極彩色の空間。
カイトが【神域】で初めて見た景色。暗闇の世界で求めて止まなかった景色。時間で考えれば、二日というそれ程長い期間では無いが、カイトはトータスに召喚された事を遠い昔に感じていた。
「おぉ……明るい!あっはははは!抜け出したぞー!俺は帰って来たんだー!バンザーイ!」
年甲斐もなく、カイトは諸手を挙げて喜んだ。何しろ、思わず人類全てを滅ぼしてやろうかと決意する程だったのだ。このくらいはしゃいでもバチは当たらないだろう。……カイトの場合これからバチを与える側の存在を殺しに行こうとしているのだが。
勿論、先程までカイトがいた深淵が完全に光が存在していなかったわけでは無い。そうだったのなら、カイトは訳の分からないままあの四つ目狼にモグモグされていた事だろう。光量的に言えば、カーテンを完全に閉めた夜中の部屋の中といったところだろう。だがしかし、暗闇とは人間の原初の恐怖である。それは本能にまで刻まれたものだ。わーいボク暗闇大好きー!いつまでもいれるー!なんてほざく者がいたのならば、一週回っちゃったか、ちょっと世間一般の人間と変わっているのだろう。
「っと、そうだよ。ずっとこんな所に居れる程の余裕はねぇんだ。早く先に進まないと」
そう言ってカイトは十数メートル程前に在る極彩色の壁を見る。そして大きく深呼吸をした。何しろ、逃げる事しか出来なかった世界だ。緊張もする。落ち着いた後、そのまま一歩、二歩と歩を進める。
(俺は強くなった。今ならあの天之河だって容易く屠れる。大丈夫だ。心配する事なんて何も無い。魔物の百匹や二百匹くらい楽勝だ。だから大丈夫。俺は行ける)
もう壁は目前に迫っている。あと三歩も踏み出せば景色は変わることだろう。
一歩。
心臓はバクバクと煩いくらいに高鳴っている。
二歩。
道の先へ。自分が満足する結末のために。
三歩。
カイトは極彩色の壁の中へ飛び込んだ。
目を開けると、そこは荒廃した世界であった。さながらバイオ○ザードやサイ○ントヒルかのような。
「おー……すげぇ、空だ。それに物もある。うっわー感動するー」
そうは言っているが、どうやら二度目の景色にはついさっきのように叫ぶ程心動かなかったようだ。寧ろ足が砂利を擦る感触の方が気になるらしく、ザリザリと靴の裏に着いたガムを剥がさんかの如く足を動かす。
そんな呑気な事をしていると……
『ガァアアアアアアッ!』『オォオオオオ!』『ルゥアアアア!』『グルルァァアアアアア!』『グァァアアアアアッ!!』
「……うるせぇな、人が折角いい気になってんのによォ」
一キロ程離れた地点から、黒い四つ目の狼型の魔物、二つに分かれた尾を持った狼型の魔物、馬のような面をした筋骨隆々の二足歩行する魔物、巨大な昆虫のような見た目をした魔物、兎、そんな魔物達の集団がカイトに向かって来る。魔物共の群れは、廃ビルの上からだろうが建物の影からだろうが道路の向こう側だろうが所構わず湧いて出てくる。その数は前回見た時よりも多くなっているように見受けられる。
カイトは舌打ちを一つ零し、爪先で軽く地面を叩いた。するとカイトを中心とした地面が黒く染まってゆく。"結応"だ。効果としては、カイトが"結応"を発動した範囲の分だけ、干渉を行えるというもの。
「ムカついた。殺して剥いで喰ってやる」
勿論、気分が良くても殺すのだが。
魔力を巡らせ"現象操作"を並列して発動。カイトから伸びた黒い影が触れると同時に近くに建っていたビルが一棟、地面から引き抜かれた。
ちょっとしたマンション程の大きさの建物。カイトはそれを一瞥し、右の掌を空に掲げる。それは一見意味のない行動に見えるが、トータスでの魔法は、大体が詠唱と魔法陣によって発動する。しかし、魔力を直接操作出来る者に関してはそれに縛られない。その代わりに、イメージが重要なファクターとなる。つまり、先程の行動はイメージを固める為に必要なのだ。決してカイトが厨二病な訳では無い。
その建物は遥か空へ上昇していき、やがて魔物共に屋上を向けた。
そして、カイトは手を振り下ろした。
ゴッッッ!っと、重量6000トンオーバーの鉄槌が【神域】の上空を薙ぎ払い、魔物が密集している地帯へ正確に落着する。全てを巻き込んで。
それは着弾と同時に当たった魔物共の肉を潰し、引き裂いて巨大なクレーターを発生させる。飛び散った破片さえ凶器となり、逃げ出していた魔物共の身体に突き刺さる。たった一発で全ての魔物を屠り、それでもなお余りある衝撃がカイトの頬を撫でた。全ての魔物は、断末魔を上げる暇さえ無かった。
「うそん……」
カイトは思わず頬を引き攣らせた。『ビル投げ』という技は中々男のロマンが詰まっている。自分はふんぞり返ってながらも圧倒的な破壊をもたらすのだ。カッコよくない訳がない。しかしカイトは流石に一撃であれだけいた魔物が吹き飛ぶとは思っていなかった。しかもカッコつける余り、魔力の殆どが無くなってしまった。
「うっわー……やっちまったー……冷静に考えてみればこれすっごい無駄じゃん……魔物共に突っ込んで一匹一匹潰した方が魔力効率いいじゃん……ワルプルさん流石っすわー……」
ガリガリと頭を搔き、ブツブツと小言を漏らしつつ大きな溜息を吐いた。
「まぁいいや。まずは魔物だ」
声に出してカイトは意識を切り替える。状況がどうであれここは【神域】なのだ。一秒後に死ぬ可能性だって大いにある。カイトは着弾地点まで赴き、比較的綺麗な魔物の死体をかき集める。数分後、魔物を集めきったカイトは、ニヤリと笑って食事の挨拶のように手を合わせた。
「さて、一体どんな固有魔法がとれるのかなーっと」
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木下カイト
17歳
男
レベル : 49
天職 : 操縦師
筋力 : 1260
体力 : 1860
耐性 : 1260
敏捷 : 3380
魔力 : 1830
魔耐 : 1830
技能 : 廻操[+現象操作]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・威圧・衝撃変換・迷彩・剛腕・天歩[+空力][+縮地]・加速・限界突破・結応[+侵食]・言語理解
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「あー……やっと見つけた……」
カイトの探索は続く。
【神域】に巨大なクレーターをブチ開けてからカイトはひたすらに進み続けていた。何度極彩色の壁を見つけて進んでもその先は少し景色が変わるだけで魔物の襲撃の勢いは収まることは無かった。しかも魔物を殺すだけでなくそれに並列して何処にあるかも分からない次の空間へのワープゲートを見つけなければいけないのだ。
森の中で大量の羽虫に集られた時は本気で世界を滅ぼそうかと考えた程今のカイトはイラついてる。
カイトの怒りの原因をいくつか紹介すると、先程も言った羽虫の集団、と言っても蚊柱のようなものではなく、六十センチ程度の大きさのまるでブナ○ブラのような虫がブンブンブンブンと百匹以上集まって来たのだ。刺されれば全身に痺れが走り身動きが取れなくなりぶっ倒れた。カイトの"現象操作"がアクション要らずの技能じゃなければ死んでいた事だろう。勿論、全て殺したあと喰った。黄緑とも黄色ともとれない体液がとてつもなく甘かった事に毒かと焦りはしたが、唯の蜜だった事にちょっとイラついたカイトなのであった。その後、その森に火を放って焼却し尽くしたのは余談だ。
さらには尾が三つに分かれた黒猫モドキなんかもいた。魔物らしくないキュートな見た目に反して幻覚に見せてきたり、カイトがそれを鍛えられた精神力と気合いで打ち消した後には、突然背中が割れて何本もの触手を生やして飛びついて来たりと。そのときは思わず女子のような悲鳴を上げたりした。それも喰ったが虫より不味いことに二倍でイラついた。
他にもショッキングピンクのワニモドキや超巨大なダチョウモドキ、空飛ぶスパゲッティ・モンスターモドキ(一瞬で逃げた)なんかもいた。
「絶対に殺す……エヒトは俺の思いつく限りの残虐な方法をもってぶち殺す……生まれた事を後悔させてやる……」
そんな今のカイトのステータスはこうだ。
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木下カイト
17歳
男
レベル : 73
天職 : 操縦師
筋力 : 1960
体力 : 2360
耐性 : 1960
敏捷 : 4980
魔力 : 2730
魔耐 : 2730
技能 : 廻操[+現象操作]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・威圧・衝撃変換・迷彩・先読・威圧・遠見・気配感知・魔力感知・剛力・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・剛腕・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・加速・限界突破・結応[+侵食]・言語理解
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まさにチート。しかし、喰ってきた魔物の種類はもっと多いのだ。一概に喰えば固有魔法が手に入るというものではないらしい。ステータスは上がるが、固有魔法はそれなりの強さをもった魔物でなければ発現しなくなった。身体の質が変化しているのか、それとも魔物の不思議パワーが打ち消し合いでもするのか、そもそもそういうものなのか、それは分からないが少なくとも世界線を超えて干渉出来る力をもった者を目標としているカイトにとっては芳しい事ではなかった。
話は戻るが、今カイトはゲートの前にいる。超えたゲートも数知れず。少なくとも両手の指で数える事は出来ない。魔物の肉が少量でも魔力を回復する力を持ってなければすぐさま魔力枯渇となっていただろう。まぁ、今のカイトならば徒手空拳で硬い魔物以外は狩れるのだが。
幾つもの空間を超えてきて疲労は溜まっている。だがそんな事で止まるなんて甘い考えは深淵に捨ててきた。何度見たか分からないゲートにカイトは飛び込んだ。
「……は?」
光が収まった先は、大海の上、地面なんて無く、カイトは真っ逆さまに海へと落ちて行く。
ビル投げをさせたかっただけの話。次話は明日か明後日にでも投稿する思います
ところで大迷宮の攻略の証って無限湧きするんですかね