどうかは確認できる。

 

「そう。本題に入るの。あなたは引っ越ししてから東京で戦ったことある?」

 

「あー………ないな。たまにここら近辺でエネミー狩るだけだ」

 

「それなら都合がいいの。あなたと戦ってほしいバーストリンカーがいる」

 

 これまた意外な内容。

 

「どんな奴?……あ、王とか嫌だぞ」

 

 あんなスペシャリストと戦うのはただただ疲れるだけだ。骨が折れる。

 

 しかし、カレントは全く違う名前を言う。

 

「ウルフラム・サーベラス」

 

 ………うん?

 

「聞いたことないな。レベルは7?それとも8か?」

 

「1」

 

「……………は?」

 

「レベル1なの」

 

 な、何故ニュービーを狩らないといけない。一応俺だってハイランカーだぞ?あれか、馬鹿にされているのか?

 

 と、とにかく情報を。

 

「ウルフラムって何色だ、灰色とか?」

 

 カレントは首?を振る。

 

「メタルカラー。日本ではダングステンと知られているの」

 

「あー、それならこの前習った。確か、かなり硬い金属だったな」

 

 カレントはコクりと頷き、

 

「ダングステンは一番硬い金属とされている。サーベラスはその硬さを活かしてレベル5にも勝ったことがある。それも体力をほとんど減らさずに」

 

「えっ!?それはスゴいな………」

 

 俺がレベル1の時は精々レベル3にしか勝ってない。おまけに体力は2割切ってた。それより、よく格上と戦おうとするよな。多少なりと気が引けるだろう。

 

「一番厄介なのはアビリティなの。物理無効アビリティ」

 

 なんか、嫌な予感がするアビリティだな。

 

「…………つまり?」

 

「殴る蹴る、斬るという物理攻撃をしても体力は減らない」

 

「何それチート?」

 

 最近の奴らチート並のアビリティ多くね?飛行とか回復とか。前には強奪とかもあったらしいな。

 

 そういうアビリティは発動している間はゲージは減るだろうが、それでもチートだ。ついでにかなり硬いメタルか。

 

「でも、あなたなら大丈夫なの」

 

「………まあ、そうだな」

 

 物理攻撃が効かないならそれ以外の部分で勝負すればいい。単純だ。問題があるとすれば、俺のその攻撃が本当に有効かどうか。

 

「で、また何で急に?確かに才能ありそうな新人だが、わざわざ戦わなくてもいいだろ」

 

「出てきたタイミングが気になるの」

 

「タイミング?」

 

「マグネシウム・ドレイクを覚えている?」

 

「ああ。あんまり戦ったことはないけど、強かったな。最後は――――」

 

「ええ。災禍の鎧に呑まれて退場した」

 

 カレントとマグネシウム・ドレイクは良いライバルだった。その声色は悲しみを帯びている。

 

「それとどんな関係がある?そうだな、共通点はメタルカラーってところか」

 

「そう」

 

「それで、サーベラスが現れたタイミングってのは?」

 

「サーベラスは災禍の鎧が無くなった直後」

 

 ふむ。えーっと、ということは………?

 

「カレントが言いたいのは、そのサーベラスは災禍の鎧と関係があるってことか?………てことは、サーベラスは加速研究会と繋がりがある?」

 

「私はそう考える。けど、それはまだ分からない。だからあなたに確かめてほしいの」

 

「いいけど、俺、直接その加速研究会と関わったことないぞ?分かるかな」

 

「どんな印象だったか教えてくればいい。私が分析するの」

 

「レベル7がレベル1に挑むってのはどうなんだ………」

 

「あなたはしばらく戦ってない。対するサーベラスはレベル5の相手も倒している。ギャラリーも盛り上がるはず」

 

 あ、逃げ場なしですかそうですか。これ以上は言い逃れできなさそうだ。

 

 いつも謡から得た情報を補足するためにカレントから情報を買っているから強くは言えない。ここは素直に従おう。

 

「ま、分かった。明日か明後日にでも戦っておくわ」

 

「よろしくなの」

 

 

 少し移動する。

 

「で、お前はなんでそう思ったんだ?確かにメタルカラーは数が少ないけど、別にいておかしくはないだろ」

 

「心傷殻って知ってるの?」

 

「まあな。アルゴンだっけか?そいつが唱えた」

 

 

 ブレイン・バーストをインストールしている奴は幼少期から心に傷がある。大小の差はあれど。それがアバターの色や性質として具現化する。

 

 しかし、その心の傷を誰にも見せないで、自分でも分からなくて、心の奥深くに隠している奴がメタルカラーになる。みたいな仮説を建てた奴がいた。

 

 エセ関西弁を使うアルゴン・アレイだ。その仮説が心傷殻と言われている。 

 

 それ自体にあまり意味はなかった。けど、ある噂が流れた。それは《メタルカラーを持ったプレイヤーを意図的に創り出せないか?》と。

 

 そして、その直後にドレイクが現れた。

 

 最初はほとんどの奴らがその噂を気にしていたが、ドレイクのまっすぐな性格に、心傷殻とかないだろう……みたいな空気になった。

 

 だが、結局、ドレイクは災禍の鎧を纏った。真相は分からないが、それからもう心傷殻は禁句とされてきた。

 

 

「サーベラスは、ドレイクみたいに心傷殻を創らされたプレイヤーかもしれないってことか?」

 

「私はそう思うの」

 

「でも、もう鎧はネガビュが封印したんだろ?今さら心傷殻とか言われてもな」

 

「だとしたら、新しく創るのかもしれないの」

 

「………鎧をか?それは無理があるだろ」

 

 災禍の鎧に必要な物は神器級の強化外装。それと圧倒的な負の心意。最後にメタルカラーのプレイヤー。これは初代がそうだったから、メタルカラーは必要じゃね?って言われてきた。

 それが何か、こう……上手く合わされば、災禍の鎧完成!語彙力どこいった。

 

「現状では神器級の強化外装は難しいだろ。何せ持ってる奴が王だ。いくら加速研究会でもさすがにあいつらにちょっかいかけるのは厳しいと思うぞ」

 

「そうだとしても、もう1つ、負の心意は着実に溜まっているの」

 

 それは何だ………って、ネガビュとも話したあれか。

 

「ISSキット、か」

 

 カレントは無言の肯定。

 

 他の可能性を探る。

 

「だったら、加速研究会はまだ確認されてない神器を所持しているかもしれないな」

 

「もしくは神器を除いて、神器級に強い強化外装が、研究会にはある」

 

 俺の言葉にカレントはそう付け加える。

 

 そんなのあるのかねぇ。

 

 例えば、レオニーズの双子のコバマガの剣をレベル1からレベル9までずっと強化しても、神器級――ナイトの剣の強さとまではいかないだろ。

 

 可能性があるとしたら、現在の赤の王かな。戦ったことはないけど、自分だけの強化外装で王の実力があるなら、イケる……かも?

 いやいや、そもそも自分の強化外装を加速研究会とかに渡すわけないだろ。常識を考えろ。

  

「それを追々サーベラスとやらに着けさせるとかか………。もちろん、サーベラスと加速研究会に何か関係あればの話になるが」

 

「もしかしたら、ただのバーストリンカーなのかもしれない。そこをはっきりさせたいの」

 

 俺たちの仮説はざっとこんなところ。

 

 また鎧が現れるとか勘弁してほしいな。千葉で暴れるのだけは止めてくれよ。こっちは受験があるんだ。

 

 

「それで、エンペラー」

 

「何だ?」

 

「ロータスたちと何を話したの?」

 

「ISSキットについてとか」

 

「みんなはどう考えてたの?」

 

「俺の考えとネガビュの体験を合わせて、出た結論は、ISSキットには先代赤の王が関わっているかもしれない、っていうのが1つだな」

 

「どうして?」

 

「ISSキットはほとんど完全なコピーという寄生能力の中でも異質な能力がある。赤の王なら全く同じ武器をしょっちゅう造ってたから同じじゃね?みたいな感覚で」

 

 一呼吸置き、

 

「加速研究会は全損したプレイヤーを操れるかもしれない。ネガビュの新顔も過去に退場した奴と話したことあるらしいからな」

 

 カレント、長考。

 

「もう1つは?」

 

「加速研究会にアイテムをコピーできる能力を持った奴いるんじゃね?的な考え」

 

 またもやカレント、長考。

 

「私はどちらもアリだと思うの。確かにあのコピーに疑問を持っていた。それと、その全損したバーストリンカーを操れるって具体的に教えてほしいの」

 

「えーっとだな、ネガビュのシアン・パイルが言うには、全損した奴はこのゲームの記憶を失う。だけど、失ってるのではなく、奪われている。災禍の鎧も色んな奴のアビリティや必殺技を使えるし、過去に全損した奴と話せた。だから、その記憶を引き出すことができるのでは?……みたいな考え」

 

「それはなかなか興味深い考えなの」

 

 しばらくお互い黙ったままで時間が過ぎる。すると、カレントが口を開く。

 

「私でそのことについて調べてみるの」

 

「おう、頑張れ。引き分けにするぞ」

 

「分かった。またね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、お帰りー」

 

「おう」

 

 カレントとの話し合いが終わると、早足で家に帰った。

 

 一応俺はコンビニに行くと小町に言っておいた。怪しまれたら嫌だからMAXコーヒー(ペットボトル)を買った。

 

「ほれ」

 

 小町にはプリンを渡す。

 

「お、ありがとね。でも、お兄ちゃんは受験生なんだから、そのくらい小町が買うよ」

 

「いいんだよ。頭冷やすついでだ。お前も定期テストは真面目にやれよ。内申あって損はねーぞ。総武高は指定校少ないけど、けっこういい学校があるからな」

 

 ちなみに小町は見事に総武高校に合格。

 

「そ、そうだねー………」

 

「俺は数学が低かったから届かなかったけど、まだ1年だからどうとでもなるぞ」

 

「でもね、やっぱり授業難しいよ」

 

「そりゃあな」

 

 憂うつそうな表情の小町。中間テストは真ん中辺りの順位だった。現実は厳しい。

 

「あ、お兄ちゃん」

 

「どうした?」

 

「んー………。ゴメン、やっぱりいいや」

 

 小町が何か言いたそうな顔をしている。ま、緊急そうな話題でもないし、大丈夫か。

 

「そうか。じゃ、勉強に戻るわ」

 

「ファイトー」

 

 さて、寝るまでに世界史でもやるかー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の放課後。

 

 雪ノ下と由比ヶ浜には予備校と言って部活は休んだ。実際夜からあるしな。

 由比ヶ浜は潤んだ瞳でこっちを見てた。あれだな、雪ノ下と2人きりだと勉強キツすぎるんだろうな。南無三。

 

 話は変わって、カレントの情報では、サーベラスは基本は中立である中野第2エリアにいるという。

 

 電車を使って、中野まで来た。

 

 グローバル接続して、いなかったらすぐに切ってまた明日にしよう。

 

 どの辺りで加速しようかな。あまり人がいなさそうな場所は…………。

 

「……ここにすっか」

 

 あまり大きくない公園を見つけた。ブランコとベンチがあるだの公園。人は全然いない。丁度いい。

 

 ベンチに腰かける。

 

 グローバル接続をするためにニューロリンカーを操作する。

 

 接続が完了する。と、すぐに加速世界に行くためのコマンドを言う。

 

「バースト・リンク」

 

 誰がいても聞こえず、システムが認識する程度の声。

 

 世界が蒼くなる。木も、道路も、ブランコも何もかもが蒼くなる。別の色なのは俺のアバターだけだ。

 

 マッチングリストを開く。

 

「この時間帯はやっぱけっこういるな。……ウルフラム・サーベラスは………お、いた」

 

 確かにレベル1と表記されている。うーん、乱入するのは少し気が引けるな。これでもレベル7ですから。

 

 もしここで何か情報掴めたら謡にも教えれるな。もちろん負けるつもりは更々ない。勝つつもりだ。 

 

「よしっ」

 

 俺はその名前をタッチする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から戦闘に移りますー。やっとだー

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