【UI› ではお世話になりました】
倉崎が突撃してきた翌日。もう謡が帰る頃になった。1週間か……短かったような長かったような(投稿間隔)。不思議な気分だ。
「ういちゃーん! また遊びにきてねぇ」
「謡ちゃん、お母さんにもよろしく」
小町は泣き、お袋は普通に見送っている。
「ほら、八幡。ちゃんと送りなさいよ」
「はいよ」
で、俺はお見送り。東京まで付いていくことに。
「うぅ……小町も付いていきたいよ」
「アンタはダメ。前に椅子壊したでしょ。買いに行くよ」
「ネット通販でいいじゃーん」
「私は実物見て決める派なの。はい、準備する」
「はーい」
小町とお袋の様子を見た謡は。
【UI› 賑やかですね】
と、笑っている。
「まあな。じゃ、行ってくるわ」
謡と一緒に駅へ歩く。
「今回のお泊りどうだった?」
【UI› とても楽しかったのです!】
「そりゃ良かった」
【UI› なにせ1週間八幡さんと横で寝泊まりできたので】
「それ岡本さんや親御さんにも言うなよ? 俺の社会的生命終わるからな?」
ヤダもう八幡怖い。
【UI› どうでしょう? 皆さん喜びそうな気がしますが】
「何でだよ……」
【UI› 何故だと思います?】
「考えたくもない」
【UI› ふふっ、釣れませんね】
クスクスと笑う仕草を取る謡。……不覚にも可愛らしいと思ってしまった。バースト・リンカーは実年齢と精神年齢がかけ離れてる場合があるから、まだ幼くとも大人らしいことがある。そのギャップに不意を突かれ、ドキッとしてしまう。……事案だぞ、気を付けろ。
「前々からそうだろ。……って、あ」
【UI› どうかしました?】
「あー……グローバル接続どうしようかなって。切ったら謡と話せないし、付けっぱなしなら乱入ありそうだし」
謡とは失語症だから肉声で話せない。だからチャットしながら会話するんだが、いわゆる機内モードにするとそれもできない。
【UI› 八幡さんなら乱入されても問題なさそうですが】
「単純に面倒。対人戦の勘まだまだ鈍いし」
【UI› 前にひと暴れしてませんでしたか? 確か紫の領土で】
「あれは……テンション上がってただけと言いますか」
いやまあ、謡の家では接続オンにしてたし、大丈夫と言えば大丈夫なんだろうけど。面倒なんだよなぁ、実際に戦うのは。だって俺に絡む奴とか絶対面倒な奴だぞ。……さっきから面倒しか言ってないな。
でも実際、青の双子やレパードに絡まれるのは嫌なんですけど。アイツら苦手。レパードはまだしも、青の双子と戦ったとき武器奪って斬りつけたら『お前が使うな!』ってうるさかったからな。だったら、盗られないようにしなさいな。あと純粋に剣の腕かなり高いし。
【UI› ではタッグを組んでおきますか? レベル7同士のタッグに乱入する勇気のある人たちは少ないと思います】
「確かにな。頼むわ」
【UI› 了解なのです】
このタッグにわざわざ乱入する奴らがいるとすれば、そりゃ同レベル帯か相当なバカか蛮勇な奴らだろう。レベル6同士なら乱入されるかもだが、謡の名前はかなり知れ渡っているからな。引退気味だった俺と違って。
駅に着き、電車を乗り継ぎつつ杉並まで移動する。その間、特に戦うことはなかった。多分1人だけだったらこうはいかないというより、グローバル接続切っている。別に切ってても音楽は聞けるし問題ない。駅名も覚えとけば問題ない。
乗車中は謡とのんびり話していた。シルバー・クロウたちの文化祭がもうすぐあるだの加速研究会をどうする(さすがにこれはチャット喋った)だの、あとは……レイカーの愚痴とか愚痴とか愚痴とか愚痴とか愚痴とか愚痴とか。
駅のホームで。
「どうする? ここまで来たし、家まで送ろうか?」
【UI› さすがにこれ以上受験生の時間を取るわけにはいかないのです】
「もうここまでくれば同じだって。まあ、それ言うならわざわざ聞く必要ないか」
【UI› ではお願いしたいのです】
「任された。……あ、親御さんたちいる?」
【UI› まだ帰ってきてないはずなのです。確か夕方頃に帰ってくると】
時刻はまだ正午にもなっていない。
「なら土産は大丈夫か。……いや、岡本さんいるか」
謡の家のお手伝いさん。あの人なら曜日関係なくいそうな気がする。駅のデパートに移動しながら謡と会話を続ける。
【UI› 確かにそろそろ帰ってきているはずです】
「なら何か買うか。……どら焼きとかカステラ辺りが無難だよな。お前んち和風だし」
【UI› あまり関係ないと思いますよ。洋菓子もわりと食べますので】
「そう? なら好きなケーキ屋あるんだけど、練馬の方だしな」
【UI› 練馬と言えば、前に八幡さんが住んでいた場所ですよね?】
「そうそう。近所にケーキ屋があって、よくそこに通っていたわ。値段も手頃なやつもあって美味しい。そして何より店の雰囲気が好みだった」
【UI› なるほど。ということは、もしかして可愛い店員さんがいたのですか?】
……。
……えーっと、謡さん?
「どうしてそうなる」
【UI› あの出不精である八幡さんが何回も通うだなんてそれしか考えられません!】
「普通にケーキ目的なんですけど」
心外な。
【UI› それで実際のところ可愛い看板娘的な立ち位置の人はいましたか?】
「いたにはいたな。俺のちょい下辺りの奴。多分店長さんの娘じゃないか?」
【UI› …………可愛かったですか?】
何そのジトーッとした目。やめて、睨まないで。下から睨まれてもあまり迫力ないけど、寧ろめちゃくちゃ可愛いけど。撫でたい。思いっきり撫で回したい。はい、絵面的にアウト。
「……客観的に見れば可愛かったと思う。ただかなり無愛想な娘さんだったな」
あれで客商売やっていけるのかってくらい。うん? よくよく思い返せば、他の客には笑顔だったけど……って、あれ? もしかして無愛想だったの俺だけ? いつの間に嫌われていたのか……。ちょっとショック。
そして、謡さんや、俺の横腹つつくのやめなさい。あ、つつくスピード上げないで!
「月2くらいで通ってたけど、まあ、もう何年も行ってないからさすがに忘れられてるだろうな」
今日の帰りに寄ってみるか。せっかくだし。そこまで距離も遠くないわけだし。電車使えばすぐだ。
「っと、これでいいか。また皆で食べといてくれ」
土産にカステラの詰め合わせを買う。
買ったあと、デパートを出てから謡の家まで歩く。
【UI› わざわざすみません。私が勝手に泊まったのに、手土産まで】
「気にしない。まだまだ小学生なんだから奢られるのが当たり前って感覚でいればいい」
【UI› むっ、八幡さんからすれば私は子どもということなのですね。私八幡さんの親なのに】
それだけ聞くと新手のプレイに思えるから外で言うのは止めてほしい。
「逆に聞くけど、お前何歳?」
【UI› 10歳なのです……】
「俺と比べりゃ子どもじゃないか。何? どう思われたいの?」
と、謡が俺の質問に答えようと腕を動かしたとき――――
ブレイン・バーストの乱入表示が出てきた。
……え、マジか。わざわざ俺らに突っかかってくる奴らいるの? これでも俺ら高レベルだよ? 物好きめ。どこの誰だ? 斬ってやる。
ゲーム画面に移動する。よし、対戦相手の表示はどうなっている。これでもハイランカーの俺らに喧嘩売るとは相当なアホに違いないな。……って? え?
「――――は?」
相手のゲージの名前を見た瞬間思考が固まった。
「えぇ……なのです」
ほら、謡ですら呆れてるよ。
「アイツらバカなの?」
「きっとアホなのです」
その乱入してきたペアの名前は――――ペアである謡のギルドマスター兼純色の黒の名前を冠する王、ブラック・ロータス。そして、片割れに関しては昨日も会いましたよね? BBで一番ドSと名高いスカイ・レイカー。
いやまあね? 俺がペアだし、レギオン入ってない俺がマッチングリストに載るのは分かるよ。同レギオンだからアイツらにも謡の名前が載るのは分かるよ。だからって戦闘仕掛ける? 身内なんだからいつでも戦えるだろ、っていうか散々戦ってきたでしょ。
しかも! 俺らより高レベル!
「降参する?」
「したいのです……」
劫火の巫女――アーダー・メイデンもとい謡も頭を抱えている。
一応降参のメッセを飛ばすけど……まあ弾かけるよな!
アイツらどこにいる? あ、ステージは……草原か。遮蔽物全然ないから嫌いなんだよな。必殺技ゲージも溜めにくいし。謡みたいな遠距離キャラはいいんだろうけど。遠くから一方的に撃てるしな。距離詰められると大変そうだけど。
ん? 空中に気配が。
と、見上げると……。
「……来たか」
「……ですね」
ゲイルスラスターで空中から飛んできたレイカー。と、抱えられている黒ちび。
地面にぶつかる直前にスラスターの勢いを解除して、スタッと2人は華麗に着地する。
「また会ったな、エンペラー」
「昨日ぶりですね、2人とも」
「お前らハウス」
「誰が犬だ!」
「ぶっ飛ばしますよ、皇帝ちゃん?」
もうやだコイツら……。
「で、何してんの、マジで」
「いやなに、たまたまレイカーとタッグを組んでいたらお前たちの名前があったのでな。珍しいこともあるのだと気になってリストを押したわけだ」
「女の勘が囁いて、サッちゃんとタッグ組みましたが、まさかこうなるとは……」
……女の勘って怖い。
「そういう貴様たちこそ何をしている」
「私たちはデート中なのです、サッちん。できれば邪魔してほしくないのですが」
「違うから」
ダメだ、そういや謡もあのアホたちと同じレギオンだった。
「むーっ、なのです」
「むーじゃありません」
誤解されるでしょうが。
「確かメイデンはエンペラーの家に止まっていたとレイカーが言っていたな。杉並にいるということは、その帰りというところか?」
「おお、黒ちびにしては頭の回転が速いな」
「――――斬るぞ」
「お断りします」
「……まあいい。貴様の軽口など挨拶程度のモノだったな。……というより、メイデンが泊まりとは……ふむ、親同士交流があるとは聞いていたが、随分と絵面が危ないな」
「そうだ、通報します? 私の大好きなメイデンに手を出す皇帝ちゃんがいると」
頼むから黙ってくれ……。家には小町やお袋もいるし変なことはないから! ……ないよね? ね?
「別に何もないよな? おら、堂々と言ってやれ」
「…………」
なんでそこで視線を逸らす。おい! こら謡さん! 何かしたの!?
咳払いをして強引に話を打ち切る。これ以上突っ込みたくない。
「……で、降参していい?」
「さっき断っただろう!」
ビシッと剣を向ける黒ちび。ですよねー。
「マジで戦うの?」
「ほら、ギャラリーも盛り上がってますよ」
ギャラリー? うわっ、めちゃくちゃいるじゃん。しかも、こういう場に黒ちびがいること自体が珍しいのか大物も多い。騒がしい……!
「まさかこの状況で逃げるとは言うまい」
こんの戦闘狂が……!
「……諦めましょう」
「……はいよ」
やるからにはコイツら相手に剣なしはキツい。さっさと剣を出して構える。謡も弓を出して後ろに下がっている。
「あ、やる気になりました? じゃあ、私は皇帝ちゃんを相手しますね」
「まあ、エンペラーと私は相性が悪いからな。レベル差があるとはいえ、危険な相手だ。レイカーに任せる。なら私はメイデンだな」
「はちっ……エンペラーさん! 前衛は任せました! のです!」
「大声でリアルの名前呼ぶなよー」
「ごめんなさいのです」
もういい。切り替え切り替え。いくら謡がペアでも、正直勝てる気しない。相手めちゃくちゃ強い2人だからな。負けそうだけどやるぞー、おー。
20分粘ってから、2人してバタンキューという感じで殺られました、はい。
現実世界に戻りました。
「ああ、疲れた……」
【UI› 同感です】
まあ、黒ちびの体力半分削れたからマシとするか。けっこう粘れたし、戦果としては充分過ぎるだろ。やっぱアイツら基本バカだけど、強すぎるわ。レベル9と8は伊達じゃないな。つーか、何がしたかったんだ……。暇つぶし? エンカウントする敵にしては強すぎるんだよなぁ。
もうさすがに乱入騒ぎはないはず。さっさと謡の家に行くか……ん? メール? 誰だって、レイカー……じゃなくて倉崎か。内容は……なになに? せっかくですので、サッちゃんともリアルで会いませんか? お茶しましょう?
「嫌です!」
【UI› ……どうかされましたか?】
「倉崎のメールで察しろ」
【UI› 察しました】
「謡送ったらさっさと帰るからあとよろしくな」
とにかく疲れた。特に2日連チャンで倉崎の相手するのは。
で、あれから乱入されることはなく無事に謡の家に着いた。歩いている最中、倉崎からメールわんさか来るんで謡と話しながら倉崎を相手するのはホント大変でした。
【UI› ではありがとうございました。お世話になりました】
「おう。元気でな」
【UI› 雪ノ下さんと由比ヶ浜さんにもよろしく言っておいてください】
「了解」
岡本さんにも土産渡したし、もういいかな。
【UI› あ、八幡さん】
「ん? どうした?」
【UI› ちょっと写真撮りませんか?】
「写真?」
【UI› せっかくですので、留美ねぇに見せたいです】
ルミルミのことか。確かいとこ同士だったな。
「別にいいけど、撮ったところであれだぞ、俺ルミルミの連絡先知らないぞ」
【UI› まあ、私個人が留美ねぇをイジって楽しみますので】
「言い方……」
確か留美の方が1個年上か? 年下にイジられる年上。……由比ヶ浜と一色みたいなもんか。由比ヶ浜がおバカちゃんなのがあれだが。……進学するって言ってるけど、大丈夫なんかね?
【UI› 気にしないのです】
「はいよ……。じゃ、準備するわ」
と、最後に謡と写真を撮ってから解散した。ぶっちゃけると写真苦手なんだけどな。確認するとき俺の目を嫌でも見ないといけないわけだし。とはいえ、謡が楽しそうならそれでよし。
で、帰りに練馬にあるケーキ屋に寄ることにした。話題に出てスゴい懐かしくなったから……なんつーか、あれだ、ついでだ。ついで。帰ったら小町と食べよう。
電車をちょっと乗って前に数年間暮らしていた街――練馬に着く。
「……」
うん、懐かしい。大してここでいい思い出があったわけじゃないけど、BBはずっとやっていな。色んなキャラが濃すぎる奴らと戦うのは随分と楽しかった。現実であまり上手くいかなったから余計にのめり込んでしまった。
お、ケーキ屋だ。調べずに行ったけど、営業しててよかった。
店内はエアコン効いてて素晴らしい。さて、どのケーキにしようかな。季節のケーキにするか。値段は限定なだけあって他のに比べてそこそこするな。
「……あなた」
「ん?」
話しかけられた? 誰に? 店員か。……あ、この人さっき謡に話した店員だ。
「随分久しぶりに来たのね」
「ああ、はい。つーか、覚えてたんですね」
まだ俺がいた頃は小学生か中学生くらいだったが、今ではもう立派や中学生に見える。にしてもけっこう大人びているようにも思える。
無表情に制服であるメイド服がなんともまあ……ギャップがスゴいな。
珍しく早く投稿できました!
それとちょっとした宣伝です。
小説家になろうでオリジナル小説書いています。暇つぶしに読んでください。わりと真面目に書いてます。感想や評価、ブックマークなどぜひお願いします!!
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