「で、倉崎、お前何でここにいるんだよ?」
「比企谷さんのお宅にも興味があったからですよ」
「あったから……じゃねぇよ」
リアルだけじゃなく住所まで割られるんかよ。謡には近くで降ろしてもらえと言ったが、普通付いてくる? リテラシー大丈夫?
「それで、お兄ちゃん。この人誰なの?」
「あー……ネトゲの知り合い」
小町の問いには無難に誤魔化す。間違った答えではないし。
「そうなんだ。ん? その人も、ういちゃんのこと知ってるんだ」
「まぁな。ややこしくなるから具体的には言わないが」
具体的にはミサイルとオプションの関係です。な? 意味不明だろ?
「気にはなるけど……まぁいいや。ねぇ、お兄ちゃん。今日、雪乃さんたちと出掛けたんだよね? そのことういちゃんには教えたけど」
「その流れでこいつも来たんだよ」
そうだよ、元凶お前じゃん。
【UI> フーねぇの暴走を止めれなくてすみません】
「謡は悪くない。………悪くないから」
「それだと、私を諸悪の根源みたいに言ってませんか?」
「そう言ってるのを分かるんだよ、倉崎」
「エゴですよ、それは」
レイカーが乗ってくる。お前ガンダム知ってるのか。逆シャア名作だよな。ただ――
「それお前が言うか?」
「まぁまぁ。いいじゃないですか」
レイカーは後で斬る。
「で、帰ってくれない?」
「うぅ、酷いです……」
「うるせぇ、不法侵入者。警察呼ぶぞこら」
「えー、お兄ちゃん言い過ぎじゃない?」
逆に小町はなぜ順応している。コイツには徹底抗戦の姿勢で対応しないと俺が死ぬぞ。
「あら、貴方と違って妹さんは可愛いですね。あ、申し遅れました。私、倉崎楓子と言います」
「ありがとうございます。できれば小町と呼んでください、楓子さん!」
名前呼びから始めるとかスゲーな。これが俺と小町のコミュ力の差か。
「小町が可愛いのは当たり前だ」
と、小町に続いて言う。
「噂のシスコンですね」
「ほっとけ……。てか、車は?」
「近くの駐車場に停めてますよ」
【UI> で、フーねぇは何しに来たのですか?】
俺らの話に若干空気だった謡が割って入ってくる。放っといてごめんな。
「そりゃ、こうて……んんっ。比企谷さんの家に興味が」
「だったら目的達成したよな。ほら、帰った帰った」
……てか、小町がいる前で皇帝ちゃんとか呼びかけないでくれ。コイツとB・Bは関係ないから。あぁ、怖っ。
「そんな邪険にするなんて……ういういに何かいかがわしいことをする予定でも?」
「あるわけないだろ」
「そんな! 私のういういのどこがダメなんですか? オヨヨ……」
「オヨヨじゃねぇよ。お前ちょっと黙れ……」
一昔前のドラマとかであるどこぞのめんどくさい親父かよ。しかも普通に美人なのが質が悪い。容姿のレベルは雪ノ下さん並だ。その中に眠る腹黒さも。
【UI> 誰がフーねぇのですか!】
「落ち着け、謡」
「ほぇー……お兄ちゃんたち仲良いんだね」
そして、何故か感心したように俺らを眺める小町。
「謡はお前も知ってるからともかくとして、倉崎とも付き合い無駄に長いからな」
加速世界で過ごした時間も合わせるならもうかなりの時間を倉崎――レイカーとも過ごしてる。どんだけ戦ったか。そして、どんだけトラウマを植え付けられたか。
「お兄ちゃんにそんな出会いがあったとは。どんなネトゲなの?」
「よくある格闘ゲームだよ」
「格闘ゲームかぁ。小町はあまりやろうとは思わないな」
「そうしとけ」
加速なんて力を手にしたら世界観狂うぞ。そもそもの話、小町は生まれたときからニューロリンカーは付けてないからインストールはできないだろうな。
「というより、見た目すっごい美人な楓子さんも格闘ゲームするんだ」
「人は見かけによらないものですよ」
「全くだ……」
【UI> 全くです】
「お二人さん?」
倉崎がこちらを睨んできたので謡と一緒に視線を逸らすな。
と、話が少し落ち着いたところで小町が手をパンッ! と叩いて提案する。
「せっかくだし、楓子さんもご飯食べませんか?」
「おい小町。そんなに飯あるのか?」
「うん。お父さん今日はまだ出張でそもそも帰ってこないし、お母さんも会社の人と飲み会らしいから、いつも通り作ると余っちゃうの」
土曜日なのに、親父もご苦労なことだ。
「でしたら、お言葉に甘えようかしら」
「はーい。じゃ、小町は料理再開してくるね。楓子さん、ソファーでお待ちください」
話がトントン拍子で進む。俺が何か意見するまでもなく決まった。
「小町さん、ありがとね」
倉崎が礼を言ってると、今度は謡が小町に。
【UI> 何かお手伝いしましょうか?】
「大丈夫だよ。ういちゃんも座っといてね」
【UI> 分かりました】
こうして、謡と倉崎がソファーに座ってる間――あ、俺はソファーの近くで立っているが――倉崎は楽しそうに。
「まさかういういとも一緒に食べれるなんて」
かなりウキウキでご機嫌な倉崎に対して、一瞬だけ謡かなり嫌な顔したな。
【UI> ハァ……仕方ないのです。今夜は共にしましょう】
小町がいなくなると、俺ら3人のグループを作り、謡はそこで会話を始める。で、やっぱり謡は若干不機嫌な様子。ねぇ、謡さん、一応レイカーとは同じレギオンだろ。そこまでここにいるの不満なの? 俺はもう割りきったぞ。
「てか、倉崎。お前家の門限とか平気なのか?」
「親には連絡しましたし、許可は貰いました。それに私は――」
「……あぁ、そうだったな」
バーストリンカーになってるからには、家庭の複雑な事情は大きさに違いはあれど存在するからな。俺ん家みたいな親の帰りが遅い家庭だったりとか。
【UI> さすがにご飯を食べたら帰りますよね?】
「それはもちろん。今日は親から車借りてますしあまり長居できません。というより、ういうい……私がいるとダメなのかしら?」
【UI> 久しぶりの機会なのですから邪魔されずに八幡さんと小町さんと食べたいのです】
プクーッと頬を膨らます謡に倉崎は口を抑えながら震えて。
「やだ……この子、可愛すぎ……?」
なんか感慨極まって泣いてる。倉崎は勢い余って謡に抱きつこうとするが、謡はそれを素早く察知し、俺の腰を掴みつつ後ろに隠れる。
「その気持ちは分からんでもないが少し落ち着け。つーか謡、今まで十分一緒に食べてるだろ」
そして、俺が話してる間にも謡に飛びついた勢いのままソファーに倒れたICBMさん……不満げな視線を俺に寄越すな。
【UI> それでもです! 久しぶりの家族水入らず……みたいな】
「その前提がまず可笑しいぞ」
【UI> この先どうなるかなんて分かりませんよ?】
「はいはい」
あざと可愛らしく首を傾げる謡の頭を軽く叩きとりあえず聞き流すことにする。
「小町。先に風呂入るわ」
「ほーい。あ、今日はシャワーだから。うーんと……だいだい後10分くらいしたら出来上がるよ。それまでにはあがってね」
「おう。2人とも、大人しくしとけよ」
それだけ言い残し、リビングから去る。
5、6分くらいでシャワーを浴び終え、家着に着替えてリビングに戻る。リビングの様子は……っと。おっと、もう用意してるのか。謡も倉崎も手伝ってる。
「あ、お兄ちゃん。ご飯よそって」
「分かった」
「ういちゃんと楓子さんはもう座ってていいですよー。残りは私たちでやるので」
「では、失礼します」
【UI> 分かりました】
俺が来るまで皿を運んでたり、お茶を入れてたりした2人は椅子に座る。
俺も用意が終わり、座る。今日は豚の生姜焼き。
「いただきます」
【UI> いただきます】
「はい、どうぞお召し上がりください~」
小町が2人にそう言うのを見てから俺も食べる。
「じゃ、いただきます」
「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
「お粗末様でした。それでですね、楓子さん――――」
晩飯も食べ終わり、倉崎は皿洗いを小町と一緒に手伝っている。……どうやら倉崎と小町が何やら談笑しているようだ。
そういや、コイツら年が近いよな。高1と……あ、同い年じゃないか。え? マジで? ……マジだ。
…………とてもそうには見えない。まぁ、B・Bをプレイしている奴は加速世界で過ごしすぎて、どうしても実年齢と離れているように見えるからな。
謡は今は風呂。途中、謡も洗い物やら手伝おうとしていたが、明日帰る用意を済ませておく必要があり断念した。……あ、そっか。明日にはもう帰るのか。少し寂しさはある。ていうか、1週間って早いな。
なんて感傷に浸りながらしばらくの間ソファーでボーッとしている。
「比企谷さん」
「終わったか。わざわざ悪いな、手伝わせて」
「ご馳走になったのでこのくらいは当然ですよ」
「それはありがとな。で、もう帰るのか?」
「はい。お世話になりました」
「ホントにな……。途中まで送るよ。小町、少し外出てく」
「はーい。楓子さん、さようなら! また来てくださいね」
「えぇ、さようなら」
……ホント、コイツ外面はこんなにも礼儀正しいのになんでB・BではあんなにドSなんだろう。なーんてどうでもいいことを考えながら付いていく。
「ところで、皇帝ちゃん」
家を出てから涼しい夜の歩道を歩いている。周りに誰もいないからかB・Bでの呼び方になっているな。
「どうした?」
「やっぱり私たちのレギオンに入らないかしら?」
「……前も言ったが、レギオンに入ったところで俺には恩恵ねぇよ」
杉並以外だと余裕で乱入されるからマジでメリットないんだよ。ここは過疎地域だから領土権取ったところで意味ないし。
「またなんで訪ねてきた?」
「いえ、こうしてリアルで何回か私と会っていますし、あなたと話すのはとても楽しいです。他にも、ういういがあなたの親。誘うには充分な理由ではないですか? それに――」
「それに?」
「この先、あなたの力が必要になる時が来るかもしれません」
加速研究会絡みでか。
「別に俺の力なんて必要ないだろ。お前らのとこかなり粒揃いだろうが。カレントも復帰しただろ。それとあの緑の……ライム・ベルがいれば大抵のことはできるだろ」
あれはネガビュの中で一番ヤバい奴だと思う。
「皇帝ちゃんは彼女をやけに評価しますね。もちろん彼女には今まで大変助けられてますが」
「加速世界において回復がどれだけ貴重かお前なら分かるだろ。しかもあれは回復じゃなくて時間の巻き戻しと聞く。敵からしたらマジで面倒な奴だよ。ライム・ベルもだが……皆のことを大事にしとけよ」
「それは……そうですね」
これ以上厄介事増やされても困るしな。特に黒ちびなんかすぐに首突っ込んで問題起こす奴だからなぁ。
「てか、一応は確認するけど、俺受験生だからな? 人生を決める大事な場面が控えてるのにそこまでしてあっちに関与するつもりないから」
「リアルの生活を蔑ろにするわけにはいきませんからねぇ」
「そういうことだ。お前も勉強はしとけ。早めにやって越したことはないぞ。お前の頭の良さは知らんが」
そう言うと、倉崎は俺の方に体を向けて。
「失礼ですね。これでも、私成績は優秀なんですから」
エヘンッ! とあまりにも実った胸を張る倉崎から視線を外しつつ誤魔化すように話す。そんなに揺らさないで。
「そ、そうかい。つっても、学校の勉強と受験の勉強では質が違うからな。……学校の成績が良いからってあまり慢心はするな。一応、先輩からの忠告だ」
「分かりました。皇帝ちゃんは心配性ですね」
「気にすんな」
うー、さすがに夜は冷えるな。
「あ、ここです」
そうこうしていると、有料の駐車場に着く。
「気を付けて帰れよ」
「はい。雪ノ下さんと由比ヶ浜さんにもよろしくと言っておいてくださいな」
「覚えてれば」
「そんなイジワル言うなら、また遊びにきますよ?」
「それは止めて……」
なんかもう色々と精神削られるから……。
「そんな顔されると余計に遊びに行きたくなりますね。ダチョウ倶楽部的な」
「フリじゃないから」
マジで根っからのドSだな。
「皇帝ちゃんはホント素直じゃないんですから……。って、あ、ういういに別れの挨拶をしてません」
「どうせお前らはすぐに会えるだろ」
同じレギオンに加えて、よくリアルでも会うらしいしな。東京同士で家近いからそりゃ簡単に会えるわな。
「それもそうですけど」
「ハァ……俺から言っておくよ」
「お願いしますね。では、皇帝ちゃん……お元気で」
「おう。そっちこそな」