非戦闘職業で世界最強   作:むらやん

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あああああああああああああ一分足りなかったああああああああああ
遅れてすいませんでしたあああああああ



神獣

 ゴッッッ! と風が舞う。

 "現象操作"で風を増幅させカイトは浮き上がる。一瞬の浮遊のうち、体勢を整えると"天歩"で空中に降り立った。

 

 「はぁぁぁぁぁ……ウゼェ。つくづく思うがエヒトってクソ性格悪ぃよな……」

 

 カイトは深い溜息を吐く。一瞬焦りはしたが何度も生命の危機には遭ってきた。これしきのことはさらにイラつきが増すだけだ。

 

 「あぁ、めんどくせぇなぁ。こんな辺鄙な場所で魔力使いたくないんだけどな。立地悪すぎだろ。エヒトはどんな場所に住んでんだ、頭悪ぃのかよ」

 

 ウダウダと文句を言いながらカイトは"天歩"で文字通り空を駆けていく。

 

 

 

 

 

 

 「クゥエエエエエエ!」

 「ハイ邪魔」

 

 風弾が飛来してきた鮮やかな色をした巨大なインコのような見た目をした鳥型の魔物を撃ち落とす。

 

 「キィィィイイイイ!」

 「鬱陶しい」

 

 海中から顔を出して口から何かを吐き出そうとしていたトビウオのような見た目をした魔物をあらかじめ拾っておいた石ころで撃ち抜く。

 

 「────────!!」

 「死ね」

 

 触手を叩きつけてきたイカともタコともクラゲともとれない軟体動物を掴んで引き裂く。

 一度、鳥型の魔物に襲われ、それを対処しているうちに次の魔物が接近する。集まった魔物にさらに魔物が群がり、ねずみ算方式で増えていった結果、カイトは現在、大量の魔物に辺りを包囲されていた。

 

 「ああ、クソ、ウザってぇな。纏めて殺すか」

 

 カイトが魔物をまるごと消し飛ばそうと圧縮した黒い魔力がスパークした瞬間、突如暗雲が覆った。

 カイトを囲っていた魔物共も、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 

 「なんだ?」

 

 映る影を見れば、全長は三百メートル以上あるのではないだろうか。胴回り一つとっても簡単には目測できないほどの太さがある。全身を金属質の鱗で覆われていて、背中にも硬質な輝きを持つ背びれが付いており、まるで刃のようにギラついている。

 

 海中より、悪夢が顕現する。

 

 その姿は、まるで蛇ような。海面から五十メートル以上も飛び出し鎌首をもたげる竜のような頭部。大きさは、鱗の一枚一枚が人間の子供ほどもあると言えば、その巨大さが伝わるだろう。そこに、赤黒い光を放つ一対の眼と、ズラリと並んだ二重の鋭い牙、両サイドにヒレのようなものが付いている。ヒレは、胴体と同じく金属質の輝きと刃の鋭さを持っていて、触れるだけでスッパリと両断されてしまいそうだ。

 

 尋常でないプレッシャー。そこに存在するだけで空が暗雲に包まれ、海は世界の終わりでも訪れたように大きく荒れる。鋼鉄よりも尚硬そうな無数の鱗に包まれた大蛇、否、海龍の姿は、さながら地球の伝承にあるリヴァイアサンのよう。その威厳と圧倒的なプレッシャーに満ち溢れたその姿はカイトの頭に『神獣』という単語を叩きつけてくる。

 

 キシャァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

 

 神獣が、吠える。

 凄まじい咆哮が轟き、空間をビリビリと震わせた。体を叩き、更には精神に得体の知れない波を伝播させる。おそらく、恐慌を引き起こさせるような効果が含まれた咆哮だったのだろう。

 

 咆哮の音圧が衝撃となってカイトに直接襲い掛かる。カイトは右手を翳し、魔力を"衝撃変換"して相殺する。

 

 「ハッ!ウミヘビ如きが。人間様に楯突いてんじゃねぇよ!」

 

 カイトは傲岸不遜な態度をとって自分自身を鼓舞する。幾ら強いプレッシャーを放っているとはいえカイトはもっと強い存在を知っている。言ってしまえば、神獣はただの通過点でしかないのだ。神殺しの悲願を達成するにはこの程度の障害は意に介していられない。空気の振動程度に揺れるとうなヤワな精神構造は深淵の奥に捨ててきた。

 

 「邪魔するってンなら、ぶち殺す」

 

 突如カイトの姿が掻き消える。

 "加速"だ。引き伸ばされた時間の中、カイトは何度も宙を蹴って神獣に肉薄する。

 

 「吹っ飛べ」

 

 神獣がカイトの接近に気付いた時にはもう遅い。"加速"により、音の壁を幾つも超えた拳は"衝撃変換"と"剛腕"によって更に威力が底上げされている。

 

 ドゴンッッッ!!

 

 鈍い音を立てて神獣の眉間に拳が叩き込まれた。

 神獣は顔を仰け反らせ、その紅眼でカイトを睨みつける。そして大きく息を吸い込むと

 

 ガァアアアアアアアアッ!!!

 

 二度目の咆哮。それを至近距離で食らったカイトは動きを硬直させ致命的な隙を晒す。

 それを見逃すような神獣では無い。

 神獣はその巨体に見合わない俊敏な動きで海中から尾を大きく振ってカイトに叩きつける。

 

 「あっ、が」

 

 カイトはとんでもない勢いで海中まで吹き飛ぶ。すぐさま体勢を立て直し、海中から空に上がろうとしてカイトの視界を真っ赤な炎が覆った。

 "現象操作"で逸らすも、熱をも遮断するには演算の時間が足りなかった。

 

 「ぐぁぁぁぁあああああ!!」

 

 海水が蒸発し、熱でカイトは蒸し焼きにされる。高速で回復を図るも、ダメージが早いか回復が早いか、イタチごっこになる。

 

(クソが!ここから出ないと話になんねぇ!)

 

 "衝撃変換"で炎と水を吹き飛ばし、間いた一瞬の隙にカイトは空へ駆け上がる。

 

 グォォォオオオオオ!

 

 その咆哮は挑発か。口角を上げ嗤うように神獣は吠える。

 

 今、自分は生存を否定されている。捕食の対象と見られている。敵が己の行く道に立ち塞がっている!怒りが一線を超え、カイトの頭がクリアになる。

 神獣を殺す。その事に思考の全てを回す。

 

 「……舐めやがって。"限界突破"」

 

 暗黒の魔力がカイトを包み、全てのステータスを三倍にに上昇させる。

 

 カイトの姿が掻き消え、神獣が辺りを見渡す。

 

 「──────ァァァアア……ッ!」

 

 握り拳を振りかぶり、神獣の眉間に叩きつける。先程の再演のような事だがそもそもの威力が違う。単純に三倍なのだ。神獣の顔が吹き飛び、海に叩きつけられる。

 

 「求めるは火、其れは力にして光、顕現せよ、"火種"」

 

 詠唱にてイメージを省略し、カイトは小さな火種を生み出す。しかし、突如十センチ程度だった火種が百メートルを超える火球に変貌する。

 

 「死ね」

 

 神獣が顔を上げた瞬間、超巨大な火球が直撃する。

 

 ァアアアアアアアアアアアアアアッ!

 

 それは紛れもなく悲鳴。火球が海に入った瞬間、身体をのたうち回らせていた神獣に爆発の追撃が入る。

 

 「ハッ!ざまぁみやがれ」

 

 しかし、

 

 グァアアン!!

 

 神獣は死なず、少し甲高い声を上げたかと思うと、海水がその体を這うようにせり上がってきた。そして、破壊された場所を覆うと、まるで浸透するように海水が傷口に呑み込まれ、直後、傷口が盛り上がってビデオの逆再生のように修復し始めた。

 

 「なんだありゃ、殺すには全身を隈無く崩壊させないといけませんってか?上等だ」

 

 カイトは神獣が傷を修復している間に海に手を沈め"纏雷"を発動する。

 "纏雷"は文字通り(カミナリ)を纏う固有魔法だ。そして雷は最大十億ボルトにも及ぶ。そして触媒は海水。たっぷりと電気を通してくれるだろう。

 

ガァアアアアアアアアッ!!!

 

神獣は悲痛な叫びを上げる。

しかしカイトは追撃の手を弱めない。もう一度火種を発生させる。瞬間、またもや大爆発が起こった。

原理は簡単。中学生でもやる水素と酸素の燃焼である。

カイトは強者を甚振る事の官能に身を震わす。

この感情はなんだ?この身を擽るような快感と大笑いしたくなる昂りは……────そう、この感情は愉悦!

 

「ははははははははははははっ!!愉悦、そうか!愉悦だ!くははははっ────?」

 

神獣が今まで以上の速度で尾を叩きつけてくる。カイトはそれを紙一重で躱し、神獣を睨みつける。

 

キシャァァアアアアアアアアアアアアアッ!!

「嘘だろお前、本気じゃなかったとか言わないよなぁ?」

 

ゴウッッッ!!

 

海水が渦巻き、水の竜巻がとなってカイトに襲いかかる。

幾つにも枝分かれしたそれはカイトの回避路を尽く潰し確実に攻撃を当ててくる。

 

ガァアアアアアアアアッ!!!

 

炎のブレスがカイト目掛けて飛ぶ。カイトは一か八か"現象操作"でそれを弾き返し神獣の口内に侵入する。

 

(そうだよ、なに勘違いしてたんだ。こいつを殺すのに派手さはいらない。必要なのは、隙と殺す意志だけだ)

 

グチュン、とカイトは手を上顎に突き入れる。

やる事はいつかの模範。神経を伝って脳を破壊するだけだ。

 

ァアアアアアアアアアアアアアアッ!

 

ブレスは止み、のたうち回るだけ。そして突如ビクリと大きく身体を震わすと、神獣は海の中に倒れ込んだ。

 

カイトは神獣の口内から飛び出すと、大きく伸びをした。

 

「なんだ、こんな簡単に殺せたんじゃないか。変に爆発とか起こさなくても最初からこうしていれば勝て────」

 

水流がカイトの腹を突き破っていた。

 

「────は?」

 

キシャァァアアアアアアアアアアアアアッ!!

 

「ごぶっ、」

 

口から大量の血を溢れさせ、カイトはフラリと揺れる。

神獣は全身に水を纏い傷を修復させながらカイトを水で撃ち抜いていたのだ。

やがて"天歩"を保つ力も無くなり、カイトは海に落ちる。

 

ドポン、とした音がやけに大きく聞こえた気がした。

今は修復に手間取っている為か神獣はカイトを積極的に攻撃しないが、どのみち失血で死ぬか溺れて死ぬかする。

苦しみが増えるだけ、こっちの方が損とも言えるかもしれない。

水の音が頭の中に強く響く。

 

カイトの胸中に激烈な闇が灯る。

俺は何している? エヒトを殺すんじゃなかったのか? いつまでこんな不甲斐ない姿を晒せばいい? 身勝手に自分の命を刈り取る事を許容するのか? あんな爬虫類如きに屈するのか? ふざけるな、ふざけるなよ木下カイト。 何の為に俺はあの地獄を乗り越えて来たんだ? 殺す為だ。 あらゆる理不尽を潰し、引き裂き、抉って自分の身を満たす為だ。 ならばこんな場所で終わっていいのか? 世界を呪え。 力を求めろ。 猛り狂う程の激情を全て力に。 全ては復讐の為。 周りなど気にするな。 世界は己のみだ。 鎖を引きちぎれ。 縛るものなんて壊せばいい。 無限の可能性の全てを網羅しろ。

そしてカイトは、幾つもの壁を超えた。

"廻操"の派生技能[+法則操作]、"天歩"の最終派生技能[+瞬光]、"限界突破"の派生技能[+覇潰]。まずは"廻操"で傷を塞ぐ。ここで綺麗に治す必要はない。あと数分の戦闘、それを耐えれれば上々だ。

 

「殺す」

 

短く呟き、"覇潰"と"瞬光"を発動する。全ステータスが五倍となり、体感時間が圧縮され身体に活力が漲る。

 

────ドシュンッ!

 

カイトは一瞬で音速を超えた。

神獣の目の前に移動すると、脳天に踵を落とす。

轟音が響き、神獣の金属製の鱗が砕け内側から鮮やかな色をした肉が見える。

 

ガァアアアアアアアアッ!!!

 

神獣は吠えて炎を吐く。しかしもうそこにカイトはいない。神獣は顎を蹴り上げられ口を自らの炎で焼く。

次の瞬間にはカイトは消滅しており、横顔を雷で焼かれる。

神獣が無差別に水流を操っても、カイトはそれを"侵食"で塗りつぶし操作権を奪取する。カイトは神獣を蹂躙する。しかし、

 

「────致命的に決定打が足りねぇな」

 

ァアアアアアアアアアアアアアアッ!

 

丁度神獣が吠え、海水で回復を始める。神獣が傷を修復するときは大きな隙が出来る。そこでカイトは目を瞑り意識を高めた。

 

(考えろ、演算するんだ。思考の海に沈め)

 

カイトの周囲の空気がバチバチと悲鳴を上げ、海面がカイトを避けるように蠢き、蒸発していく。

カイトの身体に黒い旋風が巻き起こり、衣服がはためく。瞬間、黒と黄金のエネルギーがカイトの周りで交わり、収縮して右手に収まる。

混沌としたその光は、存在するだけで辺りに影響を及ぼす。その正体は、【神域】を形作るエネルギーの集合体。カイトは一度、深淵にて世界の構造を解き明かしている。ならば技能が法則まで操作出来るようになり、巡回するエネルギーの全てを収縮、圧縮したもの。【神域】という特殊なフィールドのみで使える、カイトの今のところ最強の攻撃手段だ。

 

ピィィイイイ〜!

 

神獣がその攻撃の危険性に気づき、逃走を図るも一手遅れた。

 

「ォォォォォォォオオアアアアッ!!」

 

ゴッッッ!!!!

 

右の拳を振りかぶる。

それだけの行動でエネルギーの奔流が荒れ狂い、神獣の身体を肉片一つ残して消し飛ばした。更に海の殆どの水を蒸発させ、神獣が消えた後に現れた島も衝撃で地表を薙ぎ払った。

 

「あぐ、ァ……、ぎ、ィ……」

 

カイトはこれ以上に無いくらいの頭痛に苛まれつつも、先を目指そうと踏み出す。しかし、その瞬間、カイトの身体を覆っていた黒い魔力が霧散した。"覇潰"のタイムリミットが来たのだ。

 

(あ、死────)

 

最後、銀色の羽が見えたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「ノイントを向かわせたならば、死にはしないだろう。及第点、としておいてやろうか。深淵より帰還した事は褒めてやるぞ、木下カイト」




もっと長くなると思ってたのに……
もしかするとバトル描写苦手かもしれない……
あと途中出てきた愉悦は後々に続く(気がする)
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